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逆転☆裁判

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匿名ユーザー

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「はぁ~」
と、胸に手を当て、大きく息を吐く。
緊張してる……してないわけないじゃない。
厳粛な雰囲気に包まれる廊下。リノリウムの床にコツコツ響く自分の足跡。
この仕事を始めてから何度も来ているけれど、いまだになれない場所、裁判所。
今まで何百人もの人々を裁いてきた空間。このプレッシャーに押しつぶされそう。
いけない。ぺしぺしと頬を叩いて気合を入れる。
被告と会うのに私が不安な顔をしていたら、向こうにまで不安がうつってしまう。
絶対に失敗は許されない。
今日こそが弁護士かがみ、最初の法廷だからだ。

逆転☆裁判

「それで、もう一度確認するけれど、あなたは本当にやっていないのね」
「はい、いきなり手をつかまれて、『この人チカンです!!』って……」
私の依頼人、白石みのるくん。
最近ちょっと話題に出てきた若手の芸人だ。
「でもまさか、高校時代の同級生の弁護をするなんて思わなかったわ」
「僕も充分驚いてるよ。でも、こんな形で再会になるなんて……」
白石くんは落ち込んでいる。
まあ、無理もないかな。
白石くんの罪状は迷惑防止条例違反。いわゆる痴漢ってやつ。
痴漢による逮捕は、ずっと積み上げてきたものを一気に崩れ去ってしまった。
高校時代に番組のアシスタントとしてデビューして以来、常に頑張ってきたのに。
せっかくレギュラーをもらっていた番組からは降板。
デビュー当時からの相方だった小神あきらさんも、逮捕以来一度も合いに来ていない。
「大丈夫よ。あなたはやっていないんでしょ」
「は、はい……」
「なら大丈夫。真実はいつも一つ♪」
あ、これって確かこなたに借りたマンガにあったセリフだったな。
彼女とは高校以来あっていない。いや、正確には高校三年の1月以来。
そういえば、最近他の同級生にもあっていない。
「そうだ。無罪判決が出たら高校時代の同級生やって裁判勝利パーティやりましょ。ね、それ目指して頑張ろう?」
「は、はい。なんだかかがみさんを見ていたらなんだか元気が出てきましたよ」
部屋に入ったときに比べて白石くんの表情は幾分明るくなってきている。
よし、これで被告の方のメンタルは大丈夫。
最初から負けるつもりで裁判に挑んでは、勝てる裁判も勝てるはずがない。
「そろそろ時間です。法廷の方へ」
係員からの声がかかる。
「じゃ、白石くん法廷で会いましょう」
「はい、よろしくお願いします」
部屋を扉を閉めるまで、白石くんはずっと頭を下げていた。
よっし、ここからは私の仕事。
初めての裁判。絶対負けるわけにはいかないんだから!!

この場所に立つのは何度目だろう。
今までは偉い先生の付き添いで立っていた場所。
でも、今の自分には何の後ろ盾もない。
自分がミスをすれば、白石くんの人生がすべて駄目になってしまう。
そう考えるだけで今までに感じた事のないほどのプレッシャーが襲い掛かる。
ううん、ダメ。ここで気迫で負けてしまったら、この後の裁判まで負けてしまう。
「ではこれより開廷する。弁護側、準備はいいかね」
「は、はい、弁護側柊かがみ、準備は完了しています」
少し声が裏返ったけれど、大丈夫、許容範囲。
裁判長は検察側に目を移す。
「検察側は……まだ来ていないようだが、一体どうした事かね」
そう、検察側の席はいまだ空席。
おかしい、検察が遅れてくるなんて……
「お待たせしました」
法廷内に響き渡った声と、開かれるドアの音。
その声に、私はどこか聞き覚えがあった。
どこかで聞いた、懐かしい声。昔は私の側にいたのに、ここ数年聞くことのなかった声。
その声の主は……
「検察側、泉こなた。遅れてしまって申し訳ありません。準備完了しています」
私の敵として、私の目の前に現れた。


逆転☆裁判Ⅱ」へ続く



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