ゆっくりいじめ系1332 およめにしなさい_01

秋。実りが豊富であり、越冬に向けて子作りの最後の機会。

 「れ、れいむ・・・」
 「ゆゆっ?なあに、まりさ」

 れいむに擦り寄るまりさ。


 「ふ、ふたりで、ずっと、ふたりでゆっくりしようね。
  ずっと、ずっと、ふたりでゆっくりしようね」
 まりさのプロポーズであった。

 二匹は家が近所の幼馴染。生まれたときからほぼずっと一緒にいた。
 親から独立した際も、ずっと近くに住んでいた。
 二匹はお互い助け合っていた。
 あまり狩りが上手ではないれいむに代わって、まりさは狩りをする。
 家の管理が苦手なまりさに変わって、巣を作ってあげるれいむ。

 楽しいときも、辛いときも、飢えに苦しんだときも、沢山餌を手に入れたときも。
 まりさとれいむはずっと一緒だった。

 群れで一番狩りが上手で凛々しい、まりさ。
 群れで一番気立てが良くて美ゆっくりなれいむ。

 当然、二匹に言い寄るゆっくりなど、星の数ほどにいた。
 しかし、二匹はどれも断った。
 まりさは生涯を共にするのはれいむしかないと思っていたからだ。

 きっとれいむもそうおもってるんだぜ。
 だから、ずっとひとりだったんだぜ。

 まりさは自然とそう思うようになった。
 まぁあながち、間違いではあるまい。れいむだってまりさが好きだった。

 そして、今日。満を持してまりさはプロポーズをした。
 既にれいむが心に決めたゆっくりはないことは涙ぐましい調査ではっきりしている。
 秋につがいを決めなければ、冬にはゆっくりと出会うことはない。
 越冬中に死ぬ可能性が高いからか、秋につがいを決めるゆっくりは非常に多い。

 不安で一杯だったが、まりさには勝算があった。 
 まりさにとっては永遠に等しい一瞬であった。


 「ふたりでゆっくりしようねっ!」
 れいむは頬を摺り寄せてくる。


 やったぜ!けいかくどおりだぜ!!

 まりさは有頂天になった。次の言葉を聴くまで。

 「まりさは、れいむのいちばんたいせつな“しんゆう”だもん!!」

















 家に帰ってみると、一匹のれいむがいた。
 ゆっくりが人家に押し入って荒らしまわるのは別に珍しいことではない。
 野生の生物には所有権という概念はない。縄張りは力で奪い取るものだ。
 惰弱なゆっくり風情といえども例外ではない。
 なので、男はさほど驚きもせず、そちらの流儀で応えてやろうと思った。

 どうせ、「ここはれいむのゆっくりプレイス」云々というのだろう。
 そう思っていたが、れいむの応えは斜め上をいくものだった。

 「ここはおじさんのゆっくりプレイスだよねっ!れいむをおよめさんにしてね!!」

 ……何を言っているのだろう?男は心底理解できなそうな表情で考える。
 「およめさん」というからには、結婚を申し出ているのだろう。
 なぜ、人間と結婚しようとするのか。ゆっくりはゆっくり同士が一番だと思うが…。

 「なぜ、僕と結婚したいのかな?」
 好奇心に負けて聞いてみる。くだらない理由だったらその場で潰せばよいのだ。

 「おじさんは、にんげんだよね?
 にんげんさんはつよいよっ!たべものもいっぱいもっているよっ!
 ゆっくりプレイスもひろくてきもちいいよっ!だかられいむをゆっくりさせられるっ!!」
 成る程、そういうわけか。

 野生の生物で最も重要なことは強いことだ。弱肉強食が掟である以上、強くなければ即死ぬ。
 次いで、餌を採る能力。農耕の概念がない以上、餌を見つけられるかどうかは死活問題である。
 また、巣と縄張りも広ければ広いほど良い。前述の通り、所有権がない以上は餡子で餡子を洗う
 戦いの末にようやく得られるものである。奪われる心配のない巣はそれだけで貴重だ。

 モテるかどうかはこれ等が基準となる。後は優秀な種を残すことが出来れば最高なのだが、
 これは付随的な条件である。

 れいむは子供の頃、れみりぁに襲われたことがある。
 珍しく、まりさと一緒ではなく、一匹で人里に近い山道まで降りてきたときにだ。

 左頬をかじられ、瀕死のれいむが見たのは一撃でれみりぁを踏み潰した人間の姿だった。
 その後、人間はれいむを家まで連れて帰り、傷を塞いでやった。
 しばらく撫でて貰ったあと、れいむはお菓子を渡されてもとの場所に返してもらった。

 にんげんはすごい。
 つよくて、ゆっくりプレイスもひろい。おかしもたくさんもっている。
 なでなでもきもちよかった。

 れいむの餡子に強烈に刻まれたこの記憶は、れいむの価値観を変えるものとなった。

 むれでいちばんすごいまりさでも、にんげんにかてない。
 だったら、いちばんゆっくりできるのはにんげんだ。

 確かに、人間ならばその点においてはゆっくりと比べることは出来ない。
 種は残せないが、それ以外の点では100点をつけてなお余りある。
 そういった意味では、人間をつがいに選ぼうとするのは理に適っている。
 ……ゆっくりにとってのみだが。

 「だが、君と仮に結婚したとして、僕に何かメリットはあるのかね?」
 「ゆへん、おじさんをゆっくりさせられるよっ!!」
 「生憎と、僕はそれなりにゆっくりしているよ。」
 「ゆっ、それじゃあ、どうすればいいの?ゆっくりおしえてねっ!」

 別に断っても良かったが、面白そうなのでのってみることにした。  

 「そうだな、毎日庭の雑草を食べてもらおうか。あとは、ほかのゆっくりが来たら
 追い返すこと。この二つさえ守ってもらえるならいいよ。」
 世間ではこれを“飼う”という。しかし、野良のゆっくりであるれいむには
 飼うという概念はない。その違いも分からずに、れいむは承諾する。

 「ゆっくりりかいしたよっ!それじゃ、おかーさんたちにほうこくにいこうねっ!!」
 ……なんだって?

 あとでれいむに聞いて分かったことだが、ゆっくりも人間と同じように親の同意を得るのが
 常識らしい。もっとも、両親とも生存している確率はかなり少ないし、実質は事後承諾に等しい。
 むしろ、群れへの顔見せというのが理由だろう。

 そんなわけで、男はれいむに連れられて群れのある場所に行った。
 「ゆっくりしていってね!!」
 「ゆ…ゆっくり…して…いってね?」
 両親のゆっくりは困惑していたが、既に独り立ちを済ませてしまった、しっかり者のれいむの決定に
 口を挟むのも野暮なものである。案外、男が持ってきたお菓子に釣られてしまった
 のかもしれない。れいむに言わせれば、“結納”だそうだが…。

 そして、群れの前でお披露目をした。
 群れにお菓子を渡すと存外友好的に扱ってくれた。害意がない以上、群れとしても争う必要はない。
 やはり群れの皆も困惑していたが、しっかり者のれいむが選んだのだからと納得していた。
 仲間でありさえすれば、人間ほど頼りになるものもあるまい。

 そんなわけで、群れはそれなりに好意的であった。
 ……一匹のまりさを除いて。




 れいむのゆっくり生は劇的に変わった。

 男は朝早くに仕事に出て、夜に帰ってくる。
 その間、れいむは自由だ。

 男の家の物置に毛布を置いてもらい、そこがれいむの巣となった。
 毎日きちんと雑草を食べていれば、野良の頃とは比べるべくもない豪華な食事がもらえる。
 基本的に、群れで暮らすゆっくりは縦社会なので餌をくれるだけの存在は低く見られる。
 しかし、れいむはあくまで自分が“せんぎょーしゅふ”であり、“かじ”の対価として食事を
 もらっていると認識している。案外親のしつけがしっかりだった結果がこれだよ。

 れいむに進入されて男がゆっくり対策をした結果、野良のゆっくりが入ってこれないので
 ゆっくりプレイスを取られることもない。
 れいむ自身は出入り自由なので、時間があれば群れに戻ってゆっくりしている。
 汚れが目立てば、お風呂に入れてもらってさっぱりできる。
 ムラムラしてきたときにはおじさんの足に頬を擦り付けてすっきりー!!
 特に舌しかないゆっくりにとっては髪を梳かすことができず、すっきりーしているときに
 髪をいじってもらうのが最強に気持ち良い。

 ほかの人間に近づかないようにも言われた。

 れいむがほかのにんげんのおよめさんになるのがこわいんだね。おお、しっとしっと。
 かわいくてごめんねー。
 でも、れいむはあなただけのれいむだよ。

 「あなた、おかえりっ!!ごはんにする?おふろにする?それともすっきりーする?
  ゆっくりしていってね!!」
 「ああ、ゆっくりしているとも。ありがとう、れいむ。」
 「あなた、あしたもおそいからゆっくりやすんでいってねっ!!」

 男が帰ってくれば、ねぎらいの言葉をかける。 

 れいむは満たされていた。

 男もそれなりに満足していた。どうぜ、手間はかからないし、何より独りで帰ってきたあと
 ほかに待つ者もいないのに食事を作るのは気が滅入るものだ。
 積極的に動物を飼うつもりはなかったが、これはこれで悪くない。











 秋が過ぎ、厳しい冬を越えて春がやってきた。

 あろうことか、人間に寝取られたあのまりさも冬を何とか生き延びた。
 元々狩りが上手だったが、さらに成長して今では群れの中心的な存在だ。
 あと半年もすれば、群れを統率する立場になるかもしれない。


 ……ひさしぶにあったれいむはますますびゆっくりになってたんだぜ。


 いくらまりさが群れの中では狩りが上手といえども、人間と比べられるわけがない。
 栄養を過剰に摂取できる立場のれいむは行き届いた衛生面と元来の性格と美貌から、
 野良ゆっくりでは見ることが適わないレベルに達していた。


 はぁ、れいむ。


 まりさに求婚するゆっくりはますます増えた。現在群れで一番の美ゆっくりであるありす
 からも誘いは来ている。
 そのどれもを、まりさは断った。諦めきれないのだ。
 なまじ群れの皆がまりさを褒め称え、まりさ自身も群れで一番のゆっくりであるという矜持
 から、いつかれいむに振り向いてもらえるのではないかと淡い期待を抱いている。


 ある日、群れを襲ったれみりぁをまりさの指揮の下で被害を最小限に抑えて撃退することができた。
 まりさは気分が良くなった。絶対的な捕食者から自分は群れを守ったのだ。
 自分は強いのだ。おそらく人間よりも。きっと、れいむも自分の強さに惚れ直してくれる。
 いつまでも“しんゆう”に甘んじるつもりなどまりさにはなかった。

 野生では強さが絶対の基準である。人間の強さを知らないまりさにとって、捕食種を撃退した
 ことでれいむが戻ってくると考えるのを誰が責めることができようか。


 自惚れていたまりさは知らない。その頃、れいむが男となにを話していたのかを。


 「ゆゆ……あなた、ゆっくりきいてね!!たいせつなおはなしがあるの。」








 明くる日、まりさは男の家に行った。れいむを尾行したことも何度かあるまりさは道に迷わなかった。
 たまたま、仕事が休日であったことから男はれいむといっしょにじゃれていた。



 ゆぐぎぎぎ!!まりさのれいむとなにしてるんだぜ!!!


 嫉妬で怒りが頭を突くまりさは思わず男の前に出て行き、叫んだ。

 「じじい!まりさのれいむをはなすんだぜっ!!あと、まりさとしょうぶするんだぜ!!」

 「ゆゆ?まりさ?だーりんになにをいってるの!!ゆっくりあやまってねっ!」

 「れいむはだまされてるんだぜっ!まりさはそのじじいよりつよいから、
 まりさといっしょにゆっくりするんだぜっ!!」

 「れいむはれみりぁよりつよいだーりんとゆっくりしてるよっ!!ゆっくりできないならまりさは
 ゆっくりいなくなってね!!」

 「まりさもれみりぁにかったんだぜっ!!まりさはそのじじいよりつよいんだぜ!」

 「ゆゆ?ほんとうなの?だーりんよりつよいなら、“りこん”してあげてもいいよ!!」
 まりさが本当に男より強ければ、れいむは男に拘る理由はない。
 一緒に過ごしてきた期間が長い分、れいむにはまりさの嘘が見抜ける。……どうやら、嘘じゃ
 ないみたいだ。


 れいむにとり、強さの基準はれみりぁだった。それ以外で人間の強さを測れないからだ。
 その意味では、確かに「れみりぁ以上」という点で両者は互角だった。
 ただし、人間は戯れの一撃でれみりぁを文字通り粉砕したのに対し、まりさは群れの全戦力を
 投入し、死傷ゆっくりを出してようやく退却させたのだが……。


 「ふぅ~ん。いいよ。別に、勝負しても。」
 「ゆっへっへっへ、ばかなじじいだぜっ!!まりさのつ……」


  ヒュン


 「ゆべっ!!!!」


 ゆえ?まりさはなんでじめんにたおれてるんだぜ?
 まりさはなにをしていたんだぜ?
 か…らだがう…ごか…おか…んだ…ぜ。


 男が放った回し蹴りでまりさは致命傷を負った。
 死んでもらっては困るので、それなりに手加減はしたが……放って置けば
 助からないのは目に見えている。


 「さて、僕の勝ちだね。」


 事がここに至って、まりさはようやく理解した。人間の圧倒的な強さを。

 男はまりさの傷を塞いで野に返してやるつもりだった。
 まりさの言動からみて、このまりさはプライドの高いゆっくりだと思った。
 ならば、報復しようにも人間に負けたことを絶対に群れに言わないだろう。
 一匹で来る分には何ら問題はない。


 自身が人間よりも強いと自惚れていたまりさは、その自信を完全に砕かれた。
 もはや、人間を倒してれいむを連れて帰ろうなどとは思わなくなった。
 それでも、れいむを諦めるには、まりさの執着は強すぎた。


 策が尽きたまりさに残っているのは、れいむの情に訴えることだった。
 弱いゆっくりとつがいになる馬鹿者などいやしない。
 自分でも惨めであると分かっていながら、れいむが戻ってくることに望みを賭けた。


 子供の頃一緒に遊んでいたこと。
 怪我したときに看病してくれたれいむの優しさ。
 親の目を盗んで秘密基地に行った、二人だけの思い出。
 一緒に語った将来の夢。

 「れいむ、まりさといっしょにすっきりーしてたくさんのおちびちゃんをつくるんだぜ!!」

 「ゆゆ……。」

 「あのにんげんさんはつよいけど、おちびちゃんをつくれないんだぜ!!」

 「ふたりでいっしょにうまれてくるおちびちゃんにすりすりするんだぜ!!」

 「ゆ~♪」

 しめた、れいむはおちびちゃんがほしんだぜ。
 こうなれば、“きせいじじつ”をつくって、“すっきりしちゃったこん”をするんだぜ!!

 とどめとばかりに、まりさは殺し文句を言った。

 「まりさはいちばんつよいゆっくりなんだぜ!!れいむとのおちびちゃんはきっとむれで
 いちばんつよくてゆっくりできるおちびちゃんになるんだぜ!!」

 それが決め手だった。ゆっくりにとっても、強い子供が生まれることが望ましいに決まっている。
 単純に生存率が高いので、種の存続の観点から言えば何を差し置いても優先すべき事項だ。

 れいむの知っている限り、まりさの言葉に嘘はない。子供をつくるなら、まりさが一番と言えよう。
 この点に限れば、圧倒的弱者であったまりさに敵う者など何もない。

 「ゆっ、わかったよ。れいむはまりさといっしょにゆっくりするよ。
 あなた、ごめんね。れいむのきもちをゆっくりりかいしてね。さびしいけど、ゆっくりりこんしてね…。」

 「ああ、わかった。ゆっくりしていきたまえ。」

 いやにあっさりと男は承諾した。


 まりさは、有頂天になった。今度こそ、夢が実現した。
 もう、二度と離さない。そう誓って、まりさはれいむを群れに連れて帰った。


 「ゆゆ?まりさ、なんでれいむといっしょにいるの?」

 「ゆっへっへ、れいむはきょうからまりさのれいむだぜ!!ゆっくりりかいするんだぜ!」


 形式に則り、まりさとれいむは親に報告してから群れにお披露目した。
 親は喜んでいた。何といっても、よくわからない人間などと一緒になるよりゆっくりは
 ゆっくり同士で家庭を作るのが望ましいと思っていたからだ。
 それに、まりさは自分達も良く知っている。非常にゆっくりできるゆっくりだ。
 娘を任せることに何の不安もない。


 惰弱なゆっくりはすぐに死ぬのだから、つがいを変えることに違和感はない。
 より強いゆっくりが現れたら、これと結ばれても何の問題もない。そうならないために、
 美ゆっくりとつがいとなったゆっくりは常に強く凛々しくあらねばならない。

 「ゆゆっ!にんげんさんをたおしてれいむをてにいれるなんて、まりさはとはいはね!!」
 「ゆっ!?」
 そうだった。群れには、そのように行って出てきたのだ。
 今更人間に負けたなどとは口が裂けても言えない。

 「ゆっへん。そうだ……」
 「うそいわないでね!!まりさはだーりんにふるぼっこにされたのに、れいむにたのんでむれまで
 かえってきたんだよ。」
 「どぼじでぼんどのごどいぶの~~!!」
 親の教育が良かったれいむは嘘が嫌いだった。

 場に白けた空気が流れる。嗚呼、群れで一番強かったはずのまりさは、人間に勝つと勇んでいってみれば
 惨敗。挙句の果てに、れいむにお情けでつがいにしてもらったのだ。
 今まで築き上げてきたまりさのイメージが音を立てて崩れるような気がした。
 とはいえ、群れで一番強いのは間違いないし、年長者には直接人間にぶつかった事はないもののれみりぁより
 も強いことを知っている者もいる。

 まりさがまけてもしょうがないよね、ゆっくりだもの。

 ということで、気にしないことにした。



 「ねんがんの れいむをてにいれたぜ!」
 まりさの人生はばら色だった。



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最終更新:2009年05月09日 21:57
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