保守主義とは何か

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#LEFT(){&italic(){&sizex(4){自ら『保守主義者』を名乗っているアメリカ人は、事実は自由主義者である。}}} #RIGHT(){&SIZE(15){&BOLD(){~ B.クリック(英国の政治学者)『アメリカ保守主義の奇妙な探求』(1955年)}}} ---- #center{&size(14.5){&bold(){様々な概念と混同されやすい保守主義(conservatism)について、考えていくページ}}} ---- <目次> #contents() *■1.初めに 全く正反対の政治的信条を持つ「リバタリアン(自由至上主義者)」と「コミュニタリアン(共同体主義者)」が共に「保守主義者」と誤認されたり、「ナショナリズム(国民主義・民族主義など様々に定義され得る思想)」が「保守主義」と混同されています。 しかし、その思想の内実や沿革を調べれば、「保守主義」は「自由主義(19世紀末~20世紀初めに歪曲されて“マイルドな社会主義”を意味するようになった所謂リベラリズム(ニュー・リベラリズム)ではなくて、18世紀イギリスで確立された古典的自由主義と、20世紀半ば以降におけるその再興であるネオ(=再興)リベラリズム)」に相当する思想であることは明らかです。 このページでは、そうした他の概念と混同され易い保守主義についてまとめます。 *■2.保守主義とは何か **◆辞書による説明 |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(conservatismの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):歴史的に発展し、それゆえに継続性と安定性の明証である制度(institutions)と慣行(practices)への愛好を表す政治的態度またはイデオロギー| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義は近代においてフランス革命に対するリアクションとしてエドマンド・バークの著作を通じて最初に表明された。バークはフランス革命は、その理想が、その行き過ぎによって汚された(tarnished)と信じていた。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義者は、変化の遂行は最小限(minimal)で漸進的(gradual)であるべきだと信じている。彼らは歴史を愛好し、理想的(idealistic)であるよりは現実的(realistic)である。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):著名な保守主義政党として、英国の保守党、ドイツのキリスト教民主同盟、アメリカの共和党、日本の自由民主党がある。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(conservativeの項)より抜粋翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):(政治的文脈において)自由企業・私的所有・社会に関する保守的な理念を愛好すること| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(conservatismの項)より全文翻訳| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義とは、変化が社会にとって為されることが必要とされる場合において、それは漸進的(gradual)に為されるべきだと信じる政治的哲学である。| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義とは、変化や新しいアイディアを受け入れることを嫌がることである。| **◆自由主義思想家による説明 |BGCOLOR(orange):(1)|>|>|>|BGCOLOR(orange):D.ヒューム(スコットランド出身の英国外交官・道徳/政治哲学者、歴史家)『道徳・政治・文学に関する随想』(1742)| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「英国においては到底存在する見込みはないと思われる一政体について、これ以上論議を重ねる必要はありません。我々の間ではどの党派もそれを目的としてはいないように見えます。出来るだけ我が国の古来の政体を育て発展させるようにしましょう。大変危険な新型の諸政体に対する情熱を掻き立てないようにして。」| |BGCOLOR(orange):(2)|>|>|>|BGCOLOR(orange):E.バーク(アイルランド出身の英国下院議員・思想家)『フランス革命の省察』(1790)| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「思慮深い警戒心、綿密周到さ、気質的というよりはむしろ善悪判断から来る小心さ、これらが最も断固たる行為をする際に我々の父祖が拠り所とした指導原理の中にありました。彼らは、あの光-つまりフランス人の紳士諸君が自分たちはそれに大いに与っていると吹聴するあの光-に照らされてはいなかったために、人間とは無知で誤りやすいものである、ということを肝に銘じて行動したのでした。」| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「国家と法を聖別するにあたって、まず第一に則るべき最も重要な原理の一つは、それら国家や法を一時的に、あるいは終身で保有している人々が祖先から受け取ったものや本来子孫に属するものを忘れて、あたかも自分だけが完全な主人であるかのように行為する、といったことがあってはならない、ということです。&BR()即ち、自らの社会の根源的な構造を勝手に破壊し、それによって限嗣相続の制限を解除したり相続財産を浪費したりしても、それは自分たちの権利のうちなのだ、などと思ってはならない、ということです。&BR()もしもそうしたことが行われれば、彼らは後から来る者に対して、住むべき家の代わりに廃墟を残すことになるでしょうし、彼らが自らの祖先の諸制度を殆ど尊重しなかったのだから、彼らが考え出したものもやはりそんなに尊重するには及ばないのだ、と教えるようなものでしょう。」| *■3.保守主義の特色・特質 **◆1.バーク的保守主義の特色 |BGCOLOR(pink):(1)|>|BGCOLOR(white):(保守主義とは)常に「現状(status quo)」の中に、①「守る(conserve)べきもの」と、②「改善(improve)すべきもの」を弁別し| ||BGCOLOR(aqua):<1>|BGCOLOR(white):「絶対的破壊(absolute destruction)」の「軽率さ(levity)」と| ||BGCOLOR(aqua):<2>|BGCOLOR(white):「一切の改善を拒絶する頑迷(the obstinacy that rejects all improvement)」| ||BGCOLOR(white):|BGCOLOR(white):を共に排除しようとするもの、であり| |BGCOLOR(pink):(2)|>|BGCOLOR(white):そのような「保守(preserve)」と「改革(reform)」とにあたっては| ||BGCOLOR(aqua):<1>|BGCOLOR(white):古い制度の有益な部分が維持され| ||BGCOLOR(aqua):<2>|BGCOLOR(white):「改革」によって「新しく付け加えられた」部分は、これに「適合するようにされるべきであり」| ||BGCOLOR(aqua):<3>|BGCOLOR(white):全体としては「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」が保たれることを政治の眼目とする| ||BGCOLOR(white):|BGCOLOR(white):という所に、その顕著な特色がある。| つまり ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|BGCOLOR(white):「現状(status quo)」の中に常に「守る(conserve)べきもの」を見出すことを起点として政治的思惟が進行する、という思考形式と、| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|BGCOLOR(white):「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」への政治的志向| の2つが、E.バークに代表される保守主義の核心的特色である。 |BGCOLOR(white):この様な保守主義的政治態度は、政治情勢により「右」へ振れる場合にも、あるいは「左」に振れる場合にも、その振幅を有限化するばかりでなく比較的にいって僅少なものにする。| |BGCOLOR(white):なぜなら、いずれの方向にせよ、過度の振れは「守るべきもの」を放棄することを意味し、また「左」へ振れすぎるときには、進歩の連続性が切れてしまうからである。| 従って、バークの保守主義の哲学は、一言にして尽くせば、文字通りの「政治的安定性(political stability)」の哲学、「政治的力学」の哲学、高度の政治的「復元力(stability)」を持つ哲学に他ならない。 **◆2.保守主義の一般的特質 |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):思想形成の反定立(antithesis)性|BGCOLOR(white):保守主義は既に定立(thesis)された思想の衝撃を待って初めて、その対立者として自己の思想形成を開始する。| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):思想内容の他者被規定性|BGCOLOR(white):保守主義は、思想内容が他者によって(つまり定立された別の思想によって)方向づけられ限定される。&br()即ちバークにおいては「アンチ・フランス啓蒙思想」「アンチ・デカルト流理性主義」であり、ハイエクやポパーにおいては「アンチ・社会主義/共産主義その他の全体主義」「アンチ・リベラリズム/福祉国家」である。| |BGCOLOR(#CCCC99):(3)|BGCOLOR(#CCCC99):高度の状況的機動性(状況適応性)|BGCOLOR(white):保守主義は、それが置かれた具体的状況に密着した思考形式と実現手段を提供する。&br()つまり保守主義は、その対抗思想のように理論が先行した思考様式ではなく、常に「現状(status quo)」を前提として歴史的継続性の中で、その内容と対応策を見出す。&br()「イギリス人は新事態が起こるたびごとにそれを如何に利用するかを心得ている」(A.ヒットラー)&BR()即ち保守主義は、①反省的判断力による個性的状況の敏速な把握と、②政治的実践へのその巧みな活用、を本領とする。| |BGCOLOR(#CCCC99):(4)|BGCOLOR(#CCCC99):無原則的状況主義(opportunism)との区別|BGCOLOR(white):保守主義は、一般に「中道(mid-roader)」あるいは「中間(centrist)」と呼ばれる「無原則主義(opportunism、便宜主義・日和見主義)」と違って一定の政治的原則/政治的価値を保持する。| |BGCOLOR(#CCCC99):(5)|BGCOLOR(#CCCC99):貴族政治的(aristocratic)志向性|BGCOLOR(white):保守主義は、民衆政治(democracy)を衆愚政治(mobocracy)に陥り易いものとして警戒し敬遠する傾向がある。 ※関連ページ [[デモクラシーの真実]]| **◆3.保守主義の実質 |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):「現状(status quo)」における「保守(conserve)すべき」内容の発見可能性の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):保守主義は一定形態の歴史意識(但しマルクス主義的な歴史発展法則を肯定するものではなく「過去」と「現在」との継続性という意味での歴史意識)と、そうした歴史を把握する人間の能力(つまりデカルト的な普遍的理性ではなく、歴史的に形成され、個別的に存在する広義の理性)を肯定している。&br()なぜなら保守主義は「現状(status quo)」の中に一定の「保守すべき」(即ち一定の積極的に望ましいと評価し得る)内容を見出す思想であり、それは従って人間は歴史的な経緯のうちに「保守すべき」価値内容を弁別する能力を保有することを肯定しているからである。| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):政治目的およびその実現手段の「既存性(existence)」の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):一般に政治的思惟は、①政治的目標の設定に始まり、②その適合的な実現手段を発見し、③その手段の効果的適用による目標実現によって完了する。&br()しかし保守主義は、①この政治的思惟の起点を「現状(status quo)」における「保守すべき」内容の発見に求め、かつ、②その実現手段をも「現状」に求めている。&br()「真の政治家というものは、常に、どうすれば自国の現存の諸材料を、最大限度に利用することになるかということを考慮するものである」(E.バーク)| |BGCOLOR(#CCCC99):(3)|BGCOLOR(#CCCC99):「申し分なく継続的な進歩(well-sustained progress)」の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):保守主義は「歴史の流れに順行した」政治、言い換えると慣例を活かし「現状(status quo)」を絶えず制度的ないし観念的に過去に連結していくような政治を理想とする。&br()政治における新奇な、あるいは革新的な企図は、保守主義の歴史意識にとっては歴史の継続性に対する撹乱要因に過ぎない。| |BGCOLOR(#CCCC99):(4)|BGCOLOR(#CCCC99):「自然的」人間性に対する「歴史的」ないし「社会的」人間性の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):(5)|BGCOLOR(#CCCC99):「自然的」理性に対する「歴史的」理性の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):(6)|BGCOLOR(#CCCC99):「抽象的悟性(abstractive understanding)」に対する「歴史的悟性(historical understanding)」の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):「旧い先入見prejudice」と「理由のない慣習」の尊重| *■4.保守主義と自由主義の関係 リベラリズムについては [[ハイエクと自由主義]] [[リベラリズムの真実]] を参照のこと。 要約すると、リベラリズムには歴史的に以下の4段階があり、このうち日本語の語感で「自由主義」に相当するのは<1>と<3>である。 |BGCOLOR(teal):COLOR(white):|BGCOLOR(teal):COLOR(white):リベラリズムの段階・種類・区分|BGCOLOR(teal):COLOR(white):時期|BGCOLOR(teal):COLOR(white):意味内容| |BGCOLOR(#CCCC99):<1>|BGCOLOR(#CCCC99):古典的リベラリズム(classical liberalism)|16世紀~19世紀|①個人の権利・自由の確保、②政府権力の制限、③自由市場を選好…消極国家(夜警国家)| |BGCOLOR(#CCCC99):<2>|BGCOLOR(#CCCC99):ニュー・リベラリズム(new liberalism)|19世紀末~20世紀|経済的不平等・社会問題を緩和するため市場への政府介入を容認→次第に積極的介入へ(積極国家・福祉国家・管理された資本主義)&br()社会主義に接近しているので社会自由主義(social liberalism)と呼ばれ、自由社会主義(liberal socialism)とも呼ばれた。| |BGCOLOR(#CCCC99):<3>|BGCOLOR(#CCCC99):再興リベラリズム(neo-liberalism)|1970年代~|スタグフレーション解決のため自由市場を再度選好。&br()<2>を個人主義から集産主義への妥協と批判し、個人の自由を取り戻すことを重視| |BGCOLOR(#CCCC99):<4>|BGCOLOR(#CCCC99):現代リベラリズム(contemorary liberalism)|現代|①不平等の緩和、②個人の権利の拡張、を含む社会改革を志向&br()1970年代以降にJ.ロールズ『正義論』を中心にアメリカで始まったリベラリズムの基礎的原理の定式化を目指す思想潮流で、①ロールズ的な平等主義的・契約論的正義論を「(狭義の)リベラリズム」と呼び、②それに対抗したR.ノージックなど個人の自由の至上性を説く流れを「リバタリアニズム(自由至上主義)」(但し契約論的な構成をとる所はロールズと共通)、③また個人ではなく共同体の価値の重要性を説くM.サンデルらの流れを「コミュニタリアニズム(共同体主義)」という。| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(#CCCC99):補足説明|>|<2>ニュー・リベラリズム(new liberalism)と<4>再興リベラリズム(neo-liberalism)は共に「新自由主義」と訳されるので注意。&br()もともと<1>古典的リベラリズムに対して修正を加えた新しいリベラリズム、という意味で、<2>ニュー・リベラリズム(訳すと「新自由主義」)が生まれたのだが、世界恐慌から第二次世界大戦の前後の時期に、経済政策においてケインズ主義が西側各国に大々的に採用された結果、<1>に代わって<2>がリベラリズムの代表的内容と見なされるようになり、<2>からnewの頭文字が落ちて、単に「リベラリズム」というと<2>ニュー・リベラリズムを指すようになった。&br()ところが、1970年代に入るとインフレが昂進してケインズ主義に基づく経済政策が不況脱出の方途として効かなくなってしまい、市場の自律調整機能を重視する<1>の理念の復興を唱える<3>ネオ(=再興)・リベラリズムに基づく政策が1980年前後からイギリス・アメリカで採用されるようになった。そのため今度は、<3>を「新自由主義」と訳すようになった。| 保守主義は、 |BGCOLOR(#CCCC99):①|BGCOLOR(#CCCC99):18世紀末のE.バークの時代においては、実質的に「保守すべき」内容として、<1>古典的自由主義を意味し、|BGCOLOR(white):対抗思想|BGCOLOR(white):フランス啓蒙思想(特にルソーの思想)、デカルト流理性主義| |BGCOLOR(#CCCC99):②|BGCOLOR(#CCCC99):20世紀半ば以降のF.A.ハイエクやK.R.ポパーの時代においては、実質的に「保守すべき」内容として、<3>再興(=ネオ)自由主義を意味した。|BGCOLOR(white):対抗思想|BGCOLOR(white):社会主義・共産主義その他の全体主義、<2>ニュー・リベラリズム(所謂リベラリズム…福祉国家など大きな政府による実質的な個人の自由の剥奪)| ⇒「保守主義の他者被規定性」の項目参照。 *■5.保守主義とナショナリズムの区別 ナショナリズムについては [[ナショナリズムとは何か]] を参照のこと。 ※保守・右翼・極右をどう区別するかは定義の仕方次第だが、一応の目安として以下の基準有効と思う。 |BGCOLOR(olive):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:内容|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:関連ページ| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:保守|BGCOLOR(white):国内外の&color(crimson){&bold(){全体主義}}(共産主義・社会主義・リベラリズムなどの[[集産主義>「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き]])の脅威から自由を守る(=&color(crimson){&bold(){自由主義}})|BGCOLOR(white):[[保守主義とは何か]]&br()[[ハイエクと自由主義]] [[リベラリズムの真実]]| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:右翼|BGCOLOR(white):他国・他国民の&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}の脅威から自国・自国民を守る(=&color(crimson){&bold(){解放的ナショナリズム}})|BGCOLOR(white):[[右翼・左翼の歴史]]| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:極右|BGCOLOR(white):他国・他国民に対して&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}を発動している段階。&br()なお極右と極左は紙一重の双生児であり、極左も当然&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}を発動している段階である。|BGCOLOR(white):| &ref(http://www35.atwiki.jp/kolia?cmd=upload&act=open&pageid=350&file=stance.bmp) &size(11.5){※政治的スタンス5分類・8分類について詳しくは [[政治の基礎知識]] 参照。} ---- ※以下、作成中 *■6.保守主義と自由至上主義の区別 **◆自由至上主義(libertarianism)の辞書による説明 |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(libertarianismの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):個人の自由を強調する政治思想。自由至上主義者は、各個人は、自己の行動が他人の自由を侵害しない限り、完全な行動の自由を保持すべきだと信じている。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):自由至上主義者の政府に対する不信は、19世紀の無政府主義(anarchism)に起源を持つ。典型的な自由至上主義者は、所得税やその他の政府の課税ばかりでなく、社会保障(social security)や郵便サービスのような他の多くの人々が有益だと思っているプログラムにも反対する。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):アメリカでは彼らの見解はしばしば伝統的な政党間の境界を横断する(例えば、自由至上主義者はほとんどの共和党支持者と同じ様に銃規制に反対するが、ほとんどの民主党支持者と同じ様に禁止薬物の合法化を支持する)。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):自由至上主義者の間で愛好されている人物はヘンリー・デビット・ソローとアイン・ランドである。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(libertarianismの項)より抜粋翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):市民生活に対する政府の介入を最小限のもののみとすることを唱導する極端な自由放任の政治思想。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):その支持者は個人の道徳は政府の扱う事柄ではなく、それゆえ麻薬使用や売春のような異論もあるところではあるが参加者以外の誰も害さない活動は不法とされるべきではないと信じている。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):自由至上主義者は無政府主義者と主張内容を共有しているが、但し自由至上主義者は一般には、より一層政治的権利と関連付けられる(主としてアメリカ)。自由至上主義は伝統的な自由を社会的正義に結びつける配慮が欠落している。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(libertarianの項)より全文翻訳| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):リバタリアンであったり、またリバタリアン的な態度の人とは、人々は自分が望むままのやり方で考えたり振る舞う自由を持つべきだという理念を信じ、また支持している人である。(= リベラル)| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):自由至上主義者とは自由至上主義の見識を持つ人である。(= リベラル)| *■7.保守主義と共同体主義の区別 **◆共同体主義(communitarianism)の辞書による説明 |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(communitarianismの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):①政治生活の実行、②政治制度の分析・評価、③人間のアイディンティティと安寧幸福の理解、に関する共同体(community)の重要性を強調する政治・社会思想。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):共同体主義は1980-90年代に、ジョン・ロールズ等の思想家による理論的リベラリズムに対する明白な反対思想として興起した。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):共同体主義者によれば、リベラリズムは非現実的なほどに原子化した抽象的個人という概念に寄りかかっており、また自由と自律といった個人的価値に余りにも重要性を置き過ぎている。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):共同体主義の主要な代表者には、アミタイ・エツィオーニ、マイケル・サンデル、チャールズ・ティーラーが含まれる。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):なお、集産主義を参照のこと。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(communitarianismの項)より抜粋翻訳| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):小規模な自治的共同体に基礎を置く、社会組織に関する理論または制度。| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):共同体に対する個人の責任と、家族という単位の社会的な重要性を強調するイデオロギー・| ※コリンズ-コウビルド英語辞典には項目なし。 *■8.参考図書 |&ref(http://www35.atwiki.jp/kolia?cmd=upload&act=open&pageid=1078&file=nakagawa.gif)|[[『保守主義の哲学―知の巨星たちは何を語ったか (単行本)』(中川八洋:著)>http://www.amazon.co.jp/dp/4569633943/]]&br()ハイエクの思想を機軸に西欧哲学の正統保守主義(真正自由主義)の系譜と、それに対立する邪悪な全体主義思想の系譜を峻別して分かり易く解説。&br()エドマンド・バークを初めとする西欧の正統保守思想の概略をこの一冊でマスター可能。&br()後は本書で紹介されている興味の湧く各思想家の書に挑戦しましょう。| ---- 【関連】 [[デモクラシーの真実]] [[リベラリズムの真実]] [[ハイエクと自由主義]] ---- *■9.ご意見、情報提供 - どなたが編集なされたのかは存じ上げませんが、驚くほど大変よくできた解説で、円環図による思想分類には感激させられました。ありがとうございます。 -- ななし (2010-12-17 10:28:24) - すばらしい!!みんなで日本を護るために『保守主義』を学習しよう -- 名無しさん (2010-12-18 15:26:59) - エドマンド・バーク保守主義 - エドマンド・バーク リバイバルも参考になる。→  http://www.geocities.jp/burke_revival/ -- 名無しさん (2011-01-08 12:01:55) - ↑のサイトだけではという人は 保守 - Wikipediaを参照すべき  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%AE%88 -- 名無しさん (2011-01-08 12:07:42) #comment #include_cache(政治理論・共通)
|BGCOLOR(#A4FFE9):改行ズレ/画像ヌケ等で読み辛い場合は、[[ミラーWIKI>http://w.atwiki.jp/sakura398/pages/183.html]]または[[図解WIKI>http://w.atwiki.jp/kbt16s/pages/293.html]]をご利用ください| #LEFT(){&italic(){&sizex(4){自ら『保守主義者』を名乗っているアメリカ人は、事実は自由主義者である。}}} #RIGHT(){&SIZE(15){&BOLD(){~ B.クリック(英国の政治学者)『アメリカ保守主義の奇妙な探求』(1955年)}}} ---- #center{&size(14.5){&bold(){保守主義(conservatism)の概念を総合的に考察し整理・明晰化するページ}}} ---- <目次> #contents ---- *■1.このページの目的・構成 ---- 全く正反対の政治的信条を持つ「&COLOR(CRIMSON){リバタリアン}(自由至上主義者)」と「&COLOR(CRIMSON){コミュニタリアン}(共同体主義者)」が共に「我こそ保守主義者だ」と主張していたり、「&COLOR(CRIMSON){ナショナリズム}」が「保守主義」と混同されています。 あるいは、「&COLOR(CRIMSON){小さな政府}」こそ「真の保守」だと言う人、また「&COLOR(CRIMSON){国体護持}」こそ「真の保守」だという人もいます。 このページでは、そうした様々に主張されている保守主義の内実をその歴史的沿革や辞書的な概念定義から、客観的に検討し、 |>|BGCOLOR(#CCCC99):&COLOR(CRIMSON){&BOLD(){保守主義}}とは、| |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):ルソーの革命思想/デカルトに始まる設計主義的合理主義/共産主義/社会主義/ファシズム等の&COLOR(CRIMSON){&BOLD(){全体主義思想}}に対する&COLOR(CRIMSON){&BOLD(){対抗思想}}として発生したものであって、| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):その内実は、&COLOR(CRIMSON){&BOLD(){歴史の中で育まれてきた価値多元的で寛容な自由}}を守ろうとするもの、即ち&COLOR(CRIMSON){&BOLD(){自由主義}}(左翼的リベラリズムではなく真正の自由主義)である| とするのが、最も整合的な理解であることを説明していくとともに、 &COLOR(CRIMSON){リバタリアニズム・コミュニタリアニズム・ナショナリズム}など保守主義に&COLOR(CRIMSON){部分的に類似する諸概念}について、その&COLOR(CRIMSON){関係を整理・明晰化}していきます。 そして最後に、以上で得られた&COLOR(CRIMSON){保守主義の標準的な理解}をベースとして、&COLOR(CRIMSON){日本における保守主義}の内実の検討に踏み込みます。 &include_cache(日本思想と西洋思想の統一的把握) ---- *■2.保守主義、及び関連する諸思想 ---- **◆1.保守主義・関連する諸思想の説明 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) &include_cache(保守主義part1) #endregion **◆2.保守主義・関連する諸思想の整理図 ---- |>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:保守主義|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:自由主義との関係|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:該当する概念(=外延)|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:隣接・類似するが別概念|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:対抗思想| |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):伝統保守&BR()(真正保守主義)|BGCOLOR(lightgreen):古典的自由主義と親和的&br()(バーク的保守主義)|BGCOLOR(#FFDB8E):・文化的保守&br()・宗教保守&br()(主として社会面に関心)|BGCOLOR(lightgray):・共同体主義&br()(コミュニタリアニズム)&br()⇒[[中間>中間派に何を含めるか]]に分類&br()・ナショナリズム&br()⇒[[右翼>右派・右翼とは何か]]に分類|BGCOLOR(pink):・フランス啓蒙思想&br()(特にルソーの思想)&br()・デカルト的理性主義|BGCOLOR(pink):長い歴史の中で育まれてきた&br()伝統的権威・文化・社会制度&br()を破壊する思想| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):経済保守&BR()(新保守主義)|BGCOLOR(lightgreen):新自由主義と親和的&br()(ハイエク的保守主義)&br()即ち、リベラル右派のこと|BGCOLOR(#FFDB8E):・反福祉国家/「小さな政府」派&br()・減税主義者&br()(主として経済面に関心)|BGCOLOR(lightgray):・自由至上主義&br()(リバタリアニズム)&br()⇒[[中間>中間派に何を含めるか]]に分類|BGCOLOR(pink):・社会主義/共産主義/ファシズム&br()等の全体主義&br()・リベラル左派&br()(福祉国家/「大きな政府」派)|BGCOLOR(pink):資本主義経済体制とそれに&br()よって担保される個人の自由&br()を破壊する思想| ※ポリティカルコンパス右図の「&color(crimson){親・自由主義/開かれた社会}」側の「&color(crimson){真正保守}(=&COLOR(NAVY){伝統保守})」と「&color(crimson){真正リベラル}(=リベラル右派=&COLOR(NAVY){経済保守})」が保守主義に該当する。 &include_cache(ポリティカルコンパス(オリジナル&修正版)) ※政治的スタンス5分類では、「&color(crimson){親・自由主義(開かれた社会)}」側の「&color(crimson){真正保守}(=&COLOR(NAVY){伝統保守})」と「&color(crimson){真正リベラル}(=リベラル右派=&COLOR(NAVY){経済保守})」が保守主義に該当する。 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} &include_cache(政治的スタンス5分類・8分類+円環図) &size(11.5){※政治的スタンス5分類・8分類について詳しくは [[政治の基礎知識]] 参照。} ---- *■3.保守主義の概念定義 ---- **◆1.保守主義(conservatism)の辞書的定義 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(conservatismの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):歴史的に発展し、それゆえに継続性と安定性の明証である制度(institutions)と慣行(practices)への愛好を表す政治的態度またはイデオロギー| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義は近代においてフランス革命に対するリアクションとしてエドマンド・バークの著作を通じて最初に表明された。バークはフランス革命は、その理想が、その行き過ぎによって汚された(tarnished)と信じていた。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義者は、変化の遂行は最小限(minimal)で漸進的(gradual)であるべきだと信じている。彼らは歴史を愛好し、理想的(idealistic)であるよりは現実的(realistic)である。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):著名な保守主義政党として、英国の保守党、ドイツのキリスト教民主同盟、アメリカの共和党、日本の自由民主党がある。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(conservativeの項)より抜粋翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):(政治的文脈において)自由企業・私的所有・社会に関する保守的な理念を愛好すること| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(conservatismの項)より全文翻訳| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義とは、変化が社会にとって為されることが必要とされる場合において、それは漸進的(gradual)に為されるべきだと信じる政治的哲学である。| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守主義とは、変化や新しいアイディアを受け入れることを嫌がることである。| #endregion **◆2.内包と外延 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) 保守主義(conservatism)の辞書的定義を押さえたところで、次はその内包と外延を検討します。 |BGCOLOR(lightgray):(1)|BGCOLOR(lightgray):内包(intension)|論理学で、一概念に含まれる属性。例えば「空」の内包は、「上、青色、広い」など| |BGCOLOR(lightgray):(2)|BGCOLOR(lightgray):外延(extension)|論理学で、その概念が適用される事物の範囲。例えば、金属という概念の外延は、金・銀・鉄の類| #endregion ---- *■4.保守主義の内包(=内在する属性) ---- **◆1.保守主義の核心的特色 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) |BGCOLOR(pink):(1)|>|BGCOLOR(white):(保守主義とは)常に「現状(status quo)」の中に、①「守る(conserve)べきもの」と、②「改善(improve)すべきもの」を弁別し| ||BGCOLOR(aqua):<1>|BGCOLOR(white):「絶対的破壊(absolute destruction)」の「軽率さ(levity)」と| ||BGCOLOR(aqua):<2>|BGCOLOR(white):「一切の改善を拒絶する頑迷(the obstinacy that rejects all improvement)」| ||BGCOLOR(white):|BGCOLOR(white):を共に排除しようとするもの、であり| |BGCOLOR(pink):(2)|>|BGCOLOR(white):そのような「保守(preserve)」と「改革(reform)」とにあたっては| ||BGCOLOR(aqua):<1>|BGCOLOR(white):古い制度の有益な部分が維持され| ||BGCOLOR(aqua):<2>|BGCOLOR(white):「改革」によって「新しく付け加えられた」部分は、これに「適合するようにされるべきであり」| ||BGCOLOR(aqua):<3>|BGCOLOR(white):全体としては「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」が保たれることを政治の眼目とする| ||BGCOLOR(white):|BGCOLOR(white):という所に、その顕著な特色がある。| つまり ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|BGCOLOR(white):「現状(status quo)」の中に常に「守る(conserve)べきもの」を見出すことを起点として政治的思惟が進行する、という思考形式と、| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|BGCOLOR(white):「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」への政治的志向| の2つが、E.バークに代表される保守主義の核心的特色である。 |BGCOLOR(white):この様な保守主義的政治態度は、政治情勢により「右」へ振れる場合にも、あるいは「左」に振れる場合にも、その振幅を有限化するばかりでなく比較的にいって僅少なものにする。| |BGCOLOR(white):なぜなら、いずれの方向にせよ、過度の振れは「守るべきもの」を放棄することを意味し、また「左」へ振れすぎるときには、進歩の連続性が切れてしまうからである。| 従って、バークの保守主義の哲学は、一言にして尽くせば、文字通りの「政治的安定性(political stability)」の哲学、「政治的力学」の哲学、高度の政治的「復元力(stability)」を持つ哲学に他ならない。 #endregion **◆2.保守主義の一般的特質 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):思想形成の反定立(antithesis)性|BGCOLOR(white):保守主義は既に定立(thesis)された思想の衝撃を待って初めて、その対立者として自己の思想形成を開始する。| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):思想内容の他者被規定性|BGCOLOR(white):保守主義は、思想内容が他者によって(つまり定立された別の思想によって)方向づけられ限定される。&br()即ちバークにおいては「アンチ・フランス啓蒙思想」「アンチ・デカルト流理性主義」であり、ハイエクやポパーにおいては「アンチ・社会主義/共産主義その他の全体主義」「アンチ・リベラリズム/福祉国家」である。| |BGCOLOR(#CCCC99):(3)|BGCOLOR(#CCCC99):高度の状況的機動性(状況適応性)|BGCOLOR(white):保守主義は、それが置かれた具体的状況に密着した思考形式と実現手段を提供する。&br()つまり保守主義は、その対抗思想のように理論が先行した思考様式ではなく、常に「現状(status quo)」を前提として歴史的継続性の中で、その内容と対応策を見出す。&br()「イギリス人は新事態が起こるたびごとにそれを如何に利用するかを心得ている」(A.ヒットラー)&BR()即ち保守主義は、①反省的判断力による個性的状況の敏速な把握と、②政治的実践へのその巧みな活用、を本領とする。| |BGCOLOR(#CCCC99):(4)|BGCOLOR(#CCCC99):無原則的状況主義(opportunism)との区別|BGCOLOR(white):保守主義は、一般に「中道(mid-roader)」あるいは「中間(centrist)」と呼ばれる「無原則主義(opportunism、便宜主義・日和見主義)」と違って一定の政治的原則/政治的価値を保持する。| |BGCOLOR(#CCCC99):(5)|BGCOLOR(#CCCC99):貴族政治的(aristocratic)志向性|BGCOLOR(white):保守主義は、民衆政治(democracy)を衆愚政治(mobocracy)に陥り易いものとして警戒し敬遠する傾向がある。 ※関連ページ [[デモクラシーと衆愚制>デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る]]| #endregion **◆3.保守主義の価値観・思惟構造 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) |BGCOLOR(#CCCC99):(1)|BGCOLOR(#CCCC99):「現状(status quo)」における「保守(conserve)すべき」内容の発見可能性の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):保守主義は一定形態の歴史意識(但しマルクス主義的な歴史発展法則を肯定するものではなく「過去」と「現在」との継続性という意味での歴史意識)と、そうした歴史を把握する人間の能力(つまりデカルト的な普遍的理性ではなく、歴史的に形成され、個別的に存在する広義の理性)を肯定している。&br()なぜなら保守主義は「現状(status quo)」の中に一定の「保守すべき」(即ち一定の積極的に望ましいと評価し得る)内容を見出す思想であり、それは従って人間は歴史的な経緯のうちに「保守すべき」価値内容を弁別する能力を保有することを肯定しているからである。| |BGCOLOR(#CCCC99):(2)|BGCOLOR(#CCCC99):政治目的およびその実現手段の「既存性(existence)」の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):一般に政治的思惟は、①政治的目標の設定に始まり、②その適合的な実現手段を発見し、③その手段の効果的適用による目標実現によって完了する。&br()しかし保守主義は、①この政治的思惟の起点を「現状(status quo)」における「保守すべき」内容の発見に求め、かつ、②その実現手段をも「現状」に求めている。&br()「真の政治家というものは、常に、どうすれば自国の現存の諸材料を、最大限度に利用することになるかということを考慮するものである」(E.バーク)| |BGCOLOR(#CCCC99):(3)|BGCOLOR(#CCCC99):「申し分なく継続的な進歩(well-sustained progress)」の肯定| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):保守主義は「歴史の流れに順行した」政治、言い換えると慣例を活かし「現状(status quo)」を絶えず制度的ないし観念的に過去に連結していくような政治を理想とする。&br()政治における新奇な、あるいは革新的な企図は、保守主義の歴史意識にとっては歴史の継続性に対する撹乱要因に過ぎない。| |BGCOLOR(#CCCC99):(4)|BGCOLOR(#CCCC99):「自然的」人間性に対する「歴史的」ないし「社会的」人間性の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):(5)|BGCOLOR(#CCCC99):「自然的」理性に対する「歴史的」理性の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):(6)|BGCOLOR(#CCCC99):「抽象的悟性(abstractive understanding)」に対する「歴史的悟性(historical understanding)」の優位| |BGCOLOR(#CCCC99):|BGCOLOR(white):「旧い先入見prejudice」と「理由のない慣習」の尊重| #endregion ---- *■5.保守主義の外延(=対象となる範囲) ---- **◆1.保守主義と自由主義の関係 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) &include_cache(保守主義part7) #endregion **◆2.伝統保守と経済保守の架橋 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ***◇1.18世紀イギリスの自由主義思想家による「伝統保守」の説明 |BGCOLOR(orange):(1)|>|>|>|BGCOLOR(orange):D.ヒューム(スコットランド出身の英国外交官・道徳/政治哲学者、歴史家)『道徳・政治・文学に関する随想』(1742)| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「英国においては到底存在する見込みはないと思われる一政体について、これ以上論議を重ねる必要はありません。我々の間ではどの党派もそれを目的としてはいないように見えます。出来るだけ我が国の古来の政体を育て発展させるようにしましょう。大変危険な新型の諸政体に対する情熱を掻き立てないようにして。」| |BGCOLOR(orange):(2)|>|>|>|BGCOLOR(orange):E.バーク(アイルランド出身の英国下院議員・思想家)『フランス革命の省察』(1790)| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「思慮深い警戒心、綿密周到さ、気質的というよりはむしろ善悪判断から来る小心さ、これらが最も断固たる行為をする際に我々の父祖が拠り所とした指導原理の中にありました。彼らは、あの光-つまりフランス人の紳士諸君が自分たちはそれに大いに与っていると吹聴するあの光-に照らされてはいなかったために、人間とは無知で誤りやすいものである、ということを肝に銘じて行動したのでした。」| ||>|>|>|BGCOLOR(white):「国家と法を聖別するにあたって、まず第一に則るべき最も重要な原理の一つは、それら国家や法を一時的に、あるいは終身で保有している人々が祖先から受け取ったものや本来子孫に属するものを忘れて、あたかも自分だけが完全な主人であるかのように行為する、といったことがあってはならない、ということです。&BR()即ち、自らの社会の根源的な構造を勝手に破壊し、それによって限嗣相続の制限を解除したり相続財産を浪費したりしても、それは自分たちの権利のうちなのだ、などと思ってはならない、ということです。&BR()もしもそうしたことが行われれば、彼らは後から来る者に対して、住むべき家の代わりに廃墟を残すことになるでしょうし、彼らが自らの祖先の諸制度を殆ど尊重しなかったのだから、彼らが考え出したものもやはりそんなに尊重するには及ばないのだ、と教えるようなものでしょう。」| ***◇2.保守主義=「小さな政府」なのか? &include_cache(保守主義part10) ***◇3.伝統保守(旧保守)と経済保守(新保守)の架橋 ~ フュージョニズムと「思いやりのある保守」 &include_cache(保守主義part3) #endregion ---- *■6.保守主義と混同されやすいが別概念として区別すべきもの ---- ここでは、保守主義(=真正の自由主義)と全体主義の間に位置する&color(crimson){リバタリアニズム}・&color(crimson){コミュニタリアニズム}及び&color(crimson){ナショナリズム}について説明し、更にナショナリズムに関連してよく問題となる&color(crimson){保守・右翼・極右の区別}について説明します。 &include_cache(保守主義と対抗思想・周辺思想) **◆1.保守主義とリバタリアニズムの区別 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ***◇自由至上主義(libertarianism)の辞書的定義 &include_cache(保守主義part8) #endregion **◆2.保守主義とコミュニタリアニズムの区別 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ***◇共同体主義(communitarianism)の辞書的定義 &include_cache(保守主義part6) #endregion **◆3.保守主義とナショナリズムの区別 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ***◇1.ナショナリズム(nationalism:国民主義、民族主義、国家主義など文脈に応じて様々に訳し分ける)の辞書的定義 &include_cache(保守主義part4) ***◇2.ナショナリズムの発展モデル &include_cache(保守主義part5) #endregion **◆4.保守・右翼・極右の区別 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ※保守・右翼・極右をどう区別するかは定義の仕方次第だが、一応の目安として以下の基準が有効である。 |BGCOLOR(olive):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:内容|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:関連ページ| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:保守|BGCOLOR(#D7EBFF):国内外の&color(crimson){&bold(){全体主義}}(共産主義・社会主義・リベラリズムなどの[[集産主義>「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き]])の脅威から自由を守る(=&color(crimson){&bold(){自由主義}})|BGCOLOR(lightgreen):[[保守主義とは何か]]&br()[[リベラリズムと自由主義>リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜]]| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:右翼|BGCOLOR(#D7EBFF):他国・他国民の&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}の脅威から自国・自国民を守る(=&color(crimson){&bold(){解放的ナショナリズム}})|BGCOLOR(lightgreen):[[右翼・左翼の歴史]]&br()[[ナショナリズムとは何か]]| |BGCOLOR(#CCCC99):CENTER:極右|BGCOLOR(#D7EBFF):他国・他国民に対して&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}を発動している段階。&br()なお極右と極左は紙一重の双生児であり、極左も当然&color(crimson){&bold(){侵略的ナショナリズム}}を発動している段階である。|BGCOLOR(lightgreen):[[右翼・左翼の歴史]]| &include_cache(円環図) #endregion ---- *■7.日本の保守主義 ---- 以上で、①E.バーク的保守主義(伝統保守)と、②ハイエク的保守主義(経済保守)の2大類型に基づいて、英語圏で発展した保守主義の標準概念と、関連する諸思想の位置づけを説明しました。 以下では、この標準的な保守主義の解釈をベースとして、日本の保守主義及び関連する諸思想について分類・位置づけを行います。 &include_cache(日本思想vs.西洋思想、保守思想vs.革新思想(2分割)) **◆1.参考:「保守主義」という用語の使用状況 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) 戦前・戦中さらに戦後も1970年代までは「保守主義」という言葉はマイナス・イメージの付きまとう言葉として日本ではこれを自称する者はほとんどいなかった。 左翼側が敵対勢力を「保守反動」とレッテルを貼って批判する場合に使用される例がほとんどであり、政治勢力としての「保守」は存在しても、政治思想としての「保守主義」を唱える者はほとんどいなかった。(明治21年に長州藩出身の軍人・政治家 鳥居小弥太が「保守中正派」と称する小政党を作り「保守」を論じていることが数少ない例外) 戦前・戦中において伝統保守的な思想的立場を表明する者の多くは、もっぱら「右翼」(とくに昭和初期には「観念右翼」ないし「精神右翼」)と他称され、また彼ら自身は後述する「日本主義」を名乗っている場合が多かった。 その後、1980年代に英サッチャー・米レーガン両保守政権が政治的・経済的に成功を収めて、「保守主義」に今度はプラス・イメージが高まり、日本でも「保守主義」を自称する者が急増し、現在に至っている。 #endregion **◆2.西欧保守主義・日本の保守主義の接合上の問題点と考え方 ---- ***◇1.保守主義と、自由主義・個人主義・デモクラシーの関係 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) &include_cache(保守主義part9) #endregion ***◇2.保守主義と、ナショナリズムの関係 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) &include_cache(保守主義part11) #endregion **◆3.[[日本主義>日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える]] ---- ※次に、戦前・戦中に具体的に「保守主義(伝統保守)」に相当する概念・思想を表す言葉として多用された「[[日本主義>日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える]]」について解説します。 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ブリタニカ国際百科事典(ブリタニカ・ジャパン社)による説明。 |BGCOLOR(#CCCC99):にほんしゅぎ【日本主義】|&color(crimson){&bold(){明治から第二次世界大戦敗戦まで}}における&color(crimson){&bold(){欧化主義・民主主義・社会主義などに反対}}し、&color(crimson){&bold(){日本古来の伝統や国粋を擁護しようとした思想や運動}}をいう。&br()一定の思想体系をなしていたとはいえず、論者により内容が相違する。&br()&color(crimson){&bold(){明治}}の支配層が推し進めた&color(crimson){&bold(){欧化主義への反発}}として三宅雪嶺や高山樗牛らによって唱えられ、政治的には&color(crimson){&bold(){欧米協調主義への反対、国権や対外的強硬策の強調}}となって現れた。&br()&color(crimson){&bold(){大正や昭和}}になって日本の資本主義の高度化が階級対立を激化させ、&color(crimson){&bold(){社会主義やマルクス主義が流入}}すると、これら諸思想の&color(crimson){&bold(){対抗イデオロギー}}として機能し、&color(crimson){&bold(){天皇を中心とする皇道や国体思想を強調}}した。(cf.神国思想)| つまり日本主義には歴史的に見て以下の二段階がある。 |BGCOLOR(#FFDB8E):①|BGCOLOR(#FFDB8E):明治期の日本主義|BGCOLOR(lightgreen):政府の欧化主義に反発し、&color(crimson){国粋主義/国権主義}(特に政府の欧米協調路線に反対する攘夷主義)を主張した言論活動(政論的ジャーナリズム)|BGCOLOR(#D7EBFF):他国の侵略から自国・自民族を守る(&color(crimson){&bold(){解放的ナショナリズム}})⇒即ち「&color(crimson){&bold(){右翼}}」思想| |BGCOLOR(#FFDB8E):②|BGCOLOR(#FFDB8E):昭和期の日本主義|BGCOLOR(lightgreen):皇道・国体思想を強調して、社会主義やマルクス主義の思想侵略の脅威への&color(crimson){対抗イデオロギー}として機能した思想活動|BGCOLOR(#D7EBFF):全体主義の脅威から自国の歴史・伝統に根差した自由を守る(&color(crimson){&bold(){日本型保守主義}})⇒即ち「&color(crimson){&bold(){保守}}」思想| ※「保守」と「右翼」の違いは [[ナショナリズムとは何か]] 参照 ※日本主義について、詳しくは [[日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える]] 参照 ※この「(昭和期の)日本主義者」は、観念右翼または精神右翼と他称されており、これに対して、よりナショナリスティックな政治的主張を唱える者を革新右翼または組織右翼と呼んで区別した。 #endregion **◆4.革新右翼(国家社会主義者)と観念右翼(伝統保守) ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region 参考図書に挙げている[[日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜>http://www.amazon.co.jp/dp/4760133348/]]によれば、左翼が一掃された昭和10年代の日本には、①革新右翼と②観念右翼の二大勢力があり、国内・国外の政策を巡って激しく対立したとされる。 ※ブリタニカ国際百科事典には「観念右翼」のみ項目があり、その中に「(国家社会主義者(組織右翼)」の説明もあるので引用します(革新右翼を組織右翼とも呼んだ)。 |BGCOLOR(#CCCC99):【観念右翼】かんねん・うよく&br()|特定の右翼党派ではなく、純粋な日本精神主義を思想や行動の原理とする諸団体。上杉慎吉をその源流とする。第二次世界大戦前の右翼運動を思想形態から分類すると、&color(crimosn){国家社会主義派(組織右翼)}と&color(crimson){日本精神主義派(観念右翼)}に大別される。上杉の組織した桐花学園(1913創立)、蓑田胸喜、天野辰夫、菊池利房による興国同志会(19)、平沼騏一郎の国本社、興国同志会の流れをくむ七生社(25)などが観念右翼としてあげられる。| ※革新右翼と観念右翼の理念型([[日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜>http://www.amazon.co.jp/dp/4760133348/]]より引用) |BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:①革新右翼|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:②観念右翼| |BGCOLOR(white):国家改造|BGCOLOR(white):国体明徴| |BGCOLOR(white):高度国防国家|BGCOLOR(white):国民精神総動員| |BGCOLOR(white):解釈改憲|BGCOLOR(white):護憲(不磨の大典)| |BGCOLOR(white):指導者原理|BGCOLOR(white):臣道実践| |BGCOLOR(white):&color(crimson){統制経済}|BGCOLOR(white):&color(crimson){資本制擁護}| |BGCOLOR(white):親ソ・親独|BGCOLOR(white):反共・反独裁| |BGCOLOR(white):世界史的な使命|BGCOLOR(white):日本史的な道統| |BGCOLOR(white):陸軍統制派|BGCOLOR(white):陸軍皇道派| |BGCOLOR(white):革新官僚|BGCOLOR(white):財界| |BGCOLOR(white):無産政党|BGCOLOR(white):既成政党(現状維持派)| |BGCOLOR(white):&color(crimson){国家社会主義者}|BGCOLOR(white):&color(crimson){自由主義者}| ※②観念右翼が「日本主義」を唱えたのに対して、①革新右翼すなわち国家社会主義者は「アジア主義」の立場を説く場合が多かった。 ※以下、関連項目をブリタニカ百科事典より引用。 ***◇参考:アジア主義 |BGCOLOR(#CCCC99):[[【大アジア主義】>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E4%B8%BB%E7%BE%A9]]だい・アジア・しゅぎ&br()Pan-Asianism|欧米列強のアジア侵略に抵抗するため、アジア諸民族は日本を盟主として団結すべきであるという考え方。明治初期以来、種々の視角から展開された。&br()植木枝盛は自由平等の原理に基づきアジア諸民族が全く平等な立場で連帯すべきことを説き、樽井藤吉や大井健太郎は、アジア諸国が欧米列強に対抗するために連合する必要があり、日本はアジア諸国の民主化を援助すべき使命があると説いた。&br()明治20年代になると、大アジア主義は明治政府の大陸侵略政策(&color(crimson){注})を隠蔽する役割をもつようになった。1901年に設立された黒龍会の綱領にもみられるように、その後の大アジア主義は天皇主義とともに、多くの右翼団体の主要なスローガンとされ、これに基づいて満蒙獲得を企図する政府・軍部の政策が推進された。&br()日本人の大アジア主義的発想は、第二次世界大戦前・戦中の「大東亜共栄圏」構想を支えた。&br()※&color(crimson){注}:ブリタニカ百科事典にも自虐史観の傾向は当然あり、上記のような「大陸侵略政策」という問題のある記述がなされている。| |BGCOLOR(#CCCC99):[[【大東亜共栄圏】>だいとうあ・きょうえいけん]]&br()|第二次世界大戦を背景に1940年第二次近衛内閣以降45年敗戦まで唱えられた日本の対アジア政策構想。その建設は「大東亜戦争」の目的とされた。&br()東条英機の表現によれば、大東亜共栄圏建設の根本方針は、「帝国を核心とする道義に基づく共存共栄の秩序を確立」しようとすることにあった。&br()しかし実際は、東アジアにおける日本の軍事的・政治的・経済的支配の正当化を試みたものに他ならなかったといえる。&br()第一次近衛内閣当時の「東亜新秩序」は日本・満州・中国を含むものに過ぎなかったが、南進論が強まるにつれて、インド・オセアニアにいたる大東亜共栄圏構想に拡大された。大東亜省の設置と大東亜会議の開催は、このような方針の具体化に他ならない。| #endregion **◆5.まとめ ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) |BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:運動の性格|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:| |BGCOLOR(#FFDB8E):①|BGCOLOR(#FFDB8E):明治期の日本主義|BGCOLOR(WHITE):政府の欧化主義に反発し、国粋主義/国権主義(特に政府の欧米協調路線に反対する攘夷主義)を主張した言論活動(政論的ジャーナリズム)|BGCOLOR(white):他国の侵略から自国・自民族を守る&br()(&color(crimson){&bold(){解放的ナショナリズム}})|BGCOLOR(pink):右翼思想|当初は国粋主義的だった在野言論人の活動は、明治末・大正期に日本が大国化したのちも反骨精神は全く変わらず、今度は次第に左翼思想に理解を示す者が出てきた(左右等価気分説(※1))。更に彼らは、戦後は進歩派・市民派左翼文化人として活発に活動した(長谷川如是閑・丸山眞男etc.)。| |BGCOLOR(#FFDB8E):②|BGCOLOR(#FFDB8E):昭和期の日本主義|BGCOLOR(WHITE):皇道・国体思想を強調して、社会主義やマルクス主義の思想侵略の脅威への対抗イデオロギーとして機能した思想活動|BGCOLOR(white):全体主義の脅威から自国の歴史・伝統に根差した自由を守る&br()(&color(crimson){&bold(){日本型保守主義}})|BGCOLOR(pink):保守思想|日本精神主義派(観念右翼)。日本主義的教養を武器に学生・知識人の左傾化を防止し日本精神に目覚めさせると共に、革新右翼の狙う国家改造・解釈改憲・国家経済の社会主義化、更には戦争の長期化を「護憲」の立場から制止・抑制するために奔走。いざ戦争が激化すると国防のために生死を厭わず護国のために尽くした者が多い。| |BGCOLOR(#FFDB8E):③|BGCOLOR(#FFDB8E):アジア主義|BGCOLOR(WHITE):アジア諸民族を白人支配から解放するという大義を掲げ、実際にも明治期の孫文を初めインドのB.ボース、フィリピンのアギナルドらの独立運動と連動しつつ遂行された日本の勢力拡張運動。|BGCOLOR(white):アジア諸民族の独立を支援する(排白人主義)&br()(&color(crimson){&bold(){拡張的ナショナリズム}})|BGCOLOR(pink):極右思想|国家社会主義派(組織右翼=革新右翼)と重なる。代表的イデオローグとして5.15事件に関与した大川周明、2.26事件に連座した北一輝。革新右翼は2.26事件暴発後に勢力を急拡大し三木清など転向左翼の多数が近衛内閣のブレーン集団を形成して国策を左右した。&br()※詳しくは [[右翼・左翼の歴史]] 参照| ※「保守」「右翼」「極右」の違いは [[ナショナリズムとは何か]] 参照 ※1:左右等価気分説…右傾化も左傾化も既成勢力に対する反抗という意味で基本的に同じ心情に基づくものであり、状況が変化すれば左・右転換は容易とする説。 |以上、説明したように、日本においても「保守主義」と「ナショナリズム」を区別することは可能であり、かつ英米保守主義との整合性という観点からもこの区別は必要と思われる。&br()また、戦前・戦中に「日本主義」を唱えた日本型の保守主義者の系譜は、[[参考図書>http://www.amazon.co.jp/dp/4760133348]]にあるとおり、実は戦後も途切れておらず、現在の日本の保守主義陣営(伝統保守の側)の中核に繋がっていることに注目すべきである。(なお、経済保守についてはこの限りでない)| #endregion ※&bold(){&size(15){&color(crimson){日本の保守主義}}}に関して詳しくは、&bold(){&size(15){[[国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)]]}}を参照下さい。 ---- *■8.参考図書 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region &include_cache(保守主義part2) #endregion ---- *■9.ご意見、情報提供 ---- &BOLD(){&color(green){ページ内容向上のためのご意見・情報提供}を歓迎します。} ---- &size(12){&color(green){↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック}} #region(close) &include_cache(コメント/保守主義とは何か) #endregion ---- &color(crimson){&bold(){&size(17){以下は最新コメント表示}}} #pcomment(reply,200,,size=300) &color(crimson){ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。} &include_cache(政治理論・共通)

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