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太陽の下、星空の下

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匿名ユーザー

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「たまにはさ、みんなでこうパーッと何かやらない?」
「は?」

 チョココロネをはもはもとほおばりながら、こなたが言う。今は昼休み、いつものメンバーで昼食を取っていた時のことである。
 向かい合わせの位置で弁当を食べていたかがみは、思わず間の抜けた返事をする。

「いやほら、テストもひと段落した事だし、息抜きとかしたいなって思ったんだけど」
「あんたはいつも抜きっぱなしじゃない」
「つかさとみゆきさんはどう?」
「私はこなちゃんに賛成~。せっかくテスト終わったんだし、何かやりたいな」
「私も賛成ですよ」

 こなたが両側の2人に声をかける。同じく弁当を食べていたつかさとみゆきも乗り気だ。

「ほらほらかがみ、みんなノリノリじゃん?」
「別に反対してる訳じゃないわよ。私だって息抜きはしたいわ。でも、どこで何をするかとか、具体的に考えてるの?」
「ううん、今思いついたから言ってみただけー」
「やっぱそんなとこかい。 ・・私は特に希望は無いかな。つかさ、あんたは?」
「私、お弁当とお菓子作ってピクニック行きたいな。お天気の日にみんなで食べるお弁当、きっと美味しいよ」
「それは楽しそうです。ぜひ行ってみたいですね」
「じゃあ、それで決まりー。お弁当とか飲み物とかは、かがみ以外の3人が分担して用意すれば大丈夫だよね」
「ちょっと待て。私以外、は余計だ」
「だってかがみんは作るより食べる方が得意じゃーん」
「うるさい! 私だってつかさに教えてもらいながら作ればちゃんとできるわよ。  ・・で、いつ行く?」
「天気予報だと、今週の土曜日が晴れていたと思います」
「じゃあ、土曜日に決定だね。お弁当の材料、買いに行かなくちゃ。お姉ちゃん、帰りに寄って行こうよ」
「そうね。こなた、あんたが言い出したんだから忘れるんじゃないわよ」

 予定を確認し合い、また4人はいつものように世間話を始めた。
 こなたは合いの手を入れながらチョココロネをほおばっている。他3人の弁当箱は、既に空になっていた。
 季節は梅雨時、どんよりと曇った蒸し暑い日であった。



< --柊姉妹-- >

「―これくらいでいいかな、お姉ちゃん?」
「こなたとみゆきも作ってくるから、これくらいあれば十分でしょ。あとは飲み物とお菓子ね」
「なんかわくわくするね。私、すごく楽しみー」
「私もよ。みんなで出かけるんだもん、楽しみに決まってるじゃない」
「お姉ちゃん、どこかに出かける時はいつも大喜びだったよね。てるてる坊主とか一緒に作ったりして」
「い、いつの話を持ち出すのよ! もう・・こなたに聞かれたらどうするのよ」
「 (・・こなちゃんは笑ったりしないと思うんだけどなあ) ねえ、お姉ちゃんもお弁当作ってみる?」
「私? うーん、どうしようかなあ・・失敗してみんなのテンション下げたりしたくないし・・」
「一緒に作れば大丈夫だよ。それに、お姉ちゃんの料理、ちゃんとお姉ちゃんの気持ちが詰まってるから美味しいよ」
「つかさ・・・・うん、分かった。頑張って作るから、教えてね」

 この日、台所ではかがみが休む暇もなく動き回っていた。


< --みゆき-- >

(味付けは・・こんな感じでいいかしら。みなさん薄めがお好きだったと思いますが・・)

 みゆきは、母から教わったとおりに味付けを施していく。家族以外の人に食べてもらう、久しぶりの食事。
 いきなりぶっつけ本番で作るのには不安があったので、予行演習としてカンを取り戻している最中である。
 一応、人並みに料理は作れるのだが、せっかくのピクニックでまずいものを作っては申し訳ない。

(ん・・少し焦がしてしまいました。次は火加減に気をつけて焼いてみましょう)

 出し巻き卵を皿に盛り付けながら、今の火加減とおおよその時間をメモする。同じ失敗をしないためだ。
 しかし、どんな些細な事も逐一書き込むため、机の上は作った料理とメモ用紙で溢れかえっていた。

(次はこれを作ってみて・・ああっ、もうこんな時間です・・)


< --こなた-- >

「ん、こなた? こんな夜遅くに何作ってるんだ?」
「あ、おとーさん。今度みんなでピクニックに行く事になったから、その時に持って行くお弁当の練習」
「そうか、まあ楽しんできなさい。  ―どれどれ」
「ちょ、何勝手につまみ食いしてんの」
「いや、美味いぞ。上手にできてるじゃないか、これならみんな喜んでくれるさ」
「そう言ってもらえると、作った方としてもありがたいよ」
「ははは、ごちそうさま。あんまり頑張りすぎて、カゼひいたりしないようにな」
「分かった。あれ、おとーさん、何持ってんの?」
「これか? 新しく発売したゲームだよ」
「あ、それ私も目をつけてたやつだ。さっそく遊―」
「こなたと一緒に遊ぼうかと思ってたんだが、邪魔しちゃ悪いみたいだしな。先に楽しませてもらうから、また今度一緒にやろうな」
「・・・・」



 そして、土曜日。
 天気予報どおり、空は快晴。空気も乾いていて、暑さもどことなく心地よい。
 4人はおもいおもいの服装で、こなたの家の近くの原っぱに腰を下ろしていた。
 この暑さの中、4人以外に人の姿は無い。

「んーっ、気持ちいいなあ。来てよかったね」
「たまにはこうやって、1日中のんびりするのも悪くないわね」
「とりあえず、お弁当でも食べない? お腹減ったよ」
「では、飲み物を注いでおきますね」

 レジャーシートを寄せて、全員が向かい合って座れるようにする。
 それぞれが作って持ってきた弁当の箱を空け、カップにお茶を注ぐ。まるでお花見をしているような光景だ。

「私は肉じゃがとハンバーグ作ってきたよ」
「私は出し巻き卵と焼き魚、それにスープを作ってきました。スープはこの水筒に入ってます」
「私たちは野菜サラダとチャーハン、あとおやつにクッキー。お姉ちゃんと一緒に作ったんだよ」
「まじで!? かがみ、お主やりおるな」
「とは言っても、ほとんどつかさが1人で作ったようなものだけどね」
「そんな事ないよ、お姉ちゃん頑張ってたよ」
「じゃ、さっそくいただきまーす」

 各自料理を取り分け、それぞれ口に運ぶ。どの料理も、素晴らしく美味しかった。
 かがみたちが持ってきたチャーハンは2人で作ったものだが、クッキーはつかさに教わりながらかがみが1人で作った。
 2人ともそれを黙っていたが、こなたもみゆきも、美味しいと言ってくれた。
 ・・そ知らぬ顔で肉じゃがをつつきながらも嬉しそうに微笑んでいたかがみを知っているのは、つかさだけ。

 やがて、3つの弁当箱と水筒の中身は空になった。代わりに4人が、少しだけ重たくなった事だろう。

「食べた食べたー。天気もいいし、このまま眠っちゃいそう」
「私もー。ふわぁぁ・・」
「あんたらは幸せそうでいいわね」
「でも、分かるような気がします。こうやって座っていると、気持ちいいですから」
「もう、みゆきまで・・まあ、たまにはいいかもね」


 4人とも、レジャーシートにごろんと仰向けになる。
 爽やかな風が吹いている。少しだけ汗ばんだ肌に、時折当たる風になんともいえない涼しさを感じる。
 少しだけ、ほんの少しだけ目を閉じているつもりだった。
 だが開放感と風の心地よさが眠気を誘い、ほどなく4人はひきずり込まれてしまった・・。



「――っ、いけない! みんな、起きて!」
「んー、どしたのかがみん?」
「お姉ちゃん、おはよう~」
「気持ちよかったので、ついうとうとしてしまいました」

 携帯電話の時計を見る。時刻は・・午後9時半。
 特に遅くなるとは言ってなかったので、みんな心配しているに違いない。

「安眠するにもほどがあるわよ! ほら、さっさと帰るわよ!」
「えー、まだ眠いよお姉ちゃん・・」
「つかささん、お家で休まれた方が疲れがよく取れるかと思いますよ」
「ほら、こなたも帰る用意して。不可抗力とはいえ、こんなに遅くなってるんだから」
「分かってるよー。あと5分、あと5ふ・・。  ―あ」
「何? どうしたの?」
「きれい・・」

 こなたは寝ていた時の姿勢のままで、焦点の定まらない寝ぼけまなこで空を見上げている。
 3人もそのまま空を見上げた。

 ―星空。雲ひとつ無い、吸い込まれそうな空に、満天の星々が輝いていた。
 本当に澄んだ空気の下でしか見られないような、透き通った漆黒の夜空。それを彩る星は、どれもが宝石のようだった。

「私、もうちょっとだけ、この空眺めていたいな。かがみ、お願い」
「・・・・いいわよ。私も・・、同じ気分」

 気付けば、また4人とも仰向けになっていた。誰が何を言うでもなく、同じ空を見つめている。

「・・あと何回」
「え?」
「あと何回、一緒になってこんな事できるのかな」

 こなたが呟いた一言。それは、他の3人にも聞こえていた。
 今は、ここでこうして繋がっていられる。けど、卒業したら・・それぞれが別々の道を歩き始めたら。
 みんな、分かっているから喋れなかった。もしかすると、これが最後になるかも知れない。そう思っているから、声を出せなかった。
 風も吹いておらず、辺りは静寂に包まれている。   やがて、かがみがゆっくりと口を開いた。

「また、集まればいいじゃない」
『え?』
「誕生日でも、お祭りでも、クリスマスでもお正月でも。あと何回、じゃない。何回でも、やるのよ。ずっと一緒よ、私たち」

 満面の笑みを浮かべながら話すかがみ。こなたも、つかさも、みゆきも、笑いながらその言葉に耳を傾けていた。
 夜がゆっくりと更けていく。時間を忘れて語り合う4人を、どこまでも続く星空が照らしていた。





「って、長々と話し込んでる場合じゃないわよ! ほら、そろそろ帰るわよ」
「ちぇー、はいはい。どうせ明日休みじゃん」
「そういう問題か」
「家に電話しておこうっと。怒られるかなぁ・・」
「ちゃんと事情を話せば、ご両親も許してくださると思います」
「でも、ここでお弁当食べて眠ってただけなんだけどねー」

 それぞれが家に電話を入れる。やはり、みんな心配していたようだ。
 こなたの家に遊びに来ていた、従妹のゆいに迎えに来てもらう。夜道は何があるか分からないからだ。
 人数オーバーなどお構い無しに、4人はパトカーで帰宅した。
 それぞれの家でこってりとしぼられ、3組の親から説教をくらったこなた。当分息抜きはこりごりとでも言い出しそうだが・・

「・・あ、かがみー? あのさ、次のテストが終わった後にでも――」
「いや、気が早えよ。というか懲りろよ」



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  • なんか、ほのぼのしました。 -- チャムチロ (2012-08-28 21:50:20)



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