kairakunoza @ ウィキ

恋するロッテ黒井

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
夕暮れも短くなってきた夏の終わり、黒井ななこは車を走らせていた。
全開の窓から入ってくる風が気持ちいい。風は真夏のそれとはどこか違っている。
「はぁ、涼しなったなぁ。夏ももうしまいかぁ・・・」
特にする事もなく、だらだらとネトゲ三昧な休みを過ごしていたななこにとっても
やはり夏の終わりという物はどこか寂しげな印象がある。
そして、ただでさえ物寂しい夏の終わりが「こなたと海に行った」夏である事。
これは、ななこを感傷に浸らせるには十分な要素だった。
「あと半年もせんうちに、あいつともお別れか・・・」
誰に言うとでもなく口にだしてみる。
胸に鈍い痛みがはしり、どうしようもなく不安になり、気分が目滅ってくる。
ななこは口に出した事を後悔した。だっていつもの事なのだから。
こなたとの別れを意識すると、こうなるのはわかっていたのだから。
そのくせ、ネトゲでこなたと顔を会わせると妙に嬉しくなってしまう。
嫌な気分は何処かへ消えていってしまう。

昔、これとまったく同じ状況になった事がある。
そして、その時ななこをこんなふうにさせたのは異性だった。
「ウチ、おかしいよなぁ・・・」
逢いたい。こなたに、逢いたい。
このまま行けば、国道に出て後はまっすぐ。すぐに我が家の近く。
次の信号を右に曲がれば、こなたの家の方向だ。
「・・・そ、そういやあいつ、ホンマに宿題やってんのやろか?」
「・・・一応様子みに行った方がええよな?た、担任として。」
自分に言い訳をしつつ、ななこは右折ランプを点灯させた。

ピンポーン
泉家のチャイムが、いかにもな音をたてて鳴る。
その音を聞いて、パタパタと廊下を小走りに駆ける音が聞こえてきた。
ドアが開き、小さな女の子が顔を覗かせる。
「はぁい、どなたですk・・・」
「よっ!おひさ。」
「あっれ、おっかしぃな、そら耳かな。」バタン。
「・・・っておい!何閉めとんねん!思いっきり目合ったやないか!」
「な、何ですか?夏休みデビューも犯罪行為もしてませんよ?」
「あのなぁ・・・まぁえぇわ。あんな、せんでえぇ事はしてない、そりゃえぇわ。
でもな、せなあかん事もしてないってことないか?」「・・・いやぁ、どうだったかなぁ。あはは・・・」「はい、やってないねー。よっしゃ、今からやろか。ウチが監督やったるからな。」
「い、今から?ってか監督!?いや、激しく遠慮させていただk」
「とりあえず時間のかかりそうな数学からいこかぁ。ほら泉、はよこいよ~」
「うぅ・・・」


「ふぅ、専門外の事教えるのも結構疲れるなぁ」
「あぅぅ・・・もう死にそう・・・」
どうやら宿題の方は一区切りついたようだ。
「すいません、ちょっと横に・・・あぁ、頭が重い・・・」
そういってこなたはベッドに倒れ込む。
「あはは、お疲れさん。あ、泉、トイレかりてもえぇか?」
「どぞぉ・・・」
「ほな借りるでぇ」
こなたに断りを入れ、下に降りて、ななこはトイレに入った。
と、同時に自分が重大なミスを犯している事に気付く。
「しもた!そうじろさんに挨拶すんの忘れてた・・・」
とりあえず用をたし、そうじろうの姿を探すが、どうした事か。居る気配すらない。
「おっかしぃなぁ・・・ん?なんやこれ。」
台所に入ったところでメモ書きのようなものがななこの目に入る。
「これで何か食べなさい。翌朝には帰ってくるので心配しないように・・・」
なる程。そうじろうは出かけている様だ。[これ]の指すものはお金だろう。
なくなっているところを見ると、もうこなたは何か買って食べたと見える。
「なんや、もっと早よきてたら何か作ったげたのに。」
何故かちょっと残念な気持ちになりながらななこは台所を出た。と同時にふと気付く。
「ん?まて、お父さんは居てない。ゆたかちゃんも実家帰ってる言うてたし・・・」
一瞬妙な思考にななこの頭が染まり、すぐさまぶんぶんと首を振った。
「な、何考えとんねんウチ!・・・こらあかん、さっさと帰ろ・・・」
とりあえずこなたに帰る事を伝えるために、こなたの部屋に戻る。
が、この人として当たり前の行動がななこの運命を決した。
部屋を開けた途端に見えたものは、まさに天使。
教室で見せる居眠り顔と違う、我が家のベッドで安心しきってるからこその寝顔。
ななこは、まるで意識がないかのような動きでこなたに引き寄せられていく。
普段は気付きにくいが、小憎らしさの中に儚さを孕んだ目元。幼さを残す表情。
そして、淡い桜色をした唇。ななこはそこに無意識のうちに自分の唇を重ねる。
と、その刹那、こなたのからだがぴくりと震えた。
反射的に身を離すと、大きく開かれたこなたの瞳と目が合った。
「あっ・・・そ、その、違うんや!これは、あの・・・」
慌てるななこ。しかしそれとは正反対に、こなたはひどく落ち着いた低い声で
「キスしてました、よね?」そう『確認』した。
さすがに、認めない訳にはいかなかった。
「・・・すまん、ほんまに。」
心の底からすまないと思ったし、罵倒されても仕方ないとも思って謝罪した。
が、こなたの放った言葉は
「最低ですね」
冷たく、一言そういうだけ。罵倒よりも遥かに辛い一言。
「ごめん・・・」
「謝って許される様な問題じゃないですね・・・わかりますか?今の私の気持ち」
「その、最悪な気分やよな・・・ほんまごめん・・・」
「最悪なんてものじゃないですよ。全然信用ならない人に奪われるならまだしも」
「うん・・・ん?」
「誰よりも大好きで信用してた先生に奪われるなんて・・・」
「い、いや、ちょっと待て。 なんかおかしないかそれ?」
「何がおかしいんですか?愛した人が他人の寝込みを襲うような人だった。悲劇ですよ」
「え!?あ、愛!?」青ざめた顔から訝しげな表情、そして一気に顔が赤くなるななこ。
その表情を見てあからさまに、よし食い付いた!的な表情を見せるこなた。
「まぁ、どうしてもっていうなら許さない事もないですけど・・・」
「え?えと・・・許してくれるんか?」
「えぇ。キーワードは[なんでもするから]」
「よ、よっしゃ!なんでもするからってアホかぁっ!」
強烈なツッコミがこなたの後頭部を正確に捉えた。
「あたぁ・・・な、何も全力でシバかなくても・・・」
「アホ!こっちは思いっきり反省しとんじゃ!そらウチのやった事は最低やけど・・・」
「でしょ?やっぱり何でも言う事・・・」
「せん言うとるやろが!」
「うぅ、そんなにバシバシ叩かなくても・・・」

「あのなぁ・・・ほんま結構キタんやで?お前の態度。もう終りや思たもん・・・」
「私もちょっとやりすぎかなぁ、とは。でも、寝込み襲ったのはダメですよ。」
「っ!そ、それは・・・ごめん、ウチが悪いな・・・。」
「なら、そう思うなら教えて下さい・・・キスの意味。」
「キスの意味?・・・え、えっと、ってかいちいち言わなあかんか?」
「私は言いましたけど。」「そらそうやけど・・・わかったよ・・・コホン。あー、こなた、好きや。愛してる。」
ななこがそう宣言すると、こなたはななこの胸に顔を埋めた。
「い、泉、何を・・・」
「こなたって呼んでください。」
「えと・・・こ、こなた・・・?」
「はい?」
「ちょっと早くない・・・かな?」
「ずっと我慢してたんです。早くなんかないです・・・」
「あっ、こなた・・・・・・って何をしとんねん。」
「んー、リアルパフパフぅ」
「・・・こなた、そこ座れ。」
「え?」
こうして晴れて恋人同士となった二人の夜は、特にエロい事もなく更けていくのだった。



コメントフォーム

名前:
コメント:
  • このあとお説教ですか~。センセ大人すなぁ。 -- 名無しさん (2011-04-11 18:53:02)
  • タイトルで釣られ、いよいよかと思えばおあずけエンド
    やられました -- 名無しさん (2009-02-12 13:31:37)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー