70-509『未知との遭遇』

翌日。試合まであと3日。部室ではミーティングは行われなかった。
この異常事態に色めき立つのは、やはりハルヒである。
「これは事件の予感ね。」
「お決まりの陰謀説かよ。さっさと練習しろ、ハルヒ。掃除が片付かん。」
キョンがハルヒを部室から追い出す。……実際には当たらずも遠からず。情報漏洩が心配である為に、情報はキョンまでで止めてある。
スタメンや、その背番号も現在では部員に公表していない。
どうせ調べられるなら、直前まで情報は公表すべきでない。それが森の意見だ。
「(寧ろ、石門高校を調べろと言われたんだが……どうしろと。ったく。監督にしてもこきつかうだけでなく御褒美をだな。)」

以下、妄想。
「御褒美よ?キョンくん……」
メイド服姿の森が、キョンに迫る。
「我慢出来なくなったら、すぐ出してもいいのよ…………?」
あられもない格好の森。キョンはその口唇に……
以下、現実。

キョン子を抱き締め、キョン子に口唇を寄せるキョン。
佐々木、ハルヒが顔を赤くし、長門が液体ヘリウムのような目で状況を見守る。
「……血迷ったか?愚弟……」
「な゛ぁ?!愚妹!」
キョン子はバットを振り上げると、キョンの頭に落とした。

「キスしたいなら、佐々木、長門、またはハルヒにしろ!こいつらなら如何にお前が愚弟とはいえ、受け入れるだろうよ!」
キョン子が怒り心頭で部室を出る。
「キョン子!待ちたまえ!」
「訂正を求める。」
真っ赤な顔をした佐々木とハルヒが、長門を見る。
「そうよ、有希!」
「そうだ、長門さん!」
長門は心持ち頬を染めながら言った。
「彼のキスを受けるのは私。」
「「違ぁぁう!」」
声が遠ざかる……。
「ふ、不幸だ……」
主人公違いなセリフを呟き、キョンは血涙を流した……。

いずれにせよ、偵察に行かなくてはならない。となればメンバーは選びたい。
キョンより厳選されしメンバーは……
「偵察だと?!規定事項にないぞ!」
藤原である。ついでに、頼まれもしないのについてきたお祭り好き。
「やっぱり陰謀だったのよ!」
ハルヒ。
「くっくっ。007には憧れていてね。」
佐々木。
「愚弟、水臭いじゃない。まぁ、さっきの狼藉は水に流してやろう。」
キョン子。
「帰れ帰れ!お前らが来たら、それこそバレバレだろ!」
キョンが三人を追い払う。
「藤原くん、こわぁ~い(はぁと)」
ハルヒが猫なで声を出す。
「僕達がついて行くのは規定事項だよね~?」
佐々木が藤原の腕を握る。慌てて佐々木を見る藤原だが……


「(明日の朝日を拝みたいなら、イエス。涼宮さんから撲殺されたいなら、ノー。好きなほうを答えたまえ。)」
「(き、貴様!貴様がキョンと一緒にいたいだけだろう!)」
「(僕がいつキミに意見を求めた?求めているのは返事だけだ。)」
ハルヒが藤原を見る。
「いいでしょ?ね?」
声色だけは優しいが、表情は……鬼も裸足で逃げ出す程に険しいものだ。
殺される。このままだと死ぬ。ならば逃げようとしたところ……キョン子の微笑みが見えた。
一見優しくニコニコ微笑んでいるだけだが……その笑顔は優しいものでは断じてない。
「き、キョン!こいつらも連れて行こう!これは規定事項だ!」
「うえ……」
キョンは、渋々ながらに承諾したのであった……。
「早く行くべき。石門高校まで、少々距離がある。」
「ああそうだな、長門…………って!」
五人が呆然とした。いつの間にかいた長門が、キョンの隣にいたのだ。
「お、お前、練習は!」
「代役は置いてきた。情報操作は得意。」
ブルペンには、『ながと ゆき』と、無駄に達筆に書かれたピッチングマシーンが置かれてあった。朝倉の肩が震える……。
「あんのクソガキ……!」
『朝倉の胃の粘膜のライフは、もうゼロよ!』
誰かがそう叫んだような気がする。そして。何かが千切れる素敵な音がした。
古泉がブルペンにいる朝倉を見つけ、声をかける。
「ああ、朝倉さん。調子は……ひいいいい!」
そこにいたのは、般若。見まごう事なき般若である。般若は部室に猛ダッシュすると、ロッカーに置いていた愛用のサバイバルナイフを手に校門へと向かった……。

「ここは危険。走るべき。」
長門が皆に声をかける。
「長門さん、どうしたの?」
佐々木が長門に声をかけるが……

「死にたくないなら、急いで。」

との声に、皆が走る。
その後ろから…………

「待てえええええ!」

青鬼が走って来る。
棍棒の代わりに、サバイバルナイフ。角の代わりに愛らしい髪飾りを振りかざし。

「「「「「うわぎゃあああああああ!!!」」」」」
「ユニーク。」

長門以外の全員が叫んだ。
それはそうだ。普段淑やかな女性が刃物片手に、鬼の形相で追って来るのだ。恐怖以外ない。
キョン達は逃げた。
偵察に来ていたダルですら、その形相に負けてキョン達と一緒に逃げた位である。

生涯最悪のおいかけっこは、ドクターペッパーを買いに行っていた岡部を巻き込み……
のんびり屋のまゆりすら、全力で走らせ……
たまたまロードワークをしていたルカ子を、恐怖のドン底に叩き落とし……

石門高校ソフトボール部の部室に駆け込み、朝倉を撒くまで続いたのであった……。

To Be continued

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最終更新:2013年06月02日 02:46
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