日本国憲法改正問題(上級編)

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日本国憲法改正問題(上級編) - (2013/06/28 (金) 16:16:23) の編集履歴(バックアップ)


危険は形而上学の欺瞞的な性格の中にある。それは、実際には何らの知識をも与えないのに、知識であるかのような幻想を与える。
我々が形而上学を排撃する理由はここにある。・・・(中略)・・・哲学の唯一の仕事は論理的分析 logical analysis である。

~ R. カルナップ(論理実証主義に立つ哲学者集団「ウィーン学団」のリーダー的学者)

要旨■「平和憲法」「占領憲法」などのレッテル貼りに終始するのではなく、①憲法とはそもそも何か(法概念論)、②憲法の保障すべき価値は何か(法価値論)、③そうした価値を如何に実現するか(法学的方法論)、という憲法問題の課題を一つづつ分析し検証していくことが重要である。



<目次>


■1.はじめに

憲法問題となると、たちまち「平和憲法を守れ」とか「占領憲法を破棄せよ」といった、左右両極端の立場からのイデオロギー的なアジテーション・罵倒合戦に終始してしまう現象が頻繁に観測される。(※なお、経済問題に関しても類似した現象がしばしば観測される ⇒ ケインズvsハイエクから考える経済政策 参照)。
確かに、現実妥当性に目を瞑って現行憲法典の前文・第9条を厳密に文理解釈すれば、お花畑的な(つまりネガティヴな)意味で「平和憲法」と云えなくもないし、また制定過程を見ればGHQ草案をほぼそのまま翻訳した「占領憲法」と呼ばれるのも致し方ないことではあるが、ここでは、そうした扇動的・プロパガンダ的方向にばかり走り易い言説を避けて、努めて論理的・概念分析的な姿勢を守りつつ憲法問題の整理・解明を目指したい。
そのために、
<1> まず、基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)を区別して、憲法問題の位置づけを明確にし、
<2> 次に、基礎法学の主要3分野(①法概念論・②法価値論・③法学的方法論)各々について、実用法学の一分野である憲法学(憲法論)の課題を対応させた問題状況整理表を作成し、
<3> そして、上流から順に(つまり①法概念論→②法価値論→③法学的方法論の順に)これらの課題を一つづつ分析し整理していく。

◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)


きそほうがく
【基礎法学】
※日本語版ブリタニカ百科事典より
実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。
理論法学ともいう。
基礎医学という用語にならって第二次世界大戦後の日本で使われるようになった。
法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。
じつようほうがく
【実用法学】
※日本語版ブリタニカ百科事典より
司法、行政、立法などの実用目的に奉仕する法学。
法解釈学と立法学がこれに属する。
基礎法学と対置されるが、現代の実用法学は基礎法学の成果を積極的に活用して法の合目的的な形成と運用を図る応用科学としての性格を強めつつある。
ほうかいしゃくがく
【法解釈学】
Rechtsdogmatik
※日本語版ブリタニカ百科事典より
解釈法学ともいう。
実定法の規範的意味内容を体系的・合理的に解明し、裁判における法の適用に影響を与えることを目的とする実用法学。
実定法を構成する文字および文章の多義的な規範的意味内容を明確かつ一義的に確定していく作業が法の解釈であるが、この作業には、①文理解釈、②論理解釈、③縮小解釈、④目的論的解釈、⑤反対解釈、⑥勿論解釈、⑦類推解釈などと呼ばれるものがある。
法解釈学は古代ローマで成立して以来、現代まで法学の中心的位置を占めているが、時代の変遷によって力点の変化がみられる。
自由法論以後の法解釈学は人間や社会に関する経験科学的認識を取り入れた応用科学としての性格を強めている。
第二次世界大戦後の日本の法学界における「法解釈学論争」では、法解釈学の実践的性格が強調された。
法解釈学は、その対象となる実定法の分野によって、憲法学、行政法学、刑法学、民法学、商法学、労働法学、国際法学、国際私法学などに分れる。
けんぽうがく
【憲法学】
※広辞苑より
法学の一部門。
憲法および憲法上の諸現象を研究の対象とする学問。国法学。

◆2.問題状況整理表


基礎法学(理論法学)の主要3分野 憲法学(憲法論)の課題
(1) 法概念論
(法とは何か)
<1> 憲法とは何か
(憲法の定義)
⇒(a)実質憲法(国制)と、(b)形式憲法(憲法典)、の区別が重要。
<2> 法体系の中での憲法の位置づけ ⇒①法段階説(主権者意思[命令]説・・・ケルゼン及び修正自然法論者の法理解)と、②社会的ルール説(ハートの法理解であり、ハイエクの自生的秩序論と親和的)、の区別・評価が重要
(2) 法価値論
(法の保障すべき価値は何か)
※法理念論、法目的論ともいう
<1> 主権論
(憲法は特定の主権者を規定すべきか)
法価値論は、専ら、(a)実質憲法(国制)の在り方に関する分野である。
⇒①左翼的・全体主義的価値観と、②保守的・自由主義的価値観、の区別・評価が重要。

※主権論について詳細ページ⇒政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価
※人権論について詳細ページ⇒「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために
<2> 人権論
(憲法の基礎的な保護領域は何か)
<3> 平和論
(奴隷の平和か正戦を肯定するか)
(3) 法学的方法論
(法価値を如何に実現するか)
<1> 憲法典(形式憲法)の解釈論 法学的方法論は、専ら、(b)形式憲法(憲法典)の解釈・運用に関わる分野であり、具体的な条規について(2)法価値論の<1>~<3>の課題に対応した法解釈の対立が見られる。
⇒①左翼的・全体主義的解釈と、②保守的・自由主義的解釈、の区別・評価が重要。
<2> 憲法典(形式憲法)の改廃論 ⇒①護憲論、②改憲論、および③破棄論、の比較・評価が重要。
<3> 憲法典(形式憲法)案の内容評価 ⇒各々の草案について、(2)法価値論の<1>~<3>の課題への対応方針に留意しながら個別に評価していくことが重要。


■2.憲法とは何か(法概念論)


◆1.憲法(constitution)の定義


◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別

けんぽう
【憲法】
constitution
※日本語版ブリタニカ百科事典より
憲法の語には、(1)およそ法ないし掟の意味と、(2)国の根本秩序に関する法規範の意味、の2義があり、
聖徳太子の「十七条憲法」は(1)前者の例であるが、今日一般には(2)後者の意味で用いられる。
(2)後者の意味での憲法は、凡そ国家のあるところに存在するが(実質憲法)、
近代国家の登場とともにかかる法規範を1つの法典憲法典として制定することが一般的となり形式憲法)、
しかもフランス人権宣言16条に謳われているように、①国民の権利を保障し、②権力分立制を定める憲法のみを憲法と観念する傾向が生まれた(近代的意味の憲法)。
<1> 17世紀以降この近代的憲法原理の確立過程は政治闘争の歴史であった。
憲法の制定・変革という重大な憲法現象が政治そのものである。
比較的安定した憲法体制にあっても、①社会的諸勢力の利害や、②階級の対立は、
[1]重大な憲法解釈の対立とともに、[2]政治的・イデオロギー的対立を必然的に伴っている。
従って、憲法は (a) 政治の基本的ルールを定めるものであるとともに、
(b) 社会的諸勢力の経済的・政治的・イデオロギー的闘争によって維持・発展・変革されていく
・・・という二重の構造を持っている。
<2> 憲法の改正が、通常の立法手続でできるか否かにより、軟性憲法と硬性憲法との区別が生まれるが、今日ではほとんどが硬性憲法である。
近代的意味での成文の硬性憲法は、 国の法規範創設の最終的源である(授権規範性)とともに、
法規範創設を内容的に枠づける(制限規範性)という特性を持ち、かつ
一国の法規範秩序の中で最高の形式的効力を持つ(最高法規性)。
日本国憲法98条1項は、憲法の③最高法規性を明記するが、日本国憲法が硬性憲法である(96条参照)以上当然の帰結である。
今日、③最高法規性を確保するため、何らかの形で違憲審査制を導入する国が増えてきている。
なお、憲法は、
①制定の権威の所在如何により、欽定・民定・協約・条約(国約)憲法の区別が、
②歴史的内容により、ブルジョア憲法と社会主義憲法、あるいは、近代憲法(自由権中心の憲法)と現代憲法(社会権を導入するに至った憲法)といった区別がなされる。
なお、下位規範による憲法規範の簒奪を防止し、憲法の最高法規性を確保することを、憲法の保障という。
   (⇒憲法の変動、⇒成文憲法、⇒不文憲法)

上記のように、憲法(constitution)という概念には、
実質的意味の憲法 (=国制、国体法 constititional law) ⇒本質主義(essentialism)による定義 と、
形式的意味の憲法 (=憲法典 constitutional code) ⇒名目主義(nominalism)による定義 の2つのレベルがあり、
両者を区別しつつ総合的に考察していく必要がある。

そして、これに対応して、憲法論にも、
実質的意味の憲法論 (法価値論=憲法の保障すべき価値は何かを考察する価値論であり、それを具体化すると立法論になる) と、
形式的意味の憲法論 (法解釈論=既に成文化された憲法典の解釈論) の2つの段階があり、
この両者もまた確り区別して考察していく必要がある。

★補足説明★「実質的意味の憲法」「国体法」「国制」
たとえば「民法」という概念には、①実質的意味の民法(=民法典に限らず「総体としての民法 civil law」を指す)と、②形式的意味の民法(=民法典 civil code という具体的な法律)の二つの意味があり、また「刑法」という概念にも同じく、①実質的意味の刑法(criminal law)と、②形式的意味の刑法(=刑法典 criminal code という具体的な法律)の二つの意味がある。
これらから類推されるように、当然「憲法」という概念にも、①実質的意味の憲法(constitutional law)と、②形式的意味の憲法(=憲法典 constitutional code という具体的な法律)の二つの意味があり、これらは確りと区別されて論じられるべきであるが、明治期に constitution(英語)ないし Verfassung(ドイツ語)という概念を日本に導入する際に、専ら②形式的意味の憲法(憲法典)という意味で「憲法」という言葉が用いられてしまったために、現在の日本では、憲法とは専ら②憲法典である、とする理解(すなわち、①の意味を見落とした状態での理解)が一般的となってしまっている。
これに関しては、戦前の日本では、①実質的意味の憲法(国制)を意味する言葉として、明治以前から「国体」という用語が普及していたという裏の事情がある。
この「国体」という用語は、昭和初期に濫用されて右翼的イデオロギーの色彩を強く帯びてしまったことから、戦後はこの用語の使用自体がタブー視される状態となってしまい、なおさら現在の日本人が、①実質的意味の憲法、を考えることを困難にしている。(※「国体」については⇒国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)参照)
こうした①実質的意味の憲法 constitutional law を素直に翻訳すれば「国体法」となるが、ここでは主に、よりイデオロギー色の薄い「国制」という訳語を用いることとする。(※なお、アリストテレス著として伝わる『アテナイ人の国制』の英語版書名は 『The Athenian Constitution』であり、①の意味での constitution の訳語として「国制」が現時点ではやはり一番適切である。)

◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別


左派及び右派から、しばしば繰り返される「憲法の定義」として、次のようなものがある。
(1) 憲法とは、政治権力者を拘束し国民を守るための法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に左派から)
(2) 憲法とは、国の歴史を踏まえた国体を成文化した法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に右派から)

確かに、正当な憲法典には、(1)および(2)のそれぞれの要素が認められるべきであるが、結論から先にいえば、それらは、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)のカテゴリーであって、「憲法の定義」すなわち①法概念論(憲法とは何か)のカテゴリーではない
このようなカテゴリー・ミスを避ける意味でも、当ページで薦めているような、①法概念論⇒②法価値論⇒③法学的方法論、という順序を踏まえた憲法問題の検討が肝要である。
因みに、(1)政治権力者をほとんど拘束できない憲法典や、(2)自国の歴史やこれまでに培ってきた伝統的な国体を全く反映せず、むしろそれらの積極的な破壊を目的とした憲法典も、世界には幾つも存在したし、現在でも存在しており、それらを「憲法と認めない」とするのは単なる個人的な価値観の表明でしかなく、何ら憲法問題の分析・明晰化に役立たない。
それよりも先ずは「憲法」という概念を、<1>実質憲法(国制、国体法)と <2>形式憲法(憲法典)に確り区別して、この両者の関係から、(a)国家の在り方(=伝統国家/革命国家/新興国家)、(b)憲法典の在り方(保守型/革命型/創成型)を考察していく方が遥かに有意義である。

◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家)




※■3.- ◆2.の整理図 で詳述するように、日本国憲法に関しては、
(1) 左翼側(主に憲法学者)は、これを「八月革命」の結果成立した革命型憲法と捉え、戦前の国制を積極的に否定・破壊する方向への解釈・運用を強く要求してきたが、
(2) 保守側(主に日本政府)は、そのようなフィクションを認めず、日本国憲法はあくまで大日本帝国憲法の改正憲法典として成立したものとして保守的解釈・運用を図ってきており、
戦後の日本では、(a)国家の在り方(=伝統国家か革命国家か)、(b)憲法典の在り方(=保守的解釈が正当かそれとも左翼的解釈が正当か)を巡って、左翼側・保守側の激しい対立が継続されてきた。

こうけんてきかいしゃく
【公権的解釈】
※日本語版ブリタニカ百科事典より
権限のある国家機関によって行われる法の解釈。
有権解釈ともいう。
これによって解釈が公定されるという点で、法学者や私人の解釈よりも重要な意味をもつ。
公権的解釈には、法律によるもの(立法解釈)、行政機関によるもの(行政解釈)、裁判所によるもの(司法解釈)がある。

※つまり、左翼的な憲法学者がどれほど「これは憲法学界の通説である(例:八月革命は憲法学界の通説であるetc.)」と唱えようと、日本政府がこれまでに表明してきた見解(例:国体は戦前/戦後で一貫しているetc.)が効力を持ったオフィシャルな解釈(=公権的解釈・有権解釈)なのだから、我々が戦後の日本を伝統国家と認め、日本国憲法を保守的に解釈することには正当な理由があるのだが、それ以外にも、下記◆2.に示すように、戦後日本の左翼的憲法学には論理面から致命的な欠陥が指摘可能である。

◆2.法体系の2つの捉え方


◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム)



※図が見づらい場合⇒こちら を参照
※①宮澤俊義(ケルゼン主義者)・②芦部信喜(修正自然法論者)に代表される戦後日本の左翼的憲法学は「実定法を根拠づける“根本規範”あるいは“自然法”」を仮設ないし想定するところからその理論の総てが始まるが、そのようなア・プリオリ(先験的)な前提から始まる論説は、20世紀後半以降に英米圏で主流となった分析哲学(反形而上学的哲学)を反映した法理学/法哲学(基礎法学)分野では、とっくの昔に排撃されており、日本でも“自然法”を想定する法理学者/法哲学者は最早、笹倉秀夫(丸山眞男門下)など一部の化石化した確信的左翼しか残っていない。
このように基礎法学(理論法学)分野でほぼ一層された論説を、応用法学(実定法学)分野である憲法学で未だに前提として理論を展開し続けるのはナンセンスであるばかりか知的誠実さを疑われても仕方がない行いであり、日本の憲法学の早急な正常化が待たれる。
(※なお、近年の左翼憲法論をリードし「護憲派最終防御ライン」と呼ばれている長谷部恭男、芦部門下であるが、ハートの法概念論 を正当と認めて、芦部説にある自然法・根本規範・制憲権といった超越的概念を明確に否定するに至っている。)

◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム)






※上記のように、ハート法=社会的ルール説は、現実の法現象について詳細で明晰な分析モデルを提供しており、特定の価値観・政治的イデオロギーに基づく概念ピラミッドに過ぎない法=主権者意思[命令]説の法体系モデルを、その説得力において大幅に凌駕している。
※上図について、詳細な解説は法と権利の本質に関する2つの考え方 へ。

※このように、①法概念論(憲法とは何か)の段階で、既に左翼的憲法論はハッキリと論理破綻しているのであるが、以下更に、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、左翼的スタンス vs 保守的スタンス 両者の憲法に求める価値(理念・目的)を対比する。


■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論)

→ 主として、実質憲法(国制)に関する議論領域

(1) まず、法価値論(正義論)一般について、 それと密接に関連した「法の支配」理念と関連づけながら整理・明晰化し、
(2) 次に、憲法に特有の法価値論(①主権論、②人権論、③平和論)について、 それと密接に関連した法解釈論と関連づけながら整理・明晰化していく。

◆1.法価値論(正義論)一般と、「法の支配」


ほうかちろん【法価値論】
legal axiology
※日本語版ブリタニカ百科事典より
法的な価値について考察する研究分野。
法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。
古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。
ほう-の-しはい【法の支配】
(rule of law)
<広辞苑>
イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。
コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。

◇参考ページ

法価値論(正義論)まとめページ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係
「法の支配」の概念(理念)整理 「法の支配(rule of law)」とは何か

◆2.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図


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◇参考ページ

「法の支配」と国民主権の関係 リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配
国民の権利・自由と人権の関係 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために
芦部信喜・佐藤幸治・阪本昌成・中川八洋etc.の「国民主権論」比較と評価 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価
関連用語集 【用語集】主権論・国民主権等

※このように、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、(1)左翼的スタンスによる理解と(2)保守的スタンスによる理解とが激しく対立するが、 寛容で自由な価値多元的な社会を保障するのは、間違いなく(2)保守的スタンスの方である。
※但し、ここで一つ留意しておかなければならないのは、上図には表記がないが、もう一つ(3)右翼的スタンスによる理解というものが想定可能であり、それは(1)左翼的スタンスの場合と同じく全体主義的であって、寛容で自由な社会に相応しくない理解である、ということである。(この(3)右翼的スタンスと(2)保守的スタンスとの区別は、■4.-◆1.-◇2.で図解する)


■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論)

→ 主として、形式憲法(憲法典)に関する議論領域

◆1.現行憲法典の解釈論


◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs保守的(自由主義的)解釈

 ※■3.- ◆2.の整理表下段(形式的憲法論の欄) を参照

◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価

日本の様々な憲法論を政治的スタンスに当て嵌めて概括すると下表のようになる。

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政治的スタンス 代表的論者 ベースとなる思想家/思想 補足説明 詳細内容
(1) 極左 伊藤真など護憲論者 J.-J.ルソーの社会契約論からさらに、アトム的個人主義と集産主義の結合形態(=左翼的全体主義)※説明に接近 「人権」「平和」を過度に強調し絶対視する共産党・社民党・民主党左派系の法曹に多い憲法論でありイデオロギー色が濃く法理論というよりは左翼思想のプロパガンダである(左の全体主義)
(2) 左翼 芦部信喜
高橋和之
修正自然法論(法=主権者意思[命令]説に自然法を折衷)+J.-J.ルソーの社会契約論 宮沢俊義→芦部信喜と続く戦後日本の憲法学の最有力説であり通説
※宮沢は有名なケルゼニアン(ケルゼン主義者)。芦部は自然法論者だが人権保障をア・プリオリ(先験的)な「根本規範」と位置づけており、その表面的な米国判例理論の紹介はポーズに過ぎず、実際には依然ケルゼン/ラートブルフ等ドイツ系法学の影響が強い
よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編)
(3) リベラル左派 長谷部恭男 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)を一部独自解釈
※なお長谷部は社会契約論に依拠しているのか曖昧でハートの法概念論と辻褄が合うはずのハイエクの自由論は故意に無視している
近年の左派系憲法論(護憲論)をリードしている長谷部は芦部門下であるが、師のようなドイツ系法学パラダイムはもはや世界の憲法学の潮流からは通用しないことを認識しており、師の憲法論の中核である、①根本規範を頂点とした法段階説+②制憲権(憲法制定権力)説、を明確に否定して、英米系法学パラダイムへの接近を図っている。(※但しハートまでは受容しながらもハイエクを拒否している長谷部の憲法論は中途半端の誹りを免れず、これを一通り学んだ後は、より整合性のとれた阪本昌成の憲法論へと進むべきである) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編)
(4) 中間 佐藤幸治 人格的自律権に限定して自然法を認める独自説+J.ロックの社会契約論 芦部説の次に有力な憲法論であり、芦部説よりも現実妥当性が高いので重宝されるが(佐藤は佐々木惣一から大石義雄へと続く京都学派憲法学の系統)、法理論としては妥協的でチグハグと呼ばざるを得ない 佐藤幸治『憲法 第三版』抜粋
(5) リベラル右派 阪本昌成 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)+F.A.ハイエクの自由論 20世紀後半以降の分析哲学の発展を反映した英米法理論に基礎を置く憲法論であり、法理論としての完成度/説得力が最も高いが、日本では残念ながら非常に少数派 阪本昌成『憲法1 国制クラシック』
(6) 保守主義 中川八洋
日本会議
E.コークの「法の支配」論+E.バークの国体論 日本会議・チャンネル桜系の憲法論も基本的にこちらに該当する。法理論というより「国民の常識」論であり、心情面からの説得力が高いが、(5)の法理論を一通り押えた上でこの立場を取らないと、いつの間にか(7)に堕する危険があるので注意。 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋
(7) 右翼・極右 いわゆる無効論者 ヘーゲルの法概念論・共同体論およびそれに類似した全体主義的論調 「伝統」「国体」などを過度に強調し絶対視して「右の全体主義」化した憲法論(左翼憲法論の裏返しであり、左翼からの転向者が嵌り易い。法理論というより右翼イデオロギーのプロパガンダ色が濃い)

※政治的スタンス5分類・8分類+円環図
- ...

※サイズが合わない場合はこちら をクリック


⇒上図の詳しい説明は、政治の基礎知識政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 参照。

政治的スタンス毎の憲法論の違いは、①「人権」と②「国民主権」の捉え方に顕著に現れる。
このうち、①「人権」に関しては、「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のためにを参照。
政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価では、(2)~(6)の各々の政治的スタンスの代表的な②「国民主権」論を列記したのち、総括する。



◆2.憲法典の改廃論


憲法典の改廃論 内容 参考ページ
(1) 改憲論 保守的改憲論 保守主義的・自由主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋
左翼的改憲論 左翼的・全体主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論
中間的改憲論 それほど明確なポリシーがあるわけではない(=保守主義的とも左翼的とも言い難い)が、一応は憲法9条の改正など最低限の提言内容は持つ改憲論
(2) 護憲論 左翼的護憲論1
(芦部信喜説準拠)
「人権」「平和」理念を絶対視して、彼らがその理念を体現すると考える現行の憲法典の絶対的維持を訴える論。しかし、■2.で説明したように、芦部説などのベースとなっている法概念理解は実際には単なる左翼イデオロギーの刷り込みでしかなく「自由で寛容な価値多元的な社会を支える憲法構想」としては完全に破綻している。 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編)
左翼的護憲論2
(長谷部恭男説準拠)
自衛隊の存在などは「憲法の変遷」があった(=条文の変化はないが、その解釈が変化したことにより合憲となった)として現状追認する一方で、現行憲法典の条文自体には「世界平和の希求」「人権価値実現の目標プログラム」など将来に向けての積極的価値を認めて、改憲に反対する論 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編)
いわゆる真正護憲論
(新無効論)
この論の当否についてはネットなどで各自チェックするのが望ましい。一つ指摘事項を書くとすれば、この論のベースとなる法概念理解は、実は芦部信喜に代表される①左翼的護憲論1の法段階説(根本規範・自然法論などを強調するドイツ法学系の法概念理解)と同じ(=左翼的護憲論が「人権」「平和」を絶対視するところを、この論では彼らの考える「国体」を絶対視している、という違いがあるだけ)であり、①左翼的護憲論1と同じく、現代の法学パラダイムから全く落伍した時代遅れの論である、ということである。
そのほか、この論には法的議論として様々な無理があり、一定の法学知識のある層からは全く相手にされていない が、一般向けのプロパガンダとしては中々人気のある論となっている。
国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法)
(3) 破棄論 占領憲法失効・破棄論
(菅原裕説が代表的)
主権回復(1952.4.28)直後には一定の説得力と賛同者をもっていた論であったが、現在では最早現実妥当性がない無責任な論である。
1950年代前半迄であれば、現行憲法を破棄・失効させ明治憲法を復活させてそのまま運用することは何とかギリギリで可能だったかも知れないが、戦後日本社会の様相を反映した複雑・多様な法制度が整備された現在では、代替案も示せずに「現行憲法を破棄・失効せよ」とだけ強弁するだけでは済まされない。



◆3.憲法典改正案


◇1.現在提案されている種々の改憲案

中川八洋草案 保守的改憲案の代表例
日本会議の提言 保守的改憲案の代表例
産経新聞案(2013年) 「国民の憲法」要綱
読売新聞案(2004年) 読売新聞社・憲法改正2004年試案
自民党案(2012年) 現行憲法・自民党改憲案(対照表)
国立国会図書館編・改憲案一覧(2005年) 主な日本国憲法改正試案及び提言


◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否

憲法典の構成 保守的スタンスから見た改正の要否、改正内容
前文 抜本的な書換が必要 自虐的文言・空想的国際協調主義などの全面的排除 憲法の基本理念や解釈基準を明記する部分だが、現状は占領軍のポジション・トークに過ぎない部分が目立ち、抜本的な書換が必要である。
本文 (1) 固有規定1 <1> 第一章(天皇) 要検討 具体的な改正内容は慎重な検討を要する 国の在り方や国政の基本方針を明記する部分だが、文理解釈のままでは実質憲法(国制)とズレが生じるために、現状では相当に苦しい目的論的解釈が必要となっている箇所が多く、大幅な書換が必要である。
<2> 第ニ章(戦争の放棄) 抜本的な書換が必要 正当な戦力の保持・行使の明記etc.
(2) 権利章典 <1> 第三章(国民の権利及び義務) 小規模な修正 普遍的人権ではなく国民の自由・権利の保障etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。
(3) 統治機構 <1> 第四章(国会) 小規模な修正 参議院の在り方etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。
<2> 第五章(内閣) 内閣権限の強化、国家安全保障の不備対応etc.
<3> 第六章(司法) 国民審査制度の不備対応etc.
<4> 第七章(財政)
<5> 第八章(地方自治)
(4) 固有規定2 <1> 第九章(改正) 要検討 96条の2/3条項については賛否両論あり 要検討。
<2> 第十章(最高法規) 中規模の修正 人権の過度の強調の排除、最高法規性の定義再検討etc.
(5) 経過規定 <1> 第十一章(補則) - 新たな経過規定が必要 本文ではなく附則とするのが合理的である。


◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案)

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このページでは、①日本国憲法と、②自民党憲法改正草案(2012年版)全文比較し、さらに対照表の右脇に、③保守主義の代表的理論家である中川八洋・筑波大学名誉教授著『国民の憲法改正』の指摘事項を注記して、憲法改正問題のポイント明確化を図ります。

<目次>


※自民党草案の引用元 ⇒ 自民党ホームページ◆コラム「憲法改正草案」を発表
中川八洋氏の改憲論の詳細解説 ⇒ 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋

■1.日本国憲法-自民党・憲法改正草案(2012年版)-中川八洋・改憲案(対照表)

日本国憲法 自民党・憲法改正草案(2012年版) 中川八洋・改憲案
前 文 説明 前 文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
前文 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。/我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。/日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。/我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。/日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。 削除大東亜戦争に関する戦勝国への謝罪文。1952年4月のサンフランシスコ講和条約の発効をもって死文。自由社会の憲法にあってはならない「国民主権 」などの不適切な用語がある。
書換案日本国民は、祖先より相続した美徳ある自由の満ちる祖国が、未来悠久に存続するために、世襲の義務を果すことを決意して、主権を喪失した占領下に制定された「日本国憲法」を改正し、ここに新しく憲法を制定する。
第1章 天 皇 説明 第1章 天 皇 中川八洋・改憲案
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 天皇の地位、国民主権 第1条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。 大幅修正元首である天皇 を元首と明記する。「国民主権」は存在させてはならない。本書第一章 参照のこと。
第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 皇位継承 第2条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 新条項皇室典範の非法律化。「改正は皇室の発議による」は、昭和天皇のご遺志。
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 天皇の国事行為と内閣の責任 ※現行憲法の第3・6・7条⇒草案の第6条に統合
国旗及び国歌 第3条 新条項国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
新条項君が代と日の丸の定め。
元号 第4条 新条項元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任 第5条 条番変更天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
第5条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 摂政(皇室典範) 第7条 条番変更皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。
2 第5条及び前条第4項の規定は、摂政について準用する。
第6条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
天皇の任命権 第6条 条番統合天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
△1. 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
△2. 国会を召集すること。
△3. 衆議院を解散すること。
△4. 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
△5. 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
△6. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
△7. 栄典を授与すること。
△8. 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
△9. 外国の大使及び公使を接受すること。
△10. 儀式を行うこと。
3 天皇は、法律の定めるところにより、前2項の行為を委任することができる。
4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
5 第1項及び第2項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
大幅修正「内閣の助言と承認」は不敬用語で不適切。「奏請」が正しい言葉。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
△1.憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
△2.国会を召集すること。
△3.衆議院を解散すること。
△4.国会議員の総選挙の施行を公示すること。
△5.国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
△6.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
△7.栄典を授与すること。
△8.批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
△9.外国の大使及び公使を接受すること。
△10.儀式を行ふこと。
天皇の国事行為
第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 皇室の財産授受⇒皇室経済法へ 第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。 大幅修正皇室財産については、旧制に戻す。第88条と統合する。
新条項皇室財産の皇室への帰属。
第2章 戦争の放棄 説明 第2章 安全保障 中川八洋・改憲案
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
戦争の放棄、戦力・交戦権の否認 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
大幅修正敗戦国の占領者への武装解除誓約の定めをいつまで残すのか。国防軍の創設を定める。本書第ニ章参照のこと。
国防軍 第9条の2 新条項我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
領土等の保全等 第9条の3 新条項国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。 新条項「国防」のなかに「固有の領土防衛」を含む旨の定め。
第3章 国民の権利及び義務 説明 第3章 国民の権利及び義務 中川八洋・改憲案
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。 日本国民の要件⇒国籍法へ 第10条 日本国民の要件は、法律で定める。
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 基本的人権の享有 第11条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。 削除「人権」は反憲法の概念。本書第五章 参照のこと。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 自由・権利の保持義務、濫用禁止、利用責任 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重 第13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。 (1文)削除「個人の尊重」とは「人間の個(アトム)化」を前提としており、アナーキズム若しくは全体主義に至る危険思想。「個人の尊厳」は伝統と慣習の宿る「中間組織」の存在と他者の支えが不可欠。「中間組織」の擁護が憲法原理であって、「個人の尊厳」は憲法としては排除すべきもの。
(2文)削除生命・自由・幸福追求という「国民の権利」の一つは、中川草案第16条に統合。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界 第14条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
(1項後段)削除「法の前の平等」の重複説明部分は不要。
(2項)削除華族は一部復活する。
新条項華族制度の部分的復活。
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙・秘密投票の保障 第15条 公務員を選定し、及び罷免することは、主権の存する国民の権利である。
2 全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による。
4 選挙における投票の秘密は、侵されない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。
第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。 請願権 第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。
2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。 国および公共団体の賠償責任 第17条 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体その他の公共団体に、その賠償を求めることができる。 削除国家賠償法に規定されている。
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 奴隷的拘束および苦役からの自由 第18条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
削除アメリカ黒人解法の定めは日本に不要。
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 思想および良心の自由 第19条 思想及び良心の自由は、保障する。
個人情報の不当取得の禁止等 第19条の2 新条項何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
信教の自由、国の宗教活動の禁止 第20条 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。
大幅修正日本に特有な宗教絶滅運動である「政教分離」は“正しい憲法”の拒絶するもの。本書第七章を参照のこと。第89条はここに統合。
新条項英霊を祀る靖国神社を守る国民の義務の規定。
新条項無神論者の反宗教活動の禁止。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密 第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
国政上の行為に関する説明の責務 第21条の2 新条項国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由 第22条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
第23条 学問の自由は、これを保障する。 学問の自由 第23条 学問の自由は、保障する。
第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
家族生活における個人の尊厳と両性の平等 第24条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
大幅修正「家族重視」は憲法の根本的規定の一つ。本書第三章を参照のこと。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
生存権、国の生存権保障義務 第25条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
削除不要。
環境保全の責務 第25条の2 新条項国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
在外国民の保護 第25条の3 新条項国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。
犯罪被害者等への配慮 第25条の4 新条項国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
教育を受ける権利、教育を受けさせる義務、義務教育の無償 第26条 全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
2 全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。
3 国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
勤労の権利・義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止 第27条 全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
3 何人も、児童を酷使してはならない。
削除「労働」の聖化は社会主義イデオロギーだから、自由社会の憲法に不適。「勤労の義務」化は、強制重労働収容所に直結する。その他は、法律で充分に定められている
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 勤労者の団結権・団体交渉権その他の団体行動権 第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。
2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。
削除27条と同様の理由
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
財産権 第29条 財産権は、保障する。
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。 納税の義務 第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。
第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 法定の手続の保障 第31条 何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。 大幅修正中川草案第29条の一つにまとめる。
第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 裁判を受ける権利 第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。 大幅修正中川草案第29条の一つにまとめる。
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 逮捕の要件 第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 大幅修正中川草案第29条の一つにまとめる。
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。 抑留・拘禁の禁止 第34条 何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げられることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。
2 拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
住居侵入。捜索・押収に対する保障 第35条 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、住居その他の場所、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。ただし、第33条の規定により逮捕される場合は、この限りでない。
2 前項本文の規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。
削除刑事訴訟法など法律で規定されている。
第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。 拷問・残虐な刑罰の禁止 第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。 削除35条と同様の理由
第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
刑事被告人の権利 第37条 全て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 被告人は、全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利及び公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。
削除35条と同様の理由
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
自己に不利な供述の強要禁止、自白の証拠能力 第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。
削除35条と同様の理由
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。 刑罰法規の不遡及、一事不再理 第39条 何人も、実行の時に違法ではなかった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。 削除35条と同様の理由
第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。 刑事補償 第40条 何人も、抑留され、又は拘禁された後、裁判の結果無罪となったときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。 削除35条と同様の理由
第4章 国 会 説明 第4章 国 会 中川八洋・改憲案
第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 国会の地位、立法権 第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。 ※三権の順序※現在の「国会→内閣→裁判所」の順序を、「裁判所→内閣→国会」とする。デモクラシーの政治機関たる国会はそのデモクラシー性の故に制限されるべきものということと、司法は自由社会にとって最も重視されるべきものであることの二点を、国民が日々、拳拳服膺するため。
新条項立法における伝統と慣習の重視。
第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。 両院制 第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
両議院の組織 第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律で定める。
第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。 議員および選挙人の資格 第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
第45条 衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。 衆議院議員の任期 第45条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。
第46条 参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。 参議院議員の任期 第46条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第47条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。 選挙に関する事項の要立法 第47条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。
第48条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。 両議院議員の兼職禁止 第48条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。
第49条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。 議員の歳費 第49条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。 議員の会期中不逮捕特権 第50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。
第51条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。 議員の発言・表決の無責任 第51条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
第52条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。 常会 第52条 通常国会は、毎年一回召集される。
2 通常国会の会期は、法律で定める。
第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。 臨時会 第53条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。
第54条 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
衆議院の解散、特別会、参議員の緊急集会 第54条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。
2 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない。
3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。
第55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。 議員の資格争訟の裁判 第55条 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第56条 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
定数足、表決 第56条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。
第57条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
会議の公開、秘密会 第57条 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。
第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。
役員の選任、議院規則、懲罰 第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第59条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
法律案の議決、衆議院の優越 第59条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
新条項民法と刑法の改正等にかかわる審議における、参議院先議権の定め。
第60条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
衆議院の予算先議と衆議院の優越 第60条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第61条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。 条約の国会承認と衆議院の優越 第61条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。 議院の国政調査権 第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第63条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。 国務大臣の議院出席の権利と義務 第63条 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。
2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。
第64条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
弾劾裁判所 第64条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。
政党 第64条の2 新条項国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、保障する。
3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。
新条項全体主義や無国家主義を指向する政党の禁止。
第5章 内 閣 説明 第5章 内 閣 中川八洋・改憲案
第65条 行政権は、内閣に属する。 行政権と内閣 第65条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。
第66条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
内閣の組織 第66条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。
2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
内閣総理大臣の指名、衆議院の優越 第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。
2 国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。
第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
国務大臣の任免 第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 衆議院の内閣不信任決議 第69条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。 内閣総理大臣の欠けつ、総選挙後の総辞職 第70条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。
第71条 前2条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。 総辞職後の内閣の職務 第71条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。
第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。 内閣総理大臣の職務 第72条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。
2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。
第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
△1.法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
△2.外交関係を処理すること。
△3.条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
△4.法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
△5.予算を作成して国会に提出すること。
△6.この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
△7.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
内閣の事務 第73条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。
△1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
△2. 外交関係を処理すること。
△3. 条約を締結すること。ただし、事前に、やむを得ない場合は事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
△4. 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務をつかさどること。
△5. 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
△6. 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
△7. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第74条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。 法律・政令の署名 第74条 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第75条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。 国務大臣の訴追 第75条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。ただし、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない。
第6章 司 法 説明 第6章 司 法 中川八洋・改憲案
第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立 第76条 全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。
3 全て裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第77条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
裁判所の規則制定権 第77条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。 裁判官の身分保障 第78条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。
第79条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
最高裁判所の構成、国民審査 第79条 最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。
3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。
4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
5 最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない。
第80条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬 第80条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には、退官する。
2 前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。
第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。 法令審査権 第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。
第82条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
裁判の公開 第82条 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷で行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。
第7章 財 政 説明 第7章 財 政 中川八洋・改憲案
第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 財政処理の基本方針 第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。
第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 課税の要件 第84条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。
第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。 国費支出と国の債務負担 第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
第86条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。 予算の作成と国会の議決 第86条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。
3 内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
4 毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。
第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
予備費 第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 全て予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第88条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。 皇室財産・皇室費用 第88条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。 大幅修正皇室財産は皇室に属する。第8条とともに、中川草案第10条にまとめる。
第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 公の財産の支出利用の制限 第89条 公金その他の公の財産は、第二十条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。
2 公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。
削除正しい憲法に違反する宗教絶滅運動「政教分離」に悪用されるので、削除。
第90条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
決算、会計検査院 第90条 内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに両議院に提出し、その承認を受けなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。
3 内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。
第91条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。 財政状況の報告 第91条 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
第8章 地方自治 説明 第8章 地方自治 中川八洋・改憲案
地方自治の本旨 第92条 新条項地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。
2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。 地方自治の基本原則 第93条 条番変更地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。
2 地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。
3 国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。
第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
地方公共団体の機関、直接選挙 第94条 条番変更地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。
2 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する。
第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。 地方公共団体の権能 第95条 条番変更地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
地方自治体の財政及び国の財政措置 第96条 新条項地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。
2 国は、地方自治体において、前項の自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。
3 第八十三条第二項の規定は、地方自治について準用する。
第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。 特別法の住民投票 第97条 条番変更特定の地方自治体の組織、運営若しくは権能について他の地方自治体と異なる定めをし、又は特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票において有効投票の過半数の同意を得なければ、制定することができない。
説明 第9章 緊急事態 中川八洋・改憲案
緊急事態の宣言 第98条 新条項内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
緊急事態の宣言の効果 第99条 新条項緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
第9章 改 正 説明 第10章 改 正 中川八洋・改憲案
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
憲法改正の手続 第100条 条番変更この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。
第10章 最高法規 説明 第11章 最高法規 中川八洋・改憲案
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 基本的人権の本質 削除 削除自由社会の憲法にあってはならない「人権 」の定め。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
憲法の最高法規性と条約・国際法規の遵守 第101条 条番変更この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
(1項)削除自明にて不要。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 憲法尊重擁護の義務 第102条 条番変更全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
削除不要。
第11章 補 則 説明 附 則 中川八洋・改憲案
第100条 この憲法は、公布の日から起算して6箇月を経過した日から、これを施行する。
2 この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
施行期日、施行に必要な準備行為 - (施行期日)
1 この憲法改正は、平成○年○月○日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。
(施行に必要な準備行為)
2 この憲法改正を施行するために必要な法律の制定及び改廃その他この憲法改正を施行するために必要な準備行為は、この憲法改正の施行の日よりも前に行うことができる。
第101条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまての間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。 国会に関する経過規定 削除 削除経過措置の定めであり、現在では不要。
第102条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを3年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。 第一期参議院議員の任期 削除 削除101条と同様の理由
第103条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。 公務員に関する経過規定 削除 削除101条と同様の理由
裁判官の報酬・任期に関する経過規定、
予算作成・決算に関する経過規定
新規(適用区分等)
3 改正後の日本国憲法第七十九条第五項後段(改正後の第八十条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、改正前の日本国憲法の規定により任命された最高裁判所の裁判官及び下級裁判所の裁判官の報酬についても適用する。
4 この憲法改正の施行の際現に在職する下級裁判所の裁判官については、その任期は改正前の日本国憲法第八十条第一項の規定による任期の残任期間とし、改正後の日本国憲法第八十条第一項の規定により再任されることができる。
5 改正後の日本国憲法第八十六条第一項、第二項及び第四項の規定はこの憲法改正の施行後に提出される予算案及び予算から、同条第三項の規定はこの憲法改正の施行後に提出される同条第一項の予算案に係る会計年度における暫定期間に係る予算案から、それぞれ適用し、この憲法改正の施行前に提出された予算及び当該予算に係る会計年度における暫定期間に係る予算については、なお従前の例による。
6 改正後の日本国憲法第九十条第一項及び第三項の規定は、この憲法改正の施行後に提出される決算から適用し、この憲法改正の施行前に提出された決算については、なお従前の例による。

■2.自民党 憲法改正草案の概要(主な新条項・変更条項と趣旨)

自民党「日本国憲法改正草案」(2012年版)の概要 分類 評価
前文 - ・国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの原則を継承しつつ、日本国の歴史や文化、国や郷土を自ら守る気概などを表明。 前文 中川案のように左翼的解釈を招き易い「国民主権」「基本的人権」の語自体を排除するのが最良だが、いわゆる三原則を左翼的解釈ではなく保守的解釈によって具体的に内容把握する のであれば可とする。
第1章 天皇 ・天皇は元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴。
・国旗は日章旗、国歌は君が代とし、元号の規定も新設。
固有規定 国旗・国歌・元号条項は良追加だが、中川案にある皇室典範・皇室財政の自律が盛り込まれていないのは問題である。
第2章 安全保障 ・平和主義は継承するとともに、自衛権を明記し、国防軍の保持を規定。
・領土の保全等の規定を新設。
良追加。
第3章 国民の権利及び義務 ・選挙権(地方選挙を含む)について国籍要件を規定。
・家族の尊重、家族は互いに助け合うことを規定。
・環境保全の責務、在外国民の保護、犯罪被害者等への配慮を新たに規定。
権利章典 追加条項は評価するが、「人権」の語を排除し「(国民の)自由および権利」に表現を一本化 すべき。
第4章 国会 ・選挙区は人口を基本とし、行政区画等を総合的に勘案して定める。 統治機構 可。但し参議院の位置づけ・役割につき工夫があればなお良かった。
第5章 内閣 ・内閣総理大臣が欠けた場合の権限代行を規定。
・内閣総理大臣の権限として、衆議院の解散決定権、行政各部の指揮監督権、国防軍の指揮権を規定。
良追加
第6章 司法 ・裁判官の報酬を減額できる条項を規定。 可。但し現在機能していない裁判官の国民審査制度等につき工夫があればなお良かった。
第7章 財政 ・財政の健全性の確保を規定。 可。
第8章 地方自治 ・国及び地方自治体の協力関係を規定。 可。
第9章 緊急事態 ・外部からの武力攻撃、地震等による大規模な自然災害などの法律で定める緊急事態において、内閣総理大臣が緊急事態を宣言し、これに伴う措置を行えることを規定。 固有規定 良追加。
第10章 改正 ・憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和。 評価保留。なお日本会議の提言 では発議要件を衆参それぞれの3/5としており検討すべき。
第11章 最高法規 ・憲法は国の最高法規であることを規定。 97条削除は良判断。しかし「最高法規」の表現は憲法典至上主義を招くきらいがあるため中川案のように「自明のため削除」とするのが望ましい。

■3.(参考)自民党案への批判的見解

日本国憲法改悪草案 日本の未来にふさわしくない 憲法改悪阻止を今こそ
自民党憲法草案の条文解説
「自民党憲法改正草案」に関するQ&A(福島瑞穂・社民党党首)
自民党の憲法草案を読み解く(朝日新聞DIJITAL)

※こうした左翼側の批判の焦点は、①戦争の放棄(9条→大幅改変)と、②基本的人権の本質(97条→削除)、および③立憲主義/「法の支配」理念への違反(国民主権etc.の曖昧化)、の3点に絞られる。このうち、
戦争の放棄(9条→大幅改変) に関しては、 保守側からの説得力の高い理由説明が様々のサイトで既に提示されているので省略する。
基本的人権の本質(97条→削除) に関しては、 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために を参照。
立憲主義/「法の支配」理念への違反(国民主権etc.の曖昧化) に関しては、 立憲主義とは何か 「法の支配(rule of law)」とは何か を参照。

なお、憲法改正問題の総まとめページとして、日本国憲法改正問題を参照。

■4.ご意見、情報提供

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