永遠亭×ゆっくり系10 仲違


目の前で赤ちゃゆっくりたちが吊り下げられていく。
兎たちは背中に母れいむや母まりさ達の泣き声を聞いて嫌な気分だったが、
八意永琳の命令とはいえ、ゆっくりに「しね」だの「ばか」だの「ひとでなし」だの言われるのは相当答える。
てゐだけが笑い転げている。
「自分の無能さ棚に上げて、バカとはよく言う」
てゐは床を叩き苦しそうに笑う。

赤ちゃんゆっくりたちが全て吊り下げられると、
ようやく、てゐは起き上がり、しわくちゃになった資料を片手に解説を始めた。
「えー、まず、この赤ちゃんれいむは・・・母親が寝返りで潰して死んじゃいました!!」
てゐは嬉しそうに笑う。
吊り下げられた赤ちゃんゆっくりは全て死骸だった。
それらの死因についててゐが詳しく解説するのだ。
それを目の前でやられる母ゆっくりたちはたまったもんじゃない。
大声でてゐを非難するが、にとりの作った拡声器で喋るてゐには無意味だった。

「次の赤ちゃん、こいつはバカだったんで親が育てるの放棄しちゃいました!!ヒドッ!!」
「で、この子は・・・溺死!!お母さんは水辺に近づかないよう教育してたぁ?」
「はい次、ああ、アリスとの間にできちゃった子ね。気に入らなかったんで事故に見せかけて殺そうとしたけどバレちゃったね!!」
「次も同じ。つーか、赤ちゃんアリスだけ殺して、赤ちゃんれいむは生かすって露骨だよねぇ」
「この子は・・・ああ、エサやりの兎を攻撃して逆に殺されちゃった子。恩を仇で返した結果がコレだよ」
「次、初めての育児でよく分からないうちに病気になって死んじゃった子。もう最後の方は親が現実逃避してて壮絶だったね」
「うわ、次のエグーい。眼球取れてるじゃん。姉妹にイジメにあって死亡。お母さんSOS受信できてた?」

当たり前の話だが、
赤ちゃんが10匹生まれて10匹全部大人になるまで育つわけではない。
それは別にゆっくりに限った事ではない。
だが、それは野生の事、
人の手が加われば状況が変わってくる。ましてや月の頭脳の手となれば。
しかし、ゆっくりは違った。
子を殺す親もいた。姉妹を殺す子いた。病気になす術もなく殺されるものも、
奇形が生まれ育児を放棄するもの、望まぬ相手の性行為で生まれた子を殺してしまう。
理由は様々、そもそも育児をしないものもいた。
子も子で愚かなのも多い。親よりも多い。
注意を聞かない。やってはいけないと言われた事をする。姉妹同士で喧嘩も日常茶飯事だ。

八意永琳は頭を抱えていた。
てゐにはミスを省みるように教育係に任命したが一向に結果が出ない。
そこで鈴仙を呼び出す事になる。

「え、お母さん達の指導役ですか?」
「そう、てゐのやり方じゃ何の進歩も無いわ」

鈴仙は嬉しそうにあれこれと用意していた。
水には少量の塩と栄養剤を混ぜ、赤ちゃんでも十分な栄養が摂取できるようにする。
高価だったが、自腹で木綿と布を買い込み、クッションを作る。
手作りのシャワーと水飲み場を作ってやる。これで川で溺れる心配なんてない。

それを見守る永琳はため息をつく。
「あれじゃ、指導役ではなく。あの子が母親をする事になるわね」
「いいじゃない」
珍しく下に降りて来ている輝夜が答える。
「仮初の親でも愛してくれるのは嬉しいものよ」
「・・・」
「昔の事よ。もうよくは覚えてないわ」
あなたがいればと輝夜は永琳の手を握るが、すぐ離してしまう。
そして、戸の方へ歩き出す。
「また今度、不届き者がいない夜に」
輝夜が戸を開けると、てゐが曲がり角を曲がっていくのが見えた。


「えーっと、今日からここでお世話をする鈴仙です。よろしく」
ゆっくり達は無視をする。
また来た。そう思ってるのだ。てゐの指導の成果がこれだ。
「あの子、何やったのよ」
そこへゆっくりまりさが駆けてくる。
「あ、ゆっくりしていってね!!」
ゆっくり流の挨拶で鈴仙が微笑む。
「ゆっくりできないやつだな」
「ち、違うわよ。私はみんなとゆっくりしたいのよ」
「ゆっくりでてけ」
ゆっくりまりさがそう言うと、他のゆっくり達も口を揃えていった。

そこへ、てゐが入ってくる。
「こんにちは、永遠亭兎主義労働錬金術部です。ゆっくり共を等価交換して饅頭を練成しにきました」
鈴仙が止める間もなく、てゐはゆっくりまりさに水鉄砲を発射する。
しかし、ゆっくりまりさもさっとそれを避ける。
「駄目だドク、当たらん」
二発目を発射しようとした時、鈴仙が身体を割り込ませ水からゆっくり達を守る
「ちょっと、てゐ、何やってるの!!」
「ちぃ、作戦は失敗だ。いつかお前らゆっくりをまとめて大量虐殺だ。いいな、この可愛くて強い兎がいなかったら、お前らなんてkill them allだ!!」
てゐは鈴仙を指差し一頻り喚くと部屋を出て行った。

「お、おねーさん」
鈴仙の周りにゆっくり達が集まってくる。
「まもってくれて、ありがとう。ゆっくりしていってね!!」
「かんちがいしてたよ。ゆっくりゆるしてね!!」
感謝の言葉や謝罪の言葉を言うゆっくり達を優しく撫でる鈴仙。



「良い事したわね。さっきの覗きは不問にしましょうか」
部屋の外でうろうろしているてゐに永琳は声をかける。
ばつが悪そうに、てゐは一枚の書類を提出してくる。
「まさか、鈴仙がもういるとは・・・」
自分に覚えの無い自分の名前で書かれたこの部屋のゆっくり達の処分命令書。
「不問にしましょうか」
てゐが笑う。
「いいえ、問い詰める事にしましょう」
永琳も笑う。


それから鈴仙の子育て指導は始まった。
丁寧に何度もそれでいて不快にならないように。
「おねえさん、あかちゃんがごはんをたべてくれないの」
「ああ、その草は赤ちゃんにはまだ苦いわ。このお花を食べさせてあげて」
「わかった。ありがとー」
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。
何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。何度も何度も丁寧に同じ事を教えた。



「変わらないわね。いいえ、あなたの頃より酷くなっているわ」
「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」
「ええ、そうね」
そう言って永琳は随分前に取り上げた書類を出してきた。
「書く手間が省けたわ」
そう言うと部屋の前にてゐを待たせ、それを鈴仙に渡すため部屋に入る。


「そ、そんな、待ってください。この子達の繁殖率の高さは」
「高いわ。他のどの実験室より」
「それなら」
「それはアナタがいるから、私が欲しいのは自立した繁殖場。アナタをここに取られ続ける事はできないわ」
「でも、処分なんて」
「・・・チャンスを与えましょう。あなたが退室してから二週間、子どもが10匹生き残れば、この命令は取り消すわ」


鈴仙が退室してから一日目、
すでに室内では酷い有様になっている。
いつも赤ちゃんに苦い草を食べさせていた親がまた同じ苦い草を食べさせている。
それと似たような事が部屋のあちこちで起こっている。
何度もイジメを仲裁した一家、今日は仲裁に入るものがいない。
赤ちゃんの扱いが雑なゆっくりアリス、今日も遊ばせると良いながら全く赤ちゃんを見ていない。
浮気性のゆっくりまりさは子を放って、部屋の隅でゆっくりパチュリーと行為に及んでいる。
何度注意しても子どものゆっくりまりさ達は川遊びをやめない。

「あなたはこれ以降見なくて良いわ。さ、別の仕事を与えるから私の部屋に行っていなさい」
鈴仙は力なく廊下を歩いていく。
「てゐ、観察は続けてね」
「別に殺してしまっても」
「約束は守りたいの。どんな形であってもね」

二日目、
赤ちゃんれいむは苦い草を食べずに吐き出す、それに母のゆっくりれいむは腹を立てる。
イジメはついに同属殺しに発展する。他の親たちは自分達に被害が及ばなければと誰も関与しない。
赤ちゃんまりさは遊んでくれない母であるゆっくりアリスに文句を言うが、それすら無視されてしまう。
ゆっくりまりさはまた育てられない子を乱造する。母体のゆっくりパチュリーは死に、まりさは別のゆっくりアリスにちょっかいを出す
子どものゆっくりまりさはついに今日、一匹が溺れ死んだ。


二週間ぶりに鈴仙は部屋の様子を見に来る。
今まで仕事に忙殺され、ここに来れる機会が無かったが、
そして、その光景を見ると鈴仙は言葉を失う。
何匹か親のゆっくりがどうにか生きているだけの状況、
エサや水の配給が滞った様子は無い。

「いじめを行っていた家族、あそこの子が他の一家のゆっくりを攻撃したのよ」
「・・・」
永琳は鈴仙を慰めるように手を頭に置く。
「苦い草ばかり与えられていた子が最初に攻撃されたわ。身体も小さいし、親の方もバカにされていて」
鈴仙は黙ってその言葉を聞く。
「そこからはもう親も含めての戦争状態。ちょうど五日目だったわ」
「私が」
「悲観的になる必要は無いわ。実験動物が死んだだけよ。例えば」

例えば山を歩けば、その靴の裏には幾万の蟲がいてそれらを殺している可能性がある。
お風呂で身体を洗えば、幾億の雑菌が死滅するだろう。

「それと何ら変わらない」
それでも鈴仙はばつの悪い顔をする。
「ごめんなさい、言葉が見つからないわ。さ、行きなさい。仕事があるでしょ?」
促すと鈴仙は押し黙ったまま、部屋を去る。


入れ違いにてゐが部屋に入ってくる。
「こんにちは、永遠亭兎主義労働錬金術部です。今度こそゆっくり共を等価交換して饅頭を練成しにきました」

すっかりてゐの事を忘れているゆっくり達はてゐに挨拶する。
「ゆっくりしていってね!!」
弱者は強者に奪われるために存在する、その命まで。
ゆっくり達は汚い言葉でてゐを罵ったが、何も意味がなかった。


巨大なフックに口を引っ掛けられ吊り上げられる。
生きたまま皮を剥がれ、餡子は綺麗な箱に収められていく。
髪が邪魔だと燃やされる者もいれば、毟り取られる者もいた。
逃げるのを防ぐため、眼球を抉り出し、上手く逃げれないようにされた者も、
逆に追いかけるのを楽しむために、二時間も逃げ惑わされる者もいた。

最後の一匹、ゆっくりまりさはぶるぶる震えていた。
ゆっくりまりさはフックにかけられた。
そして、皮を剥ぎ、餡子にされる。

可哀想とも無様だとも思わなかった。
ただ永琳はてゐにやらせると時間が掛かるから次からは別の兎にやってもらおうと思った。









〜あとがき〜
実験シリーズでの永遠亭各位のスタンスを示してみました
ちょっと鈴仙が可哀想ですが、どこかで何かに救われてると思ってください

by118




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最終更新:2008年09月14日 11:12
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