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―― It's like a dream, but …

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匿名ユーザー

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―― It's like a dream, but …


これまで経てきたいくつもの”今”。
それは過去であり、けれど現在で――
確かに経験したはずなのに、目の前でもう一度繰り返される光景は、夢のようにも感じられる。

けれど、それはやはり現実だ。
そしてその中に真実がある。

(……そうだ……ただ一つの真実だ。
 全てに共通していることがある…………)


……ある、はずなんだけどなあ。


「すみません、あと1分で開演です! 泉さん、最終チェックお願いします」

そう、何度となく何度となく何度となく……何度となく見た光景。

「あいよー。かがみ、手伝ってー」
「悪いけどパス。自分のクラスに戻らないと!」
「じゃあ、つかさに……いや、やめとこ。またこないだみたいになりそうだし」
「こ、こなちゃんのくせに~~!」
「はいはい。それじゃあひでくん、お願い」

……ここで何を答えたのか、まだ覚えている。
……覚えているどころか、もうやれることはやり尽くした感すらあるんだよなあ。

「泉さん、あと30秒ですっ!」
「まー、隣のループから時間持ってこればいいじゃん」
「こなちゃんお願い、時間取って!」
「オk! ひでくん、時間よろしく!」
「ちょっと、こなた! 時間とCO2排出枠を一緒にすんな!」
「あれ、かがみ。自分のクラスはいいの?」
「大丈夫よ……ていうか、こっちが心配すぎ」

出口はどこだ? どこにある? ……いやホントに。

「皆さん急いでください! もう時間がありません!」
「よろこんでー♪ ……じゃないし! ううう、ちょっちキツいーっ!」
「口はいいから手を動かせっ!」
「あうううっ! 急がなきゃ急がなきゃ急がな(ry」
「つかさ、落ち着いて! 自分の手まで貼り付けてるわよ!」

ここか? ……違う、これじゃない。これじゃないってば。

「ナイスフォロー! みゆきさん、こっちはチェック完了ー!!」
「こっちもOK! つかさはっ!?」
「テープうにょーん」
「……あー、ダメだこりゃ」

見逃しているフラグがあるはず。
それは何か――

「よいしょっと……う、うん!無ーー問ーー題ーーーー!」
「少林サッカーのゴールキーパーか、アンタは」
「俺も完了! みゆきさん、時間は?」
「過ぎてます……仕方ありませんね、セーブポイントからやり直しましょう」
「オイ」


思い出した――いや、思い出すも何もないな。
そう、自分が何をしたか――全て、覚えている。

そして、その全てが、ことごとく無駄骨に終わってきたことを。
これ以上、何をどうすればいいのか、もうわからないことを――


「……なんで……なんで、ルートがひとつしか出てこないんだよぉぉぉーーーー!!」


… It has not ended yet. ――


――――――――――――――――――――
Lucky

Star

EPISODE:THE LOOP
Even I tried every choice,
But we cannot escape this endless loop...
――――――――――――――――――――


========
(……OP略w)
========


 ―×― ―×― ―×― ―×― 

『ひなたと、ひかげの……"あんらき☆しすた!"』
テレビに映るのは、もう見飽きた姉妹の姿。
『番組終了! お疲れ様でした!』
ずいぶん前から、もう話題も変わらなくなった。

ベッドの脇には、コンプしたトレカのバインダーが三冊分。
観賞用、保存用、布教用……とか、こなたなら言うんだろうな。

「……やれやれ、またか……」

これで、四十六回目の初登校。
……俺は……俺たちは、終わらないループの中にいる。


………………


通い慣れた初めての通学路を抜けて、陵桜学園にたどり着く。
気心の知れた、『初対面』のみんなと挨拶を交わす。
聞き慣れた予鈴が鳴り、みんながあわてて教室へと走り出す。

走り出した皆の後を追って、教室に向かおうとした俺の足は、

「また」体育館に向かっていた。


「永森さん……」

永森さんの様子は、相変わらずだった。
頬を少し赤らめ、天井の一角をじっと見つめながら、何事かぶつぶつ呟いている。

……いや、「何事か」なんかじゃない。
ぶっちゃけもう聞き飽きたよ、その台詞。

「……まだよ……まだ足りない……ハァハァ」

何が足りないんだ?……彼女は一体、何が望みなんだ?

「……萌えが……萌えが足りない……ハァハァ」


――ああ、また少し台詞が変わった。


………………


「……どっちにしても後戻りは無理よ。ひでくん、さあ、決めて」

3年B組の教室前。永森さんの問いかけに、俺は攻略本を広げる。
ここで『もうわかってるだろ?』を選択すれば、最終シナリオへの扉が開く。
そうすれば……このループから抜け出せる。

抜け出せるはずなんだ。

でも、永森さんの頭上に現れた選択肢は……
 ―――――――――――
( 『やっぱりまだ……』 )
 ―――――――――――
その一点のみだった。

「……もっと……もっと萌えを……ハァハァ」


はぁ……またかよ。


 ―×― ―×― ―×― ―×― 


それから先は、例によって例のごとくだった。
どうフラグを立てても、どっちを選んでも、変わらない運命。

一年生組の頼みは、前回はみゆきさんが、今回はかがみさんが、さっさと請け負ってしまった。
はい、『LSU』ルート消えました。……というか、かがみさん、PCとか詳しかったっけ?

体育館の隅で何か悩んでいる黒井先生に声をかけても、
「……今度こそお持ち帰りや……ぶつぶつ……」
ご覧の通り、『こみフェ』も『時かけ』も、『らき☆レボ』も全部通行止めだ。


――そして、俺は。
否応もなく、四十六回目の『らきらきメモリアル』に進むしかなかった……


 ―×― ―×― ―×― ―×― 


「……起きて……ねえ、起きてよぉ」
声が聞こえる……
「……おーい……早くしろー…… 気持ちはわかるけどさー……」

「こなた……わかってるって。ちょっと待って……」

目を開けると、視界いっぱいにこなたの顔があった。……今さら、驚きもしない。

「おはよ」
「うん、おはよう」

相変わらず、他の子たちの姿は見えない。
起こしにきたのは、こなたただ一人。

「……また?」
「うん、また」

四十六回、すべてこの調子だった。
俺たちは無慮四十六回、『らきらきメモリアル』の……しかも、泉こなたルートばかりを繰り返していた。

『……はぁ~……』
俺とこなた。長いため息が、シンクロする。

「ひでくん、どうする? 寝・逃・げでリセットしてみる?」
「いや……行くよ。着替えるから待っててくれるかな」
「着替えさせてあげよっか?」
「バカ言うなよ。こないだこっそり団長腕章つけさせただろ。思いっきり笑われたんだぞ?」
「むふふ~。身だしなみに無頓着なひでくんが悪いんだよ♪」
「いや、どうみてもこなたのせいだから」


繰り返しても繰り返しても、変わらない運命。
変わっていったのはただ、積み重なる記憶と、皆が俺を呼ぶ名前。

「前田くん」が「ひできくん」に変わり、やがて「ひでくん」になっても。
「泉さん」が「こなたさん」になり、やがて「こなた」に変わっても。

時間の流れは、何一つ変わらなかった。

掲示板で聞いた。コミュで聞いた。ダメ元でブリッジにも電話した。
どこに聞いても……返ってきたのは、怪しげな鼻息だけだった。

……なに、掲示板で鼻息なんて無理だって? ……『('A`;)ハァハァ』とだけ書いてあんだよっ!


「んじゃ、下で待ってるよ」
ドアが閉じる音と。軽やかな足音。

「やれやれ……これがまた、桜藤祭まで続くのか?」
連日の居残り、時には泊り込み。
その先に待っているのは、花火とループ。

ああ、やっぱりリセットしときゃよかったかなぁ……


……なに、こなたとキスしたくないからだろ、だって? ……バカ言うな、そんな理由じゃない。
むしろ、俺が悩んだ挙句、結局リセットしなかった理由は……

「今度こそ、『舞台の上で』こなたとキスしよう」

そう、心に決めたからだ。

何度となく食べた、こなたの手作り弁当。
何度となく聞いた、『リアルでひぎぃはノーサンキュッ!』。

……そして、何度となく繰り返した、真似事のキスシーン。
近づく顔、激しい演技で紅潮した頬、荒い吐息。

四十六回もこなたに攻略されていれば、気持ちも傾いてくるってもんだ。

……そして、それはこなたも同じだったみたいだ。


 ―×― ―×― ―×― ―×― 


「えと、れ、例の場面ていうか、あれなんだけど――」

五十八回目にして、俺の選んだ選択肢は。

「……キス、しよっか?」
「そだね。今さらって感じだけど」


――ごめん。ちょっとだけノロケ話を許してほしい。

五十三回目攻略中。こなたとケンカした翌日の昼休み。
青空の下、校舎の屋上で、

……俺は、こなたに告白した。

しばらく黙った後、こなたは顔を上げて、親指を立てながら元気よく言った。
「……よっし、攻略成功!!」

押し黙っている間、彼女が目を伏せて、少し頬を赤らめていたのを見逃すほど、ボンヤリはしていないけどな。


――みゆきさんの受け売りだけど、「ストックホルム症候群」という精神医学用語があるらしい。
「犯罪被害者が、犯人と一時的に時間や場所を共有することによって、過度の同情さらには好意等の特別な依存感情を抱くことを指すんですよ」、だそうだ。
平成三年十二月十七日、ペルーのリマにある日本大使公邸で起きた占拠事件。
あの時も、親しくなった犯人と人質たちは、時には麻雀やサッカーをして仲良く遊んでいた、という話だ。

「生命の危機にさらされた状況下で、種族維持本能が暴走しちゃうかららしいよ」
と、こなたは言った。
いわく、「『シティーハンター』でそう言ってたよ」。……全く、こなたらしいよな。

こなたの言うとおり、ストックホルム症候群、だったのかもしれない。
でも、例えそうだとしても、そんなことはどうだってよかった。
俺はこなたを、……そして、こなたは俺を、いつしか本当に好きになってしまっていたのだから。


初めてのキスは、その時。
少し甘い、から揚げの味がしたのを覚えている――


……それでも。俺たちは、舞台の上ではキスはしなかった。
照明を落としてごまかしてもらい、顔を近づけただけだ。
見世物じゃないんだ。たとえ好きな人とのキスでも、こんなところではしたくない。
つかささんにメールで「がばてね」と言われても、がばるつもりはなかった。


……そのたびに、暗闇のあちこちから舌打ちが聞こえてきたのは、気のせいなんかじゃないと思う。


 ―×― ―×― ―×― ―×― 


そして――旅は終わる。


……一時間足らずの劇が、クライマックスを迎えていた。
衆人環視の元でのキキースシン。さすがの俺でも、緊張しないわけがない。
さっきから、頭の中はその話で一杯だ。

意識は上の空でも、劇は順調に進んでいく。
五十三回に及ぶ本番の経験は、俺の口から勝手に台詞を引き出し、俺の身体を勝手に動かしていた。


……そしていよいよ、そのシーンが来た。

「ただいま、セイバー」
セイバーの……こなたの肩に、手をかけて。

「はい、おかえりなさい――シロウ」
その小さな身体を、抱き寄せる。

(……いくよ)
マイクに入らないよう、小さな声で、

(うん、ばっちこーい)
台詞とはうらはらな、恥ずかしそうな声で。


――照明を落とされた、舞台の上で。
――俺とこなたの唇が、近づく。


(キキースシン……キキースシン……ハァハァ)
(い、いよいよね? いよいよなのね!? ……ゴクッ)
(そこっ! そこですっ! お二人ともっ!! だばだば)
(おぉおおおおっ!? じ、自重するな、自重するな二人とも――ッ!!)
(ひーらぎぃー、私たちもキスしよっぜー……げはっ!(ぱしぃーーん))
(……いいなぁ……私も帰ったら、彼にいっぱいキスしてもらうんだ♪)
(……ゆたか……私たちも、しようか……)
(みなみちゃん……)
(Oh! まさに甘々、スイーツ(笑)デスネ!!)
(こなたぁぁぁっ! おとーさんは許しませんよっ!!)
(そう君? 私たちも……ねっ?)

(ああ……これが萌え……美しく萌える星、それが地球……ハァハァ)
(あんたさぁ……そろそろ、やまとの中から出てってくんない?)

「…………」
「…………」
軽く触れ合っただけの唇を離した、その姿勢のままで。
俺たちは、固まっていた。

窓の外、机の下、椅子の裏。ありとあらゆるセットの陰で、みんなの異様な念波観音力が渦巻いている。
観客席には、目を爛々と輝かせた、百四十六人の立木と二百とんで八人のくじら。

「うぉ……マジっすか」
「ひでくん……後ろ、後ろ見て」

そろりと、後ろを振り返る。

「……うわっ!!」

両親、弟、飼い犬。
隣の兄ちゃん、出入りの酒屋さん、NHKの集金人。
チャット仲間、マイミクの人、角川書店の中の人。

大きなガラス窓を通して見える三次元……いや、現実世界。
コントローラーを握り締め、呆然とする俺の姿が見える。
そして、その背後。広くはない俺の部屋は、目を血走らせ息を荒げた……

『俺×こな☆フェチ』患者で埋まっていた。

「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
「わきゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

俺とこなた。二人の悲鳴が舞台に轟いた。

それを合図に、スピーカーから軽快なBGMが流れ始める。
曲名はたしか――『盆回り』。

舞台がゆっくりと回り始め、背景の描き割りが左右に割れていく。
バックバンドが『三十路岬』の演奏を始め、ゲストの小神あきらが和服姿で現れた。



♪みーそじみさーきー。
あーあ。いいやもう。



― 終わっとけ! ―





















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コメント:
  • 感動あり笑いあり・・・そしてカオスwwwww -- 名無しさん (2008-09-22 05:03:11)
  • カオスwwwwwwwww -- 名無し (2008-09-19 16:00:32)

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