ゆっくりいじめ系985 みんなのゆっくり神社

博麗神社にお参りに行った帰り、林道を歩いていると妙な祠を発見した。
太い木の枝や葉っぱを組み合わせて作った小屋に、ゆっくりれいむが一匹収まっている。
そしてその前には、格子状の蓋のついた木箱。
ゆっくりに複雑な工作など出来るわけないから、人間の作り損じでも拾ってきたのだろうか。
手前には枝を組んで作られた小さな鳥居?があり、ゆっくりがくぐれる程度の大きさだ。
祠に収まっているれいむと目が合うと、得意げな笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「おにいさん!!とってもありがたいゆっくりじんじゃだよ!!
 ゆっくりしていってね!!おさいせんをゆっくりちょうだいね!!」

こんなことを言い出す。神社の巫女さんを模したゆっくりであることは解っていたが、
本物の真似事まで始めるとは。しかしゆっくりを崇めてもありがたいどころか、運気を吸われそうな気がするぞ。
でもまあ、ゆっくりがこんなことをしているのは何だか珍しかったので、
少しぐらいお賽銭をやっても良いだろう。人間に奪われそうな気もするが。
狭い鳥居をくぐろうとすると体がぶつかり、固定の甘かった鳥居はあっさり崩れてしまった。
れいむは「なにするの!!」と言って少し悲しそうな顔をしたが、それほど怒った様子も無いので気にしないでおいた。
そしてお賽銭箱に面白半分に木箱に小銭を入れてやる。さっき本物の博麗神社に投じた額の1/10ほどだが。

「ゆゆ~!!おにいさんありがとう!!おねがいごとをしてね!!」

うるさい巫女だな……いや、神主なのか? よく解らない。でもお参りは静かにさせてほしい。
作法に則り、手を叩いて願い事を念じる。それが済んで立ち去ろうとすると、
れいむは膨れっ面でこっちをにらんでいた。

「おにいさん!!おねがいごとをゆっくりいってね!!だまってちゃわからないよ!!」

え~……そういうもんなの? というか、お前が願い事を知ったところでどうする。
まあもう少し付き合ってやるか。

「今度資格試験を受けるんだよね。それで仕事がもらえるかどうか決まる大事なやつでさ。
 もちろん勉強も頑張ってるけど、一応ゲンかつぎに神頼みもしとこうかな~ってことで。
 勉強がうまくいって、試験に合格できますよーに!」

もう一度手を合わせて祈る格好をする。ゆっくりに祈るのも何かムカつくけど、まあごっこ遊びだし。

「ゆっ!ゆっくりききとどけたよ!!おにいさんはきっとごうかくできるよ!!」

お前が聞き届けるのかよ。こいつは神主兼巫女兼神様なのか?
しかしたとえゆっくり相手と言えど、励ましの言葉をもらえるのは悪いものではない。
俺は少しだけ機嫌を良くすると、れいむに手を振って帰路についた。

その夜。寝る前に机に向かって勉強をしていると、窓をドンドンと叩くものがあった。
何だろうと思って開けてみると、そこには一匹のゆっくりぱちゅりーが。

「むきゅ~!!おにいさんがべんきょうのことでこまっていそうなけはいがしたから、おしえにきてあげたわ」

……何だこいつ。あ、もしかしてゆっくり神社の差し金か?
学問成就を願った俺のところにゆっくりの中では頭の良いぱちゅりーを派遣し、勉強を手伝わせる。
それによって願いを叶えさせ、ご利益の評判を高めてお賽銭をもっと集める……と。

「お前、ゆっくり神社から来たのか?」
「むきゅ!?な、なんのことかしら?ぱちゅりーはそんなれいむ、ぜんぜんしらないわね!」

れいむなんて一言も言ってないのに……まあこれで間違い無さそうだ。
しかし人を助けて対価を貰おうというのは、ゆっくりにしてはなんとも殊勝な考えだ。

「むきゅ!とってもかしこいぱちゅりーがばかなおにいさんをかしこくしてあげるわ!ゆっくりなんでもきいてね!」

しかしもうちょっと口の悪くない奴を派遣出来なかったものか……
ぱちゅりーは文房具に混じって、机の上に鎮座している。気が散って邪魔だ。
ぱちゅりーの頭が実のところそんなに良くないことは知っているので、追い返しても良い。
しかし受験勉強でストレスの溜まっていた俺は、ちょっとだけ悪戯をしてみた。

「ふーん、じゃあここの問題がちょっと解らないんだけど。答え教えてくれないかな?」
「むきゅ!ぱちゅにおまかせよ!」

俺は使っていた問題集の中で一番簡単な問題をぱちゅりーに見せてみた。
五秒後

「むっきゅー!!むじゅむじゅーー!!」

何か変な声を出し始めた。それでも問題集にかじりつくように向き合うぱちゅりー。
しかし人間様の問題をゆっくりに解けというのは難儀な話だ。

「むっきゅーー!!むじゅむじゅーーー!!」

ぱちゅりーはそのまま溶けていった。知恵熱でも起こしたんだろうか。
机の一角に広がったぱちゅりー液を指ですくって舐める。甘い。
これは勉強で疲れた頭を癒すには良いかも知れない。少しは役に立ったな。


後日、試験に無事合格した俺は、息抜きに林道を散歩していた。
博麗神社に学問成就のお礼をしにいったのだが、ゆっくりの方にもついでに寄ってやることにする。
ゆっくり神社にさしかかると、おばあさんがお賽銭を入れていた。遠くから様子を見てみる。

「おばあさん!!おねがいごとをいってね!!」
「そうねぇ……うちの畑が今年も豊作で、おいしい野菜が沢山売れますように」
「ゆっくりききとどけたよ!!おばあさんはおいしいおやさいをいっぱいとれるよ!!」
「あらあら、嬉しいねぇ」

おばあさんは朗らかに微笑みながら、れいむに手を振ってゆっくり神社を後にする。
ゆっくりは子供っぽいところがあるから、ああいうのは年寄りに受けが良いのかもな。
おばあさんの姿が見えなくなると、れいむの仲間らしきゆっくりが数匹周りから飛び出て来た。

「みんなおばあさんのおねがいきいた?」
「はたけをてつだうんだねー!!わかるよー!!」
「きっとちからしごとだからまりさがてきにんね!」
「ゆっ!ゆっくりまかせるんだぜ!!」
「ちーんぽ!!」

この件を一任されたまりさは、おばあさんの帰っていった方角に向けて走っていった。
ああやって参拝者の住居を特定してるんだな。
その仕事ぶりを見るため、俺はまりさに二重尾行を仕掛ける。
やがて林を抜け、まりさはおばあさんの家に着いた。おじいさんと二人暮らしをしているらしい。
二人とも家の中にいるのを確認すると、まりさはさっそく畑に侵入する。青々と茂った根菜はもう収穫寸前らしい。
しばらくゆーゆー言いながら物色するまりさ。農作業のやり方なんて知ってるのだろうか。
そう思ってみていると、突然大根を掘り返して食べ始めた。

「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」

何してんだ、あいつは……初めからこれが目的だったのか?
いや、おそらく神社のれいむの目的は、こらしめられるリスクを負わずに人間の食べ物を手に入れること。
お賽銭を使って経済に参加することで、人間に疎外されない社会性を獲得しようとしたのだ。
まあ、現実的に可能かどうかは別として。
しかしアホのまりさには、そんな(ゆっくり的に)遠大な計画は理解出来ないし、面倒臭い。
それより目の前に広がるごちそうの山を目の前にして、今すぐしあわせになることを選んだのだろう。

「ゆっゆっ!これめっちゃうめ!さいしょからこうすればてっとりばやいんだぜ!!れいむはばかだぜ!!」

バカがどちらかは一目瞭然だが。
俺は畑の被害が大きくならない内に現場に踏み込み、まりさを取り押さえた。

「ゆっ!?おにいさんなんなんだぜ!?ゆっくりはなすんだぜ!!」
「人の野菜を食う悪いゆっくりを見過ごすわけにはいかないな」
「ゆべえぇっ!しらないんだぜ!ここはまりさがみつけたからおやさいはまりさのなんだぜ!!」

ぎゅうぎゅうと両手で地面に押さえつける。
跳ねようとするまりさの力が伝わって来るが、人間の腕力からすれば大したものではない。
餡子を口からぶりぶりと吐き出し、悲鳴を上げながらしなびていく。
あんまりまりさがうるさかったからか、住居からおじいさんが出てきた。

「コラーッ、わしの畑で何の騒ぎだ!?」
「あ、すいません。害獣が畑を荒らしていたものですから、咄嗟に……」
「ああ、ゆっくりか。すまんね兄ちゃん、うちも畑の周りに柵を作らないといかんのぉ。
 そのゆっくりはうちが引き取るから置いていってくれ。良い肥料になるんじゃよ」

ほう、それは知らなかった。最近の農家はゆっくりを肥料にしているのか。
潰れて動けなくなったまりさをおじいさんに引渡し、俺は林道へと引き返す。
まりさの餡子によって畑の土壌は更に充実し、立派な野菜が収穫されることだろう。


引き返した俺は、再びゆっくり神社へと赴く。
れいむが「ゆっくりしていってね!!」と言うので、「はいはいゆっくりゆっくり」と返す。

「ゆっ!!このあいだのおにいさん!!」
「やあ。おかげさまで試験にも合格出来たよ」
「よかったね!おともだちにもゆっくりじんじゃをしょうかいしていいよ!!
 ところでおにいさん、とってもかしこいぱちゅりーをみかけなかった?」
「ん? いや、見てないな。見てたとしても、見ただけじゃ賢いかどうかなんて解らないよ」
「ゆー、そうなの・・・」

まさかぱちゅりーは家で死にましたとも言えまい。余計な誤解と揉め事が起きそうだ。
しかしれいむもこっそりと仲間を派遣している手前、大っぴらに「お前の家に行ったはず」などとは聞けないらしい。
ご利益要員が欠けたのは痛いだろうが、またどっかから補充すれば良いだろう。ゆっくりなんて幾らでも沸いて出る。

「おにいさんきょうもおさいせんちょうだいね!!」
「いや、今日は良いよ。特に願い事も無いし」
「そんなことないでしょ!!なにかあるはずだよ!!おさいせんいれてね!!」
「醜い神社だなぁ……ん?」

傷付いた顔の子供がとぼとぼと歩いてきた。俺は道を開けてやる。
れいむが子供に「ゆっくりじんじゃだよ!!ゆっくりしていってね!!」と声をかける。
子供は賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を叩いて願い事を言った。

「村のいじめっこがぶっ倒れますよーに!!」

どうやら虐められて怪我をしてるらしい。身体も大きくないし喧嘩では勝てないんだろう。
賽銭入れて祈るなら博麗神社の方が……と思ったが、確かに博麗神社までの道のりは少し険しくて子供の足では辛い。
とはいえゆっくりにも縋る気持ちなのだろうか。

「ゆっくりききとどけたよ!!あくはせいぎにやっつけられるうんめいなんだよ!!」
「うん……ありがとう……」

れいむの言葉を気休めと受け取って力なく笑うと、少年はトボトボと村に帰っていった。
助けてやりたい気もするが、子供の喧嘩に大人が出て行くってのもね。
周囲の茂みがガサガサと揺れた。仲間ゆっくり登場かと思ったが、出てこない。俺がいるからか。

「おにいさん!!ようがないならさっさとどっかいってね!!」

れいむが体を膨らませて怒鳴ってくる。俺ははいはいと答えてれいむの視界から消え、近くの茂みに隠れて様子を見る。
俺の姿が見えなくなったのを確認すると、何匹かのゆっくりが茂みから出てきた。

「こんかいはわるものたいじだよ!!」
「わかるよー!みょんとちぇんがいくんだねー!」
「ちーんぽ!ちーんぽ!」
「ふたりにかかればにんげんなんていちころね!!」
「ゆっくりいってらっしゃい!!」

子供の帰っていった方に走っていくみょんとちぇん。
俺も気付かれないようにその後ろをこっそりついていく。暇な奴だな、俺も。

結構歩いて村に辿り着く。こそこそと住人の様子を見て回っているゆっくり二匹。
やがて、いかにもいじめっ子ですといった風貌の、体格の大きな子供を見つける。

「あいつなんだねー!わかるよー!」
「ちーんぽ!」
「ちぇんがうしろからきしゅうするから、みょんがとどめだよ!」
「でかまら!」

気合の掛け声だろうか。
打ち合わせをするやいなや、ボサっと道を歩いていたいじめっ子の後頭部に向けてちぇんが苛烈な体当たり。
「いだっ」と呻いたいじめっ子は軽い脳震盪でも起こしたのか、その場に手をついてしまう。
そしてみょんが追撃。背中の上でぼふぼふ跳ね始める。

「ちーんぽ!ちーんぽ!」
「痛いっ、痛い! な、何なんだお前ら!?」
「ゆっくりしぬんだねー!わかるよー!!」

ゆっくり達の猛攻は続く……が、最初の一撃以外はあんまり効いてるとは思えない。
肩甲骨の間あたりで飛び跳ね攻撃を繰り返していたちぇんが、しっぽを掴まれて地面に叩きつけられる。

「ゆべっ!!なにずるのー!!ゆっくりやめてよー!!」
「はぁ? お前らが先に喧嘩売ってきたんだろうが。何やったってセイトーボーエイだぜ」
「ち、ちーんぽ!?」

みょんを払いのけ、立ち上がる少年。その瞳には苛立ちと、面白いおもちゃを手に入れたという好奇の光が輝いている。
ちぇんはしっぽを掴まれたまま、「ぎにゃあああああああ!!」と叫びながら振り回されている。
目からあふれ出る涙が周囲に飛散する。隠れているこっちにも飛んで来たので、顔についたのを指で取って舐める。甘い。
その勢いでびたーんびたーんと地面に叩きつけられるちぇん。その度に餡子を吐き出し、地面に放射状の餡痕が残る。
少年は鞭のようにちぇんを振ると、近くでおろおろしていたみょんを横に薙ぎ払った。

「ぺにずっ!?」
「ぎゃはははは! 弱っちいゆっくりごときがおれさまに勝とうなんて、百年早いんだよ!」
「やめでねー!!たずげでねー!!わからないよーー!!!」

吹っ飛ばされたみょんが、俺の隠れている近くの茂みに突っ込む。ギクッとしたが、何とかばれなかったようだ。
ちぇんは餡子を吐き出して少し軽くなり、速度を増して引き続きひゅんひゅんと振り回されている。

「やめてねええええーーー!!わからないよぉぉぉぉーーー!!!」
「あははは、これ面白いな。そうだ、お前うちの飼い猫の遊び相手にしてやろうか。
 何か見た目も猫っぽいことだし、あいつもきっと喜ぶぞ。楽しみだな!」
「ゆぅぅぅうーーー!ちぇんおうちかえりたいよーーー!!!」

言葉とは裏腹に残酷そうに笑う少年の顔を見て、飼い猫もきっと彼に似て大きくて乱暴なんだろうなと思った。
その時、茂みに埋まっていたみょんが颯爽と飛び出す。その口には折れた枝がくわえられている。
ちぇんを振り回して遊ぶ少年の足元に、あっという間に駆けていき……そのまま枝の尖った折れ口で、少年の足を突き刺した。

「ちぃーーーーんぽ!!」
「い゛っ……痛っでえぇぇぇぇぇーー!!」
「みょーん!たすけてくれたんだね!!わかるよーー!!」
「ちんぽちんぽちーんぽ!」

足の痛みに、思わずちぇんを離してしまう少年。地面に落ちたちぇんは、嬉しそうにみょんの元に擦り寄る。
少年の足を見てみると、結構傷が深いみたいで血がどくどく溢れ出ている。あれは跡が残りそうだな。
……っていうか、ちょっと洒落にならなくなってないか? 見てていいんだろうか?
血まみれの枝をくわえてなおも戦闘態勢のみょんを、泣きそうな顔で見ている少年。
やがて足を引きずりつつも、全速力で泣きながら逃げていく。

「いでぇ、いでぇよぉぉぉぉーーー!! お父ちゃーーーん!!」
「やったねーー!!ちぇんたちがかったんだよ!!わかるよーーー!!」
「ちーんぽ!!」

手負いの二匹はぴょんぴょん跳ねて勝ち鬨を上げている。
確かにあの怪我では、いじめっ子もしばらくは他の子供達に乱暴など出来ないだろう。
だがしばらくもしない内に、先ほどのいじめっ子など比べるべくもない屈強な男が現れる。

「てめえらか、うちの坊主に怪我させたゆっくりは!!」
「ちんぽ?」
「またわるものとうじょうなんだねー!わかるよー!でもちぇんとみょんならまけないんだよーー!!」

いじめっ子を撃退して自信をつけたのか、勢いよく突進していく二匹。
しかし大人の男に勝てるはずもなく、木の枝を突き刺す前に順々に蹴り飛ばされてしまう。

「ぢんっ!?」
「ゆびゅっ!なんでえええーーー!わからないよぉーーー!!」
「饅頭ふぜいが、人間様を傷付けやがって……あの世で後悔しやがれ!!」

男は少年のように甚振ることなどなく、躊躇せず二匹のゆっくりを確実に踏み潰していく。
始末を終えた男は、村の広場に大人たちを集め、何やら話し合いをしていた。

「ゆっくりが人間を襲っただって? 信じられないなあ」
「しかし現に、うちの坊主が木の枝で足を刺されてるんだ。あれじゃ当分は田んぼにも入れねえ」
「うーん、確かに子供や年寄りなら怪我をさせられることもあるかもな」
「どうする? 人間に勝てると思い込んだゆっくりが人を襲い始めたら……」
「そんな危険な饅頭がいたんじゃ、弱い者はおちおち村を出歩けもしない!」
「仕方ない、このあたりのゆっくり一斉駆除しよう。決行は明日の午後、子供や老人には外出を控えさせよう」

さあ、大事になってまいりました。まあ当然の成り行きですけどね。
ゆっくり神社のおかげで大量のゆっくりが死ぬことになってしまった。
まあ神社自体はこの村から離れた所にあるから、そこまで駆除の手が及ぶことはないだろうが。
しかし酷い話だ。俺は家に帰った。


数日後。ゆっくり神社は人員の欠損と補充を繰り返しながら、
俺のような珍しいもの好きの人間相手にそこそこ繁盛してるみたいだった。
何度か様子を伺ってみたが、神社の運営を担当するれいむに、周囲の仲間がごはんを運んでくるらしい。
その見返りに、お賽銭が溜まった暁にはれいむがおいしいお菓子を振る舞うという筋書きだろう。
そしてついに、充分なお賽銭が溜まったとれいむが判断したらしい。
れいむは達成感に満ちた笑顔で、お堂から出てきて賽銭箱にすりすりしている。

「おかしをかいにいくよ!!ゆっくりはこをあけるよ!!」

ゆっゆっと言いながら、箱の周りを何週かするれいむ。何をやっているのか。

「どうやっであげるのおぉぉぉおおおぉぉぉぉ!?」

考えてなかったんかい。神社の巫女さんがやってるんだから何とかなるだろうぐらいの気持ちだったんだろうな。
引っ繰り返そうと体当たりをするが、元々が高さがなく横に広い形状であった上、
皮肉にも小銭が溜まって重量を増した箱はそう簡単に倒れない。
ゆぐゆぐと泣いているれいむ。開けてやろうかしらと思い始めた頃、性悪そうな一人の青年が参拝にやってきた。
れいむを無視して賽銭箱に小銭を投げ入れると、ぱんぱんと手を叩く。

「もっといっぱい虐待できますよーに!!」
「ゆ!?おにいざん!このはこをあげでね!!!」

巫女としての務めも忘れ、泣き声で参拝客に懇願するれいむ。
青年はにっこりとれいむに微笑みかける。

「いいよ、お安い御用さ。でもタダでは引き受けられないなあ」
「ゆ゛!?」
「お願い事をする時は何が必要なんだっけ?」
「ゆ・・・おさいせん・・・でもおさいせんはそのなかだよ」
「じゃあ僕が箱を開けたら、僕にお賽銭をくれるのかい?」
「いいよ゛!!はやぐゆっぐりあげでねぇ!!!」

箱を開けることしか考えていないれいむ。青年は手に力を込め、固く閉められていた箱の蓋を外す。
れいむは感激の涙を流す。

「ゆぅ~~!!おにいさんありがとう!!」
「じゃあ約束どおり、お賽銭はもらっていくね」
「ゆ?」

持参した袋に箱の中身の小銭をじゃらじゃら流し込んでいく青年。
感激の表情のまま、呆然と眺めているれいむ。

「じゃあね!」
「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅ!!おにいざんなにずるの゛おおぉぉぉぉぉ!!!
 れいぶのあづめだおざいぜんがああぁぁぁぁぁ!!」
「大丈夫、これはちゃんと里の自然保護基金に寄付しておくよ。
 買い物しようなんてらしくないこと考えず、森の中でゆっくりしていってね!」

疾風のように去っていく青年を、れいむは追いかけることも出来ない。
俺が捕まえるべき? いや、別にれいむの肩持つ気無いし。
それにあの青年は、本当に森のためにお金を使うことだろう。私利私欲のためではなく、
ただゆっくりを絶望に突き落とすことだけを目的に行動する人種のようだから。
まあ自然保護活動にとっちゃ、微々たるものだろうけどね。あんなはした金。

「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・なんでぇ・・・れいぶのおさいせん・・・」

ゆっくり神社の境内でれいむが泣いていると、周囲から仲間のゆっくりが怒った表情で飛び出して来た。
れいむだけのお賽銭じゃないんだよね。

「ちょっと!どういうことなのれいむ!!」
「はこをあけるためにおさいせんをあげちゃうなんてばかなの?しぬの?」
「ゆ゛っ!?ちがうよ、れいむは・・・」
「ちがわないんだねー!わかるよー!」
「にんげんのたべものをいっぱいくれるってやくそくはうそだったんだね!!」
「いままでまりさたちをだましてごはんをはこばせてたんだぜ!!ゆるせないんだぜ!!」
「にんげんのおねがいにつきあわされてゆっくりできなかったわ!」
「れいむはぜんぜんゆっくりできないゆっくりだね!!」
「このうすぎたないばかゆっくり!!いきてるかちないよ!!」
「「「「「「ゆっくりしね!!!」」」」」
「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」

何匹ものゆっくりから袋叩きに遭うれいむ。
参拝客に気に入ってもらうために綺麗にしていた髪や肌もボロボロになっていく。
暴行に参加していないゆっくりは、れいむの収まっていた手作り小屋に体当たりして破壊し、
屋根に使われていた葉っぱや草をむーしゃむーしゃとやっている。
やめでぇぇぇというれいむの声も、罵声と悲鳴の中に掻き消える。
十数分に渡る暴行が続いた後、完全に神社を破壊しつくしたゆっくり達は、それぞれ周囲に散っていった。
残ったのはゆっくり神社本堂のわずかな建材(食べられない部分)と空っぽの賽銭箱、
ボロ雑巾のようになった虫の息のれいむだけだった。
リボンも解けていてかわいそうだったので、俺は出て行って結んでやった。めんどくさいから固結びだけど。

「ゆ・・・・おにいさん・・・・・・」
「やあれいむ。お賽銭いるかい?」
「いらないよ・・・・・もうおかねはいやだよ・・・・・」
「あ、そう」

清貧ってやつかな。本物の方の巫女にも見せてやりたいぜ。
俺はれいむの前に立って、手をパンパンと叩く。

「早いとこ給料上がりますよーに!」

そして一礼すると、ゆっくり神社跡に背を向け、家に帰る。
饅頭には神も仏もいないよね。

おしまい

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最終更新:2008年10月05日 16:35
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