18-568「おもらしねた」

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水泳の授業……などない夏休みも後半。 今日は塾の夏期講習も無いとあって、暇を持て余した俺と佐々木はプールへ行くことにした。 しかし、近所の市民プールに到達したところで、俺たちは愕然とした。 『清掃のため休業中』 やれやれ……この地獄の残暑の中、プールの冷たい水だけが楽しみでここまでやってきたのに、 そりゃないぜ神様よ。 「……キョン、帰ろうか……ウチに来なよ」 仕方なく、元来た道を佐々木の家まで戻っていく。 しかし、猛烈な残暑の中を歩き回った上、プールお預けを喰らった俺の憂鬱はMAXに達しつつあった。 「暑いな……」 「暑いね……」 いつもだったら二人で勉強でも始めるところだが、今日に限っては全くヤル気が起きなかった。 かと言って、特にすることも無く、佐々木の部屋でゴロゴロしていたのだが、 暑いことに変わりは無い。 「ダメだ~……暑すぎる……」 「……そうだ。キョン、僕に一ついい考えがあるんだが」 「断る」 「まだ内容を言ってないじゃないか……」 「手短に話せ」 「水風呂というのはどうだろう?」 「水風呂?」 「そうだよ。大きなプールには及ばないが、水風呂につかれば、随分と涼しくなるよ」 その口ぶりからすると、佐々木は何度か実践しているようだな。 そういえば塾に行くとき、こいつを迎えに来ると、シャワーを浴びてるなんてことがあったな。 「正解だよ。今年の夏は特に暑い日が続くからね。もう病み付きってやつさ」 確かに……扇風機しかないこの部屋よりははるかにマシに違いない。 「悪かったね。バイトができるようになったら、その内自分で買って見せるさ」 佐々木はそれだけ言うと、ぐだぐだの身体を起こした。 俺が、起き上がる際に「よっこい……しょーいち!」とか言ったら、佐々木が俺を蔑んだ目で見てきた。 悪かったね。 そんなわけで、俺は今、素っ裸で佐々木の家の風呂に浸かっている。 浸かっていると言っても、湯船の中の水位は腰の辺りまで、佐々木によると、この程度がベストなんだそうだ。 「どうだい?なかなか快適だろう?」 佐々木が声を掛けてくる。 ああ、すこぶるいい気持ちだ。 いつもの風呂のように肩まで水に浸かってしまっては、すぐに寒くなってしまうだろう。 確かに、このくらいの水位に浸かるのがベストなようだ。 「恥ずかしながら、最初は僕も湯船に一杯の水に浸かってね、危うく風邪をひくところだったよ」 そう言う佐々木は、俺と同じく素っ裸で、湯船の傍らでイスに腰掛けたままシャワーを浴びている。 さすがに一般家庭の風呂場の湯船に、中学生二人が入るのはきついと判断して、こういった策をとった。 まあでも、ぬるめのシャワーを浴びている佐々木もそれはそれで気持ち良さそうである。 「ふぅ~……」 目を閉じてじっくりとシャワーを満喫する佐々木。 それにしても、俺が浸かっている水風呂も、それはそれで快適なはずなのだが、 こうして見ていると、佐々木が使っているシャワーの方が良さそうに見えてくる。 隣の芝は青く見えるというやつか…… 「なあ、佐々木……そろそろ変わらないか?」 「んー……もうちょっと」 やはり、そっちの方が良さそうに思えてくる。 俺は、湯船から身を乗り出して、佐々木の脇腹をつついてやった。 「うわっ!ちょっとキョン、やめてよ!」 お!意外にもこんなところに佐々木の弱点があったようだ。 俺は、小麦色に日焼けした佐々木の腹の辺りを何度もつついてやる。 「あっ!ちょっ……くすぐったいってば……」 ハハハ……そういえば、いつの間にか、佐々木の身体は満遍なく日焼けしている。 前は、学校の水着の形に白い部分が残っていたのに、今は白い部分はかなり縮小されている。 家族と海に出掛けていたようだ。 「もう!わかったよ!」 俺の腹つっつき攻撃に観念したのか、佐々木は立ち上がった。 そして、何故か俺がまだ浸かっている湯船に自分の足を差し入れてくる。 「ほら、シャワー使うんなら、使うがいいさ」 いや、確かにシャワー使う気なんだが、その前に湯船から上がらせてくれ。 佐々木が両足とも差し込んできた。 今、俺の目の前の位置に、ちょうど佐々木の尻がある。 佐々木の尻には、くっきりと逆三角形の形に日焼けしていない白い部分が残っていた。 満遍なく焼くつもりでも、どうしてもこの腰の位置は仕方が無いのだろう。 「キョン、早くどいてくれないかい?僕の家の湯船は、そんなに大きくないんだ」 いや、お前がその位置に立っていたら、体勢的に立ち上がれないんだが…… すると、佐々木は何を思ったか、そのまま俺の前に腰を下ろしてきた。 「ほら、やっぱり窮屈だ」 これは一体どういう状況だ? 俺の両足の間に、佐々木が座り込んでいる。 湯船の中は、まったく余裕無く俺たち二人の身体で埋まってしまっている状況だ。 「おい……これじゃあ、せっかくの水風呂も、逆に暑いんですが……佐々木さん」 「くっくっ……さっきの僕のお腹への攻撃に対する、ささやかな反抗だよ」 そう言いながら、佐々木は背中を俺に向かって倒してくる。 さながら、俺は人間座椅子のようだ。 「くっくっ、こうすればなかなか楽だね。少々窮屈だけど」 俺の方は少々どころじゃない。佐々木の身体が余計に密着してきて、余計に暑い。 「ところでキョン……このまま僕がおしっこをしたらどうなると思う?」 な……何だって! 「シャワーがすこぶる気持ち良くてね……ちょっと緩んできたところだったのさ」 ちくしょう、何て恐ろしいことを考えやがる! しかも、こんな逃げ場の無い状況で言うな! 「キョン、ちょっと待ってるがいい…………………………………………………………」 おいおい! 「佐々木……お前、今股間に意識集中してるだろ?」 「くっくっ、その通りさ…………」 そう言った矢先、佐々木の身体がブルッと震える。 「安心したまえ、掃除は二人ですればすぐに終わるさ…………」 そういう問題じゃないだろ!冗談じゃない! 俺は、速やかに佐々木の脇腹に手を滑り込ませ、両側から腹をつついて攻撃してやった。 「ひゃぁっ!!」 佐々木が変な悲鳴と共に腰を浮かせる。 その僅かな瞬間に、俺は強引に立ち上がると、湯船から脱出した。 「やれやれだ……」 快適なシャワーを浴びる俺。 佐々木の家のシャワーは、細かく温度の目盛が区切ってあって使い易い。 「……ったく、ほんの冗談なのに」 佐々木が湯船から身を乗り出して、俺の脇腹をつついてくる。 残念だったな。俺にその攻撃は効かない。 「さてと、あまり水に浸かりすぎてても風邪を引いてしまうね……」 そろそろ上がろう、と佐々木が湯船から身を起こす。 俺も、シャワーを止め、水風呂祭は終了となった。 やはり暑い。 俺は、すぐには服を着る気になれず、パンツ一丁で脱衣場を出た。 佐々木に至っては、素っ裸でタオル一枚肩に掛けた状態で出てきた。 入るときに身に着けていたものは、全部洗濯機に放り込んだらしい。 「先に部屋に行ってて、飲み物持ってくから」 そう言って、佐々木がキッチンに足を向けたところで、佐々木のお袋さんが廊下に居るのが見えた。 「あっ……こんにちは、お邪魔してます」 「あら、いらっしゃい」 いつの間にか帰って来ていたようだ。 それにしてもマズいところを見られてしまった。 ツレの母親にパンツ一丁の姿を見られてしまうなんて……恥ずかしい限りだ。 そんな俺の夏の日だった。 おしまい

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