69-192「佐々木さんのキョンな日常 涼宮ハルヒの企みその6~」

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 涼宮さんと私は並んで歩いていた。  公園を出る時、SOS団員の表情が不安げに見えたけど、何を心配しているのだろう。  団員達と話しているうちに、涼宮さんがキョンに興味以上の感情を抱いているのはわかった。好意と言い換えてもいいかも しれない。  SOS団の設立のきっかけをつくったのは、キョンだというのは古泉君の弁ではあるが、その古泉くんは涼宮さんに思いを寄せ ている。彼はどんな思いで私たちの話に加わり、どんな思いで聞いていたのだろう。  ”私にとって、なくてはならない存在。そばにいて欲しい、そばにいたい。そう思える人です”    「ねえ、佐々木さん。キョンから聞いたんだけど、昔、佐々木さんは恋愛を精神病だ、って言っていたそうね」   その言葉にわたしは頷く。昔、キョンに言った言葉の中で、今は消したい発言№1に入るけど。  「私も昔同じ事を言っていたわ。恋愛を毛嫌いしていた」  「何で毛嫌いしていたの?」  「中学時代、自分でいうのもなんだけど、結構もてていたの。よくつきあってくれ、て言われたわ」  彼女程の美人なら人目を引く。交際を申し込んでくる男子はたくさんいただろう。  「とりあえず、私も試しに付き合ってみたりしたんだけど……でも、ダメね。ろくな男はいなかった」  涼宮さんは首を軽く横に振りながらそう言った。  「行動がワンパターンすぎる。別人なのにやることは一緒。直ぐに飽きちゃって、告白聞くのも馬鹿馬鹿しくなって…… その内誰も来なくなって、まあホッとしたわけなんだけど」  誰も彼女の心を揺り動かすような男子がいなかったのだろう。  「で、私は思ったわけ。こんなつまらない事をなんでみんなやっているのかな、てね。考えた末に出した結論は『恋愛は 精神病』だった。正常な神経じゃやってられない、そう思った」  「でも、今思うと早すぎた結論だったわ。単にあたしが興味をひかれるような男にであっていなかっただけね」  そして、彼女は出会ったのだ。彼女の心を揺り動かす存在に。    「私もキョンに出会うまでは、そう考えていたわ。直ぐに考えを変えたわけじゃなくて、キョンと一緒の時間を過ごす様になって からだけど」  廻りくどいことは言わない。正々堂々と涼宮さんに私の考えを伝える。  「彼と一緒の時間を過ごすようになって、私も考え方が変わった。キョンは、周りの人には私のおかげで変わったなんて言われている ようだけど、私も彼に影響を受けた。お互いに影響しているのよ、私達は」  私は立ち止まり、涼宮さんの眼を真っ直ぐ見る。    「キョンは私にとって大切な存在。今までも、そしてこれからもね」 ----  少しの間、私達はお互いに何も言わなかった。周囲の音がやけに大きく聞こえた。  「最初から駄目と決めつけると、みすみす手に入る物を見逃すこともあるわ」  沈黙を破ったのは涼宮さんだった。  「佐々木さん、キョンとあなたの間には強い信頼関係がある。それこそ、誰も入り込める隙が無いほどね」  信頼関係。私とキョンを結ぶ絆の一つ。  「皆はあなた達の間に入る事は不可能だ、て言うけれど、でも本当にそうかしら?」  涼宮さんの口元に浮かんだ笑い。体育祭の騎馬戦の時に浮かべていた、何か企んでそうなあの笑い顔。  「人の考えは、心は変わる物。キョンがあたしや佐々木さんの考えを変えたようにね」  「キョンの心も変わると?」  「あり得ない事じゃないわ。全て物事は変化する。永久不変なものなんてないのだから」  小学校最後の年、私の両親は離婚した。それまでの姓から、私は佐々木という名字に代わった。  私のとってそれよりも衝撃的だったのが、あれだけ仲が良かったと私が思っていた両親の姿は、一面でしか 無かった事、人の心が変わる事だった。  涼宮さんが言っている事は正しい。人の思いは、心は変わるのだ。  けれど、だ。  「そうね。涼宮さんの言うとおりなんでしょうね。人の心は変わりやすい。それは確かなんでしょうね、でも… …」  一息ついて私は言葉を続ける。  「変わりやすいからこそ、その思いを大切にしたいから、人は努力するのよ。その思いを守り、より強くする為に」  私の気持ち。守りたい、強めたい思い。キョンを思う心。  「涼宮さん、あなたはとても魅力的な人だわ。キョンの心を捕える事が出来るのかもしれない。けれど、あなたに渡すつもりはないわ」  キョンを、キョンの心を。  「宣戦布告とうけとっていいのかしら。でも、少し意外だったわ」  「何が?」  「佐々木さんがこんなに情熱的だったなんて。冷静で落ち着いた人だと思っていた」  私の中の”女”の部分。理性だけでは測れない感情の源。  「誰にでも意外な面はあるのよ。私にも、そしてあなたにも」  それから、私達は再び歩き出した。  直球勝負で、涼宮さんは来た。でも、その方がわかりやすい。私も受けて立つ。  彼女のキョンに対する思いと、私のキョンの対する思い。  どちらがキョンの届くのか。  「おもしろくなってきたわ」  涼宮さんはご機嫌だ。  「そうね。楽しくなりそうね」  私もくっくっくっと笑った。  ----  ”感情なんてものは人類の自律進化への道を阻害する粗悪な遮蔽物としか思えない。特に恋愛感情なんて のは、一種の精神的な病だよ”  中学三年生の時のキョンとの会話。しかし、”真実”を知った今、”私”は重大な疑問を持つことになった。  自律進化の過程。統合思念体や、天蓋領域の存在が関心を持った、涼宮さんの力。”私”が”契約”によって 行使することになった”力”の鍵は、”感情”。  ”私”の考えは間違っていたことになる。  長門優希。涼宮さん、そして”私”と並ぶ自律進化の可能性の具現者。統合思念体により生み出されながら、 自らの意思と過程において進化し”長門優希”となった。  3人に共通するものは・・・・・・   ”鍵”  その名称で、涼宮さんに関わった組織及び存在すべてに観察されていた存在。   「なんだ、佐々木達の方が先についていたのか」  キョンがSOS団の団員たちとともに集合場所へやってきた。  「何か面白いものはあったか?」  「ああ、あったよ。かなり興味深いものがね。涼宮さんと二人で見つけられたよ」  私も涼宮さんも笑っていた。  「そうなのか?こっちはあんまり・・・・・・いや、ひとつだけあったな」  キョンは何故か古泉くんを見た。古泉君の微笑みが若干強張っていた。  「それじゃ、またな」  キョンと私は涼宮さん以下SOS団の団員たちに手を振って別れた。  「行こうか。キョン」  私は彼の手を取って、歩き出した。    「しかし、SOS団は、毎回あんなことをやっているのかね。単に涼宮の思いつきに振り回されているだけの ような気がするが?」  「でも、僕にとってはなかなか有意義な時間だったよ。彼女とゆっくり話してみたいとは思っていたからね」  彼女の気持ちを知ることもできた。そして、私も彼女に気持ちを打ち明けた。  「まあ、お前がそう言うんだったら良かったんだろうが・・・・・・ところで、佐々木。話は変わるが、今日の夕食、 うちで食べていかないか?」  「母親は今日もいないから、君の家で一緒に食事させてもらえるのは嬉しいけど、でもいいのかい?夏休みの間、 散々君の家でご馳走になったから、しばらく遠慮しておいたほうがいいかな、と思っていたんだけど」  「うちの家族は佐々木が来てくれると喜ぶから、遠慮はいらないよ。佐々木のおかげで俺の成績も上がった、て 母親は喜んでいるし、妹はお前が相手してくれるから来るのを待っているしな」  キョンの家族。暖かく私を迎えてくれる、私が好きな居場所。  「それじゃ、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうよ」  「よし、わかった。ちょっと待ってろよ。今からうちに連絡するからな・・・・・・ん?」  「どうかしたのかい?」  「いや、メ-ルが来ていた。母親からだ。『佐々木さんの分は準備してあるから、一緒に食べてもらうように伝え なさい』・・・・・・よくわかっているな」  「さすが君の母上だよ」  私もキョンも声をたてて笑った。  ”涼宮さんが”私”に対してあのような行動に出るのはある種の規定事項だった。彼女の力が”鍵”に由来する以上、 当然といえば当然だ。  同時にある勢力がなぜ、あのような行動をとり、改変を行ったのもおぼろげながら分かりかけてきた。  とすると、その勢力が行動を起こすのは”あの日”しかない。  固定因子が発生する、最後の扉が開くあの日。  その日まで、私は意識を潜ませる。”私”は少し苦労するだろうけど、キョンとの絆を、彼への想いを強くして ほしい。
 涼宮さんと私は並んで歩いていたと思ったら走っていた。  公園を出る時、SOS団員の表情が不安げに見えたけど、何を心配しているのだろう。  団員達と話しているうちに、涼宮さんがキョンに興味以上の感情を抱いているのはわかった。好意と言い換えてもいいかも しれない。  SOS団の設立のきっかけをつくったのは、キョンだというのは古泉君の弁ではあるが、その古泉くんは涼宮さんに思いを寄せ ている。彼はどんな思いで私たちの話に加わり、どんな思いで聞いていたのだろう。  ”私にとって、なくてはならない存在。そばにいて欲しい、そばにいたい。そう思える人です”    「ねえ、佐々木さん。キョンから聞いたんだけど、昔、佐々木さんは恋愛を精神病だ、って言っていたそうね」   その言葉にわたしは頷く。昔、キョンに言った言葉の中で、今は消したい発言№1に入るけど。  「私も昔同じ事を言っていたわ。恋愛を毛嫌いしていた」  「何で毛嫌いしていたの?」  「中学時代、自分でいうのもなんだけど、結構もてていたの。よくつきあってくれ、て言われたわ」  彼女程の美人なら人目を引く。交際を申し込んでくる男子はたくさんいただろう。  「とりあえず、私も試しに付き合ってみたりしたんだけど……でも、ダメね。ろくな男はいなかった」  涼宮さんは首を軽く横に振りながらそう言った。  「行動がワンパターンすぎる。別人なのにやることは一緒。直ぐに飽きちゃって、告白聞くのも馬鹿馬鹿しくなって…… その内誰も来なくなって、まあホッとしたわけなんだけど」  誰も彼女の心を揺り動かすような男子がいなかったのだろう。  「で、私は思ったわけ。こんなつまらない事をなんでみんなやっているのかな、てね。考えた末に出した結論は『恋愛は 精神病』だった。正常な神経じゃやってられない、そう思った」  「でも、今思うと早すぎた結論だったわ。単にあたしが興味をひかれるような男にであっていなかっただけね」  そして、彼女は出会ったのだ。彼女の心を揺り動かす存在に。    「私もキョンに出会うまでは、そう考えていたわ。直ぐに考えを変えたわけじゃなくて、キョンと一緒の時間を過ごす様になって からだけど」  廻りくどいことは言わない。正々堂々と涼宮さんに私の考えを伝える。  「彼と一緒の時間を過ごすようになって、私も考え方が変わった。キョンは、周りの人には私のおかげで変わったなんて言われている ようだけど、私も彼に影響を受けた。お互いに影響しているのよ、私達は」  私は立ち止まり、涼宮さんの眼を真っ直ぐ見る。    「キョンは私にとって大切な存在。今までも、そしてこれからもね」 ----  少しの間、私達はお互いに何も言わなかった。周囲の音がやけに大きく聞こえた。  「最初から駄目と決めつけると、みすみす手に入る物を見逃すこともあるわ」  沈黙を破ったのは涼宮さんだった。  「佐々木さん、キョンとあなたの間には強い信頼関係がある。それこそ、誰も入り込める隙が無いほどね」  信頼関係。私とキョンを結ぶ絆の一つ。  「皆はあなた達の間に入る事は不可能だ、て言うけれど、でも本当にそうかしら?」  涼宮さんの口元に浮かんだ笑い。体育祭の騎馬戦の時に浮かべていた、何か企んでそうなあの笑い顔。  「人の考えは、心は変わる物。キョンがあたしや佐々木さんの考えを変えたようにね」  「キョンの心も変わると?」  「あり得ない事じゃないわ。全て物事は変化する。永久不変なものなんてないのだから」  小学校最後の年、私の両親は離婚した。それまでの姓から、私は佐々木という名字に代わった。  私のとってそれよりも衝撃的だったのが、あれだけ仲が良かったと私が思っていた両親の姿は、一面でしか 無かった事、人の心が変わる事だった。  涼宮さんが言っている事は正しい。人の思いは、心は変わるのだ。  けれど、だ。  「そうね。涼宮さんの言うとおりなんでしょうね。人の心は変わりやすい。それは確かなんでしょうね、でも… …」  一息ついて私は言葉を続ける。  「変わりやすいからこそ、その思いを大切にしたいから、人は努力するのよ。その思いを守り、より強くする為に」  私の気持ち。守りたい、強めたい思い。キョンを思う心。  「涼宮さん、あなたはとても魅力的な人だわ。キョンの心を捕える事が出来るのかもしれない。けれど、あなたに渡すつもりはないわ」  キョンを、キョンの心を。  「宣戦布告とうけとっていいのかしら。でも、少し意外だったわ」  「何が?」  「佐々木さんがこんなに情熱的だったなんて。冷静で落ち着いた人だと思っていた」  私の中の”女”の部分。理性だけでは測れない感情の源。  「誰にでも意外な面はあるのよ。私にも、そしてあなたにも」  それから、私達は再び歩き出した。  直球勝負で、涼宮さんは来た。でも、その方がわかりやすい。私も受けて立つ。  彼女のキョンに対する思いと、私のキョンの対する思い。  どちらがキョンの届くのか。  「おもしろくなってきたわ」  涼宮さんはご機嫌だ。  「そうね。楽しくなりそうね」  私もくっくっくっと笑った。  ----  ”感情なんてものは人類の自律進化への道を阻害する粗悪な遮蔽物としか思えない。特に恋愛感情なんて のは、一種の精神的な病だよ”  中学三年生の時のキョンとの会話。しかし、”真実”を知った今、”私”は重大な疑問を持つことになった。  自律進化の過程。統合思念体や、天蓋領域の存在が関心を持った、涼宮さんの力。”私”が”契約”によって 行使することになった”力”の鍵は、”感情”。  ”私”の考えは間違っていたことになる。  長門優希。涼宮さん、そして”私”と並ぶ自律進化の可能性の具現者。統合思念体により生み出されながら、 自らの意思と過程において進化し”長門優希”となった。  3人に共通するものは・・・・・・   ”鍵”  その名称で、涼宮さんに関わった組織及び存在すべてに観察されていた存在。   「なんだ、佐々木達の方が先についていたのか」  キョンがSOS団の団員たちとともに集合場所へやってきた。  「何か面白いものはあったか?」  「ああ、あったよ。かなり興味深いものがね。涼宮さんと二人で見つけられたよ」  私も涼宮さんも笑っていた。  「そうなのか?こっちはあんまり・・・・・・いや、ひとつだけあったな」  キョンは何故か古泉くんを見た。古泉君の微笑みが若干強張っていた。  「それじゃ、またな」  キョンと私は涼宮さん以下SOS団の団員たちに手を振って別れた。  「行こうか。キョン」  私は彼の手を取って、歩き出した。    「しかし、SOS団は、毎回あんなことをやっているのかね。単に涼宮の思いつきに振り回されているだけの ような気がするが?」  「でも、僕にとってはなかなか有意義な時間だったよ。彼女とゆっくり話してみたいとは思っていたからね」  彼女の気持ちを知ることもできた。そして、私も彼女に気持ちを打ち明けた。  「まあ、お前がそう言うんだったら良かったんだろうが・・・・・・ところで、佐々木。話は変わるが、今日の夕食、 うちで食べていかないか?」  「母親は今日もいないから、君の家で一緒に食事させてもらえるのは嬉しいけど、でもいいのかい?夏休みの間、 散々君の家でご馳走になったから、しばらく遠慮しておいたほうがいいかな、と思っていたんだけど」  「うちの家族は佐々木が来てくれると喜ぶから、遠慮はいらないよ。佐々木のおかげで俺の成績も上がった、て 母親は喜んでいるし、妹はお前が相手してくれるから来るのを待っているしな」  キョンの家族。暖かく私を迎えてくれる、私が好きな居場所。  「それじゃ、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうよ」  「よし、わかった。ちょっと待ってろよ。今からうちに連絡するからな・・・・・・ん?」  「どうかしたのかい?」  「いや、メ-ルが来ていた。母親からだ。『佐々木さんの分は準備してあるから、一緒に食べてもらうように伝え なさい』・・・・・・よくわかっているな」  「さすが君の母上だよ」  私もキョンも声をたてて笑った。  ”涼宮さんが”私”に対してあのような行動に出るのはある種の規定事項だった。彼女の力が”鍵”に由来する以上、 当然といえば当然だ。  同時にある勢力がなぜ、あのような行動をとり、改変を行ったのもおぼろげながら分かりかけてきた。  とすると、その勢力が行動を起こすのは”あの日”しかない。  固定因子が発生する、最後の扉が開くあの日。  その日まで、私は意識を潜ませる。”私”は少し苦労するだろうけど、キョンとの絆を、彼への想いを強くして ほしい。

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