ゆっくりいじめ小ネタ210 神よあのものにどうか報いを

『これは長い間廃墟だった旧家の屋敷が取り壊される際に偶然見つかったメモ帳である。
 蚯蚓ののたくった様な文字と重度の混乱が見られる文体でそれは書き記されていた。
 古い資料を当たってその筆跡と屋敷に住んでいた者達の筆跡を調べてみたが一致する筆跡は見つからなかった。
 出来る限り解読し読めるようにしたものをここに記す。』




私達の身に何かがあった時の為
幸いなことに持ってくることが出来た手記にこのことを書き記し後世に遺す。
『表題の横に特に乱れた字で書き記されている
 恐らく後から急いで書き足したものと思われる』

…月???日?


私と妻、そして三人のかわいらしい子ども達と共に
小さな、だが暖かい住まいで平和に、そして幸せに暮らしていた。

妻は私にとても協力的かつ献身的に働いてくれたし
子ども達も家の中で勉強をしながらとてもいい子に過ごしてくれていた。
私達は子どもの成長を楽しみにしながら仕事に精を出した。
おかげで私の仕事もとてもはかどり、順風満帆の日々を送ることが出来た。

それにその年は豊作で、充分な貯えも出来て私達は当面食料に困ることは無いと思い胸を撫で下ろしていた。


私達がどう冬の寒さを乗り越えようかを考えている最中に、里にその化物は来襲した。
その化物は巨大で、私達が思い切り見上げてやっとその顔が伺えるかという程の大きさだった。
その化物は立った一歩でその場から逃げ去ろうとした私達に追いつき
恐ろしい握力で仲間達を次々と引き裂いていった。


里の仲間達は次々とその化物に殺され私達は辛うじて逃げ出した。


…月?1?日?
妻が子どもが居ないと喚いている。
恐らく逃げ遅れてしまったのだろう。
三人居た子どもの中で真ん中の子どもが見当たらなかった。
なんということだ。
あの子は三人の中で一番聡明な子どもだった。
だが今私達にあの子を助けに向かうような余力は無い。
家はあの化物に無茶苦茶にされてしまったしもう戻ることも出来ない。
だから今はとにかく住むことが出来る場所を探さなくてはならない。


?…月?×?日?
子どもを助けようといって聞かない妻を半日かけて説得し
私達は付近に有る巨大な遺跡に身を置くことにした。
そこは長いこと人が住んでいない場所だったので
ひとまず身を置くには調度いいと思った。

9?…月?1?日?
遺跡の中は本当に広かった。
その一角の部屋に子ども達を休ませて
当分ここで凌ぐために私と妻は辺りから食料を集めるために外に出た。

??月?1…日?
食料集めは順調に進んでいる。
この調子ならある程度落ち着いたら
食料を手に他の里まで行けるだろう。


…????月?■?日?
なんということだ。
食料調達から帰って来た際、真ん中の子どもが見つかった。
最初は何かわからなかったが確かに私達の子どもだ。
遺跡の壁に釘で貼り付けられたあの皮は確かに私達の子どものものだった。
その表情から生きたまま皮を剥がれてから殺されたことが分かった。
あまりの痛みにのたうちまわったのだろう。
辺りには我が子から内容物が飛び散り痛々しいまでにドス黒く染められていた。
皮の無い我が子の顔は殆ど原型のとどめなかったが
絶望と痛み、恐怖にその最後が染め上げられているのは表情から読み取れた。

妻は目を見開き絶叫したのち泡を吹いて倒れてしまった。
早く起こして子ども達を助けに行かねばならない。
出来ればまっすぐに向かいたいが妻をここに放置するわけにも行かない。

『解読不能』
部屋に戻ると、子ども達が居なくなっていた。
妻が半狂乱で喚きだしたので殴って黙らせた。
私はどうすればいいのかを思い悩んだ。
助けに行けば私達も殺される可能性が高い。
しかし親として子どもを見捨てるわけには行かない。
私は多少落ち着いた妻と共に子ども達を探しに慎重に部屋をでることにした。

死を覚悟しなければならないかもしれない。




一階中を探したが見つからない。
だが遺跡の中に何かが居ることは間違いないように思われた。
少なくとも子ども達が勝手にどこかに行ったのではないかという希望は無い。
遺跡の出入り口が何ものかの手によって封鎖されていた。



まず脱出経路を確保しようと主張する私を無視して妻は勝手に二階へと向かっていった。
仕方なく私も意を決して二階へと向かうことにする。
何かあった時の為に私はこの手記にこれを見つけた人へのメッセージを表紙に書いてから
見つからないように隠した。



『ここからページに皺がよっている
 字も乱れているようだ』

なんということだ、なんということだ
妻も殺されてしまった。
子ども達も殺された。
辛うじて息のあった一番下の子ももう長くあるまい。
舌を抜かれて口からゴボゴボボタボタと生ぬるいものが流れ出している。
いくら必死に口からソレを掻きだしても無駄だった。
いくらでも湧いてくる。
横にしているが今に窒息するか体の中身を流しすぎて死んでしまう。
流れ出したそれが私に良く似た紫色の髪を黒く染めていた。


ああなんということだ。
上の子どもは足を墨になるまで焼かれて床に転がされていた。
上の子はあの化物の前で何度も私の名を呼びながら
少しずつ私に向かっているところを踏み潰されてしまった。
ぐちゃりと頭がつぶれて愛らしかったあの顔がめちゃくちゃにつぶれる様が瞼の裏から離れない。
足元に転がった目玉が一つ、恨みがましそうに私を見ていた。


妻は縄で吊るされて頭頂部の皮を切り裂かれていた。
彼女も私に助けを求めていたが、男に皮を引き剥がされて頭の中身が地べたにべちゃりと落ちて死んだ。
中身の無い顔の皮は真ん中の子ととてもよく似ていた。
飛び散った目玉は階下へと落ちていった。

なんということだ。
何故私達がこんな目にあうのだろう。
私達は幸せに暮らしていただけだというのに

なんとか手記を拾いこの部屋に逃げ込んでバリケードを作ったがもう長くは保つまい。
家族もみんな死ぬんだ。
私ももうすぐ死ぬ。

せめてこの手記と私の祈りを後世に遺す。

神よ、どうか神よ我願いを聞き入れてください。
神よ、どうか私達家族の無念に答えてください。
神よ、どうかあの者に神の報いをお与えください。

ああ、ドアを叩く音が聞こえる。
せめてあの化物に苦しめられる前に下の子を楽にしてやろう。

この手記を見つけたものよ
あなたが力なきものならばあの化物から逃れて幸せに生きてください。
あなたが力あるものならばどうかあの化物を殺してください。

『ここでメモは終わっている
 このメモを発見した屋敷からは死体のようなものや
 記されている殺人の形跡らしきものは見つからなかった
 精々子どもの悪戯跡が見つかる程度である
 また、このメモに記されている遺跡の場所は未だ不明である
 巨人と呼ばれる何者かが歩きまわれることから考えて
 相当に大きな遺跡であることが予測されるが
 該当するような遺跡は未だ見つかっていない』



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最終更新:2008年11月08日 18:10
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