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続 ここにある彼方(1)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
……や、やめてー!消去しないでー!お炊き上げしないでーっ!

そう君とこなたの目の前で、必死で手を振る私。
でも、私の声は届かない。私の姿は、ふたりには見えない。

久しぶりに帰ってきたこの家で、ちょっと悪戯心を出したのは私。
ふたりの『記念撮影』に、割り込んでみたのはいいけれど……

……でも、まさか心霊写真と勘違いされるなんて。……ひどいわ、二人とも。


「……あれ?」
先に何かに気づいたのは、こなた。
「ん?どした?」
急に素に戻ったこなたに、毒気を抜かれたような、そう君の顔。
「今、なんか聞こえなかった?」

「!! ま、まさかポルターガイスト?ラップ音っ!?……
 こなたっ!お祓いだっ!柊さんとこに電話電話!!」

……まったく、このニブチンさんは、もうっ!

「!また何か聞こえた……こっちかな?」
視線を巡らせるこなた……と、ばっちり目があった。

―え、えっと……こなたー、見えるー?

思いっきり引きつった笑顔で、一生懸命手を振ってみせる。
こっちも存在がかかってるから、もう必死。

「…………じーーーっ」

少し目を細めて、私の顔をのぞき込む。


―こなたの頭のてっぺんで、一房だけはねた髪が、ぴん、と立ち上がった。
どっかの妖怪少年ですか、あなたは。

訝しむようなこなたの表情が、猫みたいなかわいらしい笑顔に変わる。
そして……にんまりとした笑顔を浮かべて言った。

「おかーさん……そんなトコで何してんの~?」

って。



「な、なんだと?こなた、お前、見えるのか?かなたがそこに居るのか?」
そう君もこっちを必死で凝視しだす。

……やった!!気づいてもらえた!!

笑顔のままこなたが振り返る。
「なぁーんてね。んな、見える訳ないじゃん……んじゃ、ゲーム途中だし、おとうさんじゃね」

そう君がぽかーんとした顔を引き攣らせながら
「なんだよ、期待させやがって…」

やれやれといった表情でこなたが部屋から出て行こうとする。

……はぁ、そうよね、普通の人には見えないわよね…

「でもさぁ~おかぁさんさぁ~来てるのかもしれないよね、お父さん」
ドアに手をかけながらこなたが言う。
「今日、お盆なわけだしさ。帰ってきててもおかしくはないんだよねぇ~」


……大当たりよ、こなた、おかあさんはここにいますよ~

「…そうだな。もしかすると、この心霊写真に映ってるの、かなたかもしれないなぁ」

……やった!!さすがそう君、そうよ、その通り。だから消したりしないでぇ~

「そうだ、こなた、デジカメだからこんな風にしか映らないのかもしれないぞ。ちょっとまってろ
銀塩写真ならもしかしたらもっとはっきり写ってかなたかどうか判るかもしれないぞ」

と、言うが早いか、そう君は自分の部屋に戻っていった。




やれやれという表情のまま、そこで待っているこなたと2人きりになった。

時計の針だけが音を刻む。。。


「……ねぇ、おかぁさん、ほんとにそこに居るの?もし居るなら、聞いてて欲しいんだけどさ、
あたしもお父さんも大丈夫だよ、うん、元気にくらしてる。
『お母さんがいなくて寂しくないか?』ってたまに聞かれるけど、うん、大丈夫、お父さんもゆーちゃんもいるし。
友達もいるし…寂しくはないよ。でも……やっぱ寂しいかな?みんなには内緒だよ?変な心配かけちゃうとまずいしさ」

……こなた、ありがとう。そう君、こなたはいい子に育ってるわ。
かなたの目から涙が流れる。

「あ、そうそう、ゆーちゃんとかあたしの友達こととか良く知らないよね?えーとねぇ…」
見えない、居ないはずのかなたに向かって一人しゃべりだすこなた。
かなたはじっと聞きいっている。


と、そこへそう君がカメラと三脚を手に戻ってきた。
「ん?なんだ?こなた、誰と話してるんだ?」

「あぁ、いやいや、ちょいとそこにいるかもしれないおかぁさんにさ、ゆーちゃんのこととかかがみん達のこととかさ
いろいろ、教えてたんだよ」

笑顔でカメラをセットしながら
「そうか」
と答えるそう君。

「さて、セット完了っと。撮るぞこなた」

……あれ、そう君、そのカメラは…


「お父さん、またえらく古いカメラだね」
三脚にセットされたカメラを見たこなたの感想。
「ん~?こいつか?これはな、かなたとのデートのときに良く使ってたやつなんだ。
かなたでも写真が撮れるように操作がシンプルかつ荷物にならないようにな」
「そうなんだ。想い出の品ってところですか」
……そう君まだ、持ってたのね。その懐かしいカメラ。当時のことは今でも鮮明に覚えてますよ。

「これっておかぁさんも使ってたの?」
「あぁ、もちろんだとも。アルバムの風景写真なんかはかなたが撮ったのが多いんじゃないかな?」
カメラを見まわし、あちこちいじるこなた。
(ってことは、おかぁさんもさわってたんだよね。)

こなたは声には出してないはずなのだが、かなたには聞こえていた。
……ええ、そうよ。あちこちつれまわされたから、結構撮ったわね。

こなたには聞こえないと判っていても、つい答えてしまう。

一方通行な会話が少し寂しい。
でも、声が聞けて、成長した姿を見ることが出来ただけでもうれしいので、そのくらいの事なんて…

「だろうね。おとうさんが撮るとしたら、おかぁさんか小さな女の子だろうし、風景なんて撮るわけがないよね」
「ちょっ、こなた、そりゃぁあ~あんまりなんじゃないか?」

……娘にそんなことを言われるなんて、そう君、そういう所は今も変わってないわけですか。
あとで、キツーく言わなければだめですね。これは。このままではこなたが不良になってしまいます。

もちろん、会話ができればなんですけど……

と、そう君がカメラに近づき、カメラをいじりだす。
セルフタイマーをセットしにいったようで
「おし、こなた、写真撮るぞ」
「あ~はいはいっと」
……では、わたしも、失礼してっと。
そう君とこなた後ろ側に移動する。


カシャッ

シャッターが降りる。
「さぁて、上手く映ってるかどうか」
「でもさ、おとうさん、おかぁさんじゃなくて、全然普通の心霊写真だったら…」

「なっ、そ、そんときゃ、柊さんにお祓いしてもらうに決まってんだろ」






……こんどこそちゃんと映ってるといいんだけど…
「よし、さっそく現像してくらぁ」
「おとうさん、しっかり頼むよ」
「おぅ、まかせてくれ」
2人がこの部屋からそれぞれ立ち去ろうとする。

……そういえば、この遺影の写真っていつの時のだったかしら?…

すっと、自らの遺影に手を伸ばすかなた。
かなたの手の先に何かがふれた感覚が走り…

ぱたっ!!

写真立てが倒れてしまった。
……あらあら、さわれちゃうなんて、
あわてて、戻そうと写真立てをつかもうとするが、手は写真立てをすり抜けてしまい空をつかむのみ。
……さわれたはずなのに、戻せないわ。どうしま……
視線が気になり、はっと振り返ると、顔を引き攣らせて青ざめる二人の姿があった。

「ちょっ、お、お、おとうさん!?おかあさんの写真が倒れたんですけど…」
「あ、あぁ…だな…こなた、そんな不謹慎ないたずらはだな……」
「いやいや、勝手に倒れたんだってば、てか、この距離じゃ無理でしょ…」

………嗚呼、どうしましょう。そんなつもりは無かったんだけれど、驚かせてしまったわ…

「お、おとうさん、おかあさん怒ってるんじゃないの?」

……怒ってない、怒ってないって

ぶんぶん手を振って否定するかなた。しかし、悲しいかな、その姿は見る事ができない。

「えぇぇ!?そんな、なんかしたかぁ俺?」
「ギャルゲーしたり、エロゲーしたり、カメラ持って小さな女の子追っかけたり…思い当たる節いっぱいあるじゃん」
「ちょっ、まっ、それは昔からだし…いや、まぁ、ロリコンの方は加速したかもしれないが…」

……え!?加速って、そう君それはどういう意味ですか?とにかく、人としての道だけは踏み外さないでください(泣


「………も、もしかして、こなたのことについて、かなぁ……」
「へっ?あたし?」
「あ~いや、なに。かなたはな、こなたには普通であって欲しかったんだが…その…俺の影響をもろにうけてだな…」
「・っ、確かにあたしはオタクではありますが…」
……オタクまでは、まぁ百歩譲っていいとしてですね、なんで、こなたがエロゲーなんかをしてるんですか(怒
しかも、それを注意するどころか、父娘そろってやってるっていうのはいったいどういうことなんですか(怒怒


そう君が突然、正座をしだす。そして、位牌に向かって深々と頭を下げる。

「べつに、こなたをオタクにしようとかなんて思ってた訳じゃなかったんだ。」




「ただ、こう、なんていうか言い訳になっちまうんだけど、こなたが保育園に行く頃になると、
一人でいる時間も多くなってな、寂しさに負けてというか、歯止めが効かなくなってというか…
初めはこなたがいない間だけにするつもりだったんだが、だんだんとだな、その、隣にいても
気にしなくなってきて、気がついたら、こなたが一人でも楽しんでたっつーか…」

「それにな、娘が、自分が好きなのに対して興味持ってくれるというか好きになってくれるのは悪い気はしないし、
ゲームに関しても、俺とは違ってゲームとして純粋に楽しんでるみたいだしな。親子で共通の趣味だと話題に事
欠かないし、家族間フ会話すらない世間一般の家庭よか全然環境はいいぞ。それに、こなたはいい子に育ったぞ
片親だからってスネたりグレたりまったくないからな。お前が望んだ普通とはちょっと違うかもしれんが…」

……アニメや普通のゲームはまぁ判ります、こなたがいい子なのも。でもね、成人向けゲームはいけません(怒怒怒
……少なくとも、父娘そろってやるものでは決してありません(怒怒怒怒

「おとうさん、土下座してるとこ悪いんだけど、それ、言い訳になってなくない?」

「そ、そうだな、ははは。」
頭をあげて、苦笑いで振り向く。
「おかあさん、そんなに怒んなくても大丈夫だよ。あたしは、おとうさんと違って普段は普通にしてるからさ」

「うぉーい、それじゃまるでお父さんが普段から普通じゃ無いみたいじゃないか」
「普段から怪しさ全開じゃん、おとうさんって」
「あいかわらずキッツイなぁ~」

……はぁ…こなたが普通人の感覚も持ち合わせているみたいでよかったわ…


「さて、ちょっくら、現像してくるか」
立ち上がり、遺影の写真立てを立て直すとカメラをもって部屋に戻っていくそう君。

「おかあさん、あたしがオタクになっちゃっていろいろ心配かけちゃってると思うけど、でも大丈夫だよ。
おとうさんと違ってふつーの一般人としてもやっていけるからさ。じゃ~ねぇ~おかあさん。あたしも部屋に戻るよ」

こなたが部屋から出て行く







……親の背中みて育つとは言いますけど、ここまで染まってしまうなんて
……お母さんがいなかったせいで、こなた、ごめんなさい。お母さんがいてあげればこんなことには…
……嗚呼、やっぱりお母さんこれからのあなたが心配です

こなたの部屋へすーと移動していくかなた。

……娘の部屋に勝手に入るのはイケナイかと思いますが、許可の取りようも無いですしね

と自分に言い聞かせつつ、こなたの部屋のなかに入るかなた。


…………………!!

しばし、絶句するかなた。

……こ、これは。女の子の部屋というより、そう君の部屋って感よじねぇ…はぁ…。
ちょうど、モニターの中でエロゲーの卑猥なシーンが始まっていた。
「やっと、たどりつけだよ。難易度高いね、この子。おとうさんが苦戦するわけだ。普通わからないよこりゃ」

……きゃーーーーーーー!!なんてものを見てるの、こなた!!
……お願い、やめて、そんなのやらないでーーーー!!!!
こなたの背後に行き、後ろから抱きしめたり手を止めようとするが、ことごとくすり抜けてしまうかなた。
……むぅ~~実体がないのが、どうにも歯がゆいですね…
「むぅ~~なんか、背筋がぞくぞくするような、圧迫されるような、なんだこの感じ。風邪かな?
なんか、もう今日はエロゲって気分じゃないな。さっきの心霊写真のこととか、かがみに電話してみるか」

ゲームを終了させ、電話をかけるこなた。

……ふぅ~何となく通じたのかしら。そういう鋭いとこというか霊感というか、そういうのは私に似てくれたのですね


「おーーーすっかがみん、実はさっきね、心霊写真が撮れてね……いや、本当に。でね………」

……友達との会話を聞いてる限りでは、普通の女の子ね。よかったわ。

「……うん、あした、予定無いならうち来なよ。……あ、いや、お祓いとかはまだ判んないしそれはまだいいよ
………あ、うん、じゃ、また明日ねぇ、ばいびー」

……お祓いだけはやめて(涙 お願い(泣






「はぁ~、なんか、もう、今日はなにもやる気がしないよ…あの白い人影は、本当におかあさんなのかねぇ~
なんだったんだろう。……おかあさんかぁ…今となってはねぇ、別に寂しいとかそんなにないけどさぁ~
確かに、小学校入った頃とかは、すんごく寂しかったし、なんでいないんだろうとか思ったこともあったけど
それ言うとおとうさんが困りそうだし、聞けなかったからなぁ~」

……ごめんなさい。本当にごめんなさい。母親として最低ですね。娘をほったらかして死んじゃうなんて

「…あぁそういや小学校行く前、保育園の時かなぁ、一度、問いつめたんだっけ。おかあさんどこ?って。
死んだって意味が良くわからなくて、おとうさん困らせたっけ。」

……こなた、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………

気がつけば、こなたの手を握る状態でかなたがこなたのベッドの隣にいる。
こなたの握られた手は見えない、決して気づかれない、かなたの涙で濡れている。

……あたしだってこなたと一緒にいたかった、なのに、なんでなんでなんでなんで…
神様の意地悪!!こなた、こなた、こなた、そこにいるのに会話する事さえかなわない…


「うーーーん、ぞくぞくするなぁ、やばいなぁ、また夏風邪かなぁ。夏コミがすぐなのに…」
「うーーんでも、おかあさんかぁ…あって話とかしたいけどね…出来る訳がないよね…」
……夏コミというのが気になるけど、お母さんもお話ししたいわ。うーーんどうすれば…

「おーーい、こなたぁーーー、ちょっとこーーーい」
そう君の声が響く。

「…おっ、できたのかな?」
……出来たみたいね。なんか、声がはずんでますね。これは、ちゃんと映ってたってことかしら。


「おっ、こなた、写真できたぞ。ほれっ」
にやにやしっぱなしのそう君。やった、成功?

「お、おおおおおおおっ!!おとうさんこ、これは…」




「うっすらとしか映ってないけど、それは仕方ないんじゃないかな?」
「いやいやおとうさん、問題点はそこじゃないよ」

こなたが写真を持ってぷるぷる震えている。

「おかあさん見切れてるじゃん!これじゃ本当におかあさんか、わかんないじゃん!!意味ないよこれ」
「そんなことはない!その服は間違いなく、かなただ!!ここにいたんだよ!!!!」
「…でもでも、これはないよ。」
「…あまりそう言うなよ、お父さんは映ってるだけでうれしいんだからさ」
「おとうさんはそうかもしれないけど、あたしとしちゃー…これはないよ、おかあさんなんで見切れてるのよ…」

がっくりとこなたは_| ̄|○のポーズをとっている…
その横でかなたも同じく_| ̄|○のポーズをしている………

……お母さんもショックです。

「でも、まぁ、おかあさん帰ってきてるのは確実なんだ…」

「…ふっふっふっ…」
こなたが不敵に笑い、立ち上がる。

「こうなったら、意地でも、きっちり映って貰おうじゃないか」
そう君の方に振り返り
「よし!おとうさん、も1回撮ろうよ写真」

「おし!そいじゃぁ、早速準備だ!お父さんカメラ取ってくるよ」





再び三脚にカメラがセットされ、二人がカメラのまえに陣取る。
今度は二人の間が、明確に開いている。三人目がそこに入ると言わんばかりに。
「おかあさん、ちゃんとここに座んなきゃ駄目だよ」
……はいはい、今度こそ、ちゃんと映りますよ。
「かなた…遅くなったけど、おかえり」
……そう君…ただいま。

三人がジーとカメラを見つめる

カシャッ

シャッターが降りる。
こなたが立ち上がりカメラの所へ歩いていく

「ちょっとおとうさん、そこに立って見てよ」
「ん~なんだ?…こうか?」
そう君が立ち上がる。

「おかあさんとのツーショット写真、いってみよう!」
「おっ!気が利くなぁ。うし」
腰に手を付けるそう君。
「…おとうさん、そのポーズなに?」
「んん?かなたと腕組むとこんな感じになるんだよ」
「あ、なーる」
……腕組なんて、久しぶりね、ふふっ♪

(隣におかあさんが居るとしたら、こんなもんかな?)
ファインダーをのぞきつつカメラの位置を調整する。
「そいじゃぁ、おとうさん、おかあさんいくよ。はいチーズ」

カシャッ

「よし、こなたもいっとこう、かなたとの写真」
「うん♪」

こなたとそう君が入れ替わり、さっきまでそう君がいたところにこなたがやってくる。
「さて、どんなポーズとろうかねぇ…」
「…いや、そのままでいいんじゃないかな?無理にへんなことする必要はないだろ?」
「…そだね。おあかさんとの初めての記念写真だしね」

そう君がファインダーをのぞく。
「脳内補正おk、こなたとかなたの構図はばっちりだ」
「うしっ、いくぞ!!はい、チーズッ!」

カシャッ






「そいじゃ、いそいで現像してくらぁ」
「いやいや、いそがなくていいから、しっかり頼むよ」

そう君が走って部屋に戻っていく。
「じゃね、おかあさん」
こなたも自分の部屋へと戻っていく。

……こんどは、きっと大丈夫だと思うけど……
……さて、そう君のとこにも行きたいけど、現像の邪魔しても悪いし、また、こなたのとこにいきますか…



部屋に戻り、ベッドに寝転がるこなた。
「…いや~~おかあさん、帰ってきてたんだねぇ~。明日かがみ達に話したらなんて言うのかねぇ~」
にやけっぱなしのこなた。
「あ!そうだ、もしかして…へへ、おかあさんそこらへんにいる?」
にやけ過ぎて溶けてしまいそうなこなた。

……いますよ~♪……って伝わらないのよね(涙

「いなくたっていいや。んとね、おかあさん、いいいーーーーーーーーーっぱい話したい事あったんだよ……」


今までの事、学校のこと、友達のこと、そう君のこと…
……うん…うんうん、そうなの…うん…
聞こえるはずのない相づちをうつかなた。その顔は満面の笑顔。


「………ん…でね………スーーースーーーーー」
しゃべり疲れたか、そのまま寝入ってしまうこなた。

……かわいい寝顔ね、ふふっ。
おでこにそっと手を伸ばすかなた。


「おーーーーい、こなた、できたぞーーーーー」
そう君の声が響く。

……こなたは起きる気配がないわね…
しばらくしてから、再びそう君の声がする

「おーーーーーい、こなたーーーー、寝ちまったかぁーーーー」

そう君がこっちに歩いてくる。

コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえる。
「入るぞ、こなた」
ガチャッ






そう君が入ってくる。

「なぁーんだ、来ないと思ったら、やっぱり寝ちまってたか…エアコンかけっぱで寝てると、風邪ひくぞ…」
「…しかし、かわいい寝顔してるな。かなたそっくりだ」
……性格はそう君に似たようですね(涙

エアコンを消し、こなたにタオルケットを掛け部屋の電気を消してそう君が部屋から出て行く。
「おやすみ、こなた」

ガチャ

……さぁてこなたも寝ちゃったし、そう君のところへ行きますか…

「……っとね、おかあさん……にひひ…む…で…う…かが…へへ……」

……はい!?
……って、寝言ですか…涙?…でもにやけた表情はそのまま…泣き笑いですか?どんな夢を…もしかして私の夢?
……お母さんいなくて悲しい想いをさせちゃったね、ごめんね…こなた、今晩はずーっとここにいるからね…
……ああ、もう…かわいい。くやしいわ。こんなにかわいい子を残して一人逝ってしまうなんて。
……そう君がうらやましい。

こなたの枕元に座り、あたまをなでるかなた。さわれないのが少し寂しい…

すーすーと寝息を立てるこなた。

……お話したい…ぎゅーっと抱きしめてあげたい……どうにかできないのかしら…
……夢枕って言うけど、どうやればいいのかしら…せっかくここまで来たんです、神様、教えてください…
握りしめた拳に力が入る。

「……うぅうぅ……」
……こ、こなた?
「……うぅぅぅっ…むぅぐぅ…うううっぅぅ…」
……あれ?今度はうなされてる……もしかして、原因はわたし?

こなたの枕元を離れドア付近まで移動してみる


「……うぅ……すーーーすーーーーーがぁーーッ!!だっだめ!!……すーーーー」
……たまたまなのかしら…というより、いったいどんなの夢を…

ふたたぶ、枕元に移動し、こなたのあたまの横にちょこんと座るかなた。
……こなた…お母さんね、心配だったの。お母さんいなくて非行に走ったりしないか…
……みんなにいじめられたりしないか…心配だったけど、上手くやってるみたいね…
こなたのあたまを優しくなでる…ことは出来ないが…それでもなで続けるかなた。

「……うううぅぅぅっ…くぅぅっ…むぅ…はぁはぁ……うううううぅぅぅぅ……」
……あ、れ?……やっぱり、うなされてる?…やっぱりそこら辺が敏感なのかしら。
……娘のそばにいる事が許されないなんて…娘を残して死んでしまった罰なのかしら…
……神様、お願いです。せめて娘のそばに一瞬でも居させてください。今でなくてもいいんです。いつか……





再び距離を取り、こなたから離れて部屋の天井の隅で、膝を抱えてちょうど体育座りの格好で
眠りにつくこなたを見下ろしているかなた…
……でも、元気に育ってくれたみたいで、よかった…

……どうして、わたしは死んでしまったのかしら…こんなにかわいい娘と愛しいそう君を遺して…
……どうして…

涙が、自然とあふれてくる。
手で、目を押さえても、押さえても止まらない。
「…ぁ…さん…」
……?
「…かぁ…さん…」
……?!
「…おかぁ…さ…ん…」
……こなた?!
顔を覆っていた手を降ろしこなたを見つめるかなた。
……また寝言?…あら?今度は泣いてるの?…

気がつくと、こなたの横に来ていた。

こなたの頭を再びなでるかなた。
直接なでることは出来ないと判っていても、やらずにはいられなかった。
うなされるようなことがあれば、また距離を取ればいいだけのこと。
せめて、そばに…

……?
すううぅっと、かなたは何かに引っ張られる感覚をかんじる。
……え?!
と、こなたの頭に置いた手がスッと入っていく感じがした。
……ええええええええ?!
そして、一気にこなたの頭の中へと吸い込まれていった。


気がつくと、暗闇のなかに一人浮かんでいるかなた。
……ここはどこなんでしょう?…
遠くの方で、小さな女の子の声が聞こえる。
母親を探しているような感じだ。

近寄ってみるかなた。

真っ暗だった周りの景色が急速にはっきりしだす。
……あれ?ここは…



「どこーーー?おかあさんはどこーーーー?どこにいるのーーー?おかぁぁさぁぁぁん!!」
4、5歳くらいだろうか?
母親を探すため、家中の扉という扉を開けながら泣き叫んでいる。

……さっき見てきた私たちの家の様子とも違うし、私がいた頃の様子とも違うけど間違いなく私たちの家だわ…
ということは、この母親を必死で探している小さな女の子は…
「こなた?」
……あれ?しゃべれた。

ちいさな女の子がこちらに振り向く。
「うわぁぁぁーーーーーん、おかぁぁぁーーーさぁぁぁん」
両手を前に突き出し、泣きながら走ってくる。
「あぁぁ、そんなに走ったら、ころ…」

ベシャッ

かなたがすべてを言い切る前に、前につんのめって転んでしまいそのまま顔から突っ込んでしまった。

むっくりと起き上がるが
「あああああああああ、あぐっあぐっああああああ」
その場に座りこんでしまい、泣きじゃくっている。

かなたが苦笑いを浮かべながら近づき、引き起こしてあげる。
「ああ、もう、ほら、そんなに走るから、転んじゃったじゃない…怪我は…ないようね」
「はい、鼻かんで…はい、ちーーん…あらあら、顔もべたべたね…涙もふいてっと…」

「…ヒック、ヒック…おかぁさん…」
「はいはい、なぁーに?」
やさしくこなたを抱きあげる。
力いっぱい、しがみつくこなた。
……こなた…あぁ…ずっとこうしていたいわ…もう離したくない…





「…んとね…ヒック…おかぁさん…ヒック…」
「なぁーーに?」
「…ヒック…おかあさん、いつもどこにいるの?なんで、いつもいないの?」
「あうっ(汗…」
……いきなりそこですか。そう君はなんて説明したのかしら…
「おとうさんは、おかあさんは空にいるって言ってるけど…空ってどこ?」
……んん、そっち系の説明をしましたか…まだ、死んだって言う意味が判らなかった…のかな…

こなたをぎゅーっと抱きしめていた腕に力が入る。
「えーとね、こなた。お母さんはね、もう、こなたが居るこの世界にはね、もう居ないの」
「………?」
……いきなりストレート過ぎましたか?理解できてないようですね…
「おかあさん、ここにいるよ?」
……うっ…確かに……

「うーーん、普段はね、こっちには居てあげられないの。でも、たまにはこうやって逢いにこれるのよ」
「………ほんとう?」
「だって、今こうして逢えてるじゃない」
「……そっか…ほんとだ…おかぁーーーさん…」
こなたもぎゅーっと腕に力をいれて抱きついてくる。
……こなた……
「おかぁーさん、今日はずーーっとこうしてていい?」
「ずーっとはさすがに無理だけど、できるだけ…ね?」
「ええーーー…そんなのやーー」
「お母さんだって、ずっとこうしてたいのよ?」
「じゃぁ、こうしてようよ」
……わたしも、こうしていたいんだけどね…
「んん~お母さん、いつまでもここにいられないの。だから、お別れしないといけないの」
「ええええーーーなんで?」
「なんでって言われても…お母さん、元いたところに戻らなきゃいけないし…ね?わがまま言わないで、ね?」
ちょっと抱きしめるのをやめ、こなたの顔を覗き込むかなた。
「うーーーーーー」
……そ、そんなかなしげな目をしないでちょうだい…別れにくくなるじゃないの…

……でも、そもそもお母さんが死んじゃわなければ、いつでもこうしてあげられたのよね…
再び、こなたを強く抱きしめる。

「…ごめんねこなた、お母さん遠いところにいっちゃって…そばにいられなくて…お母さんもできれば、
こなたのそばにいたい。ずーっとこうしていたい…だけどそれはできないの。お母さんを許して…」
……あぁ、駄目、ここで、泣いちゃ駄目……
「……こな…た………」
一度、出てしまった涙はもはや、止めようが無く…こなたを抱いている肩が小刻みに震えている…

「…おかぁさん?泣いてるの?」






「おかぁさん、どこか痛いの?ケガしてるの?」
「えっ…あっ大丈夫よ?…どこも怪我なんてしてないわよ?」
と言いつつ、涙がなかなか止まらないのも事実。
……心配させちゃったかな?…
「うーんとね、おとうさんがね、ケガしてないのに泣いてる人は、心にケガしてて痛いからだって…
おかぁさんも、心にケガしちゃって痛いの?」
……そう君ってば…また上手いこと言うわね…
「…そうね、こなたに逢えなくて寂しくて、心が痛かったかな…」
「おとうさんもね、たまに心にケガして泣いてるんだよ。でもね、わたしがねギューっとしてあげると
なおっちゃうんだよ。だから、おかあさんにもギューっしてなおしてあげる」
……そうよね…こなただけじゃなくそう君にもいっぱい悲しい想いをさせっちゃったわね…

「おかぁぁさぁぁん、えい!!」
こなたがぎゅーっと抱きついてくる…さっきと構図が変わらないのは内緒…

「…ありがとう、こなた…こなたは優しくて、いい子ね。なんだか元気がでてきたわ」
「へへへ…おとうさん好きだけど、おかあさんは大好きだよ…」
「ありがとう…そ…お父さんの言う事をちゃんと聞いていい子でいるのよ?そしたらまた逢いに来れるから…」
「ほんとう?わたし、いいこにしてる。だからまた来てね」
「……うん…きっと…」
……結局、逢いに来るまでに長い時間が掛かってしまいましたが…
「…き…っと…だ……よ…ま…てる…スーーークーーーー」
……あら?寝ちゃいましたか。ゆいちゃんといいこの位の子って電池切れる直前まで普通に動けるのがすごいわね…

……でも変ね?ここはこなたの夢の中だから、こなたが寝付いたら終わりそうなものなんだけど…

……まぁ、せっかくなんだし細かいことは置いといて、時間がくるまでこうしてますか…

こなたをだっこして居間のソファーへと移動するかなた。

…………………んん…こな…た……
こなたをだっこしたままいつの間にか、かなたも眠りに落ちていた。





「……ぁさん」
「…かぁさん…」
……ん?…
「おかぁーさん!!」
「…はい!?」
「ただいま、お母さん。んなところで寝てたら風邪引いちゃうよ?」
「おかえりなさい、こなた。ふふふっ、気持ちよくてつい、ね」

……黄色い帽子かぶってるところを見ると今度は小学生の頃の夢なんでしょうか。布団を干して取り込んで
そのまま取り込んだ布団の上で寝てしまった状態のようです、わたし…

……うーん、今と変わらないくらい大きいけど、今いくつなのかしら?胸の名札を確認すると…6年3組…12歳…
「…?なに?お母さん?じーとこっち見て」
「えーとね、こなたもずいぶん大きくなったわねぇって」
「…へへへへ、お父さんが大きいもんね。まだまだ伸びるよ」
……私と同じ歴史をたどるなんて、残酷な事は言えないわね…当時のこなたが知る由もないし…


「えい!!」
ばふんっ!!
こなたが取り込んだ布団達に倒れ込む。
「ん~~~干したての布団ってやっぱり気持ちがいいね、お母さん♪…そうだ、夕食の準備までまだ時間あるし
少しお昼寝しようよ?学校のプールで少し疲れちゃったし…たまにゃーお母さんとごろごろとしたいし」
ちらっと時計を見る。まだ昼の2時を過ぎたばかりだ。
「それじゃー4時くらいまで一緒にお昼寝しましょうか?」
「いやったー、それじゃぁ、布団をひいてっと…」
こなたが手際よく布団をひいていく。
「それじゃぁ、お母さん先に失礼してっと…ふかふかで…お日様の匂いがするような感じね…」
「そいじゃ、わたしは、お母さんのとなりっと…お日様の匂いかぁ…ふふ、今日はお母さんの匂いもする~♪」
こなたを腕枕をするような状態で寝ているかなた。もう片方の手はこなたにしっかりと握られている。
「…へへ、おかーーさん♪」
ごろんっと身体を半回転させ、かなたの胸に顔をうずめる。





「お母さん、ありがとう。また来てくれたんだね。わたしね、ずーーっと待ってたんだよ。」
「へ?」
「…いやだなぁ、お母さん。いい子にしてたらまた逢いに来れるって、わたしが小さい頃言ってたじゃん」
「…ああ!でもそれは、さっき言ったことのような…」
……さっきの小さい頃の夢と続いてるってことでしょうか?
「お母さんにとっては今さっきのことなのかもしれないけど、わたしにとっては長い長い時間が経ってるんだよ?」
……ここは、こなたの夢の中の世界よ、ね?もしかして、過去の現実世界に戻ってる?あれれ???
「小さい頃のときは夢だったのかなぁとか思ってたけど、やっぱり夢じゃ無かったんだね」
……夢だろうが、過去の現実世界だろうが…そんなことはどうでもいいことなのかもしれませんね…

……今こうしてこなたを感じる事が出来、話すことが出来る…それだけでも十分…
「たとえ、夢でもいいの。お母さんはこなたと一緒にいる事が出来るだけで、もう十分、しあわせ…」
顔をわたしに向けて、小さくガッツポーズを取りながら
「お母さん、大丈夫、夢じゃないから。現実だから!!」
……その自信はいったいどこから?…
再び、胸に顔をうずめるこなた
「お母さんがもう死んでていないの、わかってるし…」
……!!!!…
「…もう、お母さんどこ?とかお父さん困らしたりしないし、大丈夫だよ大丈夫…だから…」
「…!!こなた!」
「おーーーーっと、すとっぷ。お母さん、ここで涙の再会は駄目だよ」
「…え?」
「わたしはずーーーっと待ってたんだよ。泣き顔のお母さんじゃなくて笑顔のお母さんを」
「…ご、ごめんね。こなた。でも、でも…ごめん、だめ…」
こなたを抱きしめる力が強くなる
「お母さん、苦しいよ…力抜いて…お願い…泣かないで…ちっとも悲しくないのに、悲しくなるじゃん…」
「…こなた、お母さんもね、ずっと逢いたかった。そばに…むぐぅーーー」
こなたがかなたの口を手できゅーっとつまむ
抱きしめる力が一時的にゆるくなり顔を持ち上げ私の方を見つめる。
「お母さん、だめ!!」
溢れ出しそうな涙をいっぱいに溜めて、顔をかなたの方にあげてこなたが言う…
「…こなた…」
「お母さん、ほら、笑って笑って」
……そ、そうね、こなたの言う通りなんだけど…
「おかぁぁぁさぁん。ほら、笑顔だよ?」
……こなたの笑顔…素敵な笑顔ね…お母さんもがんばらないとね…
「そうね…せっかくなんだしね」
「そうそう、ほら、涙をふいてふいて…」
おもむろにポケットからハンカチをとりだし私に渡すこなた。
「はいはい…こなたもね、はい」
「…わたしは泣いてないもん!!」
「あら、まぁ…クスッ…そうなの?」
こなたから差し出されたハンカチを使い、涙をぬぐい、こなたの目もぬぐってあげるかなた。
「い、いやだから、わたしは………」
「はい、ありがとう。こなた」






「うん…どういたしまして…おかあさん…」
しばらくそのまま抱き合った格好で時が過ぎる…
「お母さん、暖かいね…」
「…こなたもね…」

「さぁて、お母さんを十分堪能しないと…へへへ…おかぁーーさぁぁぁん…えーーい」
ぎゅーーーっと抱きついてくるこなた。
……堪能…なんか小学生が使うような言葉じゃないような気が…
「…くーーーーーーー」
……え、もう!!…のびた君並みですね(笑

……わたしもいい感じに眠気が…一緒に眠ることにしますか…もしかすると、この続きがあって
目が覚めると二人で夕食とか造る事になるとか、そしてそう君といっしょに晩ご飯とか……
……はて?そういえば、そう君がさっきからいないみたいですが…?

……これは、そう君が出かけていて家にいない、寂しい時の夢だったのかしら…

……うーーん、眠くて意識が……

…………………


気がつくとこなたの部屋で、暗闇の中こなたが寝息を立てている。その枕元にちょこんと座って、
こなたの手と頭にかなたの手が置かれてる状態であった。
……むーー残念…続きは無しでしたか…というか、やっぱり夢だった訳ですね…
……でも、夢の割にはなんか妙にリアルな感覚だったのですが…

……こなたの涙は止まったようですね…
……普段はあのまま、私が見つからず泣いたまま終わる夢なんでしょうか…
……それとも、今日たまたまなのかしら?…

ぼうーーっとそのままの姿勢で、そんなことを考えているかなた。


「…んぐっ…む、むふぅ…ううう……」
……うーーん、またうなされ始めてしまいましたか…
再び距離を取るべくすーっと浮き上がるかなた…と、手を掴まれてしまい移動が止まってしまう。
……え?
よく見ると、こなたがかなたの手を掴んでいた。
……そ、そんな、え?今もまだ、こなたの夢の続きなの?
と、すーーっと上空に離脱できてしまった。こなたの手は握る手が無くなってしまいぐーになっている。
じーーっと自分の手を見つめるかなた。
……今、確かに、掴まれた…暖かかった手…あの夢の中と同じ暖かい…

再び、こなたの部屋の片隅で膝をかかえながらこなたを見守るかなた…

……なにが夢で、なにが現実か、もうよくわからなくなってしまったけど…


……わたし、来れてよかった…願わくばずーっといたいけど…それはきっと…



















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  • 良い感じの、ストーリーてすね! -- チャムチロ (2012-09-30 16:21:26)

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