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たばことかがみん

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 こなたが昼食を取ろうとチョココロネを鞄から取り出した時、つかさが大きなため息をついていたのを見つけた。
「どうしたの。つかさ」
「あ、う、ううん。何でもないの」
 顔を真っ赤にしながら何度も首をぶんぶんと振る。
「嘘、だよね」
 しかし、こなたはあっさりと断定してから、ぐぐいっと近寄って見上げると、つかさはあっさりと口を割った。

「たばこ? かがみが?」
 予想外の答えに、こなたは目を白黒とさせながら問い返す。

「う、うん。お姉ちゃん。最近、吸い始めちゃって……」
「あの真面目屋さんのかがみがねえ」
「私、何度もやめようっていったんだけど、お姉ちゃんがうるさいってとても怒るの」
 言い争いをした場面を思いだしたのか、つかさは涙目になっている。
「うーん」
 可愛らしい顔を歪めるつかさに少し同情しながら、こなたは首を捻った。
「とりあえずかがみのとこに行ってみるか」
 そういえばお昼を最近一緒に食べていないなと思いつつ、隣の教室に顔を出したけれど、生憎と不在だった。
「柊はさっき出ていったぜ。トイレじゃね?」
 コーヒー牛乳をちゅーちゅーと吸いこみながら、日下部は首を傾けた。

「お姉ちゃん。どこかなあ」
 つかさの顔は曇ったままだ。心なしか頭上のリボンもしゅんとしているようにもみえる。
「こういうのは定番だね」
「こなちゃん。分かるの?」
「まあね」
 こなたは、不安げな表情を浮かべたままのつかさを連れて学校の屋上へ向かった。


「やっぱりね」
 高校生が隠れてタバコを吸う場所なんて大体知れている。屋上かトイレか体育館の裏くらいだ。
 案の定、屋上の端っこで手すりにもたれながら、かがみは紫煙をくゆらせている。

「お、お姉ちゃん!」
 こなたが声をかける前に、つかさが真っ青な顔になりながらかがみの元へと駆け出したが、
 妹の姿を認めた途端、かがみは不機嫌な顔つきに変わってしまっていた。
「なんでこんなところまで来るのよ!」
 つかさは怒りを露わにしている姉に怯えながらも心配げな顔つきで説得を試みる。
「だ、駄目だよお姉ちゃん。タバコなんて」
「……」
「お父さんもお母さんも、いのりお姉ちゃんも、まつりお姉ちゃんも心配しているよ」
「……るさいな」
「お願いだから、もうやめて。健康にだって悪いよ」
「あー もう、うるさいっ!」
「お、お姉ちゃん」
 伸ばした手を邪険に払われたつかさが、悲痛そのものの声をあげる。

「かがみんが、タバコを吸うとは意外だね」
 今まで黙っていたこなたがようやく口を開いた。
「単にむしゃくしゃしたから吸ってるだけよ!」
 不機嫌そのものの顔で吐き捨てるように言ってから、急に口の端を曲げる。
「まさか18禁のエロゲを楽しんでいるアンタが、タバコは法律違反だから吸うなって言うつもりはないでしょうね?」
「それは……」
 痛いところを突かれてこなたは押し黙る。

「と、に、か、く、アンタ達に迷惑かけている訳じゃないからほっといてよ」
「分かったよ。かがみ」
「こなちゃん!」
「今のかがみに何を言っても無駄だから」
 こなたは小さなため息をつくと、オロオロしているつかさを引きずって戻ることにした。


「まったくもう。余計なことを」
 こなたとつかさの背中が消えてから、かがみはずるずるとコンクリートの床に座り込み、ほどよく引き締まった両脚を伸ばす。
 そして、短くなったタバコを思いっきり吸ってから、ゆっくりと煙を吐き出した。
「ふ――」
 ニコチンを身体に入れるといろんな嫌なことが、煙と共に外に出ていくようで気分が楽になる。
「あいつら、本当にお節介なのよね」
 愚痴りながら、つまめない程小さくなるまで吸いつくしてから吸い殻を地面に落とし火を揉み消す。
 次の一本を取り出す為にポケットを探っていると、男子生徒がひとり、屋上へとあがってきた。

「柊、一本いい? 」
 その生徒は柊の姿を認めてからすぐ傍まで近付き、拝むような仕草をして頼んでくる。
「いいわよ。白石君」
「サンキュ」
 タバコを貰ってから、白石は胸のポケットを探り百円ライターを取り出した。
「ぷはっ」
 肺の奥まで届くように深く吸いこんだのか、とても満足そうな声をあげてから横に座る。
「なんかあったのか?」
 白石の問いに、かがみは気だるそうな表情を浮かべて答えた。
「おせっかいな妹がタバコをやめろと言ってきただけよ」
「柊つかさ……か」
「ほんと、余計なお世話ってことが分からないのかしらね」
「まあな」
 器用にたばこの輪っかを幾つかつくりながら付け加える。
「あいつは絶対悪いことしなさそうだしな」

「そーゆーアンタはなんで吸っているの?」
 かがみは、白石の細い目を覗きこみながら尋ねる。
「ん、ま、息抜きだな。最近、疲れることばっかりだし」
 柵にもたれながらぼやいた。
「確か、小神あきらの付き人をやってたわね」
「典型的なわがままアイドルだからな。いろいろ振り回されるわけ」
「ふうん」
 白石はあっさりと言ったが、あのぶりっこアイドルの裏は相当どす黒そうである。
「それで金貰っているんだから、文句言ってもしょうがないんだけどな」
「意外と大人ね」
「そうか」
 かがみの言葉に苦笑してから白石は思い出したように言った。

「柊、お前、アイドル向きかもな」


「へ!?」
 唐突に告げられて、かがみは変な声をあげてしまう。
「な、なんでそんな事思うのよ。そーゆーのってみゆきとかじゃない?」
「うーん。高良はあんまりアイドルって感じじゃねーんだよな。そりゃ美人だしスタイルは抜群だけどな」
 のんべりとした白石の表情が、急に業界人っぽく見えたのは錯覚なのだろうか。
「柊は、顔だちと体型はそこそこだけど、何より気が強いから」
「気が強い?」
「ああ、生き馬の目を抜く芸能界で、気弱な奴はまず生き残れない」
 白石は言い終わると、ポケットから一枚の名刺を取り出した。

「何?」
「ここうちの事務所だから、もし気が向いたら電話してくれ」
「はあ……」
 予想もしない展開に戸惑うかがみに構わず、白石は立ち上がった。
「じゃな。もうすぐ授業始まるぞ」
「ん、休む……」
 かがみの呟きには反応せず、あっさりと戻っていってしまった。

「まったく、何を考えているのやら」
 一人になってから苦笑を浮かべるが、名刺については、折らないように気をつけながらスカートのポケットに入れた。
 寝転んでから見上げると、澄みきった秋の青空がひろがっている。
 かがみはタバコをコンクリートに押しつぶしてから、ゆっくりと瞼を閉じた。

 屋上を吹き抜ける秋の柔らかい風が、夢の世界の住人となった少女のセーラーとスカートを小さく揺らしていた。

(おしまい)

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  • ないというか、いらない -- 名無しさん (2010-10-16 19:04:00)
  • オチはどうした! -- 名無しさん (2010-10-15 15:23:25)
  • オチ無くね? -- 名無しさん (2010-06-11 01:27:42)
  • まあ、学生のうちは少しぐらいすれてたほうがかっこいいしなあ。
    作者GJ -- 名無しさん (2009-11-18 19:02:44)
  • やにみんはやっぱりアレの影響なんだろうか? -- 名無しさん (2009-10-12 23:07:18)
  • 最近、かがみんのタバコの話が増えてきたな
    まぁおもしろいからGJ -- 名無しさん (2009-10-04 01:07:48)

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