15-519「キョンと佐々木とハルヒの生活 4日目」

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×月○日 今日も今日とて繰り返しの日常は過ぎる。 いつもどおりに仕事を終えた俺は、いつもどおりにハルヒを迎えに保育園にやってきた。 「すみませーん。」 そう声をかけながら保育園の教室の前に立つ。 「おっ、どちらさまかな?」 朝比奈さんではなくえらく威勢のいいお姉さんが俺を出迎えてくれた。 腰まで伸ばした髪を一つにくくり、にこっ笑いながら近づいてくる。 笑ったときの八重歯がとても印象的だ。 「え、と、あの…」 「おー、紹介が遅れたね。ごめんなさいなのさっ。」 両手に腰を当てて威勢のよい声で返事をしてくれる。 「私がこの保育園の園長の鶴屋ですっ。よろしくねっ!」 よろしくといわれても。 「あぁ、こちらこそよろしくお願いします。」 って、あれ? この幼稚園の園長って藤原じゃなかったっけ? 「あー、それね!実は前の園長めがっさ借金こさえて夜逃げしちゃってさ!で、私が代わりに園長をしてるってわけさ。」 え、まぢすか? じゃあ、あの藤原は…? 「んー、言い方は悪いけど、俗に言う借金のかたに働いてもらうってやつ?」 ポンジー… 少し背中につめたいものが走った。 「キョン、遅い!遅刻、罰金!」 と、教室の表で鶴屋園長と話をしていたらハルヒが出てきた。 ちなみにこの罰金というのは、俺が迎えに来るのが遅いとハルヒに何かひとつお菓子を買ってやる約束になっていることだ。 「お、キョンくんはハルにゃんのお父さんだったのか!」 鶴屋さん、あなたまで私をその名で呼びますか。 「ええ、まぁ。」 「みくるからよっく聞いてるよ。毎日お迎えご苦労さん。」 朝比奈さんからよく聞いている? それはいったいどういう風に… あの、お父さんかっこいいですねー、とか結婚さえしてなければ私が、とか? 「あ、こんばんわー。」 とか妄想を張り巡らせていると奥から朝比奈さんが登場した。 「ども、お世話になっています。」 「やぁ、みくる。ちょうどキミの噂話をしてたのさ!」 えっ、といって朝比奈さんの頬が赤くなる。 かわいいなぁ。 「キョン。」 そんな俺の心の変化を察したのかハルヒが冷たい視線を送っている。 ええい、そんな目で見るな。 「でも、みくるちゃんかわいいもんね。」 こら、ハルヒ。 何度朝比奈さんのことをみくるちゃんと呼ぶなといったらわかるんだ。 「とう!」 とか、注意しようと思ったらハルヒが朝比奈さんに飛びつきやがった。 うらやまし、じゃなくて迷惑だからやめなさいっての。 「こんなに細いのに、ほら、おっぱいだってママよりぜんぜん大きいし。」 そういいながら朝比奈さんの胸をもみしだく。 こら、お前はなんということを。 朝比奈さんも顔が真っ赤になってだなぁ… と、思っていたらハルヒのやつがこちらに軽蔑の視線を送っている。 「「間抜け面。」」 お前父親に対してそれはないだろ。 っていうか、声が重なって聞こえなかった? なぜか朝比奈さんは口を押さえて震えてるし、目の前の鶴屋さんは口を押さえて笑いをこらえてるし。 え、俺の後ろに誰か… 「やぁ、たのしそうだね。キョン。」 あら、我が愛しのヨメさんじゃないですか。 「あれ、ひょっとしてお邪魔だったかな?」 そう言って俺の表情を覗き込むように笑いかける。 でも、目が笑ってないですよ? 「いや、ハルヒのいたずらをだなぁ・・・」 「何をいいわけしてるんだい?何かやましい心当たりでもあるのかな。」 助けてハルヒ。 「ふんっ。」 って、おい! お前のまいた種だろ。 っていうか、鶴屋さんもう思いっきり爆笑してください。 そこまで笑いをこらえると体に悪いですよ。 「っていうか、なんで今日はお前がここに?」 「ここにいたらお邪魔だったかい?」 質問の仕方が悪かった。 火に油だ、こんちくしょう。 「まぁ、いい。今日は仕事が早く終わったから、運動がてら保育園に少し寄ってみようと思っただけだよ。」 「そうですか。」 「まぁ、僕としてはグッドタイミングだったのだが、キミとしては少し違うみたいだね。」 いや、だから笑顔が怖いです。 「まぁまぁ、夫婦喧嘩は犬も食わないって言うしさっ。その辺にしとくにょろ!」 そう軽快に言い放つと、俺とヨメの肩をポンッ叩く。 助かりました、鶴屋さん。 「それじゃあ、親子水入らずで帰るといいさっ!」 とまぁ、鶴屋さんのフォローのおかげでなんとかその場をしのぎ、ヨメは鶴屋さんと朝比奈さんと軽く会釈しハルヒの手を引いて俺の前を歩いている。 「あ、ちょっと。」 朝比奈さんが俺に声をかけた。 な、なんだ? まさか、本当に俺に…? 「最近鶴屋さんともよく相談してるんですけど、ハルヒちゃんあまりクラスに溶け込めていないみたいなんです。」 「本当ですか?」 家ではまったくそんなそぶりを見せないのに。 いや、でも意外とそういうのは親の目の届かないところで進行するらしいから… 「ええ、だからあのハルヒちゃんのおうちでの様子にも注意してあげてください。」 「キョンー!はやくぅー!」 当人のハルヒが呼んでいる。 「わかりました。注意してみます。」 そう短く返事をすると走って二人を追いかけた。 「よっ。」 ハルヒを自転車の前に乗せてやる。 「よしっ。じゃあ行くか。」 と、自転車にまたがると後ろに誰かが乗る感触がした。 「ん?まさか、僕を置いて行こうなんて思っていたわけではないよね。」 めっそうもございません。 「なわけないだろ。でも、久しぶりだな。お前とこうやって二人乗りするのも。」 「三人乗りー!」 ハルヒから突込みが入る。 「ごめん、そうだね。」 ヨメはハルヒに謝ると、俺の腰に手を回した。 「出発進行ー!」 「ほいよ!」 ハルヒの威勢のいい声に押されて、自転車を漕ぎ出す。 なんだ、ハルヒは元気じゃないか。 先ほどの朝比奈さんの言葉が気になっていたけど、安心した。 「キョン、せっかくだから少し遠回りして帰ろう。」 後ろのヨメが呟くように言う。 「別にかまわないけど?」 「川沿いの桜並木がきれいだそうだ。そこを通ろう。」 「いいか、ハルヒ?」 「うんっ。」 ちょっとした日常の変化にハルヒの目はきらきらしている。 「なつかしいね。中学時代もこうして二人で自転車に乗っていたものだ。」 「あぁ。」 「こうやってみると、何も変わっていない気がするね。」 「そうだな。」 でも、あの頃は俺たちが結婚して、こんな風に子供を持つなんて考えもしなかったな。 「そうだね。あの頃は本当にこんな風になるなんて思ってもみなかったよ。」 「あの頃の俺たちが今の俺たちを見たらなんていうかな?」 「キミは素直じゃないからきっと否定的だろうね。」 「それはお互い様だろう。」 川べりを抜ける風が心地よい。 「―僕たちは家族になったんだね。」 「あぁ。」 そういや初めてこいつを自転車の後ろに乗せたのも春だったかな。 「そして、娘が生まれたのもな。」 「そうだね。」 腰に回された手の力が少し強くなる。 「じゃあ、あの橋の向こうまで行ってもらおうか。」 「おい、結構距離があるぜ?」 「まぁ、キミへの罰ゲームの意味もこめて。」 「なんの罰ゲームだよ。」 「僕にもよくわからないけど、君にはうしろめたいことがあったみたいだから。」 はいはい、わかりましたよ。 そういえば、こいつの言葉遣いも変わっていないな。 と、思っているとうしろでアマガエルが鳴くような笑い声が聞こえた。 「なんだよ。」 「くっくっ。いや、キミが真に受けているのが面白くてね。」 「なんだそりゃ。」 「ただ単に家族水入らずでのサイクリングをもう少し楽しみたいだけさ。」 「ならそう言えよ。素直じゃねえな。」 「キミには言われたくないね。」 ん? そういえばハルヒがおとなしいな。 「おい、ハルヒ?」 …寝てやがる。 普段はにくったらしい癖に、本当に寝てる顔は天使みたいだな。 中学生の頃より、自転車のペダルは重くなった。 それだけのものを今の俺は背負っているということなんだろうな。 そして、ペダルを漕ぐ力を少し強めた。 『キョンと佐々木とハルヒの生活 4日目』
×月○日 今日も今日とて繰り返しの日常は過ぎる。 いつもどおりに仕事を終えた俺は、いつもどおりにハルヒを迎えに保育園にやってきた。 「すみませーん。」 そう声をかけながら保育園の教室の前に立つ。 「おっ、どちらさまかな?」 朝比奈さんではなくえらく威勢のいいお姉さんが俺を出迎えてくれた。 腰まで伸ばした髪を一つにくくり、にこっ笑いながら近づいてくる。 笑ったときの八重歯がとても印象的だ。 「え、と、あの…」 「おー、紹介が遅れたね。ごめんなさいなのさっ。」 両手に腰を当てて威勢のよい声で返事をしてくれる。 「私がこの保育園の園長の鶴屋ですっ。よろしくねっ!」 よろしくといわれても。 「あぁ、こちらこそよろしくお願いします。」 って、あれ? この幼稚園の園長って藤原じゃなかったっけ? 「あー、それね!実は前の園長めがっさ借金こさえて夜逃げしちゃってさ!で、私が代わりに園長をしてるってわけさ。」 え、まぢすか? じゃあ、あの藤原は…? 「んー、言い方は悪いけど、俗に言う借金のかたに働いてもらうってやつ?」 ポンジー… 少し背中につめたいものが走った。 「キョン、遅い!遅刻、罰金!」 と、教室の表で鶴屋園長と話をしていたらハルヒが出てきた。 ちなみにこの罰金というのは、俺が迎えに来るのが遅いとハルヒに何かひとつお菓子を買ってやる約束になっていることだ。 「お、キョンくんはハルにゃんのお父さんだったのか!」 鶴屋さん、あなたまで私をその名で呼びますか。 「ええ、まぁ。」 「みくるからよっく聞いてるよ。毎日お迎えご苦労さん。」 朝比奈さんからよく聞いている? それはいったいどういう風に… あの、お父さんかっこいいですねー、とか結婚さえしてなければ私が、とか? 「あ、こんばんわー。」 とか妄想を張り巡らせていると奥から朝比奈さんが登場した。 「ども、お世話になっています。」 「やぁ、みくる。ちょうどキミの噂話をしてたのさ!」 えっ、といって朝比奈さんの頬が赤くなる。 かわいいなぁ。 「キョン。」 そんな俺の心の変化を察したのかハルヒが冷たい視線を送っている。 ええい、そんな目で見るな。 「でも、みくるちゃんかわいいもんね。」 こら、ハルヒ。 何度朝比奈さんのことをみくるちゃんと呼ぶなといったらわかるんだ。 「とう!」 とか、注意しようと思ったらハルヒが朝比奈さんに飛びつきやがった。 うらやまし、じゃなくて迷惑だからやめなさいっての。 「こんなに細いのに、ほら、おっぱいだってママよりぜんぜん大きいし。」 そういいながら朝比奈さんの胸をもみしだく。 こら、お前はなんということを。 朝比奈さんも顔が真っ赤になってだなぁ… と、思っていたらハルヒのやつがこちらに軽蔑の視線を送っている。 「「間抜け面。」」 お前父親に対してそれはないだろ。 っていうか、声が重なって聞こえなかった? なぜか朝比奈さんは口を押さえて震えてるし、目の前の鶴屋さんは口を押さえて笑いをこらえてるし。 え、俺の後ろに誰か… 「やぁ、たのしそうだね。キョン。」 あら、我が愛しのヨメさんじゃないですか。 「あれ、ひょっとしてお邪魔だったかな?」 そう言って俺の表情を覗き込むように笑いかける。 でも、目が笑ってないですよ? 「いや、ハルヒのいたずらをだなぁ・・・」 「何をいいわけしてるんだい?何かやましい心当たりでもあるのかな。」 助けてハルヒ。 「ふんっ。」 って、おい! お前のまいた種だろ。 っていうか、鶴屋さんもう思いっきり爆笑してください。 そこまで笑いをこらえると体に悪いですよ。 「っていうか、なんで今日はお前がここに?」 「ここにいたらお邪魔だったかい?」 質問の仕方が悪かった。 火に油だ、こんちくしょう。 「まぁ、いい。今日は仕事が早く終わったから、運動がてら保育園に少し寄ってみようと思っただけだよ。」 「そうですか。」 「まぁ、僕としてはグッドタイミングだったのだが、キミとしては少し違うみたいだね。」 いや、だから笑顔が怖いです。 「まぁまぁ、夫婦喧嘩は犬も食わないって言うしさっ。その辺にしとくにょろ!」 そう軽快に言い放つと、俺とヨメの肩をポンッ叩く。 助かりました、鶴屋さん。 「それじゃあ、親子水入らずで帰るといいさっ!」 とまぁ、鶴屋さんのフォローのおかげでなんとかその場をしのぎ、ヨメは鶴屋さんと朝比奈さんと軽く会釈しハルヒの手を引いて俺の前を歩いている。 「あ、ちょっと。」 朝比奈さんが俺に声をかけた。 な、なんだ? まさか、本当に俺に…? 「最近鶴屋さんともよく相談してるんですけど、ハルヒちゃんあまりクラスに溶け込めていないみたいなんです。」 「本当ですか?」 家ではまったくそんなそぶりを見せないのに。 いや、でも意外とそういうのは親の目の届かないところで進行するらしいから… 「ええ、だからあのハルヒちゃんのおうちでの様子にも注意してあげてください。」 「キョンー!はやくぅー!」 当人のハルヒが呼んでいる。 「わかりました。注意してみます。」 そう短く返事をすると走って二人を追いかけた。 「よっ。」 ハルヒを自転車の前に乗せてやる。 「よしっ。じゃあ行くか。」 と、自転車にまたがると後ろに誰かが乗る感触がした。 「ん?まさか、僕を置いて行こうなんて思っていたわけではないよね。」 めっそうもございません。 「なわけないだろ。でも、久しぶりだな。お前とこうやって二人乗りするのも。」 「三人乗りー!」 ハルヒから突込みが入る。 「ごめん、そうだね。」 ヨメはハルヒに謝ると、俺の腰に手を回した。 「出発進行ー!」 「ほいよ!」 ハルヒの威勢のいい声に押されて、自転車を漕ぎ出す。 なんだ、ハルヒは元気じゃないか。 先ほどの朝比奈さんの言葉が気になっていたけど、安心した。 「キョン、せっかくだから少し遠回りして帰ろう。」 後ろのヨメが呟くように言う。 「別にかまわないけど?」 「川沿いの桜並木がきれいだそうだ。そこを通ろう。」 「いいか、ハルヒ?」 「うんっ。」 ちょっとした日常の変化にハルヒの目はきらきらしている。 「なつかしいね。中学時代もこうして二人で自転車に乗っていたものだ。」 「あぁ。」 「こうやってみると、何も変わっていない気がするね。」 「そうだな。」 でも、あの頃は俺たちが結婚して、こんな風に子供を持つなんて考えもしなかったな。 「そうだね。あの頃は本当にこんな風になるなんて思ってもみなかったよ。」 「あの頃の俺たちが今の俺たちを見たらなんていうかな?」 「キミは素直じゃないからきっと否定的だろうね。」 「それはお互い様だろう。」 川べりを抜ける風が心地よい。 「―僕たちは家族になったんだね。」 「あぁ。」 そういや初めてこいつを自転車の後ろに乗せたのも春だったかな。 「そして、娘が生まれたのもな。」 「そうだね。」 腰に回された手の力が少し強くなる。 「じゃあ、あの橋の向こうまで行ってもらおうか。」 「おい、結構距離があるぜ?」 「まぁ、キミへの罰ゲームの意味もこめて。」 「なんの罰ゲームだよ。」 「僕にもよくわからないけど、君にはうしろめたいことがあったみたいだから。」 はいはい、わかりましたよ。 そういえば、こいつの言葉遣いも変わっていないな。 と、思っているとうしろでアマガエルが鳴くような笑い声が聞こえた。 「なんだよ。」 「くっくっ。いや、キミが真に受けているのが面白くてね。」 「なんだそりゃ。」 「ただ単に家族水入らずでのサイクリングをもう少し楽しみたいだけさ。」 「ならそう言えよ。素直じゃねえな。」 「キミには言われたくないね。」 ん? そういえばハルヒがおとなしいな。 「おい、ハルヒ?」 …寝てやがる。 普段はにくったらしい癖に、本当に寝てる顔は天使みたいだな。 中学生の頃より、自転車のペダルは重くなった。 それだけのものを今の俺は背負っているということなんだろうな。 そして、ペダルを漕ぐ力を少し強めた。 『キョンと佐々木とハルヒの生活 4日目』 -[[15-132「キョンと佐々木とハルヒの生活 1日目」]] -[[15-225「キョンと佐々木とハルヒの生活 2日目」]] -[[15-242「キョンと佐々木とハルヒの生活 3日目」]] -[[15-519「キョンと佐々木とハルヒの生活 4日目」]] -[[16-406「キョンと佐々木とハルヒの生活 5日目」]] -[[16-567「キョンと佐々木とハルヒの生活 6日目」]] -[[17-681「キョンと佐々木とハルヒの生活 7日目」]]

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