ゆっくりいじめ系929 甘やかした結果

『甘やかした結果』




若草の萌える季節、桜も散った森の中を2mほどもある巨大なれいむが駆けていた。
頬は大きく膨らんでいて、そこに大量の食料が詰められていることが分かる。
明らかに巨大れいむ一人が食べきれる量ではなく、今は春なので冬篭りのための食料でもない。
この食料は娘のための食糧だった。


巨大れいむのおうちである広い洞窟の入口前で大小様々なゆっくりが遊んでいた。
巨大れいむが帰ってきたのに気づいた一匹の成体れいむが洞窟の中のゆっくりに「おひるごはんだよ!!」と呼びかける。
その声に洞窟の中でゆっくりしていたゆっくり達がゾロゾロと洞窟から出てきた。
それらはほとんどれいむ種で、まりさ種はれいむ種ほどではないがそれなりにいる。
成体のれいむ数匹は全て巨大れいむの娘だ。
成体のまりさは一匹だけだが、そのまりさが巨大れいむの娘たちに子種を与えたゆっくりだった。
まりさの子種を受けたれいむの産んだ子ゆっくりと赤ちゃんゆっくりが巨大れいむの孫ということになる。

巨大れいむが頬に貯めた食糧を地面に全部吐き出すと娘や孫たちは礼も言わずにガツガツと食事を始める。

「うっめ、めっちゃうっめ!!」
「はふはふ、ちょっとすくないけどしあわせー!」
「おかーしゃん、れいみゅもたべたい!!」
「れいむのごはんをわけてあげるね!」
「わーい、ありがちょう!!」

巨大れいむは自分などそっちのけで食事する娘たちを寂しげに見ていたが、やがておうちに戻ると深いため息をついた。
いつからこうなったのだろうか。
立派な成体ゆっくりの娘たちは未だに食糧調達に出かけようともせず独り立ちをする気配もない。
成体まりさも娘を孕ませたうえに半ば無理矢理おうちに住み着き、そのくせ一度も食糧調達には出かけていない。
これでも一緒に食べ物を探しに行こうと何度か誘った。
しかし「またこんどいくよ!」だとか「あかちゃんのせわでひまがないよ!」などと何かと理由付けて断られた。
赤ちゃんの世話と言うが、一番大変な食事集めの他に何があるのだろう。まりさは赤ちゃんと一緒に遊んでるだけだった。

孫の子ゆっくりや赤ちゃんゆっくりもそんな親に育てられたせいか、
食料は危険を冒して取りに行くものではなくて運ばれてくるものだと思ってる節がある。
そんな孫たちに教育しようとした時もあったのだが、

「れいむのかわいいこどもはれいむがそだてるよ!」
「おかーさんはそれよりもたべものとってきてね!!」
「おちびちゃんはこっちでゆっくりあそぼうね!!」

といった風に娘たちが邪魔してくるのだ。
孫たちも教育なんてつまらないことよりも娘の誘いに乗って遊びに行ってしまう。
そんなうちに孫たちはどこまでも甘えさせてくれるお母さんである娘に懐き、
何かと口うるさいお婆さんの自分に甘えるのは食事を持ち帰った時ぐらいのものだ。
それすらも最近は無くなったが。

おうちの入り口付近で駆け回ったり押し合いして遊ぶ娘達を見て巨大れいむは再びため息をついた。
巨大れいむは後悔していた。娘達を甘やかしすぎたことを。




産まれて間もない娘達の喜ぶ顔が見たい一心で巨大れいむは食料を集めていた。
甘えてくる娘達を受け止めて存分に甘やかした。
娘達が子ゆっくりに育っても、平均的なゆっくり家族のように子供と一緒に食べ物集めには行かなかった。
娘を危険な目に合わせるわけにはいかないと一人で食料を探しに出かけていたのだ。
娘達が成体と呼ばれるまで大きく育っても巨大れいむは娘を独り立ちさせずに世話をし続けた。
この時はまだ自分の育て方が悪いと思ってなかったし、事実として娘達はとてもゆっくり出来ていた。

そんなある日のこと、食料を集め終えておうちに帰ると一匹のまりさが娘達とゆっくりしていた。
巨大れいむは侵入者のまりさよりもまず、娘達の頭に茎が生えていたことに驚いた。
どの茎にもれいむ種とまりさ種の赤ちゃんが実っていた。
それはつまり、どこからともなく現れたまりさによって娘が孕まされたことを意味していた。
自分の居ない間におうちに侵入した上に、可愛い娘をも汚したこのまりさを許すわけにはいかない。
強い憤りを感じた巨大れいむはまりさをこの場で潰してやると身構えたが、

「このまりさはれいむたちをすっきりさせてくれたんだよ!」
「ゆっくりできるまりさだよ!!」
「おかあさんみてみて! あかちゃんができたんだよ!」
「まりさのおかげでゆっくりできるよ!!」

幸せそうに笑顔を浮かべて喜ぶ娘達を見ると、目の前でゆっくり殺しなど出来るわけもなかった。
かといってまりさに対する怒りが消えたわけではない。
怒鳴りつけたいのを抑え、極めて冷静にまりさへ話しかける。

「まりさ、こんなにたくさんのあかちゃんをうませたけどちゃんとそだてられるの?」
「もちろんそだてられるよ! だからきょうからここをおうちにするね!!」
「よろしくねまりさ!」「いっしょにあかちゃんそだてようね!!」

どうやら娘達とまりさの間ではこのおうちに住み着くことは決定済みらしい。
それは赤ちゃんを生やした娘のことを考えるとそれでいいのだが、
まりさの返答を聞く限りでは赤ちゃんの世話について深く考えておらず、何とかなるだろう程度にしか考えていないように見えた。
逆にそうでなければ「もちろんそだてられる」などと軽々しく即答できるわけが無い。
きっと後先考えず、性欲の赴くままに娘たちに子種を植え付けたのだろう。

そうしてまりさはおうちに住み着き、次の日には赤ちゃんゆっくりが産まれ落ちた。
娘全員から5~10匹産まれたので相当な数の赤ちゃんでおうちは満たされた。
窮屈に感じられたが、元々広い洞窟なので生活するのに不都合はなかった。
それでも跳ねるときは赤ちゃんを潰さないように細心の注意が必要になったが。

「おばーちゃんゆっくちしていっちぇね!」
「おばーちゃんいっしょにゆっくりちようね!!」

と身体を摺り寄せてくる孫はとても可愛くてゆっくりできていた。
だが同時に、この可愛い孫達のために大量の食べ物が必要だと思うと不安が募るばかりだった。
念のために貯蓄しておいた食べ物だって二日と持たないだろう。
なので巨大れいむはまりさに食べ物集めを手伝うようにお願いしたのだが、

「まりさはあかちゃんのせわするからむりだよ! またこんどね!」

と断られ、娘や孫達には

「おかーさん、あかちゃんのたべものおねがいね!」
「がんばってねおかーさん!」
「ゆっくりまってるよ!!」
「ほら、あかちゃんたちもおねがいしてね!」
「「「おばーちゃん、ゆっくちたべものちょーだいね!!」」」
「まりさのぶんもわすれないでね! おおめにね!」

と頼まれた巨大れいむは可愛い娘や孫達の頼みならば仕方ないと一匹で食料調達に出かけた。
最後のまりさの頼みにはイラっと来たが、怒りを露にして赤ちゃん達を怯えさせるのも良くないと思って我慢した。
明日には一緒に食べ物を集めてくれるだろう、そう信じて巨大れいむは食べ物を集めた。
しかし次の日も、また次の日も、そしていつまで経ってもまりさも娘達も食べ物集めを何かと理由付けて手伝ってくれなかった。

そうしている間に赤ちゃんゆっくりは子ゆっくりサイズにまで成長した。
それぞれ食べる量も多くなり、巨大れいむ一匹で集めた食料だけではもう足りなくなっていた。
なので娘達には子を連れて引越ししてもらおうと思ったが、その旨を伝えようとした矢先に娘達とまりさはまた次の赤ちゃんを産み出していた。
これ以上赤ちゃんが増えると食べ物が足りなくてゆっくり出来ないからすっきり禁止と伝えていたのにも関わらずだ。
当然巨大れいむは娘達を責めたが、

「かわいいあかちゃんをみるとゆっくりできるよ」
「すっきりをがまんしたらゆっくりできなかったよ。だからすっきりしたんだよ」

などと訳の分からない言い訳が返ってきた。要は自分勝手な理由で赤ちゃんを産んだのだ。
さすがの巨大れいむもこれには呆れるしかなかった。
娘達はまた可愛い赤ちゃんが産まれたと、孫は妹が出来たと喜んでいたが、巨大れいむは全く嬉しくなどなかった。
確かに目の前の赤ちゃん達はとてもゆっくりした赤ちゃんで愛らしい。
しかしながら巨大れいむにとって赤ちゃんはこの状況下において負担でしかないのだ。




それから三日経った今、巨大れいむはこうして溜息をついているわけである。
巨大れいむは二度目の赤ちゃんゆっくりが産まれてからはほとんど休まず食料調達に出かけた。

朝は日が昇る前から出かけ、
昼は娘達に集めた食べ物を渡すと十分ほど休んでまた出かけ、
日が暮れる前に戻って疲れを取るためにすぐ眠りに付く。

ゆっくりする暇なんてとてもじゃないが無かった。
しかし疲れが溜まっていたのだろう。
娘の育て方に後悔して溜息している間に巨大れいむは深い眠りについてしまったらしい。
目が覚めると夕暮れ時だった。
本来なら夕食を持ち帰ってきているはずの時間だ。
だが昼寝をしてしまったので当然食べ物などあるわけが無かった。

「ゆ…ゆっくりねたけっかがこれだよ…」

初めは焦った巨大れいむだったが、一食ぐらい抜いても大丈夫だよねと結論付けた。
何よりも今日まで毎日休まずに食べ物を探しに出たのだ。半日ぐらい休んだっていいはずだ。
ところが夕飯は運んでもらうのが当たり前の娘や孫達からすればそんなの勝手な理由でしかない。
巨大れいむはおうちに勢揃いした家族達に口々に文句を言われ、責められた。

「なにかんがえてるの! あかちゃんがおなかすいてるよ!!」
「れいむもいっぱいあそんでおなかすいてるんだよ!」
「これじゃゆっくりできないよ! おばーちゃんはゆっくりできないね!!」
「おなかちゅいたよ! おかーちゃんたべものはー?」
「ほら! おかーさんがさぼるからゆっくりできないよ!!」
「まりさはおこってるよ! やることやらずにゆっくりしないでよね!」

「ゆ"…」

なんでここまで怒られるのか全く分からなかった。
毎日ゆっくり遊んでるだけのくせにどうしてそんな事を言えるのだろう。
今までゆっくり出来たのは自分がゆっくりせずに頑張ってきたからだ。
それなのにちょっとゆっくりした結果がこの罵詈雑言の嵐である。
夕食を用意出来なかったのは確かに悪かったとは思ってる。
だがここまで言われるような悪い事をしたのだろうか。
何も一食抜いたぐらいで死にはしないし、我慢できなければ周囲の草木を食べれば十分のはずだ。
だからこそいつまでも続く娘や孫達からの罵倒に巨大れいむはイラつき始めていた。

「おかーさんはほんとつかえないね!」
「さいきんはたべものすくないし!」
「そうだよ! さいきんおなかいっぱいになれてないよ!!」

(それはあかちゃんをふやすからとりぶんがへったんだよ)

「こどもとあかちゃんがおなかすいてゆっくりできないよ!」
「たくさんたべものもってこないからだよ!!」
「おばーちゃん、おなかちゅいたよ!!」
「たべものもってこないおばーちゃんはきりゃいだよ!!」

(たべものもってるときだけあまえてくるおまえたちなんてれいむもすきじゃないよ)

「たべものもってくるぐらいちゃんとしてよね!」
「なんでそんなこともできないの!」
「れいむたちでもやればできることだよ!?」

(やったこともないくせにかんたんなんてよくいえるね)

「ほんとだめなおかーさんだね!」
「まりさもゆっくりしてないでなんかいってよ!!」
「ゆ! まりさはあたまいいからしってるよ!
 しごとしないならゆっくりするけんりはないんだよ!!」

(そうだよね。たしかにまりさのいうとおりだよ。
 しごとしないならゆっくりするけんりなんてないよね)

「ゆんっ、こんなおおきいだけのむのうなれいむはしんでね!」

まりさがニヘラと笑顔を浮かべて体当たりしてきた。
まりさの頭の中では巨大れいむを吹き飛ばす光景が見えているのだろう。
巨大れいむは微動だにせず、可哀想なぐらい軽い体当たりを悠々と受け止めた。
そして間髪入れずにまりさに噛みつき、歯で締め上げた。

「ゆ"っ!? あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」

まりさは巨大れいむの歯に挟まれ、痛みに悶える。
だが体に食い込むほど強く噛みついているのだから逃げられる訳もない。
出来ることと言ったら、外に出てる口で必死に悲鳴を上げるぐらいだ。

「なんでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!!」
「まりざをはなじでえぇぇ!!」
「おがーさんひどいよぉぉぉぉ!!」

周りの娘達が何だか煩いのでまりさを離してやることにした。
ペッと唾を吐き出すのと同じ要領でまりさを地面に吐きだした。

「ゆぎっ! ゅ"、ゆ"ぅ"…」

地面に落とされたまりさは体をガクガクと震わせ、大粒の涙を流しながら這いつくばっていた。
歯形が残っているとはいえ普通のゆっくりならこの程度の痛みでここまで苦しむことはない。
だがゆっくりしすぎたまりさは痛みに慣れておらず、大袈裟なほど苦しんでいた。
つい数秒前まで生意気言っていたくせに今は惨めでしかなかった。

「まりさー!」
「ゆっくりだいじょうぶ?」
「いたいのゆっくりとんでってね!!」
「おかーさん! まりさになにするの!!」

まりさに駆け寄った娘たちはまりさを庇うように巨大れいむの前に立ちはだかった。
何で目先のゆっくりやすっきりしか見えないまりさを庇うのだろう。
元はと言えばこのまりさが娘たちをすっきりさせなければ食べ物に困らなかったし、
このまりさが食べ物集めを手伝ってくれれば食糧事情も少しは楽になったろうに。
いや、この娘たちはそんなの分かってないのだ。
娘たちはこのまりさと同じで目先のゆっくりしか見えていない。
そしてこんな娘に育てたのは他でもない自分だ。

ああ、そうか。
そこまで考えた所で巨大れいむはようやく理解した。
これまで娘たちを甘やかしていたからこそ自分がゆっくり出来てなかったということに。
娘たちが子供を連れて引っ越さないのも、

まりさがいつまで経っても食べ物集めを手伝わないのも、
自分が文句も言わず、叱りもしない結果だったんだ。


「あまやかしたけっかがこれだよ…」

「ゆ? なにいってるの!」
「そんなことよりまりさにあやまってよね!!」
「あとたべものもいまからでいいからとってきてよね!」

俯いていた巨大れいむは口の減らない娘たち、そして孫達を強い意思の宿った瞳で睨みつけた。
その強い視線に娘達も孫も、そして呻くだけのまりさも目を合わせられず黙り込んだ。
そして巨大れいむは娘達に告げる。

「ゆっ、きめたよ。
 れいむはもうみんなのためにたべものをはこばないよ。
 あしたからはじぶんでたべものさがしてね」

巨大れいむはようやく決心したのだ。
もう娘たちの世話はしない。
これからは娘たちに娘たちの家族を養わせる。
まりさには特に働いてもらおう。
何しろこれだけの子供や赤ちゃん達共通の親なのだから。

「たべもののおおいばしょはおしえてあげるからがんばってね」

「ゆっ! まってよ!!」
「そんなのなんでれいむたちがやらなきゃいけないの!!」
「そうだよ! たべものなんておかーさんがもってくればいいでしょ!!」
「さぼろうとするなんてゆっくりできてないね!!」

「やるきがないならおうちからでていってね。
 しごとしないゆっくりはゆっくりするけんりはないよ」

「なにいってるの!」
「れいむはおこったよ! あかちゃんだっているんだよ!!」
「でてくならおかーさんがでてってね!!」

「とにかくきめたことだよ。
 れいむはでていかないし、おまえたちがみんなのせわをすることもかわらないよ。
 ゆっくりりかいしてね」

その後もゆーゆーと煩い娘たちだったが、
日が完全に暮れて真っ暗になると一匹、また一匹と眠りについていった。
まりさはその間もずっと痛みで泣いていた。異常なほど打たれ弱いまりさだ。
そこまで確認して巨大れいむも眠りについた。





翌朝。
日が昇り始めたころに巨大れいむは目を覚ました。
娘たちは今までかなりの遅起きだったようだがこれからはそうはさせない。
食糧調達に出かけてもらうまりさと娘たち、さらには子ゆっくり達を舌でつついて起こした。

「ゆぅ、なに? なんなの?」
「おばーちゃん、にゃんなの? じゃまちないでね…」
「まだおきるじかんじゃないよ。ゆっくりねさせてね」
「ねむりをじゃまするなんてゆっくりできないね!」

「たべものさがしにでかけてね」

「なにいってるの? ばかなの?」
「それはおかーさんのしごとで…ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!?」

巨大れいむは一匹の娘に噛みつくとおうちの外へと投げ飛ばした。
そして他の娘たちも次々と投げ飛ばす。

「なにするの! まりさのれいむにらんぼうしないでね"っ!?」

もちろんまりさも投げ飛ばした。
娘たちよりも気持強めに噛みついておいた。

「い"だい"ぃ"ぃ"!! まりざにもらんぼうじないでぇぇぇ!!」
「いたいのがいやならたべものさがしにいってね」

まりさも娘たちも震えて泣きながら頷いた。
痛みに慣れてないのは娘たちも同じで、体罰はよく効いたようだ。

「あかちゃんはれいむがせわみてあげるからほかのみんなはたべものさがしてきてね」

赤ちゃんはまだ外に出すつもりはない。
赤ちゃんの仕事はゆっくり育つことなのだから。
しかしこれで面白くないのは赤ちゃんではない子ゆっくりだ。

「なんでれいむもいかなきゃいけないの!」
「いもうとはなんでいかなくていいの!?」
「そうだよ! おばーちゃんずるい!!」

妹である赤ちゃん達はゆっくりしていいのに姉である自分がダメなのか分からないらしい。
いや、この環境下で育った子供達が分からないのも当然か。
しかしだからといってここで甘やかしたら自分の娘のように働かないゆっくりに育ってしまうかも知れない。
巨大れいむとしては自分の犯した過ちを繰り返したくなかった。
といっても小さい孫に娘と同じような体罰は出来ない。
自然と外に行きたくなるよう説得することにした。

「ゆっ! だいじょうぶだよ。
 おかあさんについていくだけだからゆっくりできるよ。
 ゆっくりぴくにっくしてきてね」

「ゆ? ゆっくりできるの?」
「おかあさんとぴくにっく? ゆっくりできそう!」
「ゆーん! おかーさんゆっくりいこうね!」

「ゆ、ゆん…ゆっくりいこうね」

実の娘が自分とのピクニックを楽しみにする姿を見た娘たちは諦めがついたようだ。
むしろ子供の様子を見て外に出かけるのもいいかもと思ったのかもしれない。

「ゅー? れいみゅたちはどうしゅればいいの?」
「ゆっきゅりまってればいいの?」
「まりしゃもおかーしゃんといっしょにいきたいよ!」

「おちびちゃんたちはおるすばんだよ。
 おかーさんがたべものもってきてくれるからあんしんしてね」

「ゅゅー! おかーしゃんがもってきちぇくれるの!」
「ゆっきゅりたのしみ!」
「いっぱいもってきちぇね!!」

「ゆ! わかったよれいむのあかちゃん!」
「ゆっくりまっててね!!」

赤ちゃんの声援のおかげで娘達はやる気が湧いてきたようだった。
これは良い傾向だ。
どうなるかと思って不安だった巨大れいむも今は胸のつかえが取れたような清々しさを感じていた。
その後は赤ちゃんと共に娘たちとその子供、それとまりさを見送った。

「おひるにはかえってきてね!」
「おかーしゃんまっちぇるよ!!」
「ゆっくりいっぱいもってきちぇね!!」

「ゆっ! あかちゃんのためにがんばるよ!!」
「ゆっくりまっててね!」

娘達は赤ちゃんの応援を受けて嬉しそうに駆けていった。
食べ物のある場所はすでに教えてある。
そう遠くは無いし、あそこは外敵もいないから大丈夫だろう。
ただひとつ心配なのはまりさがずっと乗り気ではなさそうだったことぐらいか。



だが今までゆっくりし続けていた娘たちは巨大れいむが思っていたよりもゆっくりしすぎていた。
お昼過ぎになっても帰ってこなかったのだ。
そうなれば当然赤ちゃん達はお腹を空かせて喚きだす。

「おばーちゃんおなかへっちゃよ!」
「おかーしゃんがかえってこないよ? どうちたのー?」
「おなかがへってちからがでにゃいよ!!」

「ゆぅ…」

一体どうしたというのだろうか。
お昼に戻るように確かに伝えたはずだ。
それに娘達は赤ちゃんのためにやる気を出していた。
もしや外敵に襲われたのだろうか? それとも何か事故でもあったのだろうか?
巨大れいむは娘の身に何かあったのかと大きな不安に襲われた。
良かれと思って娘達を外の世界に行かせたことは間違いだったのか。

しかし悩んでいても赤ちゃん達のお腹は膨れない。
仕方ないので赤ちゃんを連れておうちの周りにある草木を食べさせた。
非常食であり隠れ蓑でもあるのでなるべく食べたくないが、赤ちゃんをこれ以上飢えさせる訳にもいかなかった。
そうして赤ちゃんのお腹が膨れたが、その後も娘たちは帰ってこない。
赤ちゃん達が不安がって泣き出したりもしたので巨大れいむはその対応に追われた。



だが夕方になると娘達は巨大れいむの心配をよそに満足そうな顔して帰ってきた。
娘もその子供達もみんな無事のようだ。
巨大れいむは安心したが一応どうしたのか聞くことにした。

「ゆ! どうしてひるにかえってこなかったの?
 あかちゃんがおなかすかせてたいへんだったんだよ」
「ゆ、ゅー…」

何ともばつの悪そうな反応をする娘たち。
そういえば夕食のための食べ物を持っていないようだった。

「それにたべものはどうしたの?
 これじゃあきょうもゆうしょくぬきになるよ?」

途中で誰かに取られたのだろうか? それとも迷った?
巨大れいむはいくつかの答えを予測していたが、娘達の答えはその中でも一番最悪のパターンだった。

「ゆっ、ゆっくりわすれてたよ!」
「でも、でもしょうがないよね!! こどもたちとあそんでたんだよ!!」
「みんなでかけっこしてあそんだんだよ!!」
「そうだよ! それにれいむたちはたべものちゃんとたべてこれたんだよ!!」
「れいむたちはよるごはんをたべてきたからだいじょうぶだよ!」
「あかちゃんはゆっくりがまんしてね!!」

「ゅー! おかーしゃんおなかしゅいたよー!」
「にゃんでたべものもってきちぇないのぉぉ!!」
「これじゃゆっきゅりできないぃ!!」

「うるさいよ! おうちでゆっくりしてたあかちゃんはゆっくりだまってね!」
「おなかすいたならじぶんでとってきてよね!!」

ああ、何という。
何というバカ娘なのだろう。
巨大れいむは嘆くほかなかった。
言い訳ばかりで一番守るべき赤ちゃんに八つ当たりまでするなんて。
巨大れいむは口で叱るよりも前に娘達とまりさに対して次々とその巨体をぶつけていた。

「ゆっくりはんせいしてね!!」
「ゆぎぃっ!!」
「ゆぎゃ!」
「なにずるの…ぁ"ぅ"っ」
「ま、まりさはわるくないよ! わるいのはれいむうぅ"ぅ"ぎい"ぃ"ぃ"ぃ"っ!!!」

「おまえたちはおやとしてさいていのことをしたんだよ!!
 じぶんがゆっくりできればあかちゃんがゆっくりできなくてもいいの!?」

おうちに響く巨大れいむの怒声。
続くのは怒られた娘たちの、そして怒声に怯えた孫達の泣き声だった。
しばらくして娘達は泣きながら謝罪を始めた。

「ゆっくりごめんなざい"ぃ"!」
「あかじゃんごめんね"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
「れいむだちがぜんぶわるいのぉぉ!!」

わんわん泣きながら娘は赤ちゃん達に謝った。
赤ちゃんも泣きながらお母さんに擦り寄っていた。
仲直りしたのはいいことだが赤ちゃん達の夕食が無いことに代わりはない。
どうしようかと巨大れいむが思案していたその時だった。

「ゆっ! もうこんなゆっくりできないところにいられないよ!!
 ゆっくりできないれいむたちはみんなしんでね!!!」
「ゆっ? どういうことまりさ!!」
「おまえたちのせわなんてかんべんだよ!
 まりさがゆっくりできないならこんなところにいてもしょうがないよ!!!」

ただ一匹謝らずに不貞腐れていたまりさがそんな叫びと共におうちを飛び出した。
巨大れいむはまりさを追う。
ただの癇癪なのかもしれないが、このまりさは妻と子供を見捨てようとしているのだ。
逃がすわけにはいかない。



まりさは逃げながら考えていた。

こんなはずじゃなかった。
まりさがあのおうちに忍び込んでれいむ姉妹と出会った時に聞いたのだ。
あの親の巨大れいむが全部の世話をしてくれる。食べ物も全部運んでくれるからゆっくり出来ると。
だからこそあのれいむ姉妹と乱交した後に立ち去らず、そのまま居残ったのだ。
妻や赤ちゃん達に囲まれて王様気分だったのに突然巨大れいむが食べ物集めろなんて変なこと言いだした。
なんで他のゆっくりのために働かなきゃいけないのか分からない。
赤ちゃんがどうとかあの巨大れいむは怒っていたが、赤ちゃんなんてまた作ればいいだけ。
所詮他のゆっくりは自分がゆっくり出来るための道具なんだ。

ああ、でももういいや。
もうあんなゆっくり出来ないゆっくり達とは別れてもっとゆっくり出来るパートナーを探すとしよ――――

まりさがれいむ家族との決別を決めたその瞬間。
まりさの背後から圧倒的な質量が圧し掛かってきた。
そして次の瞬間にはまりさの体は宙を飛んでいた。

(おそらをとんでるみたい)

吹き飛ばされたまりさはそんな危機感のないことを思いながら真っ直ぐ飛んでいく。
直後木の幹にぶつかってまりさの意識は途絶えた。




巨大れいむは気絶したまりさを咥えるとおうちへと持ち帰ることにした。
まりさに追いつくのは簡単だった。
体長の違いもそうだが、毎日娘や孫のためにあちこちを駆けていた巨大れいむとほとんど運動していなかったまりさとでは運動能力に差がありすぎた。
怒りにまかせてその場で潰してしまうことも考えたが、そんなんじゃ巨大れいむの気は収まらなかった。

おうちへ戻った巨大れいむはまりさをおうちの中央に置いた。
痙攣して気を失っているまりさを憎しみの篭った瞳で睨みつける娘と孫たち。
共通の夫、共通の親であるまりさが自分たち放って逃げようとしたのだ。恨まれて当然である。

巨大れいむはまりさの処罰について考えていた。
まりさをもし許したとしてもまたすぐに脱走を企てるに違いない。
許さないのは決定でいいとしてどうしたものだろう。
と、そこへ一匹の赤ちゃんが言葉を漏らした。

「おかーしゃんおなかしゅいたよ」

自分の空腹を自分の母親に伝えただけなのだろうが、巨大れいむはその言葉を聞いていいことを思い付いた。
この憎たらしいまりさに相応しい最後。それでいて実益のある処刑を。
食べ物を取ってこなかった罪、裏切った罪はその身で払ってもらえばいいのだ。
巨大れいむはうっすらと笑みを浮かべながら赤ちゃん達に話しかける。

「ねぇ、あかちゃん。たべものなら、あるよ」

「ゅ? どきょ?」
「ゆっきゅりたべものちょーだい!!」
「おばーちゃんだいちゅきー!!」

「たべものはね。これだよ」

巨大れいむは舌でまりさを示す。
頭の上に"?"を浮かべた家族だったが、
巨大れいむの考えが徐々に理解できた家族の顔が青ざめていく。
そして震えた声を出す。

「ゅ…でも、これ、まりさだよ?」
「まだ…いきてるよ。いきてる、まりさだよ…?」
「まりしゃおかーしゃんはたべものじゃないよ!」
「おかーさん…? なに、かんがえてるの…」

「まりさはたべものとってこなかったよ。だからまりさはたべものになってもらうよ」
「で、でも…」
「まりさをたすけたいの? このまりさはみんなをうらぎったんだよ?
 そんなまりさはたべられてとうぜんだよね?」

巨大れいむの真っ黒な瞳が娘たちを映した。
まるで捕食者に睨まれているような気分だった。
この提案を断ったら自分も食べ物にされるんじゃないかという恐怖が娘達を襲う。

「あ、あかちゃん。まりさを、まりさをたべてね!」
「ゅ? でもまりしゃおかーしゃんは…「いいからゆっくりしないでたべてね!!」
「ゅゅーっ! た、たべりゅよ!!」

母への恐怖が娘を突き動かした。
娘たちは怯えた声で赤ちゃんに親食いを命じた。
数十匹の赤ちゃんは親に従ってまりさの体に被さった。
そして小さな口で啄むようにまりさを食べていく。
少しずつ少しずつ食べられていく痛みにまりさは不幸にも目を覚ました。

「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!? い"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」

全身至る所を噛み千切られる痛みに悲痛な叫びをあげる。
体を転がして痛みの原因を取りはらおうとするが、赤ちゃんが数十匹纏わりついているのだ。
力が弱く根性も無いこのまりさは身動き取れずにいた。

「なんでぇぇぇ!! なんでまりざをだべるのぉぉぉぉお!!!?」
「まりさはいったよね。
 しごとしないならゆっくりするけんりはないって」
「ゆぎっ、ゆぎゅぶぉおぉおぉぉごおぉ!!!」

口を開いた結果、上唇も下唇も別の赤ちゃんに噛みつかれたようだ。
話しかけた巨大れいむの方に視線を向けているので一応聞いているのだろう。

「まりさはまいにちゆっくりばかりでしごとしなかったよ。
 あかちゃんがふえてもゆっくりあそぶだけ。
 きょうもたべものわすれてゆっくりあそんだんだよね?」
「おごおぉぉぉ!! ぼぎょっ、ぼごっ……!!」

まりさは涙をボロボロ流して巨大れいむに助けてとアイコンタクトで訴えかける。
開いた口から数匹の赤ちゃんが入りこんで、口の中からまりさは食べられていた。
歯茎の辺りなど美味しいのか剥がすように食われていた。
さらにまりさの片目は赤ちゃんの小さな口でちまちまと齧られている。
もう片方の目もそろそろ噛みつかれるだろう。

「でもまりさはさいごにこうしてしごとができたよね」
「………」
「たべものはもってこなかったけど、たべものになってくれたね」
「………」

まりさはもう口内をことごとく食い荒らされて喋れない。
眼球は瞳から食い破られ、中身を吸われるように食されてもう何も見ることが出来ない。
音だってもう聞こえないのかもしれない。
娘たちやその子供はおうちの隅で泣いて震えながらその惨状を見ていた。
巨大れいむもまた、心がすっきりするのを感じながら黙って見ていた。

「むーちゃ、むーちゃ、ちあわせー!」
「まりしゃおかーしゃんおいちーね!!」
「ゅゅー、こっちもおいちーよ!!」

おうちの中には善悪の無い赤ちゃんによるまりさの味批評の声と咀嚼の音、あとは娘達のすすり泣く声だけが響いていた。


それから時間にして30分程度だろうか。
まりさは数十匹のプチトマトサイズの赤ちゃんに非常にゆっくりと食べられた。
ハーレムの王を気取っていたまりさは僅かな食べかすと帽子を遺してこの世からいなくなった。
赤ちゃん達は満腹になってスヤスヤとお休みモードだ。
罪悪感なんてないのだろう。とても満足そうな表情を浮かべている。

娘たちと子ゆっくり達はというとゆっくりの捕食シーンを目の当たりにして怯えていた。
何よりも巨大れいむに怯えていた。
確かにまりさが自分たちを見捨てようとしたのは許せない。
でもそれに対する罰は袋叩きにして追放する程度だと考えていた。
しかしお母さんである巨大れいむはどうだ。
お腹を空かせた赤ちゃんにまりさを食べさせたのだ。それも生きたままのまりさを。
そんなことをさせるお母さんが何よりも恐ろしく、身の危険すら感じていた。

対して巨大れいむはドス黒い快感にすっきりしていた。
あの憎いまりさが自分の赤ちゃんに食べられて体の崩れていく様はこの上なく興奮できた。
何だか物足りない気もしたが、これで赤ちゃんも満腹になれたし働かないまりさもいなくなった。
娘たちも反省しているようだし全てが上手くいったんだ。
巨大れいむはそれを確信し、幸せな気分のまま眠りについた。





翌朝、娘と子供達は昨日と同じように食糧調達に出かけた。
巨大れいむと赤ちゃん達は笑顔で見送ったが、娘達は二度と帰ってくることは無かった。

遊び呆けて赤ちゃんの世話を忘れた昨日とは違った。
恐ろしい母とはもう居られない。
生きていたまりさを食べ、同種の味を知った赤ちゃんも連れていきたくなかった。
それゆえに子を連れて旅立ったのだ。
こうして甘やかされた娘達は巨大れいむの意図しない形で独り立ちを果たした。
子と共に食糧調達に出かける楽しみを知った彼女たちはもう大丈夫だろう。
きっと野生に生きるゆっくりとして生き、野生に生きるゆっくりとして死ぬのだ。



一方おうちに残るのは巨大れいむ一匹になっていた。
辺りには孫の赤ちゃんの名残である飾りが散らばっている。

巨大れいむが食べ物を探しに出かけている間に赤ちゃんは共食いを始めた。
生きたまりさを食べさせたのが間違いだった。
同種の味を知っただけでなく、悪いことをしたゆっくりは食べ殺してもいいと勘違いしたのだ。
お腹の減った赤ちゃんは巨大れいむが出かけている間にちょっとしたことで姉妹を悪者に仕立て上げた。
それは「ぶつかってちょっといたかった」とか「じぶんのおもちゃ(小石)をとった」だとかほんの些細なことだ。
そしてお互いに悪いゆっくりを食べた。
そしておうちに戻った巨大れいむに最後に残った赤ちゃんが噛みついた。
巨大れいむはそれがまりさ種だと確認すると、自分の顎に食いつく赤ちゃんまりさをそのまま壁に押し付けて潰した。



巨大れいむは深い溜息をつく。

自分はどこで間違ったのだろうか。
甘やかした娘達を更生させようとした結果がこの孤独だ。
寄生虫のようなまりさは処刑してやった。
なのに娘達は食べ物を探しに行ったきり行方知れずになった。
そして孫達はどうしたことか共食いして全滅した。

ああ、なんということだろう。
結局自分は家族を崩壊させてしまっただけじゃないか。
取り返しのつかないことをしてしまったと巨大れいむは嘆いた。


だが巨大れいむは気付いていなかった。
娘達は形だけではなく本当の親としての第一歩をしっかりと踏み出せていた。
その点で言えば巨大れいむは間違ってなかったのかも知れない。
しかし巨大れいむがそのことに気づくことは永遠にない。
結局巨大れいむは死ぬ間際までどこで何を間違えたのかと後悔し続けた。






by ゆっくりしたい人


巨大れいむに運命の分岐点があるとすれば逃げたまりさに追いついた時。

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最終更新:2008年09月28日 15:09
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