永琳×ゆっくり系25 人間になりたいれいむ

「おはよう」
「ゆっく・・・おはようございます」
八意永琳はゆっくりれいむを蹴り上げる。
「今、何か言った?」
「いってないよいってない」
「言っていません」
「いっていません・・・」

永琳は不愉快そうにれいむを睨む。
「注意なさい。それでなくても覚えが悪いんだから」
「ずいまぜんでじだ」
涙目になりながら謝罪するれいむに永琳は舌打ちをする。
「あなた、謝れば済むとか思ってないかしら?」
「ゆ?!」
「思ってるでしょ?私が教えた通りの謝り方をすれば許して貰えるって」
「ぞんなごどないでず」
「どうかしら?あなたのお仲間はみーんな怠惰でノロマ、バカで間抜け、そのくせ利己心は強いから」
「ぢがうよ!!れいむはぞんなのじゃないよ!!」
目に貯めていた涙はとうとうあふれ出る。
「ほら、また素に戻ってる。一人称も使えないの?もう謝らなくて良いわ。貴女の謝罪なんて今後一切受け付けないから」
「ごめんなざい・・・」
「私、無駄な事繰り返す子より理解の早い子の方が好きよ。貴女の謝罪なんて今後一切受け付けないから」
「・・・はい」
「それでいいわ。でも、私以外にはちゃんと謝るのよ。それは分かっているわね」
「はい」
永琳は部屋から出て行く。


どうして、こんな事になってしまったのか、ゆっくりれいむの毎日は後悔の毎日だった。
人間になりたい。そんな事を口に出してからだろうか、
それからおねーさんはれいむに人間になる訓練をさせた。挨拶の仕方や言葉遣いを叩き込まれた。
今のように怒られた事なんて一度や二度ではない。
それでも、ゆっくりれいむは人間になりたかった。


「ご飯よ」
部屋に兎が入ってくる。いつも来てくれる配膳係の兎さんだ。
「おはようございます」
「はい、おはよ。今日はトーストとベーコンエッグにポテトサラダとプチトマトよ。飲み物は牛乳でいい?」
「オレンジジュースありますか?」
「ええ、あるわよ」
「じゃあ、オレンジジュースをおねがいします」
お皿にオレンジオジュースが注がれる。飲みやすいように兎さんが用意してくれた少し深めのお皿だ。
「さ、召し上がれ」
「いただきます」
いつものようにできない食事。
前に「むーしゃ、むーしゃ」と食べたらいつもは優しい兎さんが突然れいむの事を蹴り飛ばし、
食事を下げてしまった。それだけじゃない。それから二日、食事の配膳がぱったり止まってしまった。
餓死する寸前になりかけて、人間はそんな事言わないときつく叱られた。
「美味しい?」
「はい、おいしいです」
「あなたはたくさん食べるから作りがいがあるわ」
食べ終わるとちゃんと「ごちそうさまでした」と言う。
「はい、お粗末さまでした」
「そんなことないです。おねえさんのごはんとってもおいしいです」
「ありがと」
そう言って兎さんは部屋を出て行く。
しばらくすると、人間になるためのお勉強が始まる。
ゆっくりれいむは少しずつだが、人間のルールやマナーを覚えていく。
そして、人間になる訓練は次のステップに入る。




「「ゆっくりしさせてね!!」」
部屋にはゆっくりまりさとゆっくりパチュリーが入ってくる。
それでもゆっくりれいむは「おはよう」と答える。

「むきゅ?れいむ、それはにんげんのあいさつだよ」
「れ・・・わたしはね。にんげんになるくんれんをしてるんだよ」
「にんげんになるくんれん?」
「そうだよ。にんげんのルールをおしえてもらってるんだよ」
そんな事、気にも留めずゆっくりまりさは部屋を見て回る。
「ゆー、ここはひろいおうちだね。まりさたちのゆっくりプレイスにしよう」
「ダメだよ!」
まりさの言葉にれいむが強く反発する。
「ゆ?べつにれいむもいっしょにすめばいいよ。でていけなんてゆっくりできないこといわないよ」
「むきゅー、まりさ、もともとここはれいむのものよ。れいむ、パチュリーたちもここでゆっくりさせてくれない?」
「そうだね。まりさ、うっかりしてたよ。れいむ、このおうちでゆっくりさせてね」
「ちがうよ。ここはえーりんおねえさんのおへやだよ。だから、わたしじゃなくて、えーりんおねえさんにきょかをもらってね」
まりさとパチュリーは辺りをキョロキョロ見回す。しかし、おねえさんなんてどこにもいない。
「だれもいないよ?」
「れいむ、そのおねえさんはどこにいるの?」
「いまはちょっといないけど」
「じゃあ、ここをゆっくりプレイスにしてもいいんだね!!」
まりさは不在を知るとニッコリ笑ってお家宣言をする。
「ダメだよ!!にんげんのルールじゃ、そんなことしちゃいけないんだよ!!」
まりさとパチュリーは顔を見合って笑う。
「むきゅー、れいむ、パチュリーたちはゆっくりだよ」
「ゆっくりがなんでにんげんのルールをまもらなくちゃいけないの?」
「・・・から」
「むきゅ?なに?」
「れいむ、はっきりといってね!」
「だから、おまえたちゆっくりはゆっくりできないんだよ!!にんげんのルールをまもらないからにんげんにころされちゃうんだうよ!!」
泣きながられいむは訴えた、侮蔑ではなく同情だった。
ゆっくりはどうして人間のルールを理解できないのか、理解すれば人間から暴力を受ける事もないのに。
「そんなのしらないぜ」
「まりさ、このれいむちょっとへんなのよ」
「ゆっくりできないんだね!!」
まりさの一言はゆっくりにとって最悪の悪口だった。
しかし、人間になりたいれいむにとってそれは些細な事だった。
同情が侮蔑に変わる。
「わたしはにんげんのルールをまもれるだけだよ」
「ゆっくりじゃないだね!!やーい、ゆっくりできないやつ!!」
「まりさ、れいむはあたまがへんなだけよ。あんまりいっちゃわるいわ」
まりさとパチュリーは心かられいむをバカにした。れいむはそれを哀れだと感じた。
「じゃあ、ここはまりさたちのゆっくりプレイスにするから、おかしなれいむはゆっくりせずにしんでね!!」


その時、部屋のドアが開き兎たちがまりさとパチュリーを取り囲む。
後からゆっくりと永琳が入ってくる。れいむをよくがんばったわ。と褒めてやり、
次にまりさとパチュリーの前に立つ。
「ここは私の部屋よ。れいむから聞いてない?ま、別に良いわ。ゆっくりとあまり長く喋るつもりはないし。やりなさい」
一方的に喋ると、兎たちは持っていた鈍器でゆっくりまりさ、ゆっくりパチュリーを撲殺する。
「やめで、れいむだずげで!!」
「むぎゅ!!だず・・・げで!!」
そういう悲鳴がれいむに届く。
しかし、れいむにとってそれは身勝手な者の身勝手な言い分だった。
れいむは制裁に積極的に参加はしなかったが、侮蔑の目でゆっくりの末路を見ていた。
ゆっくりではなく人間となった。
「よく頑張ったわね。辛く当たったこともあったけど。ごめんなさい」
永琳はれいむの頭を撫でてやる。
「おねえさん、ありがとうございました。わたしはにんげんになれますか?」
「ええ、人間にしてあげるはもう少しよ」


最後のステップ、
それは簡単な肉体改造だった。
胴付きのゆっくりれみりゃの研究の成果として、
ゆっくりに身体をつける技術は確立されている。
それをこのれいむに施す。そうすれば肢体を持ったゆっくり、
いや、れいむの場合、心は人間なのだから、人間が完成する。

手術は成功し、れいむは人間となった。
あとは手足を使った基本的な動作を練習すれば永遠亭で兎の補佐をする仕事が待っていた。
それをある程度こなせば、薬売りの兎の付き人をさせてもらえる。
れいむは心躍る。もう人間なのだ。そして、自分が目指していた生活がもう少しで。
もう少しで。れいむは消え良く意識の中でそう繰り返していた。もう少しで、もう少しで。


「もう少しだった」


スキマから伸びた手はれいむの首をへし折る。
珍しく焦りの表情を浮かべた八雲紫は八意永琳の胸倉を掴み捲くし立てる。
「何をしようとしたか理解してる」
「もう少しだったのに」
「人間とゆっくりの境界を、あなたは!!」
「八雲の姓を持つ者が、こんな不良みたいな事」
そう言って永琳は自分の胸倉を掴んでいる紫の手を払う。
紫はそれでも永琳を睨みつける。
ただならぬ雰囲気に兎たちはほとんど逃げ出している。
残ったのはたった二匹、心配そうに見つめる月の兎とあくびしながら聞いてる地上の兎だ。
「前に知能強化実験で作ったゆっくりまりさ。アレもあなたがまんまと殺してくれたわね」
「ええ、それが?」
「あんなもの幻想郷が滅ぶほどの綻びにはならないでしょ?今回のも。それともゆっくりが増徴する事に何か問題があるのかしら?」
「私が心配しているのはゆっくりが増徴することじゃない。人間に差別しているゆっくりと同等の存在になるかもしれない。その事実を見せないだけよ」
「なるほど、妖怪を恐れる人間がちっぽけになってしまえば妖怪も力を失ってしまう。そうなれば私や幽霊、神様の方が分があるものね」
その言葉に紫は構える。こんな行きずりで雌雄を決するのは不本意だけど。
永琳も受け入れるように構え、余裕のあった瞳から戦いに臨む瞳に変わる。



「双方、おやめなさい!!」


緊張の糸を切ったのは永遠亭の主である蓬莱山輝夜だった。
「八雲紫、こちらに妖怪を弱体化させるなどと言う意図はないわ。剣を収めてくれないかしら」
「二人がかり?そこの兎二匹も合わせれば、私に勝てるんじゃない?」
「いいえ、あなたが剣を収めなければ。私は貴女と共にこの者を討ちます。もし邪魔をするなら兎共々」
そう言って輝夜が指差したのは八意永琳だった。
「それで手打ちとさせていただけたら幸い。どうかしら」
「あなたの従者を葬って、あなたは何を守るの?」
「永遠亭の立場と兎たちの安全」
「・・・」
無言で頷き。紫は構えを解く。永琳もそれに応える。
「では、今後一切、人間とゆっくりの境界線を脅かすような実験を禁止します」
「分かりました」
輝夜の言葉に永琳は頭を下げ応える。
「永琳、少し疲れてる?こんな所にいないで私と遊びなさい。紫もイライラに効くお茶があるんだけどいかが?」
「そうね。お茶菓子もあるかしら」
「カステラかクッキー、あとパンケーキならすぐ焼けるわ」
「全部」
「太るわよ。さ、永琳も上でゲームでもしましょ。ポスタルっていう面白いゲームがあるの」
輝夜は地上に戻っていく。紫は少女は太らないもんと反論し、永琳は反論せずにそれに付いていく。
「鈴仙はハーブティー、てゐはパンケーキを焼いて頂戴。早く」
もしかして姫って凄い人かもと話していた鈴仙とてゐに命令が下る。
「あーもー、紫も永琳も喧嘩しないでよね。あー、疲れた。涼しい部屋でゲームしながら寝オチしたいわ」
あんまり凄い人じゃないかも。そう笑いながら鈴仙とてゐは台所に駆け込んだ。





「もう少しで」
れいむはスキマに吸い込まれていく。
そして、永いもう少しを死ぬまでそこで過ごした。
「もう少しで人間と遊べる」










~あとがき~
あーもー、もっとゆっくりを虐待したい。
頭の中に浮かんでくるのはこんなお話が多い。
ウェス・クレイヴン並みのスプラッターが書きたい!!!
紫&輝夜VS永琳はちょっと見たい。いや、かなり見たいな。
紫の能力を使えば蓬莱人は殺せるんだろうか、幽々子の能力では無理っぽいけど。
by118

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最終更新:2008年09月27日 13:43
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