ゆっくりいじめ系3019 ぴこぴこ2

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ゆっくりぴこぴこ2 書いた人 超伝導ありす 前作、ゆっくりぴこぴこ(fuku5263.txt)の続編となります。 単独でも読めますが、前作のキャラが出てきます。 このSSは以下の要素を含みます。苦手な方は読むのをお控えください。 ・ぴこぴこ ・罪のないゆっくりがひどい目に遭います ・死なないゆっくりがいます ・レイパー??ありすが登場します ・ゆっくりの交尾シーン(ぺにまむ無し設定)  ここは、とあるゆっくりの巣。  その中では、今まさに新たな命が産み落とされようとしていた。 「そろそろうまれるよ!まりさ!」 「ゆっくりしたあかちゃんだといいね!れいむ!」  ぴこぴこ。  そこには、れいむとまりさ、二匹のゆっくりが住んでいた。  二匹はつがいである。  れいむの頭には、一本の茎が生えていて、だらんと垂れている。  その茎には、まるで果実のように、目を閉じたいくつもの赤ゆっくりが成っていた。  大きさは3cmほど。  植物型出産では標準的な大きさだ。 「ゆっくりうまれてね!いそがなくてもいいよ!」  自らの分身たる新しい命を、うっとりと見上げるまりさ。  ずっと苦楽と共にして来たれいむが子を産み、自分はこれから父親になる……。  この充足感は、何事にも代え難いゆっくりした気持ちのようだ。  そうしているうちに、赤ゆっくりたちが体をプルプルと震わせ始める。  運よく安全なにんっしんっ期間に恵まれた、母れいむ。  彼女が分け与えた餡子には、夢と希望がいっぱい詰まっている。  ゆっくり生まれてとは言うけれど。  早く生まれて、おかーさん、おとーさんとすりすりしたい。  おいしいご飯をむしゃむしゃ食べて、ゆっくりお歌を歌いたい。  赤ゆっくりたちは一生懸命に体を震わせ、茎と自分を切り離そうとしていた。  ぽとん。  と、最初に地面に降り立ったのは、赤れいむ。  ころころと転がって衝撃を緩和すると、ぱちくり!と目を開き、周囲を見渡してむくりと起き上がる。  そして。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」  ぴこぴこ!  母親へと振り向き産声を上げた赤れいむは、喜びを表現するために、自らの両脇にあるもみあげを前後に振り。 「ゆっくりしていってね!!」  ぴこぴこぴこっ!!  それを受けて母親になったれいむも、もみあげを何度も振ってそれに応えた。 「れいむぅぅぅ!ゆっくりしたあかちゃんだね!!」  それを見て、父親となったまりさも、自慢の三つ編みを振り始めた。  こちらは、れいむのもみあげよりもずっと長いので、先端だけをぴこぴこと器用に振っている。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」  次々と生まれ、同じようにもみあげや三つ編みを振る、赤ゆっくりたち。  赤れいむが三匹、赤まりさが三匹と続き、残るは赤れいむ一匹だ。  末っ子となる赤れいむも、頑張って体を震わせ、地面に降り立つと。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!」  大きな目をぱちくり開き、姉たちに倣って笑顔を振りまいた。  しかし。 「ゆっ?ゆっくりしていってね?」  末っ子れいむの姿を見て、戸惑う両親と姉たち。  なんだろう?この子だけはゆっくり出来ていない気がする。 「ゆっくちしちぇね!れいむ!」  そこで長女れいむは、末っ子れいむに更なるゆっくりを促してみた。 「ゆっ?」  心の中に、ハテナマークを思い浮かべる、末っ子れいむ。  生まれた喜びを表すために、満面の笑みとゆっくりの根源に関わる台詞を口にした。  幸せな未来を夢見て、両親と姉妹に恵まれた喜びに満たされた。  これ以上、どうゆっくりしろというのか。 「ゆっきゅりしちぇいってにぇ!!!」  人間が首を傾げるように、体を斜めに傾けながら、先ほどよりもっと大きな声で呼びかける。  末っ子れいむは半信半疑ながら、精一杯のゆっくりを体現しようとしたのだ。 『ゆううう!?』  ところが、それを見た両親と姉たちは、悲鳴を上げて一箇所に集まった。  末っ子がゆっくり出来ない理由に、気づいてしまったからだ。  ぴこぴこぴこっ!ぴーん!! 「ゆっくりできないこだよ!」 「いもうちょとは、ゆっくちできないよ!」  今まで嬉しそうにしていた、末っ子れいむ以外の家族たちは、一斉に髪を振るのを止め。  代わりに、れいむ種はもみあげを、まりさ種は三つ編みの先端を『ボッ』っと膨らませた。  まるで怒った猫が、尻尾を膨らませたかのようだ。  それは威嚇のポーズ。  なぜなら末っ子れいむは、もみあげを振る事が出来ない子、ゆっくり出来ない子だったからだった。 「どうしちぇぇぇ!?」  愛してくれるはずの家族に総スカンされ、驚きの声を上げる末っ子れいむ。  それどころか、家族がなぜ自分を否定するのか、その理由さえ分からない。  『ぴこぴこ』は意識して振っているものではないからだ。 「ゆっくりできないこは、れいむのあかちゃんじゃないよ!!」 「れいみゅは、こんなにゆっきゅりしちぇるのにぃぃ!!」  実の母親から、汚物を見るような目で見られ、悲しみに顔が歪んでいく末っ子れいむ。  母れいむは、六匹の正常な赤ちゃんに視線を移すと、満面の笑顔を浮かべ。 「さあ、れいむのあかちゃんたちは、ごはんにしようね!!」 「かぞくでゆっくりしようね!」  こめかみに力を入れて、頭に付いていた茎を地面に落とした。 「とってもおいしいおかーさんのくきが、さいしょのごはんだよ!」 「ゆっくちできしょうだよ!」  母れいむの前に六匹の赤れいむ・赤まりさが集まった。  嬉しそうにぴこぴこする、赤ゆっくりたち。 「れいみゅもゆっきゅりさしちぇにぇ!?」  それを見て、末っ子れいむも輪の中に飛び込もうとする。  だが、すかさず父まりさが、目の前に背を向けたまま立ちふさがった。 「ゆぴぃっ?」  父まりさの背中に弾き返される、末っ子れいむの体。 「れいみゅも!れいみゅもぉ!」  末っ子れいむはすぐに起き上がると、父まりさの背中に声を掛ける。  だが、父まりさも、そして母れいむも返事をすることはなかった。  とりあえずゆっくりしたい両親は、末っ子れいむを見なかった事にしたのである。 「あかちゃんたちも、おかーさんになったら、くきをたべさせてあげるんだよ!」 「すこしだけまっててね!いま、おかーさんがやわらかくしてあげるからね!!」  母れいむは茎を口に含み、咀嚼しはじめた。  生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりは、噛む力が弱い。  親が柔らかくして食べさせてあげるのだ。 「さあ、ゆっくりたべてね!」  母れいむが吐き出した、ペースト化された茎に群がる、赤ちゃんゆっくりたち。 『むーちゃむーちゃ、しあわせしぇぇぇ!』  赤ゆっくりたちは口を揃えて、初めて食べたご飯の味に感動した。  ほのかに甘く、そして瑞々しい草の味。  しかも、笑顔の両親に囲まれて、餡子を分け合う姉妹と頬を寄せ合って、これ以上の幸せはないというもの。 「ゆえ、ゆえええええん!!」  一方、末っ子まりさは、父まりさの背後で泣いていた。  末っ子れいむにとっては、これ以上の不幸はない。  生まれた途端に、いらない子だと突き放され、ご飯にすらありつけないのだ。    しかも、感極まったにも関わらず、末っ子れいむのもみあげはいまだ無反応。 「うるさいよ!!」  途端、父まりさが振り向き、末っ子れいむを三つ編みで弾き飛ばした。  末っ子れいむの体は放物線を描いて飛び、砂糖味の涙がそれを追う。  巣の壁際に追いやられたれいむは、思わず口をつぐみ、しかし泣きやむこともできない。 「ゆぎっ、ゆひっ」  大声を出してはまた飛ばされてしまう……。  末っ子れいむは恐怖に怯え、小さくむせび泣くしかなかった。  やがて姉たちは食事を終え、お腹いっぱいになる。  満腹になった赤子がすることといえば、一つだ。 「ゆふぅ、れいみゅ、ねみゅくなってきちゃよ…」 「まりしゃもねりゅよ」 「おかーしゃんといっしょにねりゅからね…」  姉たちは、母れいむに寄り添いまぶたを落とす。 「ゆふふふ!ゆっくりおねむしてね、れいむのあかちゃんたち!」  それを見届け、満足げな顔を浮かべる、母れいむと父まりさ。  しかし赤ちゃん達が寝静まると、今度は代わりに耳障りな声が聞こえてくる。  末っ子れいむの泣き声だ。 「まだいたの?ゆっくりできないこは、どこかへいってね!?」  無茶な要求をする、父まりさ。  生まれたばかりの赤ちゃんが、自ら外に出て行くという選択肢を思いつくはずがない。  それに外に出ようとしても、巣の出入り口には成体ゆっくりの力でがっちりと蓋がしてあった。 「まりさ!あのこがいると、あかちゃんたちもゆっくりできないよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」  母れいむは『ゆっくりできる子』に寄り添われたまま、身動きが取れない。  代わりに父まりさが、末っ子れいむの居る、巣の壁際へとにじり寄った。  迫ってくるのは、大きな顔。  父まりさは、不機嫌そうに三つ編みをぶうん、ぶうん、と揺らしている。  殺される!!  末っ子れいむはガチガチと歯を鳴らしながら必死に考え、そして気づいた。  自分と、姉達の違いに。  しかし、末っ子れいむはもみあげを動かすことは出来なかった。  そうなれば、することは一つ。 「ゆっきゅりすりゅよ!ゆっきゅりすりゅよ!!」  末っ子れいむは、体を激しく前後に動かし始める。  反動で、もみあげを振ろうというのである。  赤ゆっくりにしては、よく考えたものだ。  否、生き残るために自然に体が動いたというべきか。  末っ子れいむは、体を動かし続ける。  何度も、何度も。  すると、わずかながらもみあげが前後に揺れたのだ。  それを見て、父まりさの表情が、少しだけ緩んだ。 「ゆゆっ!あかちゃんはすこしだけどゆっくりしてるね!」 「ゆっくりできるなら、ごはんをあげてね、まりさ」  母れいむもそれを見届けると、父まりさに指示をした。  父まりさは頷き、巣の奥の食料庫へと向かう。  自分の努力が認められたと思った末っ子れいむは、動きをやめ、ぺたんと地面に倒れてしまった。  本来なら何も考えずゆっくりできるはずの、赤ゆっくり。  その体に、激しい運動に耐える体力が、最初から備わっているはずもない。  もう一歩も跳ねられないような疲労感に襲われる、末っ子れいむの前に。  ぺっ。  父まりさが吐き落としたのは、咀嚼されていない苦い草だった。  ゆっくりが好んで食べる事のない、苦い草。  それでもいざという時の為に、聡明なまりさが少しだけ貯めていたのである。  父まりさは、にこりと笑って。 「ほんとうにゆっくりできたら、おいしいごはんをたべさせてあげるからね。がんばってね!」  そう言って背を向けた。 「ゆぐっ、ゆぐっ…ゆぐぐぐぐ…」  父まりさは時分の努力を認めてくれたわけではなかった。  執行猶予を与えたに過ぎなかったのだ。  再び絶望感に打ちひしがれながら、食欲には勝てず、泣きながら舌を伸ばす末っ子れいむ。  苦い草の一部を口に含み。  しかし噛み切れず、横に倒れた体勢のまま、咀嚼を始める。 「む……ちゃ……むひ……に、にぎゃいぃぃぃ」  まだ硬い物は噛み切れない赤ゆっくりに、この仕打ちは最悪のものだった。  噛めば噛むほど苦い汁が口の中に広がり、何度噛んでも噛み切れず。  仕舞いには何時までも残った味気ない繊維をかみ続けなければならないからだ。  苦い汁だけでは、腹は膨れない。  すでに疲労は限界だった。  末っ子れいむは、繊維をかみ締めながら、やがて気絶するかのように眠りにつくのだった。  翌日。 「ゆっくち…しちぇいってにぇ?」  末っ子れいむは目が覚めると、本能的に朝の挨拶を口にする。  ただしそれは、控えめで辺りをうかがいながらの挨拶だ。  家族に自分を否定された恐怖は、今もなお末っ子れいむの心にしっかりと刻まれている。  そして当然の如く、誰も返事はしてくれなかった。  姉たちはすでに朝食を終え、楽しそうに遊んでいた。  母親が噛み砕いてくれたご飯をたっぷり食べて、姉妹同士でコロコロ転がったり追いかけっこをしたり。  父まりさが狩りに出ている間、育児を任された母れいむはうっとりとその光景を眺めていた。 「ゆぐっ…」  末っ子れいむは仕方なく、苦い草を口に含む。  相も変わらず繊維は硬く、なかなか飲み込むこともできない。  姉たちよりも何十倍も口を動かしているのに、空腹が満たされることはなかった。 「おかーしゃん!れいみゅたち、おなきゃがしゅいちゃよ!」 「まっててね、あかちゃんたち!すぐにおいしいごはんをよういするからね!!」  赤ゆっくりは体が小さく、栄養を一度にたくさん貯めておくことができない。  そのため、一日に何度も食事を取る。 「むーちゃ、むーちゃ!しあわしぇ~!!」  その幸せそうな喧騒をBGMに、末っ子れいむは草を食み続けていた。  いつまでも。  午後になると、父まりさが狩りから帰ってくる。 「きょうもたいりょうだったよ!あかちゃんたちのためにがんばったよ!」 「おとーしゃん、おきゃえりなさい!」 「おとーしゃんは、すぎょいね!!」  頬をぱんぱんにして、餌を調達してきた父まりさを出迎える子供たち。  しかし、その中に末っ子れいむの姿はない。 『ゆっくりしていってね!!』  ぴこぴこぴこっ!  頑張った父まりさを称え、お決まりの大合唱をする一家。 「ゆっ、ゆっくちしちぇいってにぇ?」  少し遅れて末っ子れいむがぼそぼそと呟き、父まりさの顔をちらりと見上げた。  対して父まりさも末っ子れいむを見返し、険しい表情を浮かべる。 「ゆっくち!ゆっくちしてりゅよ!!」  末っ子れいむは昨日と同じように、慌てて体を揺すり始める。  ぴこぴこ、とまではいかずとも、それなりに揺れる末っ子れいむのもみあげ。 「さあ、赤ちゃんたち!おとーさんとゆっくりあそぼうね!」  父まりさは、ふいっと視線を戻し、満面の笑顔をゆっくり出来る赤ちゃんゆっくりたちだけに向けるのだった。  末っ子れいむの生活は、ずっとそんな調子で続いた。  姉たちが幸せそうに食事をしている最中も、ひたすら硬い草の繊維を噛み切る事に専念し。  姉たちが眠る頃、末っ子れいむは一人誰にも寄り添えず、疲れきって倒れ。  時折、親と目線が合うと、媚びへつらうかのように体を激しく振って、もみあげを動かす。  地獄のような日々は続いた。  両親は、末っ子れいむをすぐには追い出さなかった。  自ら手を下すのが嫌だったのか、あるいは必死な末っ子れいむに同情したのか。  それでも数日経つと、群れには末っ子れいむの悪い噂が広がり始めていた。  れいむの末っ子はゆっくり出来ない。  もしかしたら、親もゆっくり出来ないのかもしれない。  そんな噂が広がり始めると、両親の態度はさらに悪化した。  もう体を激しく揺さぶっても、その表情が和らぐことはない。  そして……。 「やっぱりれいむは、ゆっくりできなかったね!やっぱりれいむのあかちゃんじゃなかったね!!」 「れいむはいらないこだよ!とっとと、めのまえからきえてね!!」  生まれてから七日後、とうとう末っ子れいむは、父まりさに外に放り投げられてしまった。 「れいみゅはゆっくちしてりゅよおおお!!れいみゅはれいみゅおかーしゃんの…!!」  バタン。  慌てて巣に戻ろうとしますが、出入り口にはフタをされてしまう。 「ゆううう!れいみゅはおかーしゃんのあかちゃんなのにいいいい!!」  しばらく泣いていた末っ子れいむは、やがて後ろから近づいてくる影に気づいた。 「むきゅ。あなたがゆっくりできないれいむね!」 「ゆう?」  末っ子れいむが振り返ると、そこにはぱちゅりーが立っていた。  しかし、そのぱちゅりーも笑顔には程遠い憤怒の表情。 「ぴこぴこできないこは、あくまのこよ!はやくむれからでていってね!」 「ゆひっ?」  見れば、ぱちゅりーも両方に垂らした髪をくねくねさせていた。  そして振り向くことで、末っ子れいむは周囲に沢山のゆっくりが居ることに始めて気づく。  両親の巣は、群れのほぼ中央に近くにあり、巣の外には常に仲間の往来があった。  そのすべてがれいむ種やぱちゅりー種のように、垂らした髪を振っていた。  また、垂らした髪が無い種類のゆっくりは、気を逆立ててゆらゆらとさせている。  この群れでは、すべてのゆっくりが何らかの形で髪を揺らしている。  ここは、ぴこぴこゆっくりの群れだったのだ。 「ゆひああああ!?」  今までは両親の手前、もみあげを振ることだけを考えてきた末っ子れいむ。  けれども落ち着いて考えてみると、それが正常であるとは到底思えなかった。  ぴこぴこなんて、ゆっくりできない。 「みんなゆっきゅりしちぇないよおおおお!!」  周囲の冷たい視線から、逃げ出すように跳ね始めた末っ子れいむ。  体はまだ小さく、どこへ行けばいいかも分からない。  けれど、とにかく跳ね続けた。  ぽすん。  その途中。  末っ子れいむは柔らかい何かに受け止められ、それを見上げる。 「あら、れいむがゆっくりできないれいむかしら?」  そこには、一匹のありすが居た。  末っ子れいむは、ありすの下膨れにぶつかったのだ。  ありすは髪を逆立て、ゆらゆらと揺らしてはいなかった。  それだけではない。  ありすは笑顔で末っ子れいむを見つめていたのだ。  が。  そのありすを見て、末っ子れいむを視線で追っていた群れの仲間達は一斉に目を背けた。  まるで、その存在が禁忌であるかのように。 「だいじょうぶよ、れいむ。ありすはぴこぴこできなくても、きつくあたったりはしないわ」 「ゆ?……ほんちょう?」 「ええ、ほんとうよ」  その笑顔にほだされて、わずかに笑みを取り戻す末っ子れいむ。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆ…ゆっきゅりしていっちぇにぇ!」  ありすは、親愛の印である、いつものフレーズを、高らかに口にする。  末っ子れいむはやや遅れてから返事をして。  ようやく自分が求められていることを実感し始めた。 「むれのなかにいてはきけんだわ。きょうからありすがれいむのおかーさんになってあげるわね」 「おかーしゃんに?」 「ええ。たくさん、たくさん、ゆっくりさせてあげるわ」  ぽろりぽろりと、末っ子れいむの瞳から涙の雫がこぼれた。  家族から見放され、群れのゆっくりからも疎まれ、絶望していた心に差し込む一条の光。 「ゆっくちできりゅの!?れいみゅはゆっくちしちぇいいの!?」 「もちろんよ!」  ありすは末っ子れいむの頭を優しく銜えて持ち上げる。  一瞬、びくりと震えた末っ子れいむだが、その動作が優しい事に驚き、嬉しくなった。 「さあ、ありすのおうちにかえりましょうね!そこはれいむのおうちでもあるわ!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅりすりゅよ!!」  末っ子れいむは舞い上がっていた。  実の母親ではないにしても、自分の母親になってくれるゆっくりに巡り会えたのだから。 「ゆっきゅり~♪きょうはゆっきゅりのひ~♪」  しかし、末っ子れいむは気づいていなかった。  ありすの背中では、束ねられた髪が牙を剥いた蛇のようにゆらゆらと揺れていたことに。  ありすの巣では、二匹のゆっくりが待っていた。 「ゆっくりおかえりなさい!」 「おかえりなさい、ありすおかーさま!」  そこに居たのは、末っ子れいむよりずっと大きい、子まりさと子ぱちゅりー。 「ありすのおちびちゃんたち!きょうから、れいむがあたらしい、いもうとよ!なかよくしてね!」 「よろしくね、れいむ!!」 「わかったわ、おかーさま!」  ありすが末っ子れいむを地面に降ろし、紹介すると、二匹の子ゆっくりは快く引き受けた。 「れいむはかわいいね!すりすりさせてね!!」 「むきゅ、ぱちゅりーはぺろぺろしてあげるわ」 「や、やめちぇにぇ!?」  末っ子れいむは、すぐにはその二匹が姉である実感がわかなかった。  今までの家族の仕打ちから、姉妹が愛すべき存在である事も忘れていた。  しかし、二匹は硬直する末っ子れいむに構わず、スキンシップを図る。 「すーりすーり。きもちいい?」 「ぺーろぺーろ。どうかしら?」  末っ子れいむにとっては、これが初めての同属とのスキンシップとなった。  体は正直なもので、初めてのすりすりとぺろぺろは、思いの外気持ちよく。 「ゆひゅひゅひゅ、くしゅぐっちゃいよ」  末っ子れいむは、すぐに心地よい快感に酔いしれた。 「まりさのことは、おねーさんとよんでね!」 「ぱちゅりーもよ!」 「ゆっきゅりりかいしちゃよ!まりさおねーしゃん!ぱちゅりーおねーしゃん!」  妹が出来た事に、子まりさと子ぱちゅりーも、心の底から喜んでいるようだった。  それから末っ子れいむは、夕方まで二人の姉に遊んで貰った。  帽子に載せてもらったり、お話を聞かせてもらったり。  唯一残念だったのは、実の姉達がやっていたコロコロ遊びが出来なかったことだ。  これは幼い姉妹同士だから出来ること。  体格差の大きい姉たちにそれをせがむのは、無理というものだ。  二匹も末っ子れいむ同様、生まれつきぴこぴこ出来ず、ありすに拾われた子ゆっくりだった。  同じ境遇と知り、ますます親近感を深める末っ子れいむ。  末っ子れいむにとって、その日は始めて充実した日になっていた。 「さあ、ありすのおちびちゃんたち!おゆうはんよ!ゆっくりたべなさい!」  夕方になると、狩りから帰って来たありすが、夕食を振舞った。  色とりどりの花や、草、虫の死骸や乾いた果物など、バランスのよい献立だ。  ありすは群れでも1、2を争う狩りの名手だったのである。  それもすべて、実子ではなくとも愛してしまえる、深い深い愛ゆえ。 「むーしゃむーしゃ!」 「れいむには、とくべつにありすがやわらかくしてあげるわ!」  姉二匹が食事を始める横で、おどおどしている末っ子れいむに、ありすはそう語りかけた。  末っ子れいむにとって、ご馳走は初めて見る食べ物ばかり。  どう食べてよいか分からなかったのである。  ありすは草を少しと果物を少しを口に含み、咀嚼してかられいむの目の前に吐き出す。 「ゆっ!?」  それは、夢にまでに見た母親の茎に似ていた。 「むーちゃむーちゃ……ゆっ!ゆゆゆゆゆ!しあわちぇええええええ!!」  飛びつき、そして思わず叫んでしまう、末っ子れいむ。  目からはうれし涙がぼろぼろとこぼれた。  乾ききっていた末っ子れいむの心に、ありすの愛が注がれる。  れいむは生まれてきてよかったんだ!!  止まらない、涙。  その涙さえ、れいむのあんよが解けてしまわないように、ありすが舐めとってくれる。 「おいしいかしら?れいむ」 「おいちいよ!おいちいよ!おかーしゃん!!」  素直に母親と認めてくれた事に、じーん…と心を振るわせるありす。  しかし、その口元には妖艶な笑みが浮かびつつあった。 「うふふふふ。かわいいわねぇ、れいむは…」  夢中になって食べる末っ子れいむを見下ろし、ほほ笑みながら目を細めるありす。  そして。 「たべちゃいたいくらい…。うふふふ…」  そんなありすの言葉には気づかずに、末っ子れいむは食事を終えた。  体の小さい末っ子れいむは、ありすが用意してくれた分だけでも満腹だった。  手持ち無沙汰になった末っ子れいむは、姉二匹の様子を眺めることにした。 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~」  さぞかし美味しそうに食べているのだろうと思いきや、二匹にはあまり元気がない。  口では幸せと言ってはいるものの、末っ子れいむほど飛びつくような勢いでもなかった。  よく見ると、二匹の目の下には、クマがうっすらと出来ている。 「どこかいちゃいの?まりしゃおねーしゃん?」 「ゆっ?だいじょうぶだよ、れいむ!がーつがーつ!」 「そうよ、ぱちゅりーもげんきよ!」  慌てて取り繕う姉たちに、小首を傾げる、れいむ。  食事が終わると、れいむは眠気に襲われた。  赤ゆっくりは、よく食べて良く寝て良く育つことが仕事。  れいむはようやく本職をまっとうできる環境を手に入れた…はずだった。  が。 「れいむ。まだねてはだめよ。ありすのこどもなら、しょくごのたいそうがあるのよ!」  そう告げるありす。 「ゆっくりはじめるよ…」  あまり嬉しそうではない声で、姉二匹は壁際に並んだ。  急に空気が緊張し、とても眠らせてもらえる雰囲気ではない。  末っ子れいむも、姉たちを真似て壁際に移動した。 「さあ、ぴこぴこたいそうよ!ゆっくりはじめてね!!」 「ゆううう!?」 「ぴーこぴーこ!まりさはゆっくりできるよ!」 「ぱちゅりーもくねくねできるわあ!!」  ありすの合図とともに、子まりさと子ぱちゅりーは、体を前後左右に揺すり始める。  末っ子れいむは、その光景を見て愕然とした。  壁際で体を振るわせるその姿は、かつての自分を彷彿とさせ、同時に恐怖が蘇える。 「ひいいい!ひいいい!」  その場で震え始める、末っ子れいむ。 「こわがらなくてもいいのよ、れいむ」  しかし、末っ子れいむに近づいてきたありすの顔は、相変わらず柔和な笑顔だった。 「ゆっ?」 「まりさもぱちゅりーも、れいむも。いずれは、おとなになって、どくりつするひがくるわ」  その柔和な顔が、さらにずずいっと近づいてきて。 「そのときに、ぴこぴこできなかったら、むれからおいだされてしまうの。だから、ゆっくりでもいいから、  れんしゅうしましょう……ね?ありすのあかちゃん?」 「ゆ、ゆう……」  そう言われてしまっては、末っ子れいむも従うしかなかった。  媚びへつらいながらの強制ぴこぴこよりはマシというもの。  ありすは元の位置に戻り、三匹の様子を眺める。  その頃には、すでに子まりさと子ぱちゅりーは、現実からトリップし始めていた。  自ら激しく体を揺する事によって、発情にも似た感覚に襲われていたのだ。 「そうそう!まりさもぱちゅりーも、とってもとかいはよ!」  末っ子れいむは、様子を窺いつつ、ゆっくり体を前後に揺らす。 「れいむはもっとがんばってね!ぴこぴこできないこは、なえなえよ!」  懸命に体を揺らす三匹を前に、うっとりと光景に見入るありす。  やがて、ありすの顔には、隠された表情が見え隠れし始めた。 「はぁ、はぁ、はぁ。もっとがんばってね!おかーさんをよろこばせてねえ!!」  一度変化が始まると、後は早かった。  ありすは、辛抱たまらん!という勢いで、まりさの背後に回り。 「きょうは、まりさに、こじんれっすんをしてあげるわあああ!!」 「ゆううん!!」  ありすは、無我夢中の子まりさの背後に圧し掛かるなり、自らも激しく揺れ始めたのだ。  すでに快感の中にあった子まりさは、すんなりとそれを受け入れてしまう。  瞳からはすでに光が消えうせ、体格差による重さも感じてはいない。  ありすは『ぴこぴこ』できない子が必死になるのを見て発情してしまう、HENTAIありすだったのだ! 「ゆふん!ゆふん!」 「いいわああ!まりさもテクニシャンになったわねえええ!!」  お互いに肌を擦り付け始めると、皮にはじっとりと粘液が浮かび、雫となって垂れ始めた。  二匹とも本格的な交尾体勢に入ったのである。 「なにしちぇるのおお!?」  ただ事ではない光景に、思わず体を休め見上げてしまう、末っ子れいむ。  そこへ。 「おちびちゃん、きょうはおやすみしましょうね?」  そう語りかけてきたのは、子ぱちゅりーだった。  少し乱れていた息づかいをゆっくりと落ち着けると。 「おかーさまたちは、とっくんちゅうよ。わたしたちはゆっくりねましょうね」 「とっくん……?」  末っ子れいむはもう一度、絡み合う二匹を見上げ。  しかしお腹も一杯な上に疲れていたので、素直にぱちゅりーに従うことにした。  子ぱちゅりーは、末っ子れいむを少し離れた隣の部屋へと案内する。 「むきゅ。さあ、ゆっくりおねむしましょうね。さみしいなら、すりすりしてあげるわ」 「ありがちょう、ぱちゅりーおねーしゃん!」 「すーりすーり」 「しゅーりしゅーり」  通路の向こうからは、相変わらず歪んだ嬌声が聞こえていた。  しかし、ぱちゅりーとの頬擦りはとても気持ちよく、れいむはいつの間にか眠ってしまっていた。  一方、子まりさとありすは絶頂が迫っていた。  だが、ありすは限界ギリギリで正気を保っていた。 『すすすす、すっきりー!!』  お互いがすっきりする直前、ありすは子まりさから体を離したのである。 「ハァハァハァ。もうすこしで、じぶんのこどもをにんっしんっ!させてしまうところだったわぁ!」  子まりさは精魂尽き果て、その場で気絶していた。  ありすは子まりさに再び歩み寄ると、舌をべろんと出して子まりさの皮を舐め始める。  交尾中に発した粘液を舐め取っているのだ。 「ゆふふ、まりさはきれいきれいしましょうね~」  ありすは、わざわざ子まりさをひっくり返してまで、丹念に掃除をする。  その瞳には、未だ狂気が宿ってた。  これは掃除ではなく、粘液を味わう行為なのである。 「ぺーろぺーろ。ゆふふふふ。まりさのエキスはおいしいわねええ!れいむはどんなあじなのかしらああ!」  いかがわしい舌舐めずりの音は、その後夜遅くまで続いたのだった。  翌朝。  末っ子れいむは、初めてぬくもりに包まれた朝を迎えた。  そして、何事もなかったように笑顔を浮かべる姉たち。  大変なのは寝る前だけで、後は満ち足りた生活を送れるのだ。  外は自分たちを受け入れてはくれない地獄。  これ以上、何を求めるというのか。 「むーちゃむーちゃ、しわせしぇ~……ゆゆっ?」  昨晩と同じように、ありすに柔らかくしてもらった餌を堪能していた、末っ子れいむ。  しかし今日は、なにやら外から慌ただしい喧騒が聞こえてきていた。 「ゆっくりできない、あくまのぐんだんがきたんだよおお!!」  群れの誰かが、そう叫んだ。 「あくまのぐんだん?」  子まりさと子ぱちゅりーが顔を合わせる。 「とうとうきたわね…。おちびちゃんたちは、おくのへやにかくれてね!!」  ありすは突然、キッと厳しい表情になり、子まりさたちにそう指示した。  わけもかわらず、食事を頬張りながら寝室へ向かう、三匹の子供たち。  ありすはそれを見届け、巣の外へと出た。  外はすでに大混乱。  迎え撃とうとする者、我先に逃げようとする者。  そして、朝日を背にして丘の向こう側からやってくる、数十、数百という黒い影。  それはすべてゆっくりだった。  彼らは『ぴこぴこ』する、ゆっくり出来ないゆっくりを討伐するため編成されたゆっくり軍団だったのだ。  ありすはすぐさま巣の入り口に、外側から蓋をして、土を掛けた。  ご丁寧にも何度も飛び跳ね、慣らす。   相手は圧倒的多数。  ここで逃げても生き残れる保障はない。  巣を隠すことで、せめて子供たちだけでも生き残らせようとする算段だった。  『ぴこぴこ』できるありすの群れは、『ぴこぴこ』出来ない大多数の群れから迫害を受けていた。  ありすの最初の子供たちも、彼らによって奪われていた。 「さあ、くるならくるがいいわ!」  ありすの脇を、逃げる仲間達が通り過ぎ、すぐに敵勢が姿を現す。  迎え撃つありすの元に、三匹のゆっくりがほぼ同時に飛び掛ってきた。  相手はみょん、ちぇん、まりさ。  特にまりさは一際大きく、背丈は50cmを超える特大級だった。 「ありすを、なめないでねええ!!」  気迫で一度はちぇんを弾き返したものの、所詮は多勢に無勢。  みょんが口先に銜えた、鋭い木の枝で貫かれ、重傷を負ってしまう。 「ゆばああああ!!」  ありすは地面にひれ伏した。  けれども、後悔はしていなかった。 「つぎのてきをたおすんだみょん!」 「さがすんだねー、わかるよー!」  すでにみょんとちぇんは、逃げ行く敵に気をとられていた。  このまま軍団が巣に気づかず過ぎ去ってくれれば、子供たちは生き残れるのだから。  ところが。  バンバン!  という大きな音がして、みょんたちの意識がそちらに向かう。  ありすもその音を辿り愕然とした。  みれば子まりさが、土を乗せた重い蓋を死に物狂いで開き、外に出ようとしていたのである。 「ど……どうじでえええ!?」  守ろうとした子供によって計画が覆されてしまったありす。  しかし子まりさは全力でありすの元へ駆け寄り。 「ありすおかーさん!しんじゃだめええええ!!」 「ま、まりざ……」  ありすの悲鳴を聞き、居ても立ってもいられなかった子まりさ。  例え狂っていても、まりさにとって、ありすは大切な母親だったのだ。  家族に捨てられた自分を拾ってくれたおかーさん。  ごはんをいっぱい食べさせてくれたおかーさん。  すりすりしたり、ぺろぺろしたりしてくれたおかーさん。  だから。  ありすを背にして、敵へと向き直った子まりさは。 「おかーさんをきずつけるゆっくりは、ゆっくりしねええええ!!」  勇敢にも、敵へと飛びかかったのだった。  だが。      ぶすり。  無情にも、みょんの枝が突き刺さる。  相手は百戦錬磨のおさむらいであった。 「ゆっべええ!!」  しかもその枝は、成体サイズのゆっくりを屠殺するための枝。  子まりさは、顔面に大きな穴を開けられ、強い圧力により一瞬にして絶命してしまった。 「まりざっ……!まりざあああ!!ぎゅべっ!?」  そのありすも、特大まりさによって潰されてしまう。 「てきとはいえ、おやこをころすのは、かなしいことだね」  しみじみと呟く、特大まりさ。  この特大まりさは、かつて最初にゆっくり出来ないゆっくりと遭遇した、群れのリーダーだった。  まりさはその事件により、大事な子まりさを失っている。  もう二度とそのような悲劇は生み出すまい。  そう誓い他の群れと協力し、常に前線に立って戦ってきた総大将でもあった。  気が付くと、まりさは軍団で一番のまりさになっていた。  もしかしたら、ドスの素質が少しだけあったのかもしれない。  だからこそ、特大まりさはふと気が付く。  ゆっくりは、体が大きくなればなるほど餡子脳の容積が増し、頭が良くなる傾向にある。  目の前にある、子まりさは、他の敵とは違う印象を受けたのだ。 「そこのおうちを、しらべてきてね!こどもがいたら、ころさないでつれてきてね!」 「ゆっくりりかいしたみょん!」  まりさが指示すると、みょんとちぇんが巣の蓋を開いて中に入り。  しばらくすると、子ぱちゅりーと末っ子れいむが、巣の外に連れ出された。   「むきゅ……おかあさま……」 「きょわいよおお!きょわいよおお!!」  子ぱちゅりーは、ありすの亡骸に涙し、末っ子れいむは震えて泣いていた。  しかし、まりさはすぐに見抜く。 「ぱちゅりーたちは、ぴこぴこしないゆっくりだね!?」 「むきゅっ!?そ、そうよ……」 「だったら、なかまだね!ころさないでおいてあげるよ!!」 「そう、ありがとう……」  許された子ぱちゅりーは、しかしあまり嬉しそうな表情をしなかった。  唯一の肉親となった、末っ子れいむを舌先であやしながら。  周囲の惨状に絶句するしかなかったのだ。  群れは跡形もなく無くなり、これから子と赤子だけで、どう生きていけばいいのか。  子ぱちゅりーの表情は不安でいっぱいだった。 「どうしたのかしら?」  そこへ、台車に乗った別のぱちゅりーが現れる。  スィーと呼べるほど立派なものではない。  別のゆっくり二匹が、台車を引っ張っているだけの代物。  ぱちゅりーは、特大まりさの優秀な参謀役だった。  今までに何度も、おっちょこちょいな特大まりさをフォローしてきた、戦地の女房役でもある。 「そろそろたたかいもおわりね。みんなには、てっしゅうめいれいをだしたわ」 「てきかくなしじだね!ぱちゅりーには、このこたちの、めんどうをまかせるよ!」 「むきゅ?」 「ぴこぴこできない、こどもたちだよ!」 「わかったわ」  ぱちゅりーの承諾を得て、特大まりさはお供を従え、群れの中央へと向かった。  そこにはすでに多くの仲間が集まっていた。 「ゆっくりしょうりせんげんするよ!」  特大まりさが声を上げると、仲間たちが歓声を上げる。  まだまだ討ちもらした敵の掃討が残っているが、もはや勝利が覆ることはない。  それよりも、大きな仕事がその後に待っている。  『ぴこぴこ』するゆっくりの死体を食べたゆっくりは、同じように『ぴこぴこ』してしまう可能性があるのだ。  そう。  まりさの子まりさも、そのために泣く泣く殺さねばならなかった一匹。  この戦いで出た死体も、遠くに穴を掘り、捨てなくてはならないのだ。  その頃。 「まりさっ!じっがり……じっがりじでねぇ!」  我先に逃げたゆっくりの中に、生き残っているゆっくりの家族が居た。  まりさが一匹、れいむが一匹。  そして、赤れいむが三匹に、赤まりさも三匹。  そう、末っ子れいむを見捨てた一家だった。  しかし全員が無事というわけにもいかなかった。  父まりさは体中を蜂の巣にされ、餡子を垂れ流している。  赤ゆっくりたちを口の中に避難させ、思うように跳ね回れない母れいむのために、囮役になった結果だ。 「まりざがいなぐなったら、ゆっぐりできないよ!?」 「おとーしゃん、ちっかりしちぇえええ!!」 「びゅひっ!ぴゅひっ!」  まりさは奇声を上げながら、餡子を吐き出し続けていた。  目も焦点が合っておらず、家族の声が聞こえているかも微妙な状態。  悪魔の軍団は、突然現れた。  そして群れを滅ぼし、今こうして自分たちをも不幸のどん底に突き落とした。  一体、自分たちが何をしたというのか?  母れいむはすべてが信じられなかった。  しかし時は無情に過ぎ去る。  父まりさはやがて永遠にゆっくりしてしまい、れいむも現実を受け入れざるを得なかった。  ……夕闇が迫っている。 「さ、あかちゃんたち。おかーさんのおくちのなかへはいってね」 「ゆ?おとーしゃんは?」 「まりさおとーさんは、つかれてねむっているだけだよ!すぐにおいついてくるからね!」  赤ゆっくりたちは、父親の姿を見上げて何かしらを感じつつ、母親の口の中へと入ってゆく。  これからは、れいむが子供たちを守らねばならない。  圧倒的な力を持つ、悪魔の軍団の追っ手から逃れつつ、育てていかなくてはならない。  その道のりは、険しく、そして絶望的だ。  夕日を背に、一匹のれいむが跳ねてゆく。  …長い影が、とてつもない重い何かを顕していた。 おしまい。 [[後書き>超伝導ありすの作品集]]  あれから、ぴこぴこするれいむがずいぶんと増殖したなぁ。  そんな気持ちで思わず続編を書いてしまいました。  自分の脳内では、ここで物語が終わっていますが、あのゲス親子のその後はどおしたっ!?という方も  いらっしゃると思います。  なので、おまけ的な扱いですが、虐…制裁お兄さんを派遣しておきました。  もしよろしければ、感想をお願いします。 (おまけは別ファイル) [[このSSに感想をつける>感想フォーム]]

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