ゆっくりいじめ系889 頭

「……!……!」
「うん……?」
 何か音が聞こえる。それと、枕元から漂ってくる、妙な熱気で目が覚めた。
「んほおおおおおおお!!!」
「んぎっもっちいいいいいいい!!!」
「「すっきりーーーー!!!」」
「うおおおおおあああああああ!!!!」
 あまりのおぞましさに私は飛び起きた。

 そう、それは最近幻想郷に蔓延しているというゆっくりとかいう生物だった。人語を解し、その性質には不明な点も多いが押しなべて自己中心的で、人間に迷惑をかけて恥じないどころか増長するという噂は聞き及んでいた。
 聞き及んではいた、が……
 よりにもよってこの私の寝所へ侵入し、その上生殖行為にふけるだなんて。
 しかもよく周囲を見回せば、さまざまなものがこいつらに荒らされて散らかり放題になっている。
 許せない…。

「ゆっ!?おねえさん、どうしてひとのぷらいばしーをしんがいしているの?ばかなの?しぬの?」
 お前らは”ひと”じゃないし、プライバシーを侵害されてるのはこっちの方だ。
「れいむのおうちからゆっくりでていってね!!」
 ぷちん、と私の中で何かが切れた。
 いや、落ち着こう。こいつらとは会話にならないと聞いている。喩えるならば、オウムと本気で会話を試みるようなものなのだろうか。
 であるならば、自らの品格をおとしめるような真似はしたくない。
 私はため息をつき、気持ちを落ち着ける。
 あえて怒鳴りつけたり、出て行くように諭したりはしなかった。
 できる範囲で必要なことを速やかになす。
「ゆゆっ!!」
「だまってないでなんとかいったらどうなんだぜ!!」
「………」
 手で触れるのも嫌だったので、隙間を経由してご退場いただいた。



 エターナル冷やし饅頭 




 隙間から飛び出すと、そこはゆっくり達の以前住んでいた草原だった。
「れいむのゆっぐりぶれいずがあああ!!!」
「だぜえええええええ!!!」
 理由もわからないまま、ゆっくりぷれいすを失ったことに泣き叫んだゆっくり達だったが、五分とたたないうちに忘れて新たなゆっくりを開始した。
 そしていくらかの時間が過ぎる…。

「れいむのあかちゃん、ゆっくりそだってね」
「まりさのこどもでもあるんだぜ!ゆっくりうまれてくるんだぜ!」
 あの時、紫の家で身ごもった子が生まれようとしていた。
 いまや親となった二匹のゆっくりは、口々にやがて生まれてくるわが子へと話しかける。
 そしてついに、
「ゆゆっ!!うまれるよ!!」
「ゆっくりがんばるんだぜ!!」
 出産がはじまった。
「ゆ~っ、ゆ~っ…」
「がんばるんだぜ…れいむ…」
「ゆゆゆゆぅ~~っ!!!」
 産道が今までよりも大きく開き、ついに子供が生まれた。
 身体から出て行くわが子の重みを感じ、ついにそれが身体から完全に出きったことを確認したれいむは、大きく息をつき、出産の喜びと成功したことへの誇らしさを感じていた。
「まりさ……れいむがんばったよ……」
 伴侶であるれいむの方を見る。きっと笑い返してくれるだろうと思って。
 しかしその予想は裏切られる。
「おい……でてきてないんだぜ……?」
 まりさの真剣な表情から、それが嘘ではないと知れた。しかし、出産した側である自分は、身体から出て行くゆっくりとした感触も覚えているのだ。れいむは混乱した。
「うそだよ!!まりさ、あんまりわらえないじょうだんはゆっくりやめてよね!!」
「うそじゃないんだぜ」
 れいむはあたりを見回す。まりさも、れいむのいたあたりの草むらをゆっくりと調べる。
「あかちゃ~ん!!どこぉ~!!」
「はやくでてくるんだぜ~!!」
 生まれたばかりのわが子。
 これから二匹でゆっくりさせてゆくのだとずっと楽しみにしていた子供。
「う゛お゛お゛ーーーん!!!ま゛り゛さ゛の゛こ゛と゛も゛ぉ゛ぉ゛ーーー!!!」
「どごな゛の゛お゛お゛お゛お゛ーーー!?」
 その子は、ついに、見つかることはなかった。
 二匹は長い間ゆっくりともせずに探し回り、ついにどこにもいないと悟ったときには大声で泣き叫んだが、いつかそのことも忘れていった。




 私は冷蔵庫に見慣れないものがあるのを発見した。藍か橙かのおやつだろうか?私の知り合いと同じ顔付いてるんだけど…?
「ゆっ!ゆっ!おきゃあさん?」
「誰があんたのおかんか」
 と、その時不意に、その奇妙な物の来歴について思い当たった。
「ああ、そうだったわね、そんなこともあったわね」
 不愉快な出来事を思い出すことになったが、こうして対価は強制的に取り立てているので問題ない。
 納得したところで、何が嬉しいのかぴょんぴょん跳ねだした塊に爪を立ててみる。
「ゆぷぎぃぃぃっ!?にゃ、にゃにするにょおおおおお!!!!!」
「親の因果が子に報い、ってね」
 致命傷にならないよう、また食べ物として過度に見た目を損ねないよう、つんつんと爪の先で傷をつけていく。それだけでも塊は泣き叫ぶ。
「ゆっきゅりできにゃいよぉぉぉ!!!ゆっくりさせてよお!!!!」
「い・や・よ」
 あっ駄目、これ面白すぎる。爪攻撃だけでなく、つねって皮部分を少しだけねじりとってみたり。
「ゆ゛っ゛!!ゆ゛っ゛!!」
「あははははは」
 虐待趣味の人の気持ちが少しだけ理解できる。
 しかも、親よりはまだしも話を聞く能力がありそうなので、私は言い聞かせてみることにした。
「あなたのお父さんとお母さんが、私の枕元で勝手にゆっくりした結果がこれだよ!!ゆっくりできないまま食べられて頂戴☆」
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 その日、式神とその式神の式神には、おいしい冷やし饅頭が振舞われたという。
(ごめんね二人とも……私はあなた達の安全が確認されてからいただくことにするわ……)
 もちろん大変美味であり、なにも問題はなかった。
 紫は、あのゆっくりの産道にあたる部分に隙間細工を施し、自家の冷蔵庫へと繋げたのだった。
「ゆっくりは野生の動物やいじめ好きな人間に捕らわれてすぐに死んじゃうっていうけど、あの二匹にはできるだけ長生きして欲しいわね…」
 あれらが生きて子供を生み続ける限り、紫達は天然で新鮮な冷やし饅頭が食べられるのだから。




 あのゆっくり達は、理由がわからないまま何度も出産に挑戦した。
「ま゛た゛と゛っ゛か゛い゛っ゛ち゛ゃ゛っ゛た゛あ゛あ゛!!!!な゛ん゛て゛た゛め゛な゛の゛お゛お゛お゛!!!!!」
「れいむ、おちつくんだぜれいむ」
「も゛う゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!ゆ゛っ゛く゛り゛あ゛か゛ち゛ゃ゛ん゛う゛ま゛せ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」



 おしまい。

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最終更新:2008年09月20日 01:17
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