24-508「ニート佐々木略してササニート」

「働いたら負けかな、と思っているんだ」
そういいながら佐々木が俺のアパートへやってきて、二か月になる。
佐々木は相変わらずスウェット姿で、まるで化粧のノリが納得いかずに何時間も鏡とにらめっこしている人のように、パソコンを眺めている。
「…佐々木、何見てるんだ?」「2ch」
…。
「おもしろいか?」「スレによる」
…。
「どっか、出かけないか?今日は天気もいいぞ」「今いいところなんだ、悪いけどあとに…あ、落ちてる」
…。
「それじゃ、俺ちょっと散歩いってくるから「どこにも行かないで」
…。
「そばにいて」
…。
いつもこの調子だ。パソコンを眺めながら、たまに質問すると短く返す。俺がちょっと出かけようとすると、止める。
「なぁ佐々木」「…」
「このままでいいのか?」「…」
「何度も言うようだけど、このままじゃまずいだろ?」「…」
「俺だって大学があるし、それにお前の生活費だって、お前の両親が毎月俺に払ってくれてる」「…」
「お前だったら、今からでもいい大学へいけるし、どこで立って働けるとおもうぞ」「…」
「なぁ佐々木「お腹すいた」
佐々木はパソコンを閉じて、眼鏡を取った。
「キョン」「なんだ?」
「僕はキョンがそばにいればそれでいい」
…。
「無理に働けとは言わない。家から出るのが嫌だったら、家事をやってくれてもいい」
「プロポーズかい?キョン」
「そうじゃない、お前がこのまま何もせずに腐っていくのが見てられないだけだ。お前は頭もいいし、ひとと付き合える能力もある」
「でも、僕はキョン以外の人話す気はないよ」
「それでもいい、ただ何もせずにぼーっと過ごすのはやめた方だいい」
きっと、家事か勉強か、何かに精を出すようになれば、またやる気が出るかもしれない。
「家事をすればいいのかい?」「なんでもいい、ただ何かにやる気を出してくれれば」
「そしたら、結婚してくれる?」
「………ああ」
「本当かい?それだったら家事なんていくらでもやるよ。ああ、今日はなんてついてる…そうだ、スレのみんなにも報告しなければ」
佐々木はまた、パソコンを立ち上げようとした。俺は佐々木の腕をつかんで、それを制した。
「?何するんだいキョン」「もう、ネットはやるな」
「どうして?これは僕の趣味なんだ、これがなければ僕はほかにすることが「家事をするんじゃなかったのか?」
「…」「それとも、俺よりもネットを選ぶのか?」
「それは…キョンを選ぶにきまってる」「そうか、じゃあまずは飯をつくれ、それから洗濯して掃除だ」
「…わかった」「それから」「まだあるのかい!?」
「それが終わったら、婚姻届もらいに行くぞ」「…うん」
「それじゃ、飯、期待してるからな」「…がんばる」
俺は、佐々木抱きしめてやった。


佐々木さんは、希望を手にいれたようです。

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最終更新:2007年11月13日 08:22
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