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続 ここにある彼方(2)

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匿名ユーザー

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「……あちぃ……あれ?今何時?…つーか、いつ寝たんだろ…??…」
……やっとお目覚めですか。もう10時すぎてますよ。
「んん~と…まだ10時か…もう少し寝てたい気もするがあつくて寝てらんないし、起きとくか…」
……'まだ'って…
「しかし今日の夢はなんだったんだ?途中までたまに見る嫌な夢だったような…うーーーーん
でも突然いいかんじな夢になったような…んんんん~でも、嫌な夢っていつもどんなんだっけか?
いまいち覚えてないしなぁ~。あ~れ~?…ま、いいか…あ、いい匂い…」
……覚えてないんですか?(涙……まぁ世の中そんなものですかねぇ…

リビングへとふらふらと向かうこなた。

「…おはよう、お父さん…」
「おはよう、こなた」
「あれ…お父さん目あかいよ?また寝てないの?締め切りまだ余裕あるんじゃなかった?」
「ん?まぁな。ちょいと、いまいち寝付けなくてな、ははは」
「ふーーーん、お父さん、あんま無理しちゃだめだよ?」
ーーーごめんねお父さん、私はよーーーーく寝れたよ。
「ああ、そうだな、気をつけないとな」

半分眠ってるようなこなたが席につき、そう君が朝食を持ってくる。
「…ふおっ!?なんか気合い入ったご飯だね…」
「…時間あったからな…つい…」
「いただきまーーす…」
……んーーおいしそうですね、私もできればいただきたいものです…




「ごちそうさま~」
「おう…で、昨夜の写真なんだがな……こなた、眠気冷ましにほら」

と、そう君の手に3枚の写真が広げられる。
手渡された写真を見て…
「そういえば、昨日写真撮ったねって…………おおおおお!!!!!」

「こ、これは!!!!ちゃんと映ってるじゃん!!!!!」

「お母さん…やっぱり帰ってきてたんだね…」

まるで刻が止まったかのように写真に見入るこなた…
……なんか、照れますね…そんなに見入られると…もしかして、そう君、寝付かなかったのはこれのせい?



「お父さん、このお母さんと私のツーショットのやつ、定期入れサイズにしたやつも焼き増しして」
「え?お父さんも映ってるのはいいのか?」
「そっちはいい、お父さんとのは別にいいから」
「がーーーーーーーーん」

「嗚呼ぁ…かなた、こなたが冷たい子になってしまったよ(泣…」
「あーはいはい、冷たい子ですよ、あたしゃー。っていうかお父さんとの写真は腐るほどあるんだからいいじゃん」

……クスクスッ、そう君ってば…こなたは優しい子ですよー…

再び、写真を見てフリーズするこなた。

ーーーあれ?この写真の格好のお母さん、どっかで見たな。アルバム?いや、違うな、最近だよーーー
ーーー最近?え?どうしたよ私…アルバムでは見たことあるけど違うんだよなぁ…むぅー思い出せないーーー






「こなた?どうした?」
「……ん?ああ、いやね、まぁ私も考えるとこが…つーかさ、昨日今日明日とお盆な訳だけだから明日まで居る、
って考えてもいいのかなぁ…どうにかして直に逢えないものかねぇ…」

「そうだなぁ…お父さんも逢いたいもんだが…写真だけでも十分、奇跡なんだし、贅沢を言っちゃー…」
「そうだね…でもさ…せっかく来たんだからさ…ねぇ…」
……せっかく来たんですから、それはもちろんなんですが…でも、どうすればいいのやら(泣


部屋に戻り、写真を見てひたすらニヤつくこなた。
「へへへ、お母さんかぁ…へへへ…」

ピンポーーン

「おっ?かがみ達が来たかな?」


「おーーーい。こなたぁーー柊さんたちが来たぞー」
「はーーーーい」

ぱたぱた…玄関まで走っていくこなた。

「おいーーーーっす。かがみ&つかさ」
「おはようこなた」
「おはよう、こなちゃん」


「なーーんかいい事でもあった?」
「え?なんで?」
「あんた、いいことあった時特有の顔してるからさ…」
「うおっ(汗…わかっちゃいますか…さすが、かがみ」
「まぁーね」
「こなちゃん、心霊写真が撮れちゃったって本当?だから?」
「…おいおい、心霊写真でうれしいってどんなんだよ」
「…んーーーまぁ心霊写真っちゃー心霊写真なんだけど、お祓いの必要はないかなぁーてレベルかなぁー」
「なんじゃ、そりゃ?意味判らんぞ」
「おとうさんがねー、本当に心霊写真だったらちゃんと供養しないとって言ってたけど…」
「いやーそれがね、本当に大丈夫なんだって。絶対祟ったりしない、心霊写真!!」
「はぁーーーー?ますます意味判らんぞ。ただ単に撮影ミスでしたーってやつか?」
「ふっふっふっ、違うんだな、かがみ。まぁ、見てのおたのしみ~」
「なぁーにもったいつけてんだか…」





わいのわいのと、自分の部屋へと移動していくこなたたち。
……あの子たちが昨日話してくれた、かがみちゃんとつかさちゃんね。そう君ってばそんなに目を輝かせて…全く…



こなたの部屋に3人が入る。
……私も失礼してっと…
「そいじゃーさっそくだけど昨日言ってた写真を見せてもらいましょうか」
「まぁまぁ、そう慌てなさんなと…」
「はぁ?まったく…」
「かがみ達ってさ、霊感とかある?」
「「へ?」」
「なによ、出し抜けに」
「いやー巫女さんだしさ、なんかそういう能力をもってそうじゃん」
「いや、巫女なのは臨時だし、お母さんやお姉ちゃんたちはともかく…つかさはどう?」
「うーーーん、わたしはどうなんだろう?よくわからないなぁ、多分無いと思うよ。今まで見た事ないし」
「そうよね、あんたが見ちゃったら、まず、家中大騒ぎになるだろうし。」
「お、お姉ちゃん(汗…」
「やはり、そうは都合良くいかないか…もしかしたら、すぐそこに幽霊がいるかもしれないというのに…」
「んなもん…いたとしても、こんな昼間っから出る訳ないでしょうに」
……確かにそうかと思いますが…ここにいるわたしって…
「かがみはさぁ…もうちょっとそういうの信じてもいいんじゃないかなぁ…巫女なんだし…」
「ちょっ…だから、巫女じゃないっつーに。それにまるっきり信じてないって訳じゃ無いんだし」
「で。さっそく心霊写真とやらを見ようじゃないのよ」
「ふふふ、まったくせっかちさんだね。かがみは。じゃ、飲み物持ってきがてら持ってくるよ」
「せっかちって、今日は何しをにきたと思ってんだか…」
「あ、こなちゃん、ちょっとトイレ借りるね」
「どぞー」
部屋から、こなたとつかさが出て行く。

……かがみちゃん、よね?たしか。いつも、こなたがお世話になっています。これからもよろしくね。
ふいっとかがみがかなたの方を振り向く。
「…?…」(なにかしら…ちょっと気になっちゃったけど…なんにもないわよね?…)
……気がついた?…わけじゃ無いようね…気がつかれなくて良かったような、がっかりなような…




「よいしょっと、大漁大漁…」
こなたがトレンチにジュースやコップ、お菓子などを満載して戻ってきた。
……これまた、すごい量ですね…3人でそんなに食べるつもりなんでしょうか?…
「あれ?つかさはまだトイレなの?長いなぁ、さては大のほうか?」
「あんたはまた、そんな小学生みたいな事を。外見同様、中身もまんま成長してないんかい」
「むぅ~~」
「まぁ~子供心や夢を無くしてしまったかがみよりかは、ましだけどね」
「な、なんでそうなるのよ!!」
……あらあら、なんか、楽しいそうね…つかさちゃんはどうしたのかしら?ちょっと見に行ってみますか…
すーっとドアの外に移動していくかなた。

……と、すぐそこまで来ていましたか…
携帯をいじりながらこちらにふらふらとゆっくり歩いてくるつかさ。
「……し て い ま す 。っと、ふう。」
……携帯の扱いに不慣れなのかな?それに時間がかかっていたんですね。

ふと、つかさとかなたの目が合う。
……あ、つかさちゃん、いつもこなたがお世話になってます、これからもよろしくね。
軽く会釈をするかなた。
「…あ、こんにちは、おじゃましてます、おばさん」
つかさも会釈を返して、メールの返事が気になるのか、ふたたび携帯に目を落とす。

あまりにも何気なく、普通に会話が終了する。
……??あら????…
……つかさちゃんには見えてたってことよねぇ…というか、驚かないんですか?なんか平然としてるんですけど…

つかさの前まで移動し、再び声をかけてみる。
……つかさちゃん?…

しかし、今度は気づかないのか、携帯に目をやったまま、歩き続け、かなたの身体をすり抜けてしまった。

……うーーーん、どうすれば認識してもらえるのやら…





結局、気がつかれないまま、こなたの部屋へと戻ってきた。
「つかさ、ずいぶんと長かったね。でかい方?」
「へ?ああああ、そ、そ、そうじゃなくて、ちょっとメールしながら戻ってきてたから、時間かかっちゃって…」
「ふーーーーーーん」
いじわるそうな目でつかさを見つめるこなた。
「ほ、ほんとだよ~ゆきちゃんにメール送ってたんだよ~(汗」
「まぁまぁ、冗談だって。どっちでもいいことだし」
「あうーーーー、こなちゃんひどい~」
……どこの小学生ですか、まったく…幼いのは外見だけにして欲しいものです…
「はぁ~、まったくあんたたちは…で、こなた、写真は?」
「じゃーーーん」
「「え?」」

と出されたのは小さなカード。
「デジカメのデータかよ。早く、再生しなさいよ」
「へーへー、少々おまちを…」
パソコンに取り込み、ちゃちゃっと開いていく。
「そいじゃ、じゃーーーーん。フルスクリーンでどぞーーーー」
「「うわっ!!!」」





「お、お姉ちゃん…こ、これって…」
モニターから逃れるようにかがみの背中に隠れてしまったつかさ。早くも涙目である。
「こ、これって、編集も細工、なにもしてない画像よね?」
「そだよ」
にやにやしながらこなたが答える。
「もろ、心霊写真じゃない。これ。とっととお祓いしないとまずいんじゃないの?これ」

「いやー、私たちもね、初めはそう思ったんだけどね…」
「いやいや、そう思うもなにも、もろですからこれ」
「そう突っ込みたく気持ちはいよーーーくわかるよ、でもね、昨日ってお盆じゃんって…
だからさ、もしかしたら、お母さんが戻ってきてて、それで映ったんじゃないかって思ってさ」

「!!」
かがみの表情が微妙に変化する、が、こわばってはいるが…
「いや、言いたい事は、わかるんだが…これじゃぁ、判別つかないでしょ。白い人型のもやだよ?これ」

「そう!そうなんだよ。そこでお父さんがね、デジタルじゃない、フィルムのほうの写真ならどうだ?
ということでね…撮った2枚目がこれなのだ」
ほいっ!とかがみに渡されたそれは…
「……へ~…す、すごいわね、半透明だけどきっちり映ってるわね…でも、肝心の顔が…」
「そう、見切れているのだよ!!」
「…なんて中途半端な…」
「だけど、めげちゃーいけないのだよ、かがみん。我々は諦めなかったのだよ。そしてこれ」
3枚目を手渡すこなた。
今度は、腰に両手を当てて、胸を張っている。





「………」
言葉を失うかがみ。しかし、つかさは相変わらずかがみの背中で全てを拒絶している。
「………つかさもほら…見てみて…大丈夫…怖くないから…」
かがみが背中のつかさに向けて言う。
その言葉を受けて、つかさが、顔を覆った手の指の隙間から、そろーっと写真を見る。
「……わぁ…まるでこなちゃんが二人居るみたい…」
「……ほんと…まるで双子じゃない…私たちより似てるんじゃない?」
「ふふん♪」
得意満面で鼻がかなり伸びそうな勢いである

「こなちゃん、よかったね…お母さん、来てたんだね…」
「そうね…なんか、神様って、本当にいるのかもね…」
二人とも、涙ぐんできている。
「神社の関係者が言う台詞じゃないんじゃないかなぁー」
「ま、また、あんたはー、人が感動してるときに、なんで水を差すかなぁ」
「まぁまぁ、そんなに湿っぽくなられてもさ…わたしとしちゃーうれしくてたまらないんだからさ」

「はぁー。まぁ、あんたがそういうのも判るし…なんにせよ、おめでとう?なのかな?」
「なんか、おめでとう、ともちょっと違う気がするけど、ありがとう、かがみ」

「つーかさ、あんた、感動して泣いた、とか、もしかして無いの?」
「え?どうだろう…あんまないかなぁ…うーーん、ここ数年は間違いなく無いね」
「うわっ…無感動人間か?あたしがあんたの立場だったら、多分この写真でも泣いてると思うぞ」
「…なにげに、ひどいことをさらりと言うねぇ…いやさ、わたしに涙は似合わないでしょ…」
「…それにさ、わたしが泣いてると、とっても悲しむ人が約1名うちにいるしさ。だからあんまり泣かないように
気をつけてた。そしたら…まぁ、今に至るというわけだよ、かがみん」
「ま、そういう事にしといてあげますか」
「ちょっ、なにそれ?いや、そうなんだってば」
「…でも、実体化したお母さんが目の前に現れたらどうなっちゃうか、わたし自身もわからないけどね」
「実体化か…死者が蘇るってなんだか怖い感じもするけど…こなた、逢えるといいね。お母さんに」
「…あーーん、かがみんってばなんのかんの言って優しいよね。だから好きだよ」
「ちょ、ば、バカ、そんなんじゃないってば…」
「まーた、そうやって照れてるかがみ萌え~」
「あーーもうーーー」








二人が会話している間、つかさはじーーっと写真を見つめていた。
(あれーーー?こなちゃんの写真のお母さん…どっかで…あれ?)

必死に、記憶の糸をたぐり寄せるつかさ。しかし、記憶の糸がつながらない…

「つかさ?あんた、どうしたの?そんなに必死に考えてるけど」
「んーー?んーー…なんでもない。この写真のお母さん、どっかでみたなぁ~どこだっけなぁ~って」
「それって、前に、うちに泊まりにきた時に見たアルバムかなんかじゃないの?同じ服着てるのあるし」
……さっきのことは、逆に思い出さない方がいいのかもしれませんね。かえって混乱を招くだけでしょうし…
「うーーーん…なんかそういうんじゃなかったような…」


「そういえばさぁ、こなた……」

大量のお菓子とジュースに3人の会話は普段の会話へと流れていく…

……こうして見てると、小さいだけで普通の女の子なのよね…そう君と違ってそこら辺は上手く切り替えというか
ちゃんとしてやっていけてるのね…こなたの言っていた通りね。それにいいお友達もいてお母さん少し安心…

かなたが目をつむりふわふわと壁のほうに流れていく。
……そろそろ、そう君のところにでも行ってみましょうか…
ふわふわとそのまま壁をすり抜けて…

ゴンッ!!!
ドスンッ!!!!!
「イタタタタ…」
かなたが壁にぶつかり、その拍子に床に落下した。
「タタタ…あーーーんもう、なに?どうして?」

……!!!!…
視線を感じ振り向くかなた。





「「「……!!!!!!!!!!」」」
3人とも、大きく口をあんぐりあけて、驚愕の表情でこちらを見ている。
「え?な、なに?わたし、見えてる?」

3人がそろって首を縦に振る。

……実体化してる?ええ!?でもなんで?い、いや、理屈なんてどうでもいいわね…

……え、えーーと、どうしましょ。ま、まずは…
「こ、こなた、えーーーと、その、ただいま」
「お、お、お、おかえりなさい…」
……うわー夢じゃないわよね…何言ってるのよ…夢でもいいじゃない…

こなたの方へ歩み寄る
金縛りにでもあったかのように3人とも固まってしまっている。
……無理もありませんね。ふふ、死んだはずの人間が出てきちゃったんですからね…
「…こなた…」
ぽんっと頭に手をのせる。
……うん、実体化してますね。こなたの髪の感触も体温も感じることが出来るようです…
「あ、あの……」
腰が抜けたのかのように、地べたに座り込んだままのこなたがかなたを見上げる。
「ん?なぁに?こなた」
「ほぉーーーーー、ほ、ほんとにほんとに?お母さん?…」
「ええ…お母さんですよ…」
ギギギギッと音が聞こえてきそうなほどぎこちなく後ろをふりかえるこなた
「か、かがみ…で、出た。本物がで、でたよ、…」
「え、え、ええ、で、出ましたねぇええ」
「かがみ、お、おふだとか、持ってきてない?」
「こらこら、せっかく、こうして実体化できたんですよ。おふだとかで封印してどうするんですか?まったく」
……実際に封印されちゃうかどうかは判りませんけどね…
「ほら、こなた、立てる?」
「え?…あ。あれ?足に力が入らない…」
……あらら、腰が抜けちゃっていましたか…後ろの二人も同じようですね…
「ふふふ、じゃ、こうしてあげましょう」
こなたの後ろにまわり、かなたが膝立ちして、こなたを背後から抱きしめる。
「…18年ぶりになるのかしらね、こうして抱いてあげるのも…」
驚き、恐怖で固まっていたこなたの表情がゆるむ…





ーーーおぉ…ほんもののお母さんだよーーー
「…お母さん…暖かいね……おっ、足が動く……、お母さん…んーーーー」
後ろのかなたに身を預けるような格好をするこなた。
「へへへ…もうしばらく、こうしててイイ?」
そのまま後ろ側に手をまわし、かなたを掴むこなた。
「ええ…気が済むまで…」



「よし、お母さん分の補給は終了っと」
こなたが、むっくりと立ち上がる。
「次は、貯金せねば」
「は?」
「次、いつ逢えるか判んないし、もう逢えないかもしれないんだから、いーーーーっぱい貯金しとかないとね」
「えい!!」
振り返りざま、かなたの胸にダイブするこなた。
「あ、こらこら、重いって…あ」
ベタンッ…
そのまま、かなたは床に押し倒されてしまう。
「むふふふ、お母さん…」
「…まったく、もう、とんだ甘えんぼうさんね」
「何言ってんのお母さん。お母さん分のポイント溜めるにはどんどん甘えないと」
ーーーかがみ、つかさ、んーーー、ごめん、ちょっと止まらないーーー

もはや、やり放題に近いこなた。
いつのまにやら、自由に動けるようになったかがみとつかさだが、そのまま見守っている。
(こなた…)
(こなちゃん……お母さんに逢えてよかったね(泣))

……うん、こなた…甘えるだけ甘えてちょうだい…きっと、これが最後だから…
こなたは18年間、耐えてきました。神様、お願いです、もう少しだけ時間を……

「むふーーー、へへ。かがみ、つかさ、お母さんっていいもんだね…」
かなたの腕の中に突っ伏したままこなたが話しかける。
つかさはすでに涙に視界を奪われており、まともに返答ができる状態ではなかった。
かがみもなんとか耐えていたが、今のこなたの問いかけが発端となり、押さえていたものが流れ落ちる。
「…こなた…うんうんうん…お母さんっていよね…(涙」

ーーーあれ、なんだろこの感覚。前にもあったようなーーうーーんーーーなんだっけか?ーーー

ふと、こなたの脳裏に、忘れ去れていた今までの夢の記憶が蘇る

ーーーああそうだ。そうだよ。わたし逢ってるよ、お母さんに。今日初めてじゃないーーー

「んとね、お母さん、もしかして、夢もしくは、過去に実体化して現れてる?今ね、思い出したの…
お母さん、2回かな?逢いに来てくれたよね。それとも、私の、たんなる妄想?お母さん」
「ええ、こなたが、まだ保育園くらいの時と、小6の時と、2回かな?逢ってますよ」

「やっぱり…そうだったんだ…わたし、忘れてたよ…」
「…うーん、でも、昨夜の夢の中の話よ?」
「え?違うよ。わたし、覚えてるもん。じゃあ…きっと過去の私に逢ってたんだよ。幽霊なんだしそんくらい有り」
「…そういわれるとね、私も、自信はないの。ものすごく、今と同じ位リアルな感触も残ってるし…」

ーーーもしかして、これも夢なのかな?夢でもいいやーーー





ーーーあ、あれ、駄目だよわたし…涙が出始めちゃったよ…止まってよ、駄目だってここで泣いちゃ…ーーー

こなたの肩が小刻みに震え始めていた。
「…お母さん、ごめんね。以前、泣いちゃだめってわたし言ったのに…涙が…止まらない…」
「うーんとね、別に、我慢する必要はないでしょ?今は、好きなだけ甘えて、そして、涙が涸れるまで…ね…」
「……う…あ…ああ…おかあさん…」
涙が、堰を切ったようにあふれてくる。
「…んーなぁーに?…」
「なんで、死んじゃったの!!!!」
ーーーわかってる、言っちゃいけない事だって。どうしようもないことだって。でも、でもーーー
普段は見せない、押さえ込んで封印しているはずの負の感情が爆発する
「おかあさん!!…やっぱりそばにいて欲しかったよーおかあさん!!!!」
ーーーかがみとつかさがそこにいるのはわかってる。こんなこと言ってる場合ではないのも。でもーーー
「もう、別れたくないよ、嫌だよ、ずーーーと一緒にいたいよーーーー」
ーーーお母さん、ごめん。どうしようもないわがまま連発して、本当にごめん。でもとまらないーーー
「別れなくちゃいけないなんていやだ、いやだよーーーあああああああ…」
激しく嗚咽するこなた。18年分の悲しみ、寂しさを吐き出すかのように…

かなたは、なにも言わず、ただ、優しく抱きしめる。笑顔のまま自らの目から流れでる涙も拭わずに…

かがみとつかさは、ひたすら、声を押し殺して見守っている。
ともすれば、声をだして泣いてしまいそうなところを、必死に押し殺している。
今は、今だけは、邪魔してはいけないと…


どれくらいの時間が過ぎたのだろうか…こなたもずいぶんと落ち着きを取り戻してきた。

「お母さん、どうしようもない事ばかりいってごめんね……泣いたら、すっきりしたよ」
こなたが、ぱっと顔をあげる。
涙でくしゃくしゃになった、顔。
「あらあら、涙でくしゃくしゃね…こなた、ほら、鼻かんで…はいちーーん」
「ちょ、おかあさん…んもう…」
結局言われるがまま、されるがまま鼻をかむこなた。
「んもう…お母さんもはい、涙ふいて」
ポッケからハンカチを取り出すこなた。
「あれ?前にもこんなことあった?よね。…へへへ、わたしも結局泣いちゃった」
こなたからハンカチを受け取り、涙を拭うかなた。






「はい、ありがとう、こなた。泣く事は別に悪い事じゃないですよ。お母さん、泣きたかったら泣いてもいいと思う。
うれしくても、悲しくても、ね?……こなたは優しいからきっと、そう君の事を考えて感情を押さえてたのね…」
「え…うん…そうかも…あのね、保育園の時のあの後にね、お母さんどこ?って問いつめちゃったんだ…」
「え!…あらあら…それは…うーん、あのとき逢わなければ…というわけにもいかないんでしょうけど…
そう君、どう答えたの?覚えてる?」

「……ごめん…覚えてない……」
こなたが素っ気なくこたえる。
「…そう……」

すこし、切なそうな声で答えるかなた。

「ただ、お母さんが死んだ…ていうか、人が死ぬって言う事がさ…
こう…わかるようになったのって…小学校にあがって…3年か4年のときかな…だから…
あの時逢ったのは、やっぱり夢だったんだって…でもいまいちさ諦めきれなくて、もしかしたらって…
そしたら、6年のとき、逢えたじゃん…ああ、夢じゃなかったんだって…うれしくてさ…」

「…ごめんなさい…」

かなたの目が再びうるうるしだす。
「だーーーーもう、だから、駄目だって、お母さん、泣かないで。いやだよ。どうしてそんなに自分を責めるの」
「……あのね、こなた…母親としてね、自分の子供を放ったらかしで死ぬなんて…許せないのよ…」
「……わたしがさっき、あんなこと言ったから?」
「ばか…なんでこなたのせいになるのよ…」
「…だって…さっき…なんで死んだのとか言っちゃったし…」
「それはね…こなた…ある意味、当たり前の感情なの…」
「……お母さん…でも…」
「お母さん、自分が許せないの…なんで私、死んじゃったのって…幼いこなたを遺して…」
「…でも…それは…お母さんのせいじゃ…」
「そう…きっと、誰のせいでもないの、わかってるわ…そう…人は遅かれ早かれ死ぬものだから…
でもね、あなたを遺して死んでしまった自分がどうしても許せないの…なんであなたを…
なぜそう君とこなたを遺して私は死んでしまったの…なんで?どうして?そばにいたかったのに!!」
「おかあさん!!やめて!!もう、やめて」
こなたが涙目で見つめる…

「そんな話聞きたくない!!!」
こなたが、泣き叫ぶ。
「お願い!!そんなに自分を責めないで!!」

「…ごめんねこなた…さっきからあやまってばかりね…あのねお願いがあるの…」
「…へ?…」
ちょっと虚をつかれたこなたが間抜けに答える。
「お母さんも、涙枯れるまですこし泣いていいかな?」
顔を少し赤らめつつ、涙顔のかなたが聞く。
「!!!!……うん……泣きたかったら…ってね!!」





嗚咽と言うほど激しくはないが、肩をふるわせ、何やら小声でぼそ…ぼそ…とつぶやいている。
かなたの腕のなかに抱かれているこなたにはいまいち聞き取れなかったが、気にはならなかった。
自分は、お母さんの気が済むまで、こうしてれば良いと…こうして力一杯抱きついていればと…

ほどなくして…
「こなた、ありがとう…お母さんも泣いたらすっきりしたわ」
「お母さん、はい」
ハンカチを渡すこなた。


「はい、ハンカチありがとうね、こなた」
「いえいえ、どういたしまして」
二人とも、床に寝そべる状態から起き上がる。
こなたがかがみ達に背を向けるような感じで、かなたとこなたが向き合うように座っている。


「…うーーん…あのさ…お母さん…」
恐る恐る、こなたが聞く
「いつまでそうしていられるの?」
「え?」
……うーーん、どうしましょ…正直わかりません…その前に、なぜ実体化できたのかさえ…


「……えーーーと…ごめんなさい…お母さんにもわからないの…そもそも、なぜこうやって存在できてるのかも…」
「……うーーん、さてさて…それは困ったものだね…」
腕組みをして、なにやら思案しているこなた。




ふと、かなたが、かがみたちの方を見て、にこりと会釈をする。
なにかの呪縛から解かれたかのようにかがみたちが話始める。
「あ、あのはじめまして、柊かがみと申します。こちらが双子の妹のつかさです」
つかさの顔がすこしひきつる。
(うわぁぁぁ…そういえば、さっきトイレの帰りに挨拶したの思い出したよ…)
「あ、さきほどは…柊つかさです…」
「ええ、さっき、突然挨拶された時はおどろきましたよ」
「へ?」
かがみがつかさの方に向く。
「え、あんた、逢ってたの?」
かがみがつかさに突っ込む。
「え?い、いや、さっきトイレの…多分帰りに…」
「ついさっきじゃない!…それで写真見て考え込んでたって訳?つーかその時点で思い出しなさいよ…」
「あはは…ごめん…その…メールに夢中で…いまいち覚えてなくて…」
「…はぁ……あんたって子は…」


      • しっかし、似てるわねぇ・・・
「こなたとおばさんって双子って言われても通用しそうなほど似てるわよねぇ…写真の比じゃないわ」
「そうだねー、入れ替わってもばれないかもねー」

「!!つかさ、それだー」
「「はい?」」
つかさの一言にこなたが反応する。
「ふっふっふっ、このまんまストレートにお父さん呼んでもつまんないし、なにかひねらないとって思ってたんだけど
今のつかさの一言でわたしゃー閃いちゃったよ、ピキューンとこう額にね」

「…あんたねぇ…つまんないって…普通じゃ嫌なのか?」
「まぁまぁ、いいじゃない…でね、お母さん、ごにょごにょごにょ…」
「…ふふ…いたずらっこね…こなたは…」
「んじゃ、着替えるからさ、つかさたちはちょっといいかな?」
「着替えるってあんたまさか…はいはい、あんたのいたずらに付き合うとしますか」
「お?さっすがかがみ、するどいですなぁ。ま、そういうこと」
「え?お姉ちゃん、まさかって何?」
「ん?…あぁ、まぁいいから、とりあえず出ましょ」

かがみ達が部屋から出て行く。





















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  • これ、、、DVD化して欲しいです! -- チャムチロ (2012-09-30 16:57:00)
  • 動物は鳴く事は出来るが、人間は唯一泣くことの出来る生物である。


    って誰かが言ってた。
    泣けるっていいと思う( ̄▽ ̄) -- ユウ (2010-04-15 04:16:43)
  • こなたを見るに耐えん。目も鼻もボロボロだよ。 -- ヤマ (2009-01-26 21:08:12)

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