ゆっくりいじめ系2148 ありす、捨てられる

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「ゆ~♪ゆ~♪」 なんの変哲も無い一般的な1人暮らしの男性の部屋。 ここでなんの不自由も感じた事のない子ありすが歌っていた。その隣で男が掃除をしている。 ありすは生まれてからここでずっと過ごしてきた子ゆっくりだ。 シルバーバッジも持っているれっきとした飼いゆっくりだった。 このありすは外でゆっくりを見ても、自分がソイツらと同じ生き物だという事がわからない。 自分を人間だと思っているのだ。 目の前で掃除をしている男の子供なのだという意識が強く根付いていた。 そういった思考は彼が植えつけたわけではなく、 単純に親ゆっくりや、他の友達になるはずだったゆっくりの存在がまるまる欠落していたからだった。 「さて、と」 彼が掃除の手を止め、時計を見たのが見えた。 ありすはそれを自分のごはんの合図だと知っている。 これが人間の子供だったら、いつもとは違う雰囲気をもっと敏感に感じ取ったに違いない。 何しろありすに一度も目を向けなかったのだから。 しかしありすは不安や不満を感じる事はなかった。 「ゆ♪おにいさんそろそろごはんのじかんだよ!」 「すまんなぁ。今俺が何やってるかわかるか?」 「ゆゆ?ゆ~ん。わかったよ!おそうじだよ!」 良く答えられたでしょ!褒めて!という顔をするありす。 いつもだったら「ありすは偉いね!」と言いながら、彼は撫でてくれる。 ありすはそれが大好きだった。 ざらざらしてる手だけど、暖かくて、それがとても嬉しかった。 しかし、今日はその手もやってこなかった。 ……あれ?どうして?おにいさんがありすはいいこだねってほめてくれないよ? ありすが怪訝そうな顔をしていると、彼はやっとありすの方を向いた。 これといって温度のある表情をしていない。 もくもくと作業をこなすだけと決め付けたような顔だ。 そこに少し色が入った。めんどくさそうな、ありすが初めて見る顔だった。 けれど、それに意味があるだなんて、考えもしない。 彼が突然喋り出した。 「お兄さんね、遠い所に行かなきゃいけないんだ」 「ゆゆ?とおいところ?とおいところってなぁに?」 要らない本を縛って並べる。 その作業をしながら彼は答えた。先ほどと同じ、温度の無い表情で。 「引越しさ」 「ひっこし?ゆゆぅ?ありすひっこしなんてしらないよ?ごはんもってきてね」 「こらこら、人に質問をしたら、お願いは一番最後に言いなさいって教えたよね。これが最後なんだからしっかりやろうね」 「ゆ?さいご?」 「ああ。その引越し先ね、ペット禁止なんだって」 「ぺっときんし?ああ!ありすしってるよ!いぬさんとか、ねこさんといっしょにすめないんだよ!」 またもありすは得意気に、目を閉じて丸々とした胸であろう部分を反らして見せた。答えは会心の出来。 お兄さんがこれで褒めてくれないわけがない。 彼はありすに聞こえるか聞こえないかの所でため息を吐いて、頭を掻いた。 「うん。正解。つまりお前を連れてけないんだなぁ。コレが」 あくまでも軽く言い放った。 「ありすを?どうちて?」 「ん?だって今お前自分で答え言ったじゃんか。ペットが一緒に住めない部屋に越すんだって」 「???」 「あー、やっぱりか。薄々なぁ、そういう誤解をしてるんじゃないかと思ったんだが。だから結構頻繁に外に連れてったりしてたんだが……お前、自分を人間だと思ってる?」 彼の顔には失意の色が見え始めた。ありすにも少し、様子がおかしいのがわかる。 「ゆぅう!?どういうこと?ありすはとかいはでにんげんだよ!」 「とかいは……都会派ねぇ。そんな言葉教えてないんだけどね。」 「ゆ!ありすはがんばってるよ!」 「うんうん。確かに良く頑張ってるよ。でもね、とかいはって言葉がお前から自然に出てきちゃう事自体、凄い問題なんだわ。いや、その部分は別に問題じゃない。つまり、それが現実だって事なんだよなぁ」 うんうん、とワザとらしくひとりごちる男。 ありすには全然話が見えない。 「おにいさん、よくわからないよ!」 「いや、だから、お前がゆっくりだって事がハッキリしてるって事。とかいはって言った時点で」 「ゆゆぅ?なんでありすがとかいはだとおにいさんがこまるの?」 「全然困らないよ。今言っただろ。お前がゆっくりだって事」 「おにいさん、よくわからないよ。どうしてありすがゆっくりだといけないの?」 その言葉を聞いて、彼は一瞬動きが止まった。沈黙は一瞬で、その間にどういった思案が駆け巡ったのかはわからない。 「ゆっくりだと、いけないなんて事はないよ。でも次に越す所がペット禁止だから、お前を連れて行けないの」 「ゆぅ……」 「はぁ、わからない?」 わけのわからない事の目白押しだった。初めて聞くような言葉、そして初めての雰囲気。しかもなんとなく悪い予感がしてくる。 ありすはその雰囲気をなんとかなくそうとした。 「わからないよ!ごはんがまだだよ!ぷんぷん。おにいさんはきょうわけのわからないことばっかりいうよ!ゆゆっ!?」 ありすの視界が突然空に浮いた。 「ゆぅ~っ!おそらをとんでるみたい!」 ありすはおにいさんが遊んでくれる時、こうなる事を良く知っていた。 視界が安定すると、そこには大きな笑顔のお兄さんがいつもいるのだ。 嬉しいと、カチューシャがぴこぴこ動く。それもお兄さんは可愛いと言ってくれた。 自分はこの人にとって自慢の子供なのだ、といつも信じる事ができた。 けれど、今日は勝手が違った。そこには氷のような、崖のような表情をした彼しかおらず、ありすのカチューシャは元気なく静まってしまった。 「ゆっ……おにいさん、なんだかこわいよ」 ありすは彼の掌の上で、小さく縮こまっている。それを一撫ですると、少し落ち着いたように見えた。 彼はありすを見据えて、少し黙った。 「ええとね。ありすはね、ゆっくりなの。そしてゆっくりはね、ペットなの」 「……むむむ、むずかしいよ!もっとゆっくりしゃべってね!」 「ありす、ゆっくりって知ってる?」 「しってるよ!ゆっくりしていってね!」 「そうじゃなくて。ゆっくりのことだよ」 「ゆぅ!ゆっくりってあのばかなこたちでしょ?ゆ~ゆ~いってて、いつもゆっくり!っていってるばかなこたちだよね!とかいはのにんげんとしてはゆるせないたいどだよ!」 「……そんな事ないよ。だってお前もその子達と一緒だもん。何度か言ってきたのに結局わかってくれなかったんだね」 「ゆ……?おにいさんなにいってるの?ありすはおにいさんのこどもだよ」 「う~ん、違うよ」 「ゆっ……?ゆそ……」 「あれ?なるほど、そこがお前のアイデンティティだったのか。うんうん。なるほど。そうだよ、お前は俺の子供じゃない。だからお前は人間じゃないんだ。何度も教えたよね。ちゃんと聞いてくれなかったよね」 「ゆっ、ゆぇ……ゆぇえええええん!おにいさんがへんなこといっていじめるよ~!」 「へんなことじゃなくて、ほんとうだよ。じゃあ、ちょっと待ってて」 彼はそう言うと、そそくさと家を出てしまった。 ――ありすがないても、なにもしてくれない。 数分後、彼は手元に小さなれいむを抱えてきていた。 「ゆゆっ!綺麗なおうちだね、ここはれいむのゆっくりぷれいすにしてあげるよ!」 「ハイハイ」 「ゆぅう!おにいさん!ゆっくりはゆっくりできないよ!やばんないきものはとかいはとはいっしょにすごせないんだよ!おにいさんもゆっくりできなくなるよ!」 「ハイハイ」 「ゆゆゆ!?そこにいるのはありすだね!にんげんにかわれてるありすなんてゆっくりしね!」 「ゆうう!れいむこそゆっくりしね!」 「なぁ、れいむ」 「ゆゆ?なぁに?おじさん」 「あのありす、何に見える?」 「おじさんばかなの?ありすはありすだよ!ひきょうなれいぱーのありすだよ!」 「れい……ぱー?」 ありすは耳慣れない言葉を復唱すると、首を捻った。 「まぁ、そんな言葉はどうでも良いんだ。れいむ、俺が聞いてるのはだよ?このありすはお前と同じゆっくりか?って事なんだよ」 「おじさんはじんせいやりなおしたほうがいいよ!そんなことがわからないなんてばかだよ!」 「そうだね。だからこのありすに教えてあげて欲しいんだよ。俺に代わってね」 「しょうがないね!おしえてあげるよ!そこのありす!ありすはれいむたちとおなじゆっくりだよ!でもありすはれいぱーだかられいむよりかくしただよ!みんなからきらわれてるよ!」 「ハイ、注釈もありがとうございました」 「ゆっへん!れいむのすご、ぎゃぶっ!」 れいむが胸を反らせた所で、彼は床に叩きつけて絶命させた。びたん、という重めの音がした後、れいむは餡子を拡散させて動かないただのゴミへと姿を変えた。 「あああ、ありすは……ありすが……ゆっくり……」 「そうそう。わかった?」 「そんなわけないよ、ありすはにんげんだよ、おにいさんのこど――」 「しつこいな。お前は俺の子供なんかじゃねぇって!」 「ゆふっ、ゆぇえ???」 「すまん、取り乱した。とにかくお前は俺の子供じゃないし、人間だって事も100パーありえない。それどころかお前には自分がさっきバカにしたゆっくりなんだって事をわかってもらいたいんだ」 「ありすは!ゆっくりじゃないよ!おにいさん、しんじてよ!」 「信じるよ。お前がゆっくりだって事をね。あ~あ、マジで飼うんじゃなかった。ハンパに情があるから余計捨て辛い」 「すて?……すて?ありすを?すてる?」 「ああ。そういう事。お前はペットだから次の家には連れてけねーの」 「ゆゆゆ……ゆっくりはペットじゃないよ……、それに、ありすはにんげ……」 「だからぁ!お前はゆっくりだし、ゆっくりはペットなの!!」 「ゆぎゃっ!!」 ありすは突然視界が暗転したように感じた。 「ゆえっ!?ゆえええ?なんで!?どぼぢだの?おにいさんだいじょうぶ!?」 急に来た衝撃で、とっさに彼の事を案じたのだった。 ぼやけた視界の中で徐々にお兄さんの姿がハッキリとしてくる。 顔をはたかれたのだ。 彼は奇妙な顔をしていた。 痛みを堪えるような、悲しみに堪えるような、怒っているような。 ありすは生まれて初めて彼に恐怖に近いものを感じていた。 その表情、雰囲気、人間の子供ならばその変貌をもっと早く感じ取り、泣いていたはずだ。 それだけの変化がありすの前にあった。 しかしありすはゆっくりだった。 ありすの中では、彼がゆっくりできない存在に、まだなっていない。 だから「怖い」とはっきり感じられない。 彼は悔やむような目をした。 仮にも今まで過ごしてきたありすに対して、手を上げてしまったのだ。 「俺が殴ったんだよ」 「ゆぎぃっ!どぼぢで!?おにいさん、どぼぢでぇ゛え゛え゛!?」 ありすは必死で彼に自分の気持ちを「説明」した。 けれどもそれは彼に届かない。 彼はもう決めてしまっていたのだ。 もう少し物分りが良ければ、騙されたままでいられたのに。 お兄さんは目を反らして、少しだけ息を吸った。 「お前を引き取ってくれそうなヤツが回りに1人もいなかったんだ。だから」 ごめんね。 ありすは雑草の生い茂る、空き地に居た。 あの後の事は全く覚えていない。 考える事で頭が一杯で。 いや、考える事なんて、ゆっくりにあるんだろうか。 それは漠然としたイメージの連続と印象。 見た物は正確に覚えていない。 許容量なんて元々あって無いようなモノだ。 扱う情報の重さが増えれば簡単に底が抜けてしまう。 そう、彼と過ごした時間、ありすにとってそれは全てだったのだ。 呆然とした顔のまま、バッジの無いありすになっていた。 ありすは、だれなの? 数時間経ち、周りに野良ゆっくりがたかってきて、ようやく意識を取り戻した。 周りの雑草の、背が高いな、とありすは思った。 それを遮るようにして肌色な3匹の野良ゆっくりがいる。 「ゆゆぅ?なにこのありす?ぼーっとしてるよ?」 「あんまりみないありすだね、どこのこなの?かわれてるゆっくりならゆっくりさせてあげないよ」 「ゆぅう!ずいぶんとかいはなありすね。とってもきれいだわ」 「ゆぅ……?なぁに?ありすになにかようなの?」 ちかくにいるのはれいむとまりさ、そして自分と同じ種類のゆっくり、ありすだった。 野良生活が長いのだろう。肌は水分が大分欠けているようで、表面はパサついているように見える。 チリやゴミで汚れているまりさは仲間のありすに喋りかける。 「ゆゆぅ!?ありす?こんなのがありすのとかいはなの!?」 「そうよ!かみがとってもきれいだわ!はだもつるつるよ!おなじありすとしてなかまにいれてあげてもいいわ!」 野良ありすは、自分を見て、同じありすだと言う。 少しだけありすの頭に、お兄さんの言葉がよぎる。 自分がゆっくりだと、言われたような覚えがある。 そんなこと、ないよ?ありすはゆっくりじゃないよ。 ゆぅう、だって、こんなにきたなくないよ? そんな小さな反抗が、無駄な事を言わせた。 「さんにんともきたないね、そんなのとかいはじゃないわ」 「ゆゆぅ?このありすひどいこだよ!」 「ゆーっ!いらいらするありすだね!それにばっじがないよ!このありす」 「すてられありすなの?それじゃあとかいはじゃないわ!かわれてたゆっくりとつきあうのはとかいはのすることじゃないもの」 「あははは!ばかありすなんだね!」 「きれいでも、すてられたらばかだよ!まりさはかわいいからかわれてたらすてられないよ!ありすはのろまさんだね!」 「いっしゅんでもこのこをとかいはだとおもったわたしがばかだったわ!」 「ゆべぇっ!どぼっ!どぼぢで!?」 草むらで3匹の体当たりが始まった。空き地の外からはそれが見えない。 子ゆっくり達にとって、この空間は林や森と同じ意味を持っていた。 ゆっくりは弱い者苛めが大好きだ。 いつでも、どこでも、自分より弱いと思ったものに対しては徹底的に苛める。 誰にも見られないのなら尚更良い。 すてられたありすにしても、同じゆっくりを認められず、バカにしていた。 飼い主がそんな気持ちを持っていなかったのにも関わらず。 幾度も幾度も体当たりをされている内に、ありすは小さな擦り傷だらけになっていく。 勿論数分で治るような傷ばかりだが、傷がついていく事に胸が痛くなる。 綺麗だ、可愛いと言われた自分の体にどんどん傷がついていく。 「ばーかばーか!」 「ばかなこはしね!」 「とかいはじゃないからしんだほうがいいわ!」 「どぼぢであ゛り゛ずが!ごん゛な゛め゛にあ゛う゛の!?ゆ゛っく゛り゛でき゛ない゛よー!」 心も薄汚れた野良ゆっくりにありすは蹂躙されていくのだった。 しかし、野良ゆっくり達の攻撃がリズムに乗ってきたために、徐々にありすの様子が変わり始めた。 「んぉ?ほぉおお?」 「あっ!」 「まずいよ!」 「とかいはとしていやなてんかいになりそうね!」 「なっ、なぁにこれっ!んほ、んほぉおおおおお!げっ、げひんなこえがでるよ!んほぉおおお!」 リズムのある攻撃が振動となってありすの本能を開いてしまったのだ。 ありすの本能。見境なくゆっくりを襲ってしまう性。 飼いゆっくりであれば自制できるよう育つのだろうが、 如何せんこのありすはさっき捨てられたばかりで、自分が誰なのか、何なのか、混乱している状態だった。 そんな時のこの3匹の攻撃は、ありすの持っていた本能を呼び覚ますのに十分な程心にダメージを与えた。 3匹は逃げる体勢になったが、間に合わない。 同じ体格なら、この状態のありすに速度でも、体力でも、敵わないのだ。 「れいぱーだ!」 「こどもができちゃううううう!しんじゃううううう!」 「ゆっくりとかいはとしてにげるわ!」 「にっ、にがさないわよぉおおお!なっ、な゛んで!?なぁに゛ごれっ!んほぉおお!」 いまだ混乱する自分らしさ。汚い自分。傷ついた自分。 それがお兄さんと捨てられたイメージと結びついた。 真っ暗闇に性欲という光が差し込んだ。 勿論この子ありすにそんな感覚が理解できるはずもない。 けれど、その精神的な情動を、正しいとありすは思った。 この自分の猛りを静めてくれさえすれば、もうどうでも良い。 それがすなわち光なのだ。 自分の目指す光。自分を導く光。 それが他の個体の未来を打ち消す闇になろうとも良い。 だって、ありすは人間なのだから。 「もうどうでもいいわぁ~!あなたたちかわいいわよぉ~!!」 「ゆぅううっ!ゆっくりできないよー!」 「んほ、んほ、んほぉおおおーーー!さんにんともせっきょくてきなんだからぁ~!しょうがないからだいてあげるわぁ~!」 「ゆゆぅう!?どうやってうごいでる゛の゛ぉ゛~!?ゆっぐり゛でぎない゛よ゛ぉ~!お゛い゛つ゛め゛ら゛れ゛る゛よ゛ぉ゛お゛!!!!!お゛う゛ぢがえ゛る゛う゛う゛う゛うぅぅ゛うう゛う!!!!!!」 泣いても、無駄だった。 発情したありすは、混乱した3匹を的確に袋小路へ追い詰め、徹底的に襲った。 「んほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 空き地に、様子のおかしいありすがいた。 目はとても穏やかなようでいて、とても真っ暗だった。 近づいてみると、マーブルのようで、たくさんの色彩が混ざっていた。 刻々と移り変わる瞳で、ありすは目の隅にある黒ずんだものについて思案を始めた。 あれはなに? そして目の前には、精気を失ってしぼみはじめている、茎がたくさんたくさんついている、変なスポンジのような何かがいる。 じぶんのくちからへんなこえがでてる。 あと、うごいてる。たくさんたくさん。ふしぎ。ちょっととかいは? 「んほぉおおおおおおおおお!」 この目の前にいる何かを、先ほどまで喋ったり、追いかけていたりしたような気がする。 ありすは、少しずつ冷静になってきていた。 とかいはでにんげんのわたしが、おいかけっこなんかしないわ。 ところで、ここはどこ? おにいさんはどこにいるの? ありすは、おなかすいたよ。 おにいさん、どこにいるの? ありす、さみしいよ。 おにいさん、おにいさん。ありすさみし……、 あれ?ありすって……、だれだっけ? ありすはゆっくりだよ。ありすはゆっくりじゃないよ。 あれ?あれれれ?ゆぅうう。ありす?そんなこしらない。 おにいさん、たすけて 「んほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!すっきりー!!」 「うっわ、きもちわりぃ、近所迷惑なんだよ!」 その声はありすを数時間前に捨てた彼だった。 裏手にある空き地で、自分が捨てたのと同種の声が聞こえた事に堪えきれなかったのだ。 しかも、その声はありすを飼う人間として一番聞きたくない言葉、声の羅列でもあった。 「やっぱり、こんなトコにアイツ捨てなきゃよかった。今からでも遅くない。住む家変えよう。それでアイツも連れてこう。ありすー!どこにいるんだー!?」 「はぁ、はぁ、にんげんはゆっくりできないわー!」 ありすは家にいた頃と全く違う表情を浮かべていた。 本能にインプットされている言葉が口から出る度に、ありすは煩悶する。 しかし、そんな気持ちが彼に伝わるわけがない。 「はぁあ、こんなんだから野良はなぁ。ちゃんと育てれば可愛いのに。あれ?こいつ犯してたの、ありすじゃないか!俺のありすじゃ……ないな。これは。んで勿論この汚いのも俺のありすなワケがないし。汚いし」 ち、ちがうの!わたしが、おにいさんの…… 「おにいさん……!ここはありすのゆっくりぷれいすだよ!ゆっくりでていかないととかいはじゃないわ!」 考えているのとは全く違う言葉が口から何度も出た。 彼の顔が、自分を見る目が、以前と全く異なっている事にも気付いている。 だからこそ、心で念じれば彼に届くと思った。 情事に汚れきったぐちゃぐちゃの体で、 前とは比べようもない程の醜悪な顔で。 この顔を見ればわかるでしょう、と。 でも、その顔は、情事を通り過ぎたたくさんのありすのうちの一匹でしかなかった。 彼はそれを可哀想な顔で見つめる。 「俺のありすが被害にあっちゃうかもしれないから、しょうがない。ごめんな。ありす、大丈夫かなぁ」 彼は意を決すると、足を軽く振り抜いて、目の前の発情した「野良」ありすの頭部を刈り取った。 「ゆっ!」 ありすには、その行動が信じられないほどスローに見えた。 キラキラと光の粒が見えるような気がした。 足が近づいて、殆ど真っ暗になった時、少しずつ視線もズレていくのを感じた。 下半身が心なしか頼りない気がする。 自分の重さを全く感じない。青空。 空ろな思考の最後に見えたのは、彼の複雑そうな、残念そうな顔だった。 ありすはちょっぴり、嬉しい気がした。 千切れた頭部は奥にぺちゃり、と情けなく弱弱しい音を立てて落ち、胴体からは黄色のクリームが流れた。 彼は自分の手が汚れるのも構わずに、それを慣れない手つきでスーパーの空き袋に入れると、他の3体の黒ずんだ体も袋に詰めた。 空き地ではずっとありすを呼ぶ声がしていた。 祝☆ゆっくりを狩る者さん復活!

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