kairakunoza @ ウィキ

CROSSING

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「絶望でよかった~虚無だけを望んだ~♪」
畳の上に横になり、眺める雲を眺めるひととき。
開け放たれた窓、涼しい風が頬をくすぐり、畳の匂いが仄かに香る。
これで、原稿がすでにあがっていれば何一つ心配事のない午後なのだが。
がらんと静まり返る家。俺一人の家。
中学のときはどちらかといえば一人ぼっちだったこなたも、高校になってからは仲のよい友達ができたみたいで、
それは同時に、父親である自分と接する時間が短くなったということで。
「約束と絆と思い出と時間と それだけが乾く命を潤す 軋む心を優しく包み込む~♪」
いつか、こなたが嫁に行ったら、一人ぼっちで過ごす日々が毎日になるのだろうか。
かなたが生きていたら、二人で縁側でお茶をすすりながらのんびりと過ごすという選択肢もあっただろう。
でも、がらんとした家は一人で過ごすには寂しすぎる。
こんな家で、かなたもこなたもいない家で一人ぼっちで過ごすのには、何十年という余生は長すぎる。
いっそ、かなたのところに行ってしまうのもいいかもしれない。
死んで来世で結ばれる手もあるじゃないか。本棚の『曽根崎心中』や『うたかたの恋』が語りかけてくる。
「そうなったら、こなたはどうするの?」
優しく髪を撫でる感触。頭の後ろの、やわらかい感触。
大好きな、かなたの膝枕。
「こなたも、もういい年だろう。いつまでもお父さんお父さんってくっついてるわけでもないだろうし」
「ふふっ、そうくん。強がっちゃって」
髪に触れる、かなたの優しい、柔らかい手。
昔はよくこうやって膝枕してもらったっけ。
「こなたもね、そうくんのこと大好きなんだよ。いつもはそっけない態度とってるけれど」
「そりゃないだろ、この前なんて『お父さんウザい』って言われたんだぞ。あんなにかわいかったこなたが~」
口に手を当てて、おかしそうに笑うかなた。
あれ、実はけっこー傷ついてたんだぞ。
「こなたもお年頃だし、恥ずかしがってるだけだよ。インターネットの向こうでも、高校でも
 こなたの友達はいっぱいいるけれど、こなたの側にいてこなたの事一番分かってあげられるのはそうくんだけなんだから」
「なんだ~、リアルでこなたの趣味を分かってあげられるってのが俺だけってことか?」
「ううん、それだけじゃないの。いつも容赦ない事言ってるけど、それはそうくんの事が大好きだからだよ。
 自分の側にいつもいてくれて、自分のことを一番大切にしてくれる、こなただって分かってるんだから」
膝の上にあった俺の頭を、畳の上にゆっくりと戻すかなた。
正座してた足を伸ばして、大きく伸びをする。
「それじゃ、私。ちっょと行ってくるから」
「あ、おい。待ってくれ」
手を伸ばそうとする。でも、身体は動かない。金縛りにかかったように。
「大丈夫、今日は……だし、ね」
視界からかなたが消える。
意思に反してまぶたがだんだん閉じていき……


「かなたっ!!」
そこは、さっきと変わらない自分の部屋。
いつしか窓から差し込む光はオレンジ色を帯びて、幾分涼しくなった風に混じるひぐらしの鳴き声。
いつもとかわらない、一人ぼっちの日常……
ガラガラと扉の開く音。反射的に駆け出した。
もつれる足、玄関へ繋がる扉を開ける。
玄関先に腰掛ける、長い髪の愛らしい姿。
「かな……」
「あ、おとーさん。ただいま」
振り返った顔には、かなたにはない左目の泣きぼくろ。
頭の上にはいつもはねている毛。いつも通りのこなた。
「ん?お父さん。どしたの?」
「い、いや~、なんでもないんだ」
さすがにかなたの夢を見てて、かなたが帰ってきたと思って飛び出してきたなんて恥ずかしくて言えるわけもない。
しどろもどろになってのを見て、こなたはニマニマとしたネコ口で、
「そっか~、お父さんそんなにお腹減ってたんだ。ちょっと待ってて。そうめんだからすぐ出来るから」
と、ビニール袋を掲げて台所へと走っていく。
手早く鍋を日にかけ、葱を刻む自慢の愛娘。
「あ、お父さん暇ならこれやっといて」
食材の入ったビニール袋からぽんぽーんと放り投げられたものをキャッチ。
大き目のナスとキュウリが一つづつ。
「なんだ、これでもう一品作るのか?」
「違う違う。今日が何の日か覚えてないの?」
そう言われてぼんやりと今日が何日か思い出す。
「ほら、早く作らないと、お母さん帰ってこれないよ」
もうさっき、帰ってきてた気がしたんだけれどな。
ナスとキュウリの馬を作るのなんて何年ぶりだろう。
戸棚から割り箸を探し出す。あとはカッターも。
四つに折った割り箸を差し込み終えた頃には、出来上がったそうめんがテーブルの中央に置かれる。
大きなガラスの入れ物に盛られたそうめん。こなたが麺つゆの入った入れ物を置く。一個、二個、三個……
三つ目の麺つゆの前に置かれた、ナスとキュウリの精霊馬。
「じゃ、食べよっか。三人で」
「お、おお」
向かいに座ったこなたの無邪気な笑顔。
二人で手を合わせ……
「「「いただきま~す」」」




おまけ
「ざわめく人の記憶 この空が無くなるその日までは生きてゆこう~♪」
「あれ、お父さんCROSS†CHANNELやったの?」
「ん、いいや。でも久々にやってみるかなぁ……あれ?」
『えっちなのはいけないとおもいます』




コメントフォーム

名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

添付ファイル
記事メニュー
目安箱バナー