微エロ:長波×慰安夫 東「鎮守府慰安労働」15-786


786 :鎮守府慰安労働:2015/01/20(火) 02:56:53 ID:0jvk/9ts
浦風との騒動から数日が経った。
風呂場で襲われて以降、浦風からの性的な接触は一切ない。
言葉を交わすほどには関係も回復しており、これといった問題は起きていなかった。
そんなある日の夜、東の部屋に来客があった。

「へー、田中少将ってそんな人物だったのか」
「そうそう! 生き方は不器用だったけど戦上手だったんだ!」

東の相槌に気を良くしたのか、夜にも関わらず長波のテンションは最高潮だった。
先の大戦では相手方からも国の名将と称されたほどの人物である。
戦果を上げても自らの手柄と声を上げることもなく、軍から栄誉に授かることもなかった。
アウトレンジ戦闘に固執していたため、果敢な作戦を好んだ軍と合わなかったのだろう。
あくまで戦上手、それでいて生き方下手と称したのはそういった部分だったのである。

時刻は既に夜も遅くなり始めるころだが、心から楽しそうな長波の話は東を飽きさせない。
今なお存命し、戦果を上げ続けているかのような身近な存在の話をしているようだった。
実際に会ったことのない相手にもかかわらず、思わず畏敬の念を抱かずにはいられない。
長波が一息ついたところで、脳裏に浮かんできた田中少将の姿に東の口から言葉が漏れる。

「一度会ってみたくなってきたな」
「おっ、東も分かってきたじゃないか。まぁ当然のことだけどね」
「ところで長波。話をしてもらったところで悪いんだが、門限は平気か?」

鎮守府の中には艦種別にそれぞれの寮が割り振られている。
長波は駆逐艦寮に入っているのだが、艦種ごとに門限は差別なく定められている。
門限が免除されるのは秘書艦のみであるのと同時に、管理人として見回ることもある。
思い出したように壁に掛けられている時計を見上げた長波の表情から血の気が引いた。

「や、やばっ。確か今の管理人って……しかもそろそろ回ってくる頃じゃないか!」
「すっかり話し込んじまったな、急いで戻った方がいいんじゃないのか?」
「だ、ダメダメ、もう見回ってる時間なんだから! あ、ごめん、匿って!」
「人の布団に飛び込もうとするんじゃねえ!」

血の気の引いた顔のまま、長波は頭から東の布団に滑り込んだ。
東が止めようとしたのも束の間、コンコンと乾いたノックが響く。
思わず振り返ると、風に消されてしまいそうなか細い声と共に秘書艦がやってきた。

787 :鎮守府慰安労働:2015/01/20(火) 02:57:34 ID:0jvk/9ts
「こんばんは、東さん。すいませんが長波さんを見かけませんでしたか?」

今日の見回りとして部屋を訪れた相手は、長波が恐れ、東まで固まってしまっていた。
鎮守府の中で指折りの、怒らせたら怖い一人であろう艦娘が見回りだったのだ。
十分な練度を持っているとして提督と大本営から改二を実装された軽巡洋艦、神通だった。
普段の大人しさと人当たりの良さからは想像もできないほどの、厳しい訓練で有名である。
特に駆逐艦に対しての訓練や、規律を守らない者に対しては厳しく当たっていた。

かすかに布団が震えているのは、必ずしも長波が震えているだけではないのだろう。
長波を匿っていることがばれたら、東自身もただでは済まない。
そんな恐怖感が、目の前に立っている神通の存在を大きく、そして恐ろしく見せていた。
喉が鳴るほどつばを飲み込みながら、東は悟られないように深呼吸をしながら口を開く。

「あ、あぁ、こんばんは。長波がどっか行ったのか?」
「えぇ。外出届は出ていないので敷地にはいると思ったんですが、ご存じないでしょうか?」
「悪い、ちょっと分からないな。見かけたら部屋に戻るように伝えよう、それでいいか?」
「お手数をお掛けします。長波さんは明日休日なので強く言えませんが、規律ですし……」
「まじめだな。分かった、見かけたら声をかけておく、神通ももう休んだらどうだ?」
「はい、ありがとうございます。では」

神通は小さく会釈をすると、そのまま東の部屋を後にした。
緊張がとけた東は大きく深呼吸を挟んで布団をめくり上げる。

「おい、もう神通なら行ったぞ。出てきても大丈夫だ」

神通が去り、ほっと一息ついたのも束の間だった。
布団に潜り込んだ長波に声をかけながら布団をめくると、思わず目を疑った。
考える暇もなく、信じられない光景を前に東は自然と口を開く。

「長波、お前、何してるんだ?」
「すー……はー……すー……はー」

布団の上にあったのは東の知る、男勝りのいつもの長波の姿ではない。
かといって神通の存在に怯えていた、一艦娘としての姿でもない。
そこには何故か顔を赤らめながら、枕に顔をうずめている長波の姿があった。

788 :鎮守府慰安労働:2015/01/20(火) 02:58:11 ID:0jvk/9ts
どこからか聞こえてくる空気音は、間違いなく長波の鼻から漏れている。

「おい、長波ってば、聞こえてるのか?」
「あぁ、うん、聞こえてる、聞こえてるから。すー……はー……」
「全然ダメじゃないの」

東はすっかり呆れてしまっていたが、それも無理のないことだった。
勇ましく戦場で戦っている長波、尊敬する艦長として生き生きと田中少将の話をした長波。
神通におびえこそしても、いつだって長波は勇ましい姿でいたはずだった。
しかし今、東の目の前にいるのはまるで別人のような長波の姿だった。

勇ましい姿は欠片も見えず、一心不乱に枕に顔を押し付けながら深呼吸を繰り返している。
聞こえてるからとは言うものの、言っているだけでほとんど耳には入っていないのだろう。
枕から顔を離すそぶりはおろか、東を振り返る気配すら見えないのだ。
失望したというよりも驚き半分呆れ半分で、何とも言えない感覚だけが渦巻いていた。

「仕方ない、おい長波! しっかりしろってば!」
「う、うん、大丈夫……はっ!?」
「大丈夫じゃなかったぞ」
「この長波としたことが、すまん!」
「いや、謝る必要はないんだけど、いきなりで驚いただけだ」
「違う、違うんだって!」

なだめようとした東の言葉を跳ね除けるように、長波は布団から転がり出る。
勢いよく飛んだ布団を受け止める東を見る顔は紅潮しきっていた。
よほど恥ずかしいのか、心なしか瞳は涙で潤んでいるようにも見える。

まるで生娘のように両手で顔を覆い、どうしたらいいか分からない様子が見て取れた。
両膝を合わせて床にぺたんと腰を下ろしている姿は、まさに乙女としか言いようがない。
今にも泣き出しそうなほど小さく見える長波は、東も初めて見る姿だった。
やがてしばらく悶えていた長波は、落ち着かないまま言葉を吐き出していく。

「違うんだ! あたしはあんなことする気じゃなかった、神通さんから隠れただけだ!」
「そりゃ分かってる。今夜のことは忘れて部屋に戻れ、な?」
「布団に入ってからすぐ、本当にすぐだ! 息を吸った瞬間に、心地よくなったんだ!」
「暴露せんでいいから、何もいわずに今すぐ――」

789 :鎮守府慰安労働:2015/01/20(火) 02:58:51 ID:0jvk/9ts
「これじゃ変態じゃないか!? なぁ教えてくれ東! あたしは変態なのか!?」
「落ち着くのは難しそうだな」

取り乱している長波の姿に、東は頭を抱える以外何もできなくなっていた。
性に目覚め始めたことを恥らう中学生のような姿は、いかんとも慰めにくいもの。
しかし門限が過ぎるような時間にあまり騒いでも鎮守府全体に迷惑がかかる。
そう考えた東が取った行動は、とにかく味方を作ってやることと踏んだものだった。

「大丈夫だ長波。それはどうなのと思われるようなことなんて誰しもある」
「そ、そんなこと言われたって分かんないよ!」
「例えば俺だ。俺だってにおいを嗅いで心地よくなるなんてのは珍しくないぞ」
「本当か! あたしだけってわけじゃないんだな!?」
「もちろん。だからそんなに慌てることなんてない」

東の目論見どおり、長波の表情は一瞬でぱぁっと擬音が出そうなほど明るくなった。
自分だけがおかしいのではないかと言うのなら、まずは味方になって話を聞く。
敵味方の話ではなかったとしても、同じ立場に立てば仲間意識が芽生えることはある。
鎮守府で東が名を広め、多くの交友関係を築くことができた背景にはそれがあった。

しかし再び長波の表情が曇り出し、静かに手が自らの服にかかり始める。
慣れた手つきで夕雲型が身に着けている紫の上着を脱ぎ去り、純白のワイシャツがあらわになった。
あまりにも慣れた手つきに東が止めるのも間に合わず、気付けばボタンも外れている。
豊満な胸がわずかに露わになるのも構わず、長波は抜けきらない不安を当たり散らした。

「じゃあ証拠を見せてくれ。お前も心地良くなるって!」
「……お前、自分が何言ってるのか分かってないだろう。ひとまず部屋に戻れってば」
「分かってるから大丈夫、東も匂いで心地良くなるって分かったら気も楽だから」
「話を聞いてくれって! お前は変態なんかじゃ――!?」
「来てくれ、東」

今までの取り乱しようはどこへ行ったのやら。
不自然なほど落ち着いた声と共に、両手を差し出してきた長波の姿に東は息を呑んだ。
逆らい難くしているのは恐怖でも反論できないような長波の強制力でも何でもない。
ただそこにいる一人の美少女が、純粋に待っているという事実だけが東を縛り付けていた。

790 :鎮守府慰安労働:2015/01/20(火) 03:00:02 ID:0jvk/9ts
どうしたものかと考えている間も、長波の視線は東を捉えて微動だにしない。
ただじっと待っている姿は、艦娘だからとか女だからとかいう問題ではなかった。
重い腰を上げた東の脳裏に、つい先ほどまで明るく話していた長波の姿がよみがえる。
田中少将の話を繰り返ししては、心から尊敬していた彼女に東は思った。
恐らく共感していたであろう部分は、決して生き方下手なのではなかったのだ。

(長波って、ただ純粋なんだろうな)

もしかしたら匂いを心地良くなってしまう自分は、変態なのかもしれない。
もしかしたら東は庇ってくれているだけで、本当は自分とは違うのかもしれない。
もしかしたら東は自分と同じように、匂いを嗅いで心地良くなる仲間なのかもしれない。

方向性や話の展開はひとまず置いておいて、そこにあるのはどれも純粋な気持ちだった。
純粋な恐怖だったから東がかばってくれた時に嬉しがったし、取り乱したりもした。
本当にそうか否かを確かめたいから、今、両腕を伸ばして東が来るのを待っている。
ならばと覚悟を決め、東は長波と正面から向かい合おうとして――こけた。

「まそっぷ!」
「うひゃあっ!」

意味不明な悲鳴を上げながら転んだ東は、そのままうつ伏せに倒れ込む。
危うく頭突きをしてしまいそうではあったが、なんとか長波は身を反らして回避した。
悲鳴を上げながらも、咄嗟に反応したのはさすがに機敏な駆逐艦娘と言える。
しかし幸い中の不幸とでもいおうか、東の倒れ込んだ場所が悪かった。

「これが膝枕というものか、いい感じだな。しかし長波、そろそろ戻った方がいい」
「そういうことは仰向けになってから言え。鼻息がくすぐったいぞ」
「すまん。ついいい匂いだったもんでな、だが今日は帰れ。な?」
「いや、だけどあたしの話がまだ――」
「話したいことがあるなら聞いてやる。またいつでも来ていいから」

言葉を遮りながら服を着せ、長波を追い出した東の表情は暗かった。
何も考えたくないとでもいうように身を布団に投げ、ぼそりと一言だけ言葉を漏らす。

「匂いで興奮する挙句、駆逐艦相手に二回も過ちかけたのか……畜生め」

東の受難はまだ続く。


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最終更新:2015年01月26日 06:38