制アルカは高低アクセントなので、アクセントに覆いかぶさるように語末や文末にイントネーションが掛かる。イントネーションは音の高低で表わされるため、母音だけに掛かる(子音は音に高低を付けられない)。イントネーションが掛かる部分は音が若干伸びる。場合によってはアクセントの置かれた第1音節より音が高くなることもありえる。
イントネーションは急上昇調、上昇調、平調、下降調、急下降調、中止調、昇降調の7種がある。 7種の文字でそれぞれが書き分けられる。これらの文字は古アルカ由来である。また、イントネーションは文末でモダリティを表わす。例えば上昇は疑問や返答の要求などを表わし、下降は中立的な文の終わりを表わしたりする。
以下は少し細かい説明です。手っ取り早く記号の意味だけ表で覚え、残りは飛ばしましょう。
「文末音調と語音調」
1:はじめに
制アルカにおける音調は7種である。内訳は急上昇調、上昇調、平調、下降調、急下降調、中止調、昇降調である。また、音調には文末音調と語音調がある。文末音調は文末に現われ、文全体のイントネーションを表わす。語音調は語中の音節末に現われ、特定の音節のイントネーションを表わす。
文末音調は肯定や否定や疑問など、文の論理を表わすほか、疑念など、話者の心的態度も表わす。一方、語音調は話者の態度や言い方を表わすことに重点が置かれ、文の論理はあまり示さない。文末音調は7種の音調を持つが、語音調は下降調が欠け、6種の音調を持つ。これら13種の音調には全て固有の表意幻字が存在する。文末音調を表わす7字はどれも古アルカから来ている。また、語音調を表わす6字は文末音調を表わす字をそれぞれ小さくしたものである。
ここで以上を図示すると、以下のようになる。
上の字が実際のイントネーション
幻字です。下段は下降調のみが欠け、形は全て上段を小さくしたものです。転写は?や.などの組み合わせで表わしますが、やはり幻字を覚えることに専念してください。
ここでは7種の文末音調について述べる。それぞれの幻字の由来を述べ、音調の意味や機能についても解説する。
文字は
古アルカの
幻字mileejで、「高揚」を意味する。これはmilee(踊る)とjina(空)が語源で、原義は「空へ舞う」である。
mileejは
ミルフの
使徒記号とよく似た字である。ミルフの使徒記号は「舞い上がる」という意味であるため、mileejと比べると字形のみならず意味も似通っている。急上昇調は急激に高くなるイントネーションであることからこの字を当てた。
急上昇調は意外感や強い驚きを表わす。聞き手に急上昇調で問いかける場合、話し手は既に答えを知っていたり、聞き手に全うな答えを要求せずに、単に驚きや怒りを表わす場合が多い。たとえば"
es ti ke-u??"(何で行かないのよ!?)といった場合、 "
es ti ke-u?"(どうして行かないの?)と違い、話し手は真に聞き手が行かない理由を聞きたいわけではない。むしろ、行かない聞き手に対して驚きや怒りを覚えているといえる。疑問文の形をしていても実質疑問ではない。急上昇調では「純粋な疑問の意思」が漂白されている。
文字は
古アルカの
幻字kuunosteiraで、「疑問」を意味する。上昇調が疑問に使われることが多いため、この字を当てた。注意したいのが"?"と
kunoの"?"は同じではないということである。たとえばWhat do you do?において"?"は疑問文を表わすが、イントネーションは上昇しない。このように"?"は上昇調でない場合があるが、
kunoは純粋に上昇調しか表わさない。
上昇調は聞き手への疑問や、自分の発話内容に対する自信の無さなどを表わす。また、聞き手に対して返答を要求したり、行動を促したりする場合にも使われる。
an to-i?(どうしようかなぁ)
ti os-i to?(どう思う?)
文字は
古アルカの
幻字sikaで、「平ら」を意味する。平調は音の高さがほぼ変動せず、平らな印象を与えるため、この字を当てた。平調は文が継続していることや詠嘆を表わす。詠嘆の場合、そこで文が終止する。では、なぜ継続と詠嘆が同じ平調で示されるのか。文が継続しているということは本当はまだ言いたいことが残っていることを含意する。にもかかわらずそこであえて文を終わらせるという行為によって文全体に余韻が残る。ゆえに、平調は詠嘆の意味も持つ。
文字は
古アルカの
幻字gakonで、読点を意味する。
gakonは自然な下降を意味するのに使われていたので、
制アルカでもそれを踏襲する。下降調は文が自然に終わる場合の音調であり、話者の心理としては言い切りや納得や賛成を表わす。
文字は古アルカの幻字
temperaで、感嘆を意味した。当時は急下降調以外も表わしたが、制アルカではそれぞれの音調を独自の存在にするため、この字は急下降調のみを表わす。
急下降調は話者の落胆や怒りや驚きを表わす。聞き手に対する怒りや驚きを表わすという点で急上昇調と同じであり、実際のところ、急上昇調に置換できる例もある。特に
esを伴う文に置換できるものが多い。たとえば上掲"
es ti ke-u??"は"
es ti ke-u!"と置き換えることができる。
2-6:中止調:kili:!.
文字は古アルカの幻字
kiliで、「切る」を意味する。中止調は文が突然切られたかのように終わるため、この字が当てられた。中止調は文末で突然音が切れたような音調である。日本語で書き記すなら、驚いて「何?」と言おうとしたが、驚きのあまり「なっ…」と言ってしまうときに現われる音調である。
文の最後の音はふつう若干長く発音されるが、中止調の場合、突然途切れたように発音するため、かなり短く発音される。文の最後の音が母音ならばその母音は非常に持続時間が短く、子音ならば口の構えだけで実際は殆ど発音されない。
文字は古アルカの幻字
kimで、「曲がる」を意味する。昇降調では音が高くなったり低くなったりすることから、この字が当てられた。昇降調は相手に対する疑心や侮辱心などを表わす。また、相手に対する不賛成を示すが、これも丁寧な態度ではなく無礼な態度である。更に、聞き返しとしても使えるが、これもやはり無礼な聞き方である。
制アルカでは一般に昇降調は無礼な言い回しとされ、あまり良い意味を持たない。日本語の「はぁ!?」の言い方と同じなので、この感覚は良く分かるはずである。したがってこの音調はできるだけ使わないほうが無難である。
3:語音調
語音調は文末以外の部分の音調を述べる。文全体としては下降調でも、ある語だけは上昇調で発話するといったような場合に、語音調が現われる。
自然な発話では個々の語や、それを構成する個々の音節は厳密に言えば何らかの語音調を持っているが、実際に文字化される語音調は、その中でもとりわけ目立って書き手に注目されるものに限られる。
ここでは6種の語音調について述べる。それぞれの音調の意味や機能について解説し、用例を挙げる。尚、意味は基本的にそれぞれの文末音調と同じである。
語音調は一音節語なら語末に来るが、多音節語なら語末にくるとは限らず、語中に来ることもある。たとえば
homに平調を付ける場合、
hom?.しかありえない。だが、
xeltesに平調を付ける場合、 xelの音節にかかるかtesの音節にかかるかで「xel.?.tes」か「xeltes?.」に分かれる。
また、音節の切れ目についてだが、形態素間で区切れば良い。しかし
xeltesのような単純語の場合はどこで区切れば良いか。片方の音節に子音が集中しすぎないように切れば良い。つまり
xelt,
esや
xe,
ltesのようには切らないということである。
尚、語音調の名は文末音調に
tisを付けて表わす。語音調の小さな字体が語源となっている。
この場合、後の文の?はこの
ティクノが二人の子を持つかどうかという文全体にかかる疑問の意味を表わしている。それに対して.?は話題にしている神の名がティクノであるという確信がなく、聞き手にその名で良いか確認しているという意味を表わす。
平調がかかる部分の母音は長音になり、間延びする。この間延びした母音はその単語に偉大さ、巨大さ、入念さ、間抜けさ、遅さ、感動などのニュアンスを与える。
用例:"
tu ut tas tio.
tu et tas.?.
soa"
(それは単に大きいのではなく、こんなにもお~おきいのだ)
この場合、話し手は聞き手がダイヤモンドを買ったことに対して疑いを抱いている。話し手は部分否定をし、聞き手が買ったものはダイヤモンド以外のものであると考えている。単にダイヤモンドを買わなかったと全部否定する場合、.!?は
itm-aにかかる。
最終更新:2008年09月17日 14:35