けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

SS110

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/09/25(土) 00:28:50

特に用事はなかったし、拒否権もなさそうだったので渋々ながら律の家に行ってみる。
けれども、ついてみれば部屋に連れていかれただけで何も無い。……用事があったんじゃないのか?

仕方が無いので、暫く勝手に過ごすことにする。
あたりを見回すと放置してある雑誌が目に入った。
雑誌は5冊ほどが乱雑とも綺麗とも言いがたい状態で置いてあり、なんとなく右から二番目を手に取る。
表紙を見ると、音楽系の雑誌しかないと思っていたのにまさかのファッション誌。
少し驚いて他のも確認してみると残りの4冊は全部音楽系の雑誌だった。
ま、まぁ律だってこう言うのは読むよなあ。

「なぁ、澪」
「なんだ?」

表紙をめくるのとほぼ同時に、律が声をかけてきた。
折角雑誌を読み始めようとしたところだったのに……なんとなく出鼻をくじかれた気分だ。
とりあえず雑誌から顔をあげて律の方を見ると、カチューシャを外していて前髪がオデコを隠すように垂れていた。

「どうだ?」

どうもなにも、ちょっと印象が変わる。という以外言いようがない。
そもそも律がカチューシャを外した姿なんて、何度も泊まったり泊まられたりしているだけに、見慣れている。
だから、改まって聞かれても大した感想を言えるはずもなく。

「んー?……相変わらず、前髪長いな」
「なんだよそれ。……なんかもっとこう、あるだろー?」
「変じゃないぞ」
「……そっか」

私の返答に納得したのか、これ以上聞いても無駄だと思ったのか、律はそれ以上聞いてこないので雑誌に視線を落とす。
あれ。ぱらぱらと雑誌をめくってみると、軽い違和感。
よく見るとこの雑誌、今の髪をおろした律のような髪型の子が結構載ってる。
しかも、その髪型をした子らは揃いも揃って律があまり好んできないような可愛らしい服を着ている。

雑誌のモデルの子をさっきの律に頭の中で置き換えてみると、案外ぴったり似合った。
なんだか面白い遊びが見つかった気分になったので、しばらくそうして雑誌を眺めていた。

それにしても髪型が似てる人ばっかりだなんて、面白い偶然もあるものだ。
そう思いつつ、律の方を見てみると、いつの間にかカチューシャ姿に戻っていた。

「あれ、やめちゃったのか?」
「んー」
「変じゃなかったぞ?」
「似合う、とも言わなかったけどな」

律は少しだけ不機嫌そうな声でそう呟いた。心なしか不貞腐れたように頬をふくらませているようにも見える。
どうやら私の反応がお気に召さなかったようだ。……一体私にどんな反応を求めていたのか。

「もしかして、似合うっていって欲しかった?」
「そ、そんなんじゃねーやい」

少し、からかいの意を込めた視線を送りつつ言ってやった。
すると、律は私の視線から逃げるように外方を向いた。その顔は少し赤みがかっている。……どうやら照れているようだ。
これはもしかすると、何時も弄られている分を返すチャンスではなかろうか。

「可愛かったのになー。前髪をおろした律」
「はぁ!?」
「あの髪型で可愛い服とか着ちゃったりなんかしたら、女の私でもドキドキしちゃうなー」
「……な、何言っちゃってんのかなぁ、澪ちゃんは!」

少しわざとらしく言ってみると、律は異常なまでに反応した。
ここまで動揺する律は見たこと無いかもしれない。それくらい、あたふたしている。
先程よりも更に顔を赤らめ、動揺のせいか汗も滲んでいて、何時もの余裕なんて微塵も感じられない。
……なんて面白いんだろう。こんな機会めったに無い。

いたずら心に火が付いた私は、どうしたらもっと面白い反応をしてくるか考える。
私の手元にあるのは、さっきまで見ていたファッション誌のみ。
そして、そのファッション誌には前髪をおろした律に似た髪型の子がいっぱい。
……となれば。

「特に~こういう服なんか、似合っただろうに……なあ?」

わざとらしく律の方に見えるように雑誌を向ける。
そしてこの雑誌の中で、これ以上はないってくらい『可愛らしい服』を指差した。
我乍ら中々意地悪な気がする。なんたって、律はこういう服苦手……

「本当か?」
「え?」
「本当に、それ似合うと思う?」

そう問いかけてくる律の瞳は真剣そのもの。それこそドラムを叩いている時でも中々お目にかかれないくらい。


「澪?」
「え、あ。……に、似合うと思うよ」

予想外の反応に、返答するのを忘れていた。
似合うと思ったのは本当だから、嘘は言っていない。言っていないんだけれども。
もっと違う反応を期待していただけに呆気に取られてしまう。
そんな私を気にする様子もなく、律はぶつぶつと何やら独り言を呟いている。
そして、「よしっ」と言う声と共に意を決したようにこちらを見る。

「な、なんだよ?」
「……良いって言うまで、入っちゃダメだからな。覗くのもだめだぞ」

そういう律に背中を押されつつ、私は部屋を追い出された。……ドアが閉まるのと同時にガチャリと鍵の音。
いくら私だって鍵を閉められたら覗くのも入るのも無理だぞ、律。
心のなかでツッコミを入れつつ、私は小さくため息を付いた。

「……一体、なんだっていうんだ」

はぁ、またしても手持ち無沙汰になってしまった。それに、喉も乾いた。
勝手に帰ったらきっと怒るよな、これ。でも暫くは中に入れてもらえないだろうしなあ。
……よし、お茶でも拝借しよう。

そう思って律の部屋の前から離れ、台所に向かう。
台所に着くと先客がいた。……聡だ。

「よっ、聡」
「あ、来てたんだ」
「うん。……まぁ、ついさっき部屋から追い出されたんだけどな」

わざとらしく肩を落としてため息を付いてみせると、聡はアイツによく似た顔で「何したんだよ~」と笑った。
この姉弟は本当によく似ている。……それなのに、律が男になったらこうはならないと思うのは何故だろう。

「何もしてない。急に『良いって言うまで入っちゃダメ』とかいってさ」
「はは。ねーちゃんのマネ、似てない」

やかましい、律の真似をすることが目的じゃなくて話が伝わればいいんだからいいの。……ちょっと、自信あったんだけどな。

「まぁそういう訳だから、お茶でも貰っちゃおうと思って」
「お茶?コーラもあるよ。普通のだけど」
「いや、コーラは太るからダメ」

砂糖いっぱいなんだぞ、アレ。
ラベルを見たとき、驚くとかそういうレベルを遥かに超えていたものだ。
あんなもの飲んだ日には、体重計が怖くて乗れない。いや、今も怖くて中々乗れないけど。

聡からお茶を受け取り、適当な椅子に腰掛ける。あぁ、冷たくて美味しい。
それから少し、話の相手をしてもらうことにした。
私と聡で話す事といえば必然的に律の愚痴話になってしまう。

相変わらず律が引っ張りまわすだの、ゲームで勝てそうだったのに電源切られただの、またプロレス技の実験台にされただの。
……一通り話したところで、お互い苦労しているなあという結論を導いてひと息つく。

「そういえば……良いって言うまでって言われたんなら、早いとこ戻ったほうがいいんじゃないの?」

それは私も思った。思ったけれども、理由の説明も無しに追い出されたんだ、少しくらいほっといたって良いと思う。
だいたい、何で呼び出してきたのかもわからないときたもんだ。まったく、何を考えてるのか、さっぱりわからない。

私は怒っているんだぞ、と意思表示をしてみせると聡は苦笑した。その時。

「みぃぃぃぃぃおぉぉぉぉぉ!どぉぉぉこぉぉぉだぁぁぁ!!」

暴走したさわ子先生並に凄まじい声。言い過ぎたかな、地獄の亡者くらい。
そんな恐ろしい声がドスドスと喧しい足音と共に近づいてくる。どどど、どうしよう。
怯えて慌てる私を余所に、聡は「ほら、鬼がきちゃったー」なんて笑ってコーラを口に含んでいた。
他人事だと思って。……ここにいたらそっちにまで被害がいくかもしれないってこと、わかってないな。

そうこうしているうちに、足音の主が台所までやってきた。
あぁもう仕方がない。相手は怒っていても律、おばけや幽霊みたいな怖いのじゃあないんだ、大丈夫だ私。
とりあえずなんとか、少しでも怒りを抑えてもらおう。そう思って、謝罪の言葉を述べるべく律の方みて、一時停止。
後ろで聡がコーラを盛大に吹く音が聞こえた。……ちゃんと拭いておけよ。

「良いって言っても全ッ然入ってこないからドア開けたらいねーし!」

ドタドタと床を踏みつけ叫んでいる、所謂地団駄というやつ。
そこまで怒りを主張してくれているとこ悪いんだけど。ごめん、ちょっと頭がついてかない。
なんせ、あの律が。さっきみたいに前髪をおろし、雑誌に載っていたような『可愛いらしい服』をきて現れたのだ。
しかも更に驚くべきことに、その服は私がからかう為に指さした服とほとんど同じ。
ん?今日は偶然が重なるな。っていうか、コレは夢なんじゃないだろうか、そうに違いない。
そう思って頬をつまんでみる。痛い、夢だ。…………違う、痛いんだから夢じゃない。


「聞いてるのか、澪!」
「う、ううん。聞いてない」
「おい!だいたいなあ」

聞いていられるわけがない。今までこんなことなかった。一体何が……明日は地球が滅亡するのか?
しかし、このままにしておいたら危ない。律の家が。床が抜けちゃうんじゃないだろうか。
今もし床が抜けたら、私も一緒にどーんと……ひぃ、怖い。
って、恐怖に負けてる場合じゃないぞ、私。このままじゃ地球が滅亡する前に律の家が滅亡しちゃう。
聡もどうにかしろって目でこっち見てるし。ココは私が何とかしないといけないんだ。
…………よし。

「律、とりあえず落ち着け」

そう言って、律を抑える。真正面から抱きしめる形になってしまったが緊急事態だ、耐えろ私の羞恥心。
すると、家を破壊するんじゃないかというレベルで暴れていた律が、急におとなしくなった。
その隙に、少し後ろを見て聡に目配せをする。『今のうちに、逃げろ』そういう意味を込めて。
しっかり意図を察してくれたようで聡はそそくさと台所から出て行った。流石姉弟、律と同じく鋭くて良かった。

「……澪のばか」
「ごめん」
「私がどんな思いで……」
「凄い似合ってる。ドキドキするもん」

律が怖かったとか家が崩壊するかもっていう不安とかの分もあったんだけどこの際気にしない。
実際律、かわいいし。からかいのつもりで言ったんだけど、まさか本当にドキドキするとは。

あれ、ちょっとまて。律も私の背中に腕を回しているような。これって……だ、だき、抱き合って、ないか。
くっついているだけでも私にはこれ以上ないくらいハイレベルだというのに。
大体ここは台所だ、律の部屋とかでなく。いや、律の部屋でも恥ずかしいけど。
恥ずかしがりの私でなくたってこれは恥ずかしいはずだ。うん、きっとそう。

「と、とりあえず部屋戻ろう?」
「やだ」

まさかの拒否。……同意してくれると思ったのに。見事に期待を打ち砕かれた。
それどころか、律の腕に力がこもり更に密着する形になって、余計に恥ずかしい感じになってしまった。
只でさえ恥ずかしさで爆発寸前なんだ、これ以上は勘弁してくれ。

「え、あう……あ、あの……え、えっと?」

律の予想外の行動にあたふたする私を見上げ、律は口を開く。

「もうちょっと、このままがいい」

前髪を下ろしただけなら平気なのに。いっつも見てるのに。ドキドキなんてしないのに。
なんで、可愛らしい服きて、恥らいで顔を赤らめつつ上目遣いで、しおらしい感じに言ってくるんだよ。
お前は私をどうしたいの。いや、私にどうして欲しいの。
ぐるぐると色々な思考が頭の中を駆け巡り、次の瞬間パーンっとはじけた。

「も、もうむり」
「澪?」

わたし、よく頑張ったよね。
身体中の力が抜けて、律に寄りかかる形になる。もう、げんかい。

意識が飛んでいく直前、ふわりと甘い匂いが鼻をかすめる。
これは、律の匂いかな。

……いいにおい。

口に出したかは分からないが、そう思ったのと同時に、私は気を失った。


おわる。




  • お前は私をどうしたいの。いや、私にどうして欲しいの。←わろたww -- 名無しさん (2012-01-05 21:00:53)
  • りっちゃん女の子らしくしたら絶対みんなよりかわいーだろうに... -- 名無しさん (2012-01-05 21:01:27)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー