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続 ここにある彼方 その後

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匿名ユーザー

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「……ふあぁ~~」
ぱちりと目が覚める。
「うーーーん、あれからどのくらい時間が経ったのかしら」
ささっと左右を見る。
「いきなりお家の中に出現ってとこかしら……
そしてここは…居間のようね…ほとんど前と変わってないみたいね。
…さてと、だれか居ないか移動しますか」

いつもの用に、ふわっと漂って移動しようとしたが、どうも勝手がちがう。
上空へ動けないようだ。
「あれれれれ?」
それどころか、前後に体を動かすことが出来ない。
辺りを見回す……後ろに振り返れない!!
見れる範囲で見回すと、自分の周りが何か額縁のような物で囲まれているよう。
そして、なにやら透明なもので押さえられてて出れないようなこの感じ。
そして、正面にテレビ、目の前に椅子とテーブル。
視点は居間のタンスか棚の上のような感じ。

どうも、写真立ての中の写真にいる模様……
「どうしましょ…………」
そんな時、そうじろうがノートパソコン片手に居間へとやってきた。
「あっ!!そう君!!そう君!!」
写真立てのなかの写真で手をブンブンと振りアピールするも目の前をスルーされる。
それもそうだ。
そもそも目に入っていない。
入る訳がない。
どこかの平面ガエル状態で居るなんて思いもよらないだろう。
そのまま目の前に陣取り、パソコンに向かって仕事をしだす。
「あーーーん……困ったわ…声も届いてないようだし……
なんとか、ここから抜け出せないかしら?」

「えいっ!!えいっ!!えいっ!!!!」
写真立てのなかで暴れ回ってみる。
その甲斐あってか、カタタッカタタッと微妙に写真立てが動きはじめた。
…静かな深夜の居間ならば聞こえていたであろうが、今は昼間。
しかも、そうじろうはTVを付けて、ノートパソコンを開いている状態である。
その程度のささいな音では気がつかれもしなかった。
「一応は動かせるのね。なら、頑張って動き続けるしかないわね」
一生懸命動き回るその様はまるで踊っているかのようなのだが、肝心のそうじろうは気づいていない。
カタタッカタタッカタタッ
だいぶ大きく動くようになった矢先、
パタン!!
倒れてしまった。
「はうっ!!しまった!!これじゃダメじゃない!!」
真っ暗闇になってしまい、一人きゃーきゃー言い出す。
だがしかし、パタリと倒れたことでさすがのそうじろうも気がつく。

「おや?なんだ?小さな地震でもあったか?集中してると気がつかないからいかんな」
などと言いつつ、写真立てを立て直す。
と、写真立ての中のかなたがウゴウゴ動いてるのを目撃してしまった。
「…………おぉ~~!?ヤバいなぁ~……
かなたはこの前帰ったハズだしなぁ……やっぱ寝ないとまずいよな…」
目をごしごしと擦り再び写真と向き合う。
笑顔でブンブンと手を振るかなたがそこにいた。
「!!……ちょっっっっ!!!かなた!!!おまえ、そこにいるのか?」
コクコクと頷くかなた。
「ぬぁーーーーにぃーーーーーだって、おまえ……この前帰ったんじゃないのか?」
その言葉に、困ったような笑みをうかべる。
「あぁ~~なんだ、その、この前と同じで理由なんか知るかよってところか。
ははは……ま、そんなことはどうでもいいか。
ちょっとまってろ、いま、写真立てから写真外すからさ」
裏の止め具を外し、写真を取り出してテーブルの上に置く。
さて、どうしたものかな?と思った時に写真からもわわ~と白煙が上がり
半透明なかなたがテーブルの上に出現した。
「そう君…ただいま……かな?」
そのまま、ふわふわとテーブルの上を漂ったままとりあえず帰宅?の挨拶をする。
「………あ、あああ…おかえり…か?」
「…そう君……ちゃんと見えてるの?聞こえてるの?」
今までは幽霊状態だと誰にも認識されずにいたことを思い出す。
「ああ、ばっちり。ただ、おもいっきり半透明だがな」
「そう………よかった。今までは、こんな状態だと誰も気がついてくれなくてね…」
自分の声が聞こえていることに、そして姿が見えていることに一応の安堵を得る。
「かなた…」
そうじろうがかなたの手を握ろうとスイッと手を伸ばす。
が、スカッとむなしくすり抜けてしまう。
「あははは…ふれるのは無理か……ちぇ…うれしさ半減ってとこか」
いかにも残念無念と言った顔になる。
「……やっぱり幽霊だと物理的な接触は無理なようね…私も残念だわ……はぁ~あ…」
がっくりと肩を落とす。
「んん~まぁ~なんだ、こっちにこいよ」
横の空いている椅子の座面をポンポンと叩き、隣りに座るように促す。
「ふふふ、それでもそばに居れて話が出来るだけでも良しとしないといけませんね」
ニコッと微笑むとふわわ~と漂いながらそうじろうの隣りへとやってくる。
そのまま、そうじろうの右腕に添うように寄り添い、そうじろうの頭の隣りに自分の頭を並べる。
「特に座る必要もないしね、へへへ」
顔を頬寄せ、そのままノートパソコンのディスプレイに目をやる。
「今はどんなの書いているの?」
書きかけの原稿を目で追っかけ始める。

そうじろうの手が止まる。
「ん?」
と思いそうじろうの方を見れば、耳まで赤くなっているではないか。
「ど、どうしたの?そう君?」
心配気にたずねるが
「あ~~いやいや……いくら幽霊とはいえ、かなたの顔がそんな間近にあると……
……その……照れるじゃないか……」
もじもじと恥ずかしげに答える。
「……な、なにを今更……と、と言うか、そんな事言われたら、私もなんか急に……」
かなたも半透明ながらも明らかに赤面していく。
しかし、だからといって二人とも距離を取る訳でもなく至近距離でお互い下を向いている。
「あ、あのさ……」
そうじろうがポツリと切り出す。
「なんていうかさ、確かに、今のかなたは幽霊で実体がないけどさ
なんか、温もりみたいのを感じるというか、気配というか…となりにいるな、
ってことは、やっぱ判るよ。触れらんないんだけど触れてるなーって感じかな?」
「え?本当に?」
「ああ」
「へへ…わたしだけじゃなかったんだ……幽霊状態だから、それでそう君の
なんていうのかしら…なんか、こう…息づかいというか、にじみ出てくる暖かさ
というのかしら…オーラ?見たいのを感じてたんだと思ってたけど………
そう君も感じてたんだ……」
「感じてたってつーのか……姿が目に入ってるってのも大きいのかもしれんがな。
見えてなかったら、気のせいかもな~で終わってたと思うぞ?」
面を上げて照れ隠しに、にははと笑ってみせる。
「…まぁ~そんなものかしらね」
つられて、微笑み返す。
そんな、にっこりと微笑んでいる姿を見て
「んん~~~例え幽霊であってもかなたはかなただなぁ~
やっぱりかわいいなぁ~もう~」
指先をひょいっと突き出し、つんっと頬を突く。
もちろん、空を切ってしまうのだが。
「へへへ……そんなに褒めたって何もでないわよ?」
お返しにとばかりに、そうじろうの頬をムニッと指で突っつく。
「あら?」
指先に伝わる、柔らかく暖かい感触。
通り抜けると思っていた指先がそうじろうの頬を軽く押しつける。
「おぉ?なんと!」
そうじろうが感嘆の声をあげる。
次の瞬間、すか~~っと、当初の予定通りに指先が空を切ってしまった。
「あれれれ?今のはなんだったのかしら……確かに、さわれたわよね?」
不思議そうな顔で、自分の指先をまじまじと見つめる。
相変わらず透き通っているままだ。
「う~む、確かに今、さわられた感触があったよ」
お互い、手を伸ばして触ろうとするが、ことごとく空を切ってしまい
先程のように触れるようなことは起きなかった。
「な、謎だな。可能性としてはあるんだなって事ぐらいに思っとけばいいのか」
「ちょっと期待しちゃったんだけどなぁ~残念ね~」
「いやいや、いいさ。話が出来るだけで十分だよ」
「へへ、それもそうね。贅沢言っちゃいけないわね」
「さてと、また仕事にもどるかな?」
「へへへ、原稿読むのはほんと久しぶりよね、楽しみだわ~」
「いやははははは、なんか照れるな……
プロットに肉付けしてる段階だから、まだまだ荒削りな文だけどな」
「そういえば、こなたは?」
「ん?こなたなら柊さん家に遊びに行ってるよ。
そのうちに帰ってくるんじゃないか?」
「そっか…それじゃこなたが帰ってくるまではこうしてますか」
再び、そうじろうの隣りに寄り添う。
「なんかこうしてると……安アパートに住んでた頃みたいで懐かしいな」
「ふふふ…ほんとに。先が見えないから不安だったけど、楽しかったわね」
「……当時は要らん気苦労を掛けてホントすまんかった」
「ふふ、何を今更」
「ははは、それもそうだな」
「でもよかった。そう君が作家として成功して」
「当時、すでに作家として、ある程度の芽が出てたからなんとかここまで来れたようなもんだ。
まぁ~それもかなたのおかげなんだけどな」
「え?そうなの?」
「ああ、もちろんさ。当時はかなたと二人で書いてたようなものさ」
「私は、ただ、読んでみて感想やら引っ掛かる所やおかしな場所の指摘やら
そんなことしかしてなかったと思うんだけど…」
「自分じゃ気がつけない、第三者的な視線で見てもらえるのって大きいからな。
あの時のアドバイスって大きかったんだぜ
おまえが居なくなってからしばらくして、ある程度気持ちに整理がついて
さぁて、お仕事再開って時に思い知らされたものさ。
さてさて、久しぶりに推敲でも頼んじゃおうかな~……
と、ちょっと待っててくれな。今、書きかけの原稿をプリントしたから取ってくるよ」
「プリント?」
「はははは、今の時代、その場にいなくともプリントアウトできるんだよ。
なかなか便利な時代になったものさ」
そう言うと、椅子から立ち上がり自室へと向かう。
一人きりになって、改めて辺りを見回す。
カレンダーが以前のままなので、ホントに前回の出現から日が経っていないのが判る。
(今日は何日なのかしら……)
確認しようにも、物理的に干渉できない身としてはどうすることもできない。
新聞紙すらめくれないのだから。
(聞いてみるしかないわよね…)
そうこうしていると、そうじろうが原稿を持って戻ってきた。
「束で置いても、原稿めくれないだろうしな…」
床の上に原稿を1枚づつ並べて行く。
「これでよしっと」
「そう言えばそう君、今日って何日?」
「んん?今日か?今日は20日だよ。あれから5日ほど経ってるよ。
やはり、経過時間は判らないのか?」
「うん、そうね…私的には、昨日の今日って感覚だから」
「そっか…あ、そうそう、ゆーちゃんが今日あたりにゆきんとこから戻ってくる
みたいなことを言ってたな。多分、ゆいちゃんとセットで来るとは思うけどな」
「ゆーちゃん……ゆいちゃんの妹よねぇ…
ゆいちゃん達、わたしに遭ったらびっくりしないかしら……」
「あははは……そら~~まぁ~~……驚くだろうなぁ~
この前のこともひっくるめて何も教えてないしな~
ま、なるようにしかならんだろ、大丈夫さ」
「…確かに、なるようにしかならないとは思うけど……
まぁ……いまさら気にしてもしょうがないのかしらね…」
「そうそう、細かい事は気にしなくていいと思うぜ…っと、とりあえずこいつらを頼んだぜ。
んで、そこに並んでる原稿の続きがまだここにあるから、読み終えたら教えてくれな。
また、並べなおすからさ」

途中、なんどか原稿を並べ直してもらい全てを読み終える。
「……ふぅ…どうも疲れるというか……ちょっと、休憩するわね」
そういうと、写真の方にふわふわ移動して行き、吸い込まれるように写真に消えて行く。
「おおおお!?」
そうじろうが写真を覗き込むと、そこには手を振るかなたがいた。
「どうも、幽霊状態で外にいると疲れるみたいね。ここにいる方が楽みたい」
「ふーーむ…かなた、ちょっと出てきてもらえるか?試してみたいことがあるんだ」
「?えぇ…じゃぁ…えいっと」
再び、もわわ~んと登場する。
「何をするの?」
「いやぁ~、この写真にラミネート加工をしてみようと思ってな。
写真むき出しのままだと、すぐにダメになっちゃいそうだしな」
かなたが見守る中、ラミネーターを取り出し写真をラミネートをする。
「おし、終了っと、ちょっと、この状態で入れるか試してみてくれ」
ガラスと違いすいーっと出入りができる。
「お!!行けそうだな」
なんどか出入りした後に、写真の中へと落ち着く。
「うん、問題ないみたい。会話もこの状態で出来るしね」
パウチの余ってる部分に穴をあけ、ひもを通してそのまま首からぶら下げる。
「これで、中に入ってる状態でも一緒に移動できるってもんよ、へへ」
「なんか、この状態だと、ど根性ガエルのひろしとピョン吉みたいね、ふふふ」
「あははは、まさしくそんな感じだな」
そのまま居間に戻り、
「で、原稿なんだけど、どうだった?」
「う~んそうね……………」
まるで20年近く前に時間が戻ったかのように、再び執筆作業に戻る二人。
「なんだか、昔に戻ったみたいでなつかしいな」
そうじろうがポツリとこぼす。
「ほんとにね♪」
写真の中のかなたがクスリと笑う。
(このまま、ここに居れたらいいな……)
叶うかどうか判ったものではないが、
想いは叶うというジンクスを信じて強く願う。
(神様、お願い!!)



















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  • また違った作風で面白いです。 -- チャムチロ (2012-10-06 08:43:01)
  • なんかウブで初々しい二人だなァ・・・
    こんなんで、どうやってこなたをこしらえたんだ?
    っていうくらいw -- 名無しさん (2010-04-15 23:57:11)

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