此文字D-3rd☆star ~Circuit☆Stage~(後編)
【前編へ戻る】
==================================================
走行会終了後、片付けにかかるこなたに近づく
レーシングスーツ男がいた。白石である。
『やぁ、シビックの子でしょ?きみ速いねぇ。』
『あ、いやいやぜんぜんそんなことないっすよ・・・。』
謙遜ではない。プロ相手だから当然とはいえ、
少なくとも白石には手も足も出ない差を
見せ付けられたことを痛いほど自覚していた。
『・・なんなら、一度、ウチのショップに紹介しようか?』
『!!えーっと、うううぅ、ウチはそういうの、
あの、えと、その、とってませんので』
あの、えと、その、とってませんので』
慌てて新聞の勧誘のように断ろうとするこなた。
『大丈夫、ナンパとかじゃないよ!
俺、ホモだから!』
俺、ホモだから!』
『責めですか、受けですか?』
『あ・・・その・・・』
口を片手で覆ってもじもじし始めた。
(ぜったいガチM受けだねコノ人・・・。)
くそみ●テクニックの痛車が出現しなくて、
ほんとうによかったなぁなどと余計な安堵にひたるこなた。
『と、とにかく・・・!
キミは、もっと速く走れる、そんな気がする。
俺の勘って結構正しいんだよ、こう見えても。』
『・・・ぁぅぁぅ・・・』
レーシングドライバーに太鼓判を押されてしまう。
だがこなたは、どう捉えていいものか分からずにいた。
固まるこなたの手をとって、半ば無理やり
一片の紙を握らせる白石。
『あ、これ、ウチのショップの名刺。
気軽に訪れてくれてもいいし、電話してくれてもいいよ。
走らない日はたいがいここで働いてるから。
じゃ、ていうか、是非待ってるよ!』
こなたはショップの名を見て総毛だった。
【カドカワレーシングガレージ】
それは、あまり分野に詳しくないこなたでも
聞いたことのある、有名なショップ。
白石駆るランエボ⑨の車体にもそのロゴは大書されている
そのショップは、ラリー、ジムカーナ、ダートラなど、
多くのチャンピョンを含む全日本選手を輩出する実力派だった。
『?・・・?ゆきちゃん、・・・・・?』
みゆきさんは、なぜか熱にうかされたような顔をして、
ぼんやりとコースを眺めている。
心当たりはひとつあったが、こなたは、ひとまずそこまで
結びつける発想の飛躍はしないことにした。
こなたは、本格的モータースポーツの世界につながる名刺を
眺めたまま、夕日の落ちかけたピットで立ち尽くしていた。
=========================================================
あの名刺を受け取ったまま、
何も連絡しないでもはや2週間が過ぎようとしていた。
白石の名刺を見つめては、電話を取り出し・・・
また片付ける、その繰り返し。
行くか、戻るか。
走り屋なら誰でも憧れる入り口を目の前にして、
玄関先でウロウロしている、そんな状態である。
- なんだろう、何かが足りない・・・・。
直感型のこなたの勘がそう告げていた。
でもそれが何なのか、こなた自身すら
答えを導き出せない。
モヤモヤした気持ちをかがみでも嬲tt、
もとい、弄って晴らそうとも思ったが、
かがみは法学部のプレゼンとやらで学校泊まりらしい。
うーん、かがみんもへんたいだ。
間違えた、たいへんだ。
もうひとつ、思うところのあったこなたは、
大学の下宿から数駅にある、高良家を訪れた。
どっかの企業のような広い来客駐車場にシビックを止め、
高良家の長大な庭を抜けると、玄関ではゆかりが出迎えてくれた。
『あら~こなたちゃん、いらっしゃい♪
音ですぐわかるわぁ♪
みゆきなら部屋にいるわよ~どうぞあがってちょうだい♪』
音ですぐわかるわぁ♪
みゆきなら部屋にいるわよ~どうぞあがってちょうだい♪』
『あじゃじゃじゅーす。』
(うーむ、いつもお目にかかるだけで癒されるなぁあのヒトは)
人妻癒し萌えという未体験の境地について考えながら
みゆきの自室に向かうと、ドアから漏れてくる本人の声。
なにやら英語を朗読しているらしい。
『日曜日もお勉強か、熱心だね』
しかし、それが普通の英語でないことにすぐ気づく。
『Seventy, SIxLeft,long,open, Over crest ! 』
『Forty, threeright,tighten, 』
『into ,four left,long close! 』
『into ,four left,long close! 』
英語を解さないこなたにもわかる、アレはペースノートだ。
微妙に間延びした調子は、たぶんマクレーの
コドライバー、ニッキー・グリスト調だろうか。
うっかりサインツの動画を選んで
ルイス・モヤ調に挑戦していなくてよかった。
激速巻き舌スペイン語に耐え切れず
舌を噛み切っていたことだろう。
『Fifty, two left ,over,
WAAO!』
『いや、そこはわざわざ読まなくてもいいと思う。
真面目系天然ッ子の真髄炸裂だね・・・。』
真面目系天然ッ子の真髄炸裂だね・・・。』
ドアを開けると、レースゲームのごとく、
パソコン画面の車載映像に合わせて揺れるみゆきさん。
ついでに胸とか乳とかおっぱいとかも揺れているんだろうか、
と確認しようと近づくこなた。
画面と読み上げに夢中なのか、
左右にゆらゆら揺れているみゆきさんは
まったく気づかない。
おまけにヘッドホン装備。
後ろから覗き込むと、こなたの期待通り
たゆんたゆんぽよんぽよんと揺れていた。
背後に立っても気づかないので、しばらく
たゆんたゆんで目の保養にいそしむこなた。
・・・ぽむぽむ。
『 Forty, twoleft,over・・・ひぅッ!』
カチッカチカチッ。
『・・・・あ、あぁ、こここここなたさん!』
みゆきさん、必死に画面を閉じたつもりが最大化してますぜ。
ディスプレイいっぱいに広がる、インプレッサWRカー、
こりん・マクレー運転の車載映像。
ぷつん、
ついでにヘッドホンが端子からすっぽ抜けて
『ギョィイイイ・・sevent・・イイイイインギョッババ・・
right・バババボボ パヒュルルル・・six・・
パンパンパパン・・into・・ギョイィイイイイン』
right・バババボボ パヒュルルル・・six・・
パンパンパパン・・into・・ギョイィイイイイン』
スピーカーから大音量で流れる、
- ミッションの音
- ブローオフの音
- コドライバー音声
『はぁう! あ、あの、』カチカチ
『あせりまくるみゆきさん萌えぇ~。
- いやいや、しかし自分でこんな動画を集めて見てるなんて
あんたも好きですなぁ~』
『えっと、ぇー、と、そのぉ、・・・
このあいだから何故か気になってしまってててて』
このあいだから何故か気になってしまってててて』
(てんぱるみゆきさん!めっちゃレアじゃん!!)
『・・・しかし、自分で運転するのは
やはり厳しいでしょうね・・・
こんなスピードで運転するなんて・・』
やはり厳しいでしょうね・・・
こんなスピードで運転するなんて・・』
むにゅ。
『あひンッ!!』
みゆきの巨乳をおもむろに触診するこなた。
『恋、してますね・・・走りに』
『・・・!』
こく、とうなずくみゆき。
ていうか乳を触って何故わかるんだ。
ちく【禁則事項です♪】。
かがみがこの場にいたら、秘技かがみサマーソルトキックが、
つかさがこの場にいたら、奥義バルサミックビネガーが
それぞれ炸裂していたことだろう。
『そかそか♪』
こなたはちらりとみゆきの机上をうかがう。
わけのわからないさまざまな記号の書かれたノート、
さきほど夢中で読み上げていた英語の文章。
「モータースポーツ入門」なる難しそうな本。
そして何枚も積まれたWRCのDVD。
『わたしにはこんなスピードでの運転など無理だと思いつつも・・・
色々調べているうちに、ラリー競技ならば、
コドライバーとして参加している方々も多くいると気付いたのです。』
コドライバーとして参加している方々も多くいると気付いたのです。』
『そこで、たとえば、
このコドライバーならば、
このコドライバーならば、
・・もしかしたら、私でも務まる・・・ そんなことを
思ってみたんですけど・・。
思ってみたんですけど・・。
きっと無理ですね・・・。突拍子もなさすぎて。』
しかしこなたは知っている。
みゆきさんの普段乗っている軽4輪に同乗したとき、
けっして飛ばしているわけではないが、
初心者を感じさせないなかなかスムーズな運転をしていたこと。
認知-判断-操作のサイクルが
とてもしっかりしていたこと。
中でも危険予知、状況判断は初心者離れしていたことを、
こなたは鮮明に覚えていた。
趣味分野においてクロックアップする、
こなたの頭脳がいまフル回転する。
必要なピースがいつのまにか、
今こなたの手元に集まっていた。
だが、そのパズルを組み上げるのは
こなたの意志だ。
『ねぇ、みゆきさん?』
いいえ、その、意志こそがきっと、
パズルの最後の1ピース。
『 ラ リ ー、 や ら な い か 。 』
【・・・to be continued to ~4th☆star~】
=========================================================
『観ないと・・・犯すからね!』
『いいえ・・・こなたを犯すのはあたしだけ。一万年と二千年前から決まってる』
『ちょ、違っ、待っ、アッー!』
=========================================================
【fin】
コメントフォーム
- GJっす!
車好きにはたまらn -- ブラウンGP (2009-04-03 00:39:08)