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あなたの存在に心奪われた私

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匿名ユーザー

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 みなさんこんにちは。高良みゆきです。
 聖・ヴァレンタインデイの今日いかがお過ごしでしょうか?
 え、私ですか?うふふ、どういう状況だと思います?実はですね……。



「むぁぁぁぁてえぇぇぇぇ!!みゆきぃぃぃ!!」
 かがみさん(他数名含む)に追われています。



あなたの存在に心奪われた私



 そもそもの起こりは昨日の夜のこと。私は台所でチョコレート作りにいそしんでいました。
 父や兄に渡すのは例年通りなのですが……。今年はさらに作らなければなりません。
 そう。私の運命の方―――柊つかささんに!!
 つかささん……ああつかささん、つかささん。あなたに恋心を抱いたのは一体いつのことなのでしょう?
 つい最近?3年になって?初めてまともに会話したあの文化祭の準備の時?いえ、どれも違います。きっと私は、入学して初めて会ったときから囚われていたのでしょう。「柊つかさ」という名の、鎖に。


 あれからずっと、私はお慕いしておりました。しかし、私とあなたはどちらも女性……。世間からは決して認められないマイノリティー。ですが、私はもうこれ以上あなたとの間に感じたセンチメンタリズムな運命を隠すことはできません!
 故に、私は決心しました。明日のヴァレンタインデイにつかささんにチョコを渡し、その思いを告げると!
 そうと決めたのが1週間前。それから私は、まさに血の涙が出るような苦労を積みました。……鼻血じゃないです。ええ、違います。
 泉さんにチョコレートの作り方を教わり、つかささんが喜ばれるチョコはどんなものかを調べ、母に実験台……こほん、味見をしてもらって今から作るのがまさに本番。失敗など許されることのないラスト・チャンス。
「さあ……。行きましょうか……」
言葉の通りに始めようとしたその時。
「みゆき~、電話よ~」
母が台所に入ってきました。
出鼻をくじかれた感は否めませんが、仕方なく電話を受け取ります。すると、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「こんばんは、みゆき……」
「かがみさん?こんばんは。どうなさいましたか?」
一体、こんな時間にどうしたのでしょう。訝しさを感じつつ、訪ねます。

「あんた、明日のヴァレンタインに誰にチョコを渡すの」
 暗い声で聞いてくるかがみさん。私は、考えます。
 なぜかがみさんはそんなことを聞くのでしょう。わざわざこんな時間に電話をしてまで、確かめることでもないはずです。
しかし、私にはひとつ心当たりがあります。
そう、つかささんです。かがみさんは妹のつかささんを溺愛なさっています。それは別に構わないのですが、私のつかささんに対する気持ちに気がついたのか最近風当たりが強いような気がするのです。
これを踏まえて考えると、かがみさんはここではっきりさせるつもりなのでしょう。
私が誰にチョコを渡すのか、私の本命は誰なのか。
あいまいな答えではごまかせないことを瞬時に察し、私が答えた後の対応も考えます。
かがみさんは果たしてどういう反応をするのか。私を信用して容認してくれるのか、それとも断固として反対するのか。
かがみさんもおそらく私がどう答えるかわからないほど馬鹿ではないはず。
そう、これはきっとかがみさんの挑戦です。
面白い。ならばその挑戦、受けてたってやろうではありませんか。たとえ受話器越しに怒鳴られようが構いません。私はつかささんを愛しているのですから――この間0.2秒。

「かがみさん、はっきりお答えします」
 受話器越しにかがみさんの息を呑む音が聞こえます。
「つかささんです。私はつかささんを愛していますから」
 静かに、しかしはっきりと告げました。
 それきり、沈黙が流れます。かがみさんはいったいどんな表情なのでしょう。どんな気持ちなのでしょう。受話器を握る手が震えていることに気がつきました。どくどくという心臓の音が耳障りです。
「みゆき」
 どれくらいのときが流れたのでしょう。かがみさんが言葉を発しました。
「薄々は気づいていたわ。あんたがつかさの事好きだって。つかさは気づいてないみたいだけど」
 やはり。ということは最近の態度、あれも。
「ごめんね」
「え?」
 突然聞こえた謝罪の言葉に、思わず声を上げてしまいます。
「冷たい態度とっちゃって。面白くなかった。つかさはあたしが守るんだって半ば義務みたいに思っていたのに、それを横から掻っ攫われるような気がして」
「……すいません」
 私には謝罪の言葉しか言えませんでした。
「謝んないで。私が馬鹿だっただけだし。確かにあんたならつかさを任せられるかもしれない」

 ……これは思わぬ展開です。登竜門のように立ちはだかるかと思われたかがみさんが私とつかささんの仲を認めてくれました。
「あ……ありがとうございます!!」
 電話の向こうのかがみさんに頭を下げながら私は本当に喜びと感謝の気持ちを伝えます。
 ところが、
「何勘違いしてんの……」
 かがみさんはそう前置きして、
「まだ私は認めたわけじゃないわ!!」
 私の希望を粉みじんにするようなことを言いやが――おっしゃいました。
「ど、どういうことですか!?」
 当然私は、かがみさんに問いかけます。もし、ここに泉さんがいらっしゃったら「あ……ありのまま起こったことw(ry」とでもおっしゃるでしょう。
「確かにあんたならつかさを任せられるかもしれない。でもね、世間っていうのはそんな甘いものじゃないの。……まぁ、それがわからないあんたじゃないとは思うけど」
「もちろんです。ですが、それでも私はもうこの気持ちを抑えられそうにないし、抑えたくないんです」
「じゃあ、もし、それでつかさがOKしたら?確かにそのときはめでたいことよ。でも、これから先ずっとつかさを守ることができる?」

 かがみさんはまくし立てるように一気に語った後、一息をつきました。
「あの子、知ってのとおり泣き虫だし、周りからのプレッシャーに耐えられるかしら?その時あんたはどうするの?」
「…………」
 かがみさんのおっしゃることはよくわかります。どうひっくり返っても、私とつかささんの間にある、「同姓」という壁は壊れません。周囲から向けられる好奇と侮蔑の視線。そんな状況容易に想像ができます。けれど――


「覚悟はあります」
 そう、覚悟はある。たとえ世界中が敵になろうとも、私は必ずつかささんを守って見せる。つかささんのためなら命だって賭けることができる。そうしてもいいほど私はつかささんのことが好きなのだから――
「…………」
 私が言ったのはたった一言。でも、それで私の思いを感じ取ったのかかがみさんは押し黙ります。私もただ、返事をじっと待っていました。
「わかったわ」
 しばらくの間の後、かがみさんが返事を出しました。しかし、私は先ほどのことを考え続きを待ちます。案の定、かがみさんの話には続きがありました。
「そこまで言うのなら、あんたの“覚悟”を見せてもらおうじゃない」
「……と、おっしゃいますと?」
 かがみさんは私の問いには答えず、
「明日話すわ」
 とだけいいました。
「みゆき。あんたはあたしの親友だと思ってるし、つかさのことも任せられると思ってる。でもね――」

「理解はできても、納得できないこともあるのよ――」

 その言葉で締めくくり、電話は切れました。




















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  • 笑いとシリアスがいいバランス取れている。
    -- 九龍くーろん (2008-05-23 23:47:02)

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