ゆっくりいじめ小ネタ200 スィー




 山に山菜を取りに行っていると珍しいものが目の前を横切っていった。

 「すぃー」

 気持ち良さそうに声を上げながら疾走しているのは真っ黒な三角帽、輝く金髪が特徴的なゆっくりまりさである。
ここまではさほど珍しくはない。むしろよく見かける部類だ。

 では、なにが珍しいのか。それはこのまりさが『スィー』に乗っていたからだ。

 スィーは板に四つの車輪がついた車のようなもので、ゆっくりだけが運転できるものらしい。
ブレーキ、アクセル、ハンドルといった機能もあるらしいが動力源同様未知の部分が多い。
そしてなにより目撃例がとても少ないのだ。前々からスィーに興味を持っていた俺は思わずときめいてしまった。

 スィーを是非とも調べたい。
というわけで俺はゆっくりからスィーを奪うことにした。
ちなみに先ほどのまりさは走り去ってしまっていてもうこの場にはいない。

 だが、俺にはまたスィーに乗ったあいつに出会える予感がひしひしとしていた。
辺り一面草が生い茂ってる中でまりさが通った後から地肌の線が二筋顔を出していたからだ。
それは一直線に林の中を貫いていた。
俺の考えが正しければここはゆっくりたちの、それもスィー乗りたちの専用道路となっているはず。

 念のために草むらに隠れてしばらく観察していたが予想は的中していた。
頻繁にというわけではないがちらほらとは行き来があるようだ。
そうと分かればあとは準備をするだけだ。スィーはゆっくり単体と違って意外に速い。罠が必要だ。
辺りを見渡して計画を立て、退散するごろには日がとっぷりと暮れていた。



 翌日、朝霧がまだ濃い中俺は早くから罠を張っていた。
仕組みは簡単。道を挟んだ木々の間に鉄線を張るだけのものだ。
これにゆっくりがひっかかればスィーも停止し、そしてそれを奪って目的達成というわけだ。
一通り罠を仕掛けたあと、俺は草むらに身を伏せ、やつらが来るのを待つことにした。

 「ゆ~かぜさんがとってもきもちいいよ!まりさ!」
 「ゆっ、かぜさんはきょうもとてもゆっくりしてるね!れいむ!」

 来た。
先ほど聞こえてきた会話の通り乗っているのはれいむとまりさのようだ。
二人乗りもできるんだな、あれは。
そう考えているうちにスィーは罠のある地点に差し掛かろうとしていた。

 ぽすん。軽い音とともに舞い上がる黒い帽子。

 「ゆ?なんのおと?」
 「ま、ま゛りざのおぼうじがああああああああ!!!!」

 しまった、罠の位置が高すぎたのか。これじゃあ帽子に当たっても意味がないじゃないか。

 「でいぶ!どまっで!おぼうじが!」
 「ゆゆっ!?いきなりいわれてもこまるよ!ゆっくりまってね!ゆぎぎぎぎぎぎ!!!」
 「ありがどうでいぶ!」

 ギャギャギャギャと唸りを上げ曲がり込もうとするスィー。
Uターンをしようとしているらしい。しかし操作が急だったためか道を外れて吹っ飛んで行ってしまった。
さらに運の悪いことにそちらは崖だ。

 「もっどゆっくりじだかっだああああぁぁぁぁぁ……」
 「でいぶのばかああああああああああぁぁぁぁぁ……」

 あれではスィーも無事ではないだろうな。次に来るのを狙おう。
すまんな、命を取るつもりはなかったんだが。



 早速罠を下にずらす、先ほどのゆっくりたちのおかげでちょうどいい高さはわかった。
これで体の真ん中に食い込んで停止するはずだ。
俺は再び草むらに戻りやつらを待った。

 「ゆ~ゆゆ~ゆゆゆ~♪」

 しばらくすると調子っ外れな歌声が聞こえてきた。またれいむか。
今度は単体らしい。先ほどの二匹同様幸せそうな顔をして運転している。
すまんな、れいむ。

 ゾブンッ!
鋭い音が響いたかと思えばれいむの体は口から上半分を失っていた。
どうやら鉄線は鋭すぎたようだ。縄も持ってきて正解だったな。

 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」

 れいむは口から泡を出しながら痙攣している。それでもスィーは止まらず走り去っていってしまった。
あれでは助からないな。悪いことをしてしまった。
置き去りにされたれいむの上半分を道端に埋め、墓標代わりに石を置いた。成仏しろよ。



 罠を鉄線から縄に取り換え設置し直した。今度こそはうまくいくだろう。
これ以上は犠牲を出したくもない。
墓に軽く手を合わせた後、草むらに隠れ握り飯を食いながら次のスィーを待つことにした。

 「ゆっほぉう!ゆっへっへっへ、まりささまのすぃーてくにっくはさいこうだぜ!」

 ノリノリでやってくるまりさ、そのスピードは遠目から見ても速い。
群れの若い衆の筆頭といったところだろうか、あの威勢の良さは。
許せよ、まりさ。

 ぼぬぅっ!「ゆべっぼっ!!!」

 鈍い音を立て、まりさの体に縄が食い込む。予想以上に食い込む。
顔面は中心に埋もれ、体はぐちゃぐちゃに歪んでしまっている。至る部位から漏れ出す餡子が衝突時の衝撃を物語っていた。

 「ゆ゛っ……ゆ゛ぶびば……ぶげで……」

 上げる声は弱々しく、くぐもっていて全く聞き取れない。かわいそうに、手遅れだ。
スピードの出し過ぎはよくない。
まりさへのダメージは予想外だったがスィーは止めることができた。ありがとうまりさ、君の死は無駄にはしない。

 先ほどのれいむの横に埋めてあげるとしよう。これなら寂しいことはないだろう。

 「お゛……にいざ……だいぎて……うめな……」

 パンパンとしっかり土を固め、墓標になるものを探しているといいものを見つけた。
朽ちた木片だ。長さも太さも申し分ないし、なにより下の部分がとがっていて刺すのにちょうどいい。
まりさの墓に力いっぱい木片を突き立て「ゆびゃっ!」俺はまりさの冥福を祈った。


 「縄じゃなく落とし穴にしておけばよかったのかなぁ」


 スィー片手に家に帰った俺は早速スィーを調べてみることにした。
車輪をつついてみた。ひっくり返してみた。前から見てみた。横からも見てみた。臭いも嗅いだ。
乗ってみた。滑った。転んだ。泣いた。

 どこから見てもただの板に車輪がついてるだけにしか見えない。
どう見てもアクセル、ブレーキがあるようには見えない。
さすがゆっくりに関係あるものだけのことはある。不思議すぎる。
にっちもさっちも行かなくなったので俺はもう寝ることにした。
明日加工所にでも持っていこう。餅は餅屋、ゆっくりのことなら彼らに任せるに限る。



 そのころある群れで下半分しかないれいむがスィーによって運び込まれ、大騒ぎになっていたことは誰も知らない。


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最終更新:2008年11月08日 13:10
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