kairakunoza @ ウィキ

裸と裸で

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
「そういえば、わt」
「泉さんのお家のお風呂壊れてしまったみたいですけど、今日はどうするんですか?」
「……なんで知ってるの?」
 丁度4人でお弁当を突いていると、たぶんお風呂の話をしようとしたのだろう
 こなたが口を開いたのに被せるようにして、みゆきが普通なら知るはずもない話をした。
「テレパシーですよ。泉さんへの過度な愛が可能にした力です」
「わっ!! すごいねみゆきさん!!」
 どうせまた覗いたんだろうけどな。
 まぁ、こなたが幸せそうな顔をしてるのでよしとしておくか。
「それで、どうするのよこなた。直るまで入らないとか?」
「そりゃ流石にないよかがみ」
 そうよね。
 そんなことされたら、蓄積されたこなたの馨しい体臭で間違いなく、私は命を落とす。
 その妖艶すぎる体臭が染み付いた衣服に触れるだけで間違いなく、私は命を落とす。
 そのあまりにも甘美な香に間違いなく、私は命を落とす。
「昨日もそうだったんだけど、しばらくは銭湯にでも行こうかなって思ってるのだよ」
「へー、あんたの家の近くにあるんだ、銭湯……って昨日も!? なんで呼ばなかったのよ!! このっ!!」
 パンッ!!
「痛い!!」
 みゆきをはたいてみた。
「かなり年季の入った銭湯なんだ。お父さんが子供の頃からあるって言ってた」
「じゃあ集合場所はこなたの家で、時間は8時くらいでいい?」
「あ、うんいいよ」
「私銭湯行くの久しぶりかもー♪」
「私は行ったことがないので楽しみです」
「そうね」
 パンッ!!
 みゆきをはたいてみた。
「……あれ、いつの間にかみんなで銭湯に行くことになってるよ」
「ほんとね」
 パンッ!!
 みゆきをはたいてみた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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『裸と裸で』

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「ここがそうなのね」
 パンッ!!
 みゆきをはたいてみた。
「わー♪」
「銭湯には行ったことないッスが、本当にあんな大きい煙突があるんですね」
「セントウ見るの初めてデスヨー♪ 見てくだサイあのエントツ。
すごく……大きいデス……。あの先っぽカラ、白いのが絶え間なく噴出すわけデスネ」
「ここに泉さんの小さな体が晒されるわけですね。興奮します」
「……それは、興奮しますね……すごく」
「私はこなたお姉ちゃんの裸を視姦しよっと♪」
「あの煙突今は使われてないらしいけどね……あれ、いつの間にか人数が増えてるよ」
 日も完全に沈み、空が紺色に色づき、少しづつ星が瞬き始める。
 外にいても、人が行き来して暖簾が翻る度に銭湯独特の香と熱気が私達の肌を掠めた。
 孫を連れたおじいちゃん、家族、仲の良さそうな高校生の集団がすれ違う。
「取り敢えずみんな、女湯行こうよ」
「みなみちゃんは男湯だよね。胸板的に」
「……ゆたかが……一時期の流れに影響されて黒く」
「冗談だよみなみちゃん」
「できれば、こっちを見て言ってほしい……」


 靴を下駄箱に入れ、番台さんにお金を渡して女湯に向かう。
 大きく女と書かれた暖簾を潜ると、ムラッとした。
 じゃなくて、ムワッとした空気に包まれた。
 老若様々な年齢層の女性が、着替えたり髪を乾かしたり涼んだりしている。
 私達はまとまって空いているロッカーに陣取り、服を脱ぎ始めた。こなたを見ながら。
「あっ、つかさ先輩の下着かわいい♪」
「そぉ? よかったら売ってるところ教えてあげよっかゆたかちゃん?」
 つかさとゆたかちゃんは女の子らしく、かわいい下着の話で盛り上がっている。こなたを見ながら。
 みなみちゃんとパトリシアさんは既にスッパになっており、至近距離でこなたをガン見している。
 田村さんはなんかすごいところにすごい格好ですごい勢いでデッサンしている。
 隣で日下部と峰岸が談笑しながらこなたを見つつ着替えてるのは気にしなかった。だって最初いなかったし。
 みゆきの眼鏡から発せられる毎秒10回のシャッター音とフラッシュは無視した。
「こなちゃんのおしりにかぶりつきたい」
「うわっ!! ちょっとつかさ、パンツ引っ張らないでよ!! 伸びちゃう!!」
「むしゃぶりつきたい」
「かがみ!! かがみぃ!! 暴走してるつかさを止めてよ!!」
「はいはい」
 パンッ!!
 みゆきをはたく。
 それから正面に立ってつかさを屈めさせて顔を腋の間に挟みこんで固定し
 椅子の上に立ち、そのまま後ろ向きに倒れるとつかさが静かになった。
 全然動かない。
「それじゃあお風呂行こっか……なんで脱ぐだけでこんなに疲れるんだろう」
「知らないわ」
「ソウダネ」
 屍みたいなつかさは放っておいて、こなたのお尻を見ながら浴場に向かう私達。
 幸せすぎる。
 反対側のロッカーの前に金髪ポニーテイルで関西弁の人がいた気がしたけど
 100%見間違いだと思う。


 一足先に体を洗い終え、何度でも蘇るつかさがシャワーを浴びているのを確認してから
 まずは一番普通のお風呂に入る。
 80歳くらいのおばあさんの胸を見ながら「たれぱんだがいる」と呟くゆたかちゃんに
 お母さんに連れられた3歳くらいの女の子と同じくらい真っ平らのみなみちゃん。
 眼鏡がないからか4~50回転びまくって、最早銭湯というよりは戦闘後みたいに血だらけの田村さんや
 肩までお湯に浸かって「海ノ中からmountain!!」とか叫んで、胸だけをお湯から突き出すパトリシアさん。
 そして「先にシャワー浴びてこいよ」とか意味わかんないことをこなたに言うみゆきを見ながら寛ぐ。
 大きなお風呂ってなんだか家のお風呂よりも気持ちいいのよね。なんでかしら。
 しばらくお風呂に浸かっていると、こなたにあしらわれたのだろうみゆきが
 足元を赤く染めながら寂しそうな顔でこちらにやってくる。
 そのまま私の隣に座った。程なくしてお湯が真っ赤になる。
「びんばべはいぶおぶろう゛ぁきもびばいびべすね」
「なんだって?」
 鼻血止めなさいよ。
「みんなで入るお風呂は気持ちがいいですね」
「そうね」
「それにこの銭湯、珍しいお風呂もあって楽しいです」
「珍しいお風呂?」
「ワイン風呂ですよ。いま入ってるじゃないですか」
「あんたの鼻血だよ」
「ご冗談を」
「じゃああんたの鼻から出てるそれはなんだ」
「……こ、これは!!」
「……」
「温泉は心まで癒してくれますよね」
「そうね」
「……腕を上げましたねかがみさん」
「いつまでもあんたに負けてなんていられないのよ」
 2人の友情が深まる。
 でもそろそろここから出ないと体が鉄臭くなりそうなので
 絡まってくるみゆきの手とか足とか首とか……首!?
 首長っ!! ちょ、やめろ首伸ばすな!!


 なんとかその長く伸びてくる物体をいなして隣の泡風呂に入る。
「やぁ、よく来たね」
「……あぁ、なんだつかさか」
 なんで少しダンディーなんだ。
「だって、泡のお風呂ってなんだかリッチな気分にならない?」
 どうやって私の考えを読んだんだ。
 だって双子だもんこのくらい当然だよ。
 ナレーションに入ってくるな。
「お姉ちゃんお姉ちゃん」
「ん?」
「見て見て、あそこに晩御飯がいるよ」
「あら本当、すごく美味しそうね」
「今日はどうやって料理しようか?」
「今日はお刺身がいいわね。素材の味を楽しみたい気分なのよ」
「お刺身かぁー。私はたたきなんかもいいと思うんだけど」
「それもいいわね。新しい何かに目覚めそう」
「ねぇねぇ二人とも」
 私とつかさが今晩の献立の話をしていると、体を洗い終えたこなたがこちらにぺたぺたやってきた。
 手で少し温度を確認してから、泡風呂に入ってくる。
 泡風呂独特の感覚に少し体を震わせたが、すぐに気持ち良さそうな顔に変わる。
 今間違いなく、私は命を落としそうになった。
「さっきから私のことガン見しながら何話してたの?」
「晩御飯とかいろいろだよこなちゃん」
「刺身とかたたきとか言ってたからマグロの話?」
「そんなとこね」
「ふーん……いいなぁマグロ」
 全く疑わないこなた。
 そんなところが大好きだちくしょう。
「マグロおいしいよね。私大好き」
「私も大好きよ」
「今すぐ食べちゃいたいくらいだよこなちゃん」
「いやちょっと待ってよ。なんで今の話の流れで手をワキワキさせながらこっちくることになるのさ」
「待て待て待てーい!!」
 二人で挟み込んでくんずほぐれつイチャイチャキャッキャッウフフ
 よいではないかおやめくださいぐへへへへいい体しておるのぉあーれー
 しようとしたところで、割り込むように声を張り上げた子が一人。
「……あぁみなみちゃんか、誰かと思ったわマジで」
「すみません……取り乱しました」
 ぺったんこ星人 が 現れた!!
「今……失礼なこと考えませんでしたか?」
「そんなわぺないじゃない」
 やばい噛んだ。
 少し顔をしかめたが、すぐにいつもの無表情に戻り、こなたの隣に腰掛けるみなみちゃん。
 肩に手を置くな。
「やらないか」
「ぇ」
「……なんでもありません、先輩」
「そ、そぉですか」
 ちょっとした沈黙。私はなんとなく辺りを見回してみた。
 ……あれ? おかしい。背景が動いてる。
「よっちびっ子!! それからその他数名!!」
「こんばんは、泉ちゃん達」
「あ、みさきちと峰岸さん」
 ……あれ? おかしい。背景が話しかけてきた。
「隣邪魔するぞー」
「じゃあ私はこっち側に」
「あ……峰岸、先輩……押さないでください……というかなんですかこの力。歯が立ちません」
 ……あれ? おかしい。背景がみなみちゃんを押し退けてこなたの隣に座った。
「気持ちいいわね泉ちゃん」
「ふぁ……変なとこ触らないでよ峰岸さん」
「あっ!! 私がいない間になんかいいことしてる!!」
 声のしたほうを向くと、最後に体を洗い終えたつかさがこちらに走ってくるのが見えた。
 その走行ルートには、不自然に石鹸が置いてある。
 案の定つかさはそれを思いっきりふんずけ、回転方向の違うトリプルアクセルを華麗に決めて
 お風呂の角の部分に、頭から素敵に着地した。
 すごい勢いで血が噴出し、つかさがピクピク痙攣している。
 大変だ。

「みなさん、そろそろサウナなど行ってみませんか?」
 泡風呂の中心からみゆきが湧き上がってきた。
 こいつは普通に登場できないんだろうか。
「サウナ!! いいデスネ。行きまショウ!!」
「そうッスね。お風呂といえばサウナは外せないッス!!」
 同じように泡風呂の中から湧き出たパトリシアさんと田村さんが続く。
 なんだこいつら。
「ん、そうだね。じゃあみんなでサウナ行こうよ」
「熱せられた密室で裸の付き合いだねこなたお姉ちゃん」
「そ、そうだね」
「私こなちゃんの隣に座りたいなぁ」
「あ、ずるいッスよつかさ先輩!! こなた先輩の隣は渡さないッス!!」
 つかさの回復の早さには誰も突っ込まない。
 パンッ!!
 みゆきをはたく。



 サウナはやっぱり暑かった。
 中に一歩踏み出しただけで、お風呂の暑さとはまた違った熱気に包まれる。
 続いて強い木の匂い。
 どうやら、まだ誰も入っていないらしく、私達で貸切状態になっている。
 いや、誰もいないわけじゃない。金髪ポニーテイルの関西弁の女性が
 仲間に入りたそうにこちらを見ていたのを気にしなかっただけだ。
「暑いわねこなた」
「抱きしめられてる私はもっと暑いよかがみ」
 いつの間に!!
 こなたが珍しくマジで迷惑そうな顔をしていたので、しかたなく離れる。
 私の隣ではみゆきが早くもスルメみたくなっている。
 絡むのが難しそうだったので取り敢えず無視した。
「なぁなぁみんな、折角だし勝負とかしようぜ!!」
 ……あれ? おかしい。背景が喋っている。
「みさちゃんいいかげんにしてよ!! そろそろ黙らないと流石に怒るよ!? 大嫌い!!」
「なんでいきなり思春期なんだあやの。私今日ほとんど話してないんだけど」
「そうだったかしら」
「なんなんだ……ともかく!! ちびっ子を巡ってみんなでバトルだ!!」
 ……あれ? おかしい。背景が滾っている。
「……ルールと景品はなんスか?」
「一番長くサウナにいられたやつがちびっ子とキスできる、ってのはどうだ?」
「それ乗ります!! でも唇だけだなんていわないで
1日こなたお姉ちゃんの体を好きにできるっていうのはどうですか?」
「Nice ideaデスヨ!! それ乗りマシタ!!」
「それ最高だね!! こなちゃんは誰にも渡さないよ!!」
 そのセリフは負けフラグよつかさ。
 私の隣では、そのやりとりを他人事のようにニコニコしながら見守るこなた。
 意味分かってないんだろうか。
 かわいいからいいんだけど。
「ヒュー……ヒュー……」
 みゆきが何か言っているが、干乾びてるので聞こえない。
「よしっ!! それじゃあ早速始めだ!!」
「ふぅ、そろそろ私出るね。露天風呂にも入りたいし」
 十分に汗をかいたのだろうこなたがサウナを出る。
 私もそれを追って、このバトル会場を後にした。
 さり気なく金髪ポニーテイ……黒井先生が参加していた気がする。



 露天風呂へと続く扉を開けると、冷たい外気が体を掠める。
 時期が時期だけに、程よい涼しさが気持ちいい。
 風に吹かれて揺れる白い湯気が月の光に反射して、この空間だけを幻想へと変えていた。
 私は掌サイズになったみゆきを露天風呂へと投げ込む。
 ほどなくして、増えるわかめみたいにムクムクと元の大きさに戻った。
「やっぱり露天風呂は気持ちがいいですね」
 何事もなかったかのように、ほざき始める。
「空が……綺麗です」
「この辺は街灯も少ないからね。星が見えやすいんだよ」
 みなみちゃんが呟いた言葉に、こなたが返事をする。
「星を見たのっていつ以来かしら」
「私もかなり久しぶりな気がするよ」
「……私も」
「私も最近、空を見上げる機会すらあまりなかったような気がします。泉さんばかりしか見ていなくて」
 増えるピンクのワカメがなにかほざいている。
「たまにはこんな風に静かなのも……いいかもしれないわね」
「誰かさんたちのせいでいつも騒がしいからね」
「それだけ愛されてるってことじゃない」
 ジト目で見てくるこなたに、少し微笑んでそう言ってやった。
「でも抵抗しないこなたも悪いと思うわよ」
「抵抗とか無意味だと思うけどね」

 確 か に そ う ね ! !

 確 か に そ う ね ! !

「まぁそれに……そんなに、嫌じゃないし」
「「「……」」」
「……?」
「……先輩」
「なにみなみちゃん?」
「そういうこというから……みんな止まらないんだと思います」
「そだねー」
「……ふふっ」
「まったくこなたは……」
「泉さんらしいですね」
 みゆきの髪の毛が不思議に蠢きこなたを捉えた。
 私はそれをツインテイルで切り裂く。
 待ち構えていたかのように、みなみちゃんがこなたをキャッチする。
 みゆきの髪の毛は、先ほど切り裂いた部分が既に再生していた。
 どうやら、切り離しても無駄みたいだ。
「あなたの攻撃は、私には効きませんよ」
「みたいね……でも、私にはこれしかないのよ……何度だって切り裂いて、活路を見出してやるわ」
「そうですか……いきますよかがみさん」
「返り討ちにしてやるわ!!」

「いや、何してんのさ2人とも」
「先輩の……おっぱいふにふに」
「みなみちゃん何すんのさ!!」



 いい汗をかいたので、もういちど露天風呂に浸かる。
 運動した後のお風呂は格別だ。
「ところで2人とも、さっきのはなんだったのさ」
「余興よ」
「余興で髪の毛操れるんだ2人は」
「泉さんへの過度な愛が可能にした力です」
「わっ!! すごいねみゆきさん!!」
 デジャブ。
「あ、泉さん」
 ニコニコしながらこなたを見つめていたみゆきが突然、何かを思いついたように目を見開き
 こなたの後ろに回りこんで、抱きしめた。
「わっ、ちょっとみゆきさん何!?」
「ぎゅってしてるだけですけど」
「そ、そんなのは分かってるけど……」
「ダメですか?」
 こなたの耳元で囁くように言うみゆき。
 耳に当たる息がくすぐったいのか、プルプルと震えるこなたが愛らしい。
「いつもはもっとすごいことされてるじゃないですか」
「そりゃぁそうだけど……」
 こなたは、言いにくいのかもじもじと動き、視線をあちこちに泳がせる。
「そういうのより……こういう暖かいことのほうが、恥ずかしいよ」
「……先輩」
「ん? 何みなみちゃ……ひゃっ!! み、みなみちゃんまで!!」
「すみません……あまりにもかわいくて、我慢できませんでした」
「それじゃあ私も」
「わっ!! かがみまで、やめてよ!! 暑いってば!!」
「いいじゃない、みゆきとみなみちゃんだけなんてずるいわよ」
 そういって、抱きしめる力を強める。
 それに呼応するように、後の2人も密着率を高めた。
「うぅ……暑い」
「じゃあ抵抗すればいいじゃない」
「こんな状態で抵抗なんて、無意味だよ」
「それに嫌じゃないんだもんね?」
「う、うるさいよかがみ」
 唇を尖らせてブツブツ言うこなたの頬が赤いのが、お風呂の熱のせいじゃないのは
 見て明らかだった。
「赤面泉さんのかわいさは異常ですね」
「今鼻血出したら星にするわ」
「ふふっ、そこまで愚かではありませんよ私は」
「……んっ」
 いつもと違う綺麗な笑みに、少し見惚れてしまっただなんて
 死んでも言わない。命が危ないから。
「私は変態で紳士ですからね」
「あんた女だろ」
「でもそんなの関係ねぇ」
「ってかいい加減離れてよ!!」
「もう少しだけ」
「あと5時間」
「あと2日は抱きしめていたいです」
「死ぬ!! 死んじゃうよ!!」
 いつもとは違うゆっくりとした時間。
 それを堪能するかのように、みんなで目を閉じた。



 パンッ


 みゆきの頬を叩いた音が


 夜空に響いた。



 そのあと、流石にこなたがまずい状態になってきたので、仕方なく離れた私達。
 今はお風呂から上がり、お風呂上りの一杯を選んでいるところだ。
「こな汁がありませんね」
「なにそれ!?」
「泉さんの愛えk」
「わーっ!! わーっ!!」
 まだ選び終えてないこなたとみゆきを見守りつつ、イチゴ牛乳を飲む。
 私の隣では、みなみちゃんがものすごい勢いで牛乳を飲み干している。
「牛乳飲んでも胸は大きくならないわよ」
「……え?」
「ふふっ、冗談よ」
 世界の終わりみたいな顔をしたので、即効でフォローする。
「かがみかがみ!!」
「ん?」
 コーヒー牛乳を選んだらしいこなたが、私のほうにかけてくる。
 その後ろからは、牛乳瓶を2本抱えたみゆき。
「乾杯しよっ!! かがみ!!」
 何だこの生き物は。
 今間違いなく、私は命を落としそうになったじゃないの。
「はいちーん」
「ちーん」
 私とこなたの瓶がぶつかり音をたてる。
 死ねる。
 その様子を物欲しそうな視線が見ていた。
「……どうしたのみなみちゃん」
「私のは……紙パックです」
 こなたの瓶と自分の紙パックへ交互に視線を送るみなみちゃんは
 今にも自殺しそうだ。
「はい、みなみさん」
「え?」
 みなみちゃんの正面にやってきたみゆきは、2本のうちの右手に持っていた牛乳瓶を
 みなみちゃんへと差し出した。
「これならちーんってできますよ」
「み、みゆきさん……あなたが神か」
 わけの分からないことを言いながらみゆきから瓶を受け取ったみなみちゃんは
 そのままこなたのほうに向き直った。
「せ、先輩……ちーんしましょう。ちーん」
「はい、ちーん」
 かわいらしくみなみちゃんの瓶に自分の瓶をぶつけるこなた。
 死ねる。
「これは……宝物にせざるを得ない」
「せめて中身は飲もうねみなみちゃん」
 他の皆が飲み終わったのを確認して、私は椅子から立ち上がる。
 そのままこなたの手を握った。
「さてっと、そろそろ帰りましょ」
「そうだねー、いい時間だし」
「泉さんの裸を堪能するという目的も果たしましたし」
「お風呂に入ることが目的じゃないのがみゆきさんらしいね」
「そうね、私もそうだけど」
「知ってるよ」
「はい……私もです」
「知ってるよ」
 陰のある笑みをこぼすこなたの手を握ったまま歩き出す。
 来た時よりも涼しく感じる外気を潜りながら、こなたの家がある方へと足を進めた。
 私の手の中にあるこなたの手が少しだけ冷たかったのは、冷えた飲み物の瓶を持っていたからだろうか。
 すぐに私たちに追いついて、こなたのもう片方の手を握るみなみちゃん。
 その後ろをみゆきが『なぜか』『勝手』についてくる。
「銭湯……またみんなで来たいですね」
「……そうですね」
「うん、また大勢で来たいね!!」
 私のこなたが嬉しそうにそう言った。
 それに同意するように、他の二人も首を縦に振る。
「ねぇかがみ」
 そんな光景を黙ってみていた私に、こなたが声をかけてきた。
「ん?」
「また……みんなで来ようね?」
「……うん、きっとね」
 ちょっとだけ強くなったこなたの掌の力を感じて、私も少しだけ
 握る力を強くした。



 ……みんな?



 翌日、先日行ったの銭湯のサウナで発見されたいくつかの干からびた塊。
 それにこなたが口付けると、パァッと光を放ちもとの姿に戻る。
 サウナの熱が抜け切らないのか暴走気味のそいつらは、こなためがけて
 ルパンダイブをしかけてきた。
 私とみなみちゃんとたぶんみゆきは、こなたを守るためそれらと戦うのだった。


 だが私たちは知らなかった。

 この一時の戦いが、これから始まる大いなる戦い

 みなみちゃんがこなたを監禁して、ゆたかちゃんがこなたを瞬間早着替えさせて

 田村さんがその光景を寸分の狂いもなく模写して、パトリシアさんがこなたをハンバーガーにして

 日下部が爆発して、峰岸がお菓子になって

 ひかる先生とふゆき先生がこなたを卑猥に検診して

 小神あきらがリムジンでこなたを出迎えて、マイクだっけ?が周りの取り巻きを蹴散らして

 黒井先生がこなたをお持ち帰りして、つかさがアクロバットして

 みゆきが鼻血を吹いて、私がこなたを食べる。

 そんなこなたにとって気苦労で、私たちにとって呼吸のごとき出来事の


 ―― ほんの序章にすぎなかったということを……



 ―― まぁつまりは


 ―― いつもと同じってことだ。

【 F i n 】












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  • >大変だ。
    大惨事だよww一言で片付けるなwww
    >みゆきの頬を叩いた音が


    夜空に響いた


    綺麗に見えるがおかしいぞww -- FOAF (2014-01-29 21:47:59)
  • 「こなちゃんのお尻にかぶりつきたい」 「むしゃぶりつきたい」


    私の心を代弁するとは…。つかさ…恐ろしい娘…。


    このシリーズのこなたが可愛すぎて生きる勇気が湧いてくる。


    そして彼女たちの溢れすぎた熱情に爆笑www


    -- こなたは永遠に俺の嫁 (2010-11-28 00:50:51)
  • 海ノ中カラmountain -- 名無しさん (2009-02-08 07:13:00)
  • ↓枕元で囁き続けたかいがありましたW

    これからも作者殿の枕元で囁きつつ、応援し続けます -- 名無しさん (2008-08-31 19:48:18)
  • ↓今回のFinは気分でした(^q^)ウボワー たぶん続きます。ネタが浮かべばですが。


    ↓ -- 7-896 (2008-08-31 16:57:46)
  • 初っぱなから吹いて鼻水出してしまいました。 -- 無垢無垢 (2008-08-31 12:38:57)
  • ブッ.;:*:;゛*(゜ω゜)
    ゆーちゃん少し黒いwwww
    面白かったです^^ -- taihoo (2008-08-08 20:41:41)
  • 我が輩も囁いてやろう -- クラウザー様 (2008-08-08 18:05:46)
  • 今壊れネタシリーズを全て読み直してみて気がついたこと

    前作までは話が終わっても特にEND表記がないのに、何故か本作のみFinの三文字が…

    とりあえず愛しい壊れまくった皆の愛をもっと見たいから、夜な夜な作者殿の枕元で「続編書いて〜…」と囁いてみたりします

    他にも誰か囁きに来ますか? -- 名無しさん (2008-08-07 10:54:36)
  • 最wwwww高wwwwwww
    流石は破壊神(腹筋的な意味で)だwwwwwww
    突っ込みどころが多すぎて書ききれないのでGJだけ送っておきますwwww
    さて、もっかい読んでくるかwwww -- 名無しさん (2008-07-24 03:12:51)
  • 慣れるとHENTAI達のやり取りがかわいく見えてくるから困るwww
    今回は「なんでいきなり思春期なんだあやの」に完膚なきまでに叩きのめされたwwwww -- 名無しさん (2008-07-23 02:49:27)
  • 貴方が神だwwww
    腹筋がwwwやばいwwww
    GJとしか言えないwwwww -- 名無しさん (2008-07-23 00:13:39)
  • みゆきさんのはたかれるタイミングが絶妙すぎるwwww
    貴方=神様の脳内に素晴らしき乾杯と完敗と無限のGJを。 -- 名無しさん (2008-07-22 22:25:35)
  • みゆきさん、たたかれすぎワロタwww   -- 名無しさん (2008-07-22 21:48:38)
  • 貴方が神だ。異論は認めない。 -- 名無しさん (2008-07-22 18:15:36)
  • なんと言いますか…作者殿の脳内に完敗しながら乾杯しつつGJを連呼させていただきます -- 名無しさん (2008-07-22 18:07:18)
  • 癒される。本当に癒される。 -- 名無しさん (2008-07-22 17:56:02)
  • 冒頭の命を落とす三連発で死んだ
    みゆきさんはたかれすぎ

    あなたが神か? -- 名無しさん (2008-07-22 12:54:08)
  • やべぇwww
    7-896様の作品保管にリアルタイム遭遇しちまったぁああああああ!!
    今回のは今までの中でもトップクラスのクオリティだwwwwwwww
    命を落とす、とみゆきをはたくで腹筋が痙攣wwwwwwwwwwwww
    やっぱあなたは最高だ!! -- 名無しさん (2008-07-22 12:12:55)

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