永遠のゆっくり18

※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。
※どくそ長いです。
※うんうん、まむまむ描写あり。
※標的は全員ゲスです。
※虐待レベルはベリーハードを目指します。


※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。


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『永遠のゆっくり』18


荒涼たる岩場とゆっくりプレイスを隔てるマジックミラーは、
一日のうち一度、三十分程度のわずかな時間だけ透明なガラスになった。

ゆっくりプレイスの中では、Y飾りのゆっくり達が、
山ほどのあまあまと遊具で、存分にゆっくりを堪能していた。
楽しげな話し声や室内の音楽も聞こえてくる。

「れいむもいれてねええ!!ゆっくりしたああいい!!」
「おなかすいたあああぁぁ!!あまあま!!あまあまわけてぇぇ!!」
「おでがいじばず!!おでがいじばずうう!!めぐんでぐだざいいいぃ!!」

ガラス越しに群れのゆっくり達は懇願したが、
聞き入れられないどころか、嘲笑と罵倒をもって応えられた。
懇願のうちに三十分は過ぎ去り、壁は再び鏡に戻る。

例え侮蔑と悪意を向けられていてさえ、
極上の美ゆっくりであるY飾りのゆっくり達の姿そのものが、
群れのゆっくり達にとってはゆっくりできるものだった。

壁が鏡に戻る瞬間、
ゆっくりプレイスは内部の音も含めてすべてこちら側と遮断される。
群れのゆっくり達はその時、眼前の鏡に移る自分たちの、
痩せて汚れた、涙に濡れるみすぼらしい姿を見せつけられた。

ゆっくり達はそんな自分を嫌悪し、みじめな気分になり、
なるべく鏡と離れ、岩場の真ん中で日がな一日泣きじゃくった。
どこを向いても、目に映るのはぶざまで醜い自分たちだった。
互いの姿が醜く思え、口を開けば愚痴や喧嘩ばかりだった。
家族と一緒にいても、何をしても、
脳裏にあのゆっくりプレイスが常にちらつく状態では全くゆっくりできなかった。

今となっては、あの三十分だけが唯一の楽しみだった。
あの美しいY飾りのゆっくり達を見てゆっくりしたい。
ゆっくり達は毎日それだけを楽しみに待っていた。
一週間近く何も口にせず、ゆっくり達はほぼ餓死寸前だったが、
食欲よりもむしろ、その渇望のほうが強かった。


一週間が過ぎたその日に、変化が起こった。

群れのゆっくり達が透明なガラスに張り付いてゆっくりプレイスを眺めているとき、
突然Y飾りのゆっくり達が騒ぎはじめた。

「ゆっ!!にんげんさんがきてくれたよ!!」
「ゆゆゆっ!!いそいでおむかえするよ!!」

ゆっくりプレイスの中に人間が入ってきていた。
大人のメスだ。

たちまちのうちにゆっくり達がプレイスの床で整列し、
人間を前にしてはきはきと挨拶をした。

「にんげんさん!きょうもきてくれてありがとうございます!!」
「「「「ありがとうございます!!」」」
「にんげんさんのおかげでゆっくりできます!!」
「「「「ゆっくりできます!!」」」」

お姉さんがそれに答えた。

「はいはい、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりおめぐみありがとうございます!!
ゆっくりさせていただきます!!」

異常な光景だった。
あんなにゆっくりできるY飾り達が、ゴミクズの人間に挨拶をしている。
群れは戸惑う。特に親れいむ達には理解不能だった。

とはいえ、群れのゆっくり達はそれを千載一遇のチャンスと捉えた。
人間に命令すれば、中に入れてもらえるのではないか。
なにしろ、可愛いゆっくりをゆっくりさせることは他種の幸せなのだ。
断られることは考えられない。

「ゆっくりしていってね!!」

親れいむは大サービスで挨拶をしてやった。
まずは可愛い姿を見せてやり、メロメロにしておくのだ。

人間とY飾り達の視線が一斉にこちらに集まった。
そして、Y飾り達が叫び始めた。

「ゆっくりできるわけないでしょおおお!?」
「なにがゆっくりしていってなのおおお!?
おまえらがいるとゆっくりできないんだよ!!」
「おまえらににんげんさんをゆっくりさせられるとおもってるのおおお!?
うすぎたないごみくずがおもいあがらないでねえええ!!!」
「ゆゆゆゆ………!?」

れいむ達は狼狽した。
たとえY飾りに比べれば醜かろうと、まがりなりにもゆっくり。
人間が自分たちを見てゆっくりするのは確実だろうと思っていた。
当のお姉さんも、苦笑まじりにこちらを見ているだけで挨拶には答えない。

しかし、ゆっくり達はこのチャンスにしがみつき、
お姉さんに向かって食事を要求し始めた。

「おねえさん!!かわいいれいむのためにあまあまをもってきてね!!」
「まりささまはおなかがぺこぺこなんだぜ!!はやくするんだぜええ!!」
「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!かわいそうだとおもわないの!?」
「ゆがあああああああああぁぁぁ!!!」

吼えたのはY飾り達だった。
ぎょっとして硬直しているうちに、Y飾り達は猛烈な勢いで扉に殺到し、
扉を開いてこちらになだれ込んできた。

「いいかげんにしろごみくずどもおおおぉぉぉ!!!」

Y飾りのまりさが、群れのゆっくりに体当たりを見舞った。
通常のゆっくりよりもはるかに強烈な衝撃に、
喰らったまりさが歯をまき散らしながら大きく吹き飛ぶ。

「にんげんさんにそんなくちをきいていいとおもってるのかああぁぁ!!」
「このごみくずどもが!!にんげんさんにっ!!あんなことを!!あんなことを!!」
「なにがしんぐるまざーなの!?ごみくず!!もういちどいってみろおぉぉ!!」
「ゆびぇええええええええーーーーーーっ!!?」

Y飾り達のリンチが群れのゆっくり達を蹂躙した。
吹き飛ばされ、踏みしだかれ、噛みつかれる。
巧みに致命傷を与えることだけは回避しているようだが、群れのゆっくり達はも激痛に泣き喚いた。

「やべで!!やべで!!ぼうやべでぐだざいいいいい!!!」
「ゆっぐりでぎないいいいい!!ゆっぐりざぜでええええ!!!」
「ごべんなざい!!ごべんなざい!!あやばりばずがらゆるじでぐだざいいい!!!」

親まりさが叫ぶと、Y飾り達は暴力の手を止めて問い詰めた。

「なにがごめんなさいなの!?はっきりいってね!!」
「ゆっぐ、ゆっぐ………うずぎだないごみぐずでごべんなざい………」
「ちがうでしょおおおぉぉぉ!!!」
「ゆびぇえええぇぇぇ!!」

再び体当たりを受け、親まりさが転がされる。

「おまえらごみくずなんかが!!にんげんさんにためぐちをきいたからだよ!!」
「ゆ、ゆ……?」
「あまあまをもってきてねだって!?
なんでおまえらなんかににんげんさんがあまあまをもってきてあげなきゃいけないの!?」
「ゆ、ゆ、ゆっくり……れいむはゆっくりできるから……にんげんさんが……」
「だまれええええぇぇぇ!!」
「ゆぎゅっ!!?」

今度は口を挟んだ親れいむが舞わされた。

「もういちどいってみろおおぉぉ!!
にんげんさんが!!おまえみたいな!!うすぎたないごみくずをみて!!
ゆっくりするわけないでしょおおおぉぉ!!?
ぶじょくしたな!!にんげんさんをぶじょくしたな!!あやまれ!!あやまれえぇ!!」

ばしばしと踏みつけられ、親れいむが泣き叫ぶ。

「ごべんなざい!!ごべんなざい!!ぼういいばぜん!!ごべんなざいい!!」
「なにがごめんなさいなの!?」
「にんげんさんをぶじょくしましたああぁぁ!!」
「もういちどきくよ!!
だれがおまえをみてゆっくりするの!?そんないきものがどこにいるの!!?」
「いばぜん!!いばぜえええん!!
でいぶをみでゆっぐりずるいぎぼのはいばぜえええええぇん!!」
「やっとわかったね!!ごみくず!!
ごみくずなりにゆっくりはんせいしてね!!」

ぺっ、と唾を吐きかけてYまりさはようやく身を引いた。
ぼろきれのように横たわり、親れいむは泣きじゃくる。
Yまりさは群れのゆっくり達に向きなおって叫んだ。

「おまえらもゆっくりりかいしてね!!
おまえらはだれもゆっくりなんかさせられない、きたないやくたたずのごみくずなんだよ!!
とくに、とくに、にんげんさんをゆっくりさせられるなんておもわないでねえぇぇ!!!
ゆっくりわかったの!?へんじしろおおぉ!!!」
「ばいいいいいぃぃ!!わがりばじだあああああ!!!」

涙を流し震えおののきながら、ゆっくり達が答える。

「ごみくずはそこでのたれじんでいってね!!」
「まりさ、もういいわ」
「ゆっ!!ゆっくりわかりました!!」

Yまりさを制止したのはお姉さんだった。
ガラス壁の向こうからお姉さんは言った。

「その子たちにも食べ物をあげましょう」
「ゆゆっ!?でも、こんなごみくずたちにごはんさんはもったいないとおもいます!!」
「いいのよ」
「ゆっくりわかりました!!」

プレイス内の大皿から菓子を集め、大皿に盛っていくY飾りのゆっくり達。
充分な量の菓子が盛られたところで、お姉さんが皿を手に取った。

「ゆゆっ!?まりさたちがはこびます!!」
「ごみくずどもににんげんさんからあげるなんておそれおおいです!!」
「いいの。さ、どいて」
「ゆっくりごめんなさい!!」

そうして、皿を運んでくるお姉さん。
その様子を見て、群れのゆっくり達は飛び跳ねた。

「ゆっ!!ありがとうにんげんさん!!
はやくあまあまおいていってね!!」
「おれいにおうたをうたってあげるよ!!
あまあまちょうだい!!あまあま!!」

一刻も早く菓子を受け取ろうと、扉のほうに集まっていく。
親れいむも、痛む体と空腹を引きずりながらそちらへ向かっていった。

やがて、扉を開いてお姉さんが現れた。

「はいはい、がっつかないの」


その瞬間、親れいむの中枢餡を衝撃が貫いた。

恐ろしく空腹だったが、もはや菓子などは眼中になかった。
わけがわからない。
わからないが、とにかく、このお姉さんにすりすりしたくて仕方がなかった。

このおねえさんはゆっくりできる。
親れいむの本能が、それを告げていた。それもこれまでにないほど強烈に。

菓子皿が地面に置かれたが、
親れいむは脇目もふらずにお姉さんに向かっていった。

「お、おねえさん!!すーりすーり!!れいむとすーりすーりしてね!!
ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」

先ほどYまりさにされた制裁も忘れ、人間にすり寄っていく。
見ると、群れの他のゆっくり達も同じようにお姉さんの方に向かっていた。
遅れてはならじと、親れいむは必死に這いずっていく。

しかしお姉さんは首を振り、立ち上がった。

「だめだめ。ゆっくりできないわね」
「どぼぢでぞんなごどいうのおおおぉぉぉ!!?」

群れの中から絶叫が響く。

「だーめ。みんな汚いもの。じゃあねー」
「ま!まって!!おねえざん!!すーりすーりしでえぇ!!」
「ずーりずーりじだああいいいい!!おねえざん!!もどっでぎでええええ!!」
「おねえざああああん!!おねえざああああんん!!おでがいいいいいぃ!!!」
「ゆっぐじじで!!ゆっぐじじでよおおおおぉぉぉ!!!」

飛び跳ね、追いすがり、懇願する群れに背を向け、
お姉さんは足早に扉の内側に引っこんで扉を閉めてしまった。

ゆっくりプレイス内では、
Y飾りのゆっくり達が、存分にお姉さんの腕や足にすりすりをしている。
どれもが恍惚の表情を浮かべ、このうえなくゆっくりしていた。
これまでで一番強い、身を焦がす羨望に親れいむは身悶えする。

ゆっくりしたい。
食欲とも性欲とも違う、そのどれよりも遥かに強い衝動。
気も狂わんばかりのその衝動に突き動かされ、
置かれた菓子の皿には目もくれず、Y飾り達の怒鳴り声にもひるまず、
親れいむ達はガラス壁に体当たりし、壁の向こうのお姉さんに懇願し続けた。
壁が再び鏡に戻ってしまうまでそれは続いた。


「………なんだこれ」
「ね、すごいでしょ」
「信じられない。あれだけ腹をすかしたゆっくりが、食事も忘れて人間にすり寄るなんて。
食欲がほぼ最優先で、人間を見下している生き物が……どういうわけなんだ?」
「問題。ゆっくりが一番ゆっくりできる状態って、なんだと思う?」
「………俺に聞かれてもわからないが、甘いものを食べてるときか?」
「ブー。解答。お母さんの中にいるとき」
「口の中に入って……いや、母胎か!」
「そういうこと。生まれる前、母親の子宮の中にいるときが一番ゆっくりしてるの。
人間と同じで、生まれた後はほとんど忘れちゃうようだけど、
胎内にいる間のゆっくり波は、生まれた後にどんな事をしてもまず到達できない数値なんだな」
「ゆっくり波?」
「脳波のゆっくりバージョンで、ゆっくり具合を数値化してみたのね。
で、研究してみた結果、にんっしんっしているゆっくりの子宮内の液体が鍵だとわかったの。
胎ゆっくりが浮かぶ海、人間でいう羊水ね。便宜上、「ゆー水」と名付けました」
「ゆーすい……」
「そのゆー水を大量に摂取し凝縮して、香水にしてみたわけ。
それを肌にふりかければ、人間だろうとブタだろうとれみりゃだろうと、あらゆるゆっくりがすり寄るようになるよ」
「そりゃまた。つくづく単純な生き物だな」
「コレが開発できた時点で、
ゆっくりに関するほとんどの問題は解決できたようなもんね。
あとはじっくり手間をかけていくだけってわけ」


鏡を前にしてゆっくりプレイスと遮断された群れは、
意気消沈の体で、それでも菓子を盛った皿に這いずっていった。

「むーしゃむーしゃ……しあわせー……」
「うっめ……これめっちゃうっめ……」

一週間ぶりの、それも初めて食べるほどの美味だったが、
その量は群れに対してとても充分とはいえなかったし、
何より、先ほどの人間にすげなくあしらわれたのが、なぜか無性に辛かった。

あの人間に褒めてほしい。可愛がってほしい。
餡子の底から湧き起こる、説明しようのない本能が思考を苛む。


その日の夜、岩場に身を横たえて眠りながら、
親れいむは夢を見た。

遠い遠い記憶。
すでに忘れかけていた、魂のゆっくり。
自分たちゆっくりが毎日本能的に追い求めている、
すべてが全く満たされた夢のような時が、
かつてたしかにあったのだ。

夢の中で、親れいむは、
大きく温かく優しい母親の頬にすーりすーりをしていた。


起きると、親れいむは泣いていた。
周囲には、同じように泣いているゆっくり達が多くいた。
同じ夢を見たのだろう。

互いに言葉を交わすでもなく、再び一方の鏡を凝視する。

あの三十分がその日も訪れ、群れのゆっくり達はガラス壁にしがみついた。
一同はY飾り達の暴力を恐れ、声をあげずに張り付いているだけだったが、
やがて人間の姿が現れると、無意識に鳴き声を上げた。

「ゆうぅ~~……ゆぅぅう……」
「ゆっくり……ゆっくりしたいぃ……」

しかし、その日やってきた人間は別のお姉さんだった。
親れいむ達は落胆したが、
扉が開かれ、菓子皿を手にそのお姉さんが現れると、
再び電流のような渇望に打たれ、お姉さんにすり寄ろうとした。
そしてまた拒絶される。

「ゆっくり!!ゆっくりしたああいいいい!!!」
「おでがい!!おでがい!!でいぶをゆっぐりざぜで!!ずーりずーりじでぇぇ!!」
「なんでぼじばず!!ずごじだげでいいんでず!!なーでなーでじでぐだざいいいい!!」
「ああやだやだ、汚い汚い」

泣きながら這いずってにじり寄るゆっくり達を振り切って、
お姉さんはさっさとゆっくりプレイスに戻って扉を閉めてしまう。

「ゆっぐじざぜでえええええええぇぇぇ!!!」


再び一週間が過ぎた。
わずかなあまあまで日々を食いつなぎ、
今日こそは、今日こそはと、毎日違うお姉さんに懇願する。

ゆっくり達はやつれ果て、疲れきっていた。
毎日泣きはらし、目の下には深い隈ができている。
最初は群れで固まっていたが、今ではそれぞれが勝手に動き、
会話をしようともしない。
薄汚れた互いの姿を見てもみじめになるばかりだった。


「今、あのゆっくり達は、
ゆー水の効果で人間に母親を見てるわけ」
「まさかそんな事ができるとは思わなかったな」
「母親に捨てられた子供ほどみじめなものはないよ。
アメリカのほうじゃたまに見かけたけど、ひどいもん。
お母さんに拒絶されるというのは、トラウマになるぐらい辛いことみたいだね」
「君も、もう少しお母さんを大事にしてやればいいだろう」
「そうだねー。週末には帰ろうかな。
じゃ、そろそろ次いこっか。ここからが面白いよー♪」


「おねえさんとすーりすーりしたいの?」

その日、外に出てきたY飾りのまりさが聞いてきた。
ゆっくり達が沸き返り、絶叫する。

「ゆ!!したいい!!ずーりずーりじだいいいぃぃ!!!」
「ばりざをおでがいじばず!!ずーりずーりじだいいいいい」
「ゆっぐりいいいい!!ゆっぐりいいいいいいい!!!」
「いまはだめだよ!!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉぉ!!?」

泣きわめくゆっくり達に、Yまりさが毅然として答えた。

「うすよごれたやくたたずのごみくずが、
にんげんさんにさわるなんておそれおおいんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」
「ううううう!!ゆううううううう!!!」
「でも、やくたたずだけど、がんばればあっちにいれてあげてもいいよ!!
おねえさんともすーりすーりできるよ!!」
「ゆ!!がんばる!!がんばりばずうううううぅぅぅ!!!」

初めて目の前にぶら下がる希望に、ゆっくり達は眼を輝かせた。

「そのためには、「しんっこうっ」のみちにはいるんだよ!」
「ゆ?」
「しんっこうってなに?」
「「ゆっくりきょう」にはいって、
にんげんさんのやくにたつゆっくりになれるようにしゅぎょうすることだよ!
そのためにはたくさんおぼえなきゃいけないよ!!しゅぎょうはつらいよ!!
つらいけど、がんばればおねえさんとすーりすーりできるよ!!」
「ゆゆゆゆ!!よくわからないけど、ありすはしんっこうっするわ!!」
「まりさもしんっこうっするんだぜ!!すーりすーりするのぜ!!」

群れのゆっくり達から次々と声があがる。

「しんっこうっのみちにはいるには、きまりごとをいっぱいおぼえなきゃいけないよ!!
それをおぼえたら、このばっじをあげるよ!!」

Yまりさが取り出したのは、
自分が頭につけているのと同じY字型の飾りだった。

「このばっじをつければ、ゆっくりきょうのいちいんだよ!
ゆっくりぷれいすにいれてあげるからね!!」

歓声をあげる群れに、Yまりさは一冊の本を取り出して言った。

「それじゃ、これからゆっくりきょうのおきてをおしえるからゆっくりおぼえてね!!」
「ゆゆぅ!!ゆっくりおぼえるよぉ!!」
「すーりすーり♪すーりすーり♪」
「ゆっくりはゆっくりできません!!」
「ゆっ?」

不思議そうに小首をかしげるゆっくり達に、Yまりさは怒鳴った。

「ゆっくりふくしょうしてね!!
ゆっくりはゆっくりできません!!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉ!!?ゆっくりできるよぉ!?」
「ゆっくりだまってね!!
さからうならゆっくりきょうにははいれないよ!!
おねえさんにすーりすーりしてもらえないよ!!」
「ゆゆうぅぅ!?」
「ふくしょうしてね!!
ゆっくりはゆっくりできません!!」
「「「ゆ……ゆっくりはゆっくりできません!!」」」

お姉さんに触りたい一心で群れは復唱する。

「このよのすべてのいきものは、
どんないきものでもゆっくりできます!!」
「「「ゆっくりできます!!」」」
「けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません!!」
「ゆゆゆぅぅぅ!?」
「ふくしょうしてね!!」
「「「ゆっくりだけはゆっくりできませんん!!」」」
「ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです!!」
「「「……ごみくずですぅ!!」」」
「このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです!!」
「「「にんげんさんです!!」」」

ちがうでしょおおおおぉぉぉ!!?

親れいむはそう叫びたくて仕方がなかった。
しかし、以前にY飾り達にリンチを受けた体験を思い出し、
逆らうのは思いとどまった。
何より、あのお姉さんたちがゆっくりできるのは確かだった。

掟は続く。

「やさしいにんげんさんは、
ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます!!」
「「「みちびいてくれます!!」」」
「ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして、
にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと!!」
「「「いうことをきくこと!!」」」
「そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます!!
それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです!!」
「「「ゆいいつのほうほうです!!」」」

最後に、Yまりさは一際声を張り上げて締めた。

「にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです!!!」
「「「ゆっくりのゆっくりです!!!」」」
「きょうおしえるのはこれだけだよ!!ゆっくりおぼえていってね!!」
「ゆ、ゆ、おかしいわ!」

不平を鳴らしたのは参謀役のぱちゅりーだった。

「なにがおかしいの?」

Yまりさがじりじりと詰め寄りながら聞き返す。
ぶるぶると震えながら、ぱちゅりーはそれでも答えた。

「ゆ、ゆ、でも、でも、にんげんさんはひどいことをするわ!
おやさいさんをひとりじめしたり……」
「おやさいさんはにんげんさんがそだててるんだよぉ!!!」

凄い剣幕でYまりさが怒鳴った。

「にんげんさんのおやさいをたべたの!?」
「ぱ、ぱちゅりーはたべてないわ……」
「ほんとう!?たべてたらこのばでつぶしてるよ!!」

その剣幕におののき、
群れの中の、畑に侵入した前科のあるゆっくりも黙り込んでしまう。

「にんげんさんがそだてたおやさいをぬすむゆっくりはゆっくりできないよ!!」
「お、おやさいはかってにはえて……」
「ぱちゅりぃぃぃ!!そんなこともしらないでもりのけんじゃなのおおぉ!?」

涙を一筋こぼし、ぱちゅりーは口をつぐむ。
子めーりんに負けて以来、ぱちゅりーは自分の知識に全く自信が持てなくなっていた。

「ゆゆぅ……でも……」

群れの中から、れいむ種の反論がさらに出てくる。
これほど自信を失い、これほど強い相手を前にしても、
人間が一番ゆっくりでき、ゆっくりはその奴隷になるべきだという理屈は、
ゆっくり達にとって到底すんなり受け入れられるものではなかった。

「おうたをうたってあげても、
にんげんさんはおれいをしてくれなかったよ……」
「おうたぁ!?」

Yまりさが向きなおって怒鳴る。

「おうたって、まさかあれのこと!?
ゆーゆーうめいてるだけの、あのひどいざつおんのこと!?」
「…………!!」

群れのれいむの脳裏に、テストの時の屈辱が甦る。

「そんなものをにんげんさんにきかせたのおおぉぉ!!?
そのせいでにんげんさんはゆっくりできなかったんだよ!!
おれいってなんなのおぉ!?ごみくず!!おまえがおわびするんだよ!!」
「……ゆ、ゆ………ごべんなざいぃ……」

反論したれいむは泣きながらうなだれた。

その後も弱々しい反論が群れから発せられたが、
そのどれもが、Yまりさの激しい叱責で切って捨てられた。

「にんげんさんがよこどりするうぅぅ!!?
ぜんぶにんげんさんのものなんだよ!!
このせかいのなかで、ごみくずのものなんかどこにもないんだよおぉ!!
にんげんさんがおめぐみしてくれるものだけがゆっくりのものだよ!!」
「ゆぐぐぐぐぅぅ………」
「わかったらおきてをおぼえてね!!
ゆっくりはゆっくりできません!!」
「「「ゆっくりはゆっくりできませええん!!」」」

その日は、その掟を何度も何度も復唱させられた。
それでも最後まで暗記できた者はいなかった。
暗記できるまで練習するよう命じると、
本を投げてよこし、Yまりさはゆっくりプレイスに帰っていった。

その大きくて薄い本には、先ほどの掟が簡単なひらがなで書いてあった。
字の読めるゆっくりがそれを手に取り、
群れといっしょに音読しはじめた。

ゆっくりの本能に抗うその掟は到底受け入れ難いものだったが、
お姉さんとすりすりしたい、ただその事のために、
他にやることもない無聊も手伝い、ゆっくり達は掟を繰り返し続けた。
無心でそれを繰り返していれば、少なくとも現状のみじめさを忘れることはできた。


ゆっくりはゆっくりできません

このよのすべてのいきものは
どんないきものでもゆっくりできます
けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません
ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです

このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです
やさしいにんげんさんは
ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます
ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして
にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと
そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます
それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです

にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです


一番覚えのよかった一匹のまりさ種が、丸一日かかって暗記した。

翌日、Yまりさの前で、そのまりさは掟を暗唱した。

「ゆ!!ごみくずなりによくおぼえたね!!」
「まりさはがんばったんだぜ!!すーりすーりするんだぜ!!」
「このぐらいでみとめられるとおもわないでねえぇぇ!!」

怒鳴られ、委縮するまりさ。
しかしその時、人間の声がかかってきた。

扉を開けてやってきたのはお姉さんだった。
お姉さんはまりさを見下ろして笑った。

「よく覚えたわね。偉いわよ、まりさ」
「ゆゆゆゆううぅぅ!!!」

感極まってぶるぶると震え、目をきらきら輝かせるまりさ。

「ご褒美をあげるわ。ほら、撫でてあげる」
「ゆ!!おねえさん!!すーりすーり!!すーりすーりしてええぇぇ!!!」

まりさの薄汚れた頬にお姉さんの手が触れ、優しく撫ぜた。

「ゆっ……………くりいいぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~………!!!」

あひる口で涙と涎を垂らし、頬を紅潮させて震えながらうれちーちーを漏らすまりさ。
恐らくは生涯最高にゆっくりできているだろうその表情が、群れの羨望をかきたてる。

「はい、おしまい」
「ゆゆうううぅぅぅ!!?もっと!!もっとすーりすーりいぃぃ!!」
「だーめ。もっと頑張ったらまたやってあげるわね」

そのまま立ち上がり、お姉さんは扉の向こうへ消えていってしまった。
群れは泣きながら追いすがり、すーりすーりを懇願したが、
Yまりさの怒鳴り声に追い返された。
あのまりさだけが、いまだに余韻にひたってうれちーちーを漏らし続けていた。


何日もかかって群れのゆっくり達は最初の掟を覚え、
お姉さんからご褒美のすーりすーりを受けて、その快感に魅せられた。

掟はそれだけではなく、
それから数多くの掟を教えられた。


にんげんさんにさからってはいけません

ゆっくりはみにくいいきものです
てとあしがないのはみっともないことです

ゆっくりはよわいいきものです
にんげんさんがまもってくれるおかげでいきていけます

ゆっくりはよくぶかい、あさましいいきものです
にんげんさんにしどうしてもらいましょう


反発したいもの、意味がよく掴めないものが多かったが、
お姉さんのご褒美をもらいたいというそのためだけに、
群れのゆっくり達は必死に覚え続けた。

通常のゆっくりでは、それらのすべてを暗記することは不可能だったが、
それでも掟は少しずつゆっくり達の無意識に浸透していった。
たとえ心で反発していても、口に出して音読しているうちに抵抗が薄れていく。
なにより、あのすーりすーりへの燃えるような渇望が、
ゆっくり達から思考能力を奪っていた。


「このせかいは、かみさまがつくったんだよ。
いぬさんもおはなさんももりさんもうみさんも、ぜんぶかみさまがつくったんだよ。
かみさまはさいごに、じぶんににせたいきものをつくって、
このせかいをかんりするやくめをあたえたんだよ。
それがにんげんさんだよ」

Yまりさは群れに講義していた。

「かみさまはいろんないきものさんをつくったけど、
つくったものには、わるいところがすこしずつあったよ。
そのわるいところを、かみさまはていねいにとりのぞいたよ。
いろんないきものさんのわるいところを、ちぎってまとめてすてたんだけど、
そのわるいくずがあつまって、ひとつのいきものになっちゃったよ。
それがゆっくりだよ」

群れの中から、かすかに嗚咽が漏れてくる。
その頃になると、群れのゆっくり達は素直にYまりさの教えに耳を傾けていた。


「にんげんさんは、ぜんちぜんのうのそんざいなんだよ。
にんげんさんにはなにもかもわかってるし、
ゆっくりたちがなにをしてるか、ぜんぶおみとおしなんだよ」

ゆうぅぅ、という嘆息が群れから上がった。

「ゆっくりがゆっくりできているかどうかは、
にんげんさんがぜんぶおしえてくれるよ。
まよったときは、にんげんさんにおしえてもらってね。
ゆっくりできることをしていたら、にんげんさんはゆるしてくれるし、
ゆっくりできないことをしていたら、にんげんさんがばつをあたえてくれるよ」

Yまりさは一旦言葉を切り、群れを見回した。
そして頷きながら続ける。

「それはとてもありがたいことなんだよ。
ばつをあたえてもらえば、ゆっくりははんせいできるよ。
そうすればもっとゆっくりできるようになれるよ。
でも、にんげんさんのばつで、ゆっくりがころされることもあるよ」

再び言葉を切り、間を置いてからYまりさは強い口調で続けた。

「それも、すごくありがたいことだよ!!
ゆっくりできないゆっくりは、
ころしてもらうことで、もうだれにもめいわくをかけずにすむよ。
そして、にんげんさんのばつをあたえてもらってしぬことで、
じごくへいかずにすむんだよ!」
「ゆゆっ?」
「じごくってなに?」

群れの中から質問が上がり、Yまりさはそれに答えた。

「じごくっていうのは、とってもとってもゆっくりできないところだよ。
にんげんさんのためにはたらいたゆっくりは、
えいえんにゆっくりしたあと、おそらへいくよ。
だけど、わるいことをしたゆっくりは、
おそらへいけないで、じごくへいくんだよ。
じごくでは、ずっとずっと、いたくてくるしくてゆっくりできないことをされるよ。
じごくにおちたゆっくりは、にどとしねないよ。
えいえんに、ずっと、ずっと、ずっとずっとくるしみつづけるんだよ。
えいえんにくるしくて、えいえんにゆっくりできないんだよ」
「ゆゆゆうううううぅぅぅぅ!!!」

群れのゆっくり達が恐怖の叫びを上げる。
Yまりさは満足げに見回して続けた。

「みんな、じごくへいきたい?」
「いぎだぐないでずううぅぅ!!」
「いやあぁぁ!!じごくいやああぁぁ!!」
「そうだよね。だから、ゆっくりできるゆっくりにならなきゃいけないよ。
にんげんさんのいうことをよくきいて、にんげんさんのためにはたらこうね。
そうすれば、おそらでゆっくりできるようになるよ。
それに、わるいことをしたとしても、
にんげんさんにばつをあたえてもらってしねば、
わるいことはゆるしてもらえて、やっぱりおそらでゆっくりできるよ。
みんな、よくおぼえてね!!にんげんさんにかんしゃしようね!!」
「はいいぃぃ!!」


「…………そんなに面白いか?自分でやっといて」
「あははははは、あははは、ははは、あっははははははは!」
「まさか宗教なんてものを持ち出すとはな」
「あははは、あのね、人間だってそうだけど、群れをまとめるには宗教が一番なの。
神様に天使、自分たちより上の存在が決めたルールならみんな素直に従うでしょ。
でも人間の場合、問題は、神様も天使もいないこと。
だから信仰心に頼るしかなくて、結局ルールとしては不安定になるよね。
でも、ゆっくりには、本物がいるんだからね。
人間がなってやればいいんだからさ、その、天使に、ぷはっ!
あは、あはははは、天使だって、あっはははは、ひい」
「君が笑っているのはゆっくりか?」
「ははははははは、あは、あは、うひっひっひ、あはははは」
「それとも人間のほうか?」


毎日、群れのゆっくり達はY飾り達の講義を受けた。
他にやることもない状況下、
皆が「ゆっくり教」の教えを理解し、覚えることに全霊をかたむけた。

定期的に、お姉さんの立ち会いのもとにテストが行われた。
暗記を要求されたのは一番最初の掟だけで、
それだけは毎回テストの最初に暗唱させられたが、
それ以外の教えについては、一問一答の形で試された。
ゆっくりできないこと、人間に対してやってはいけないこと、
様々な設問を受け、群れのゆっくり達が答える。
素早く答えられたものには、お姉さんがすーりすーりをしてくれた。


ゆっくりプレイス内のガラス近くに、外側に向けて大画面のテレビジョンが設置され、
ガラス越しにビデオを見せられた。
そのビデオを通して、ゆっくり達は毎日ゆっくりの悪行を見せつけられた。

人家に侵入し、中のものをひっくり返して汚すゆっくり達。
街中で人々にあまあまを要求するゆっくり達。
歌を歌い、おひねりを要求するゆっくり達。
ゴミ箱をあさり、通路にゴミをまき散らすゆっくり達。
そうしたゆっくり達の騒音や通行妨害に迷惑をこうむる者たちの声が、
市民、公務員、飼いゆっくり、さまざまな立場から語られる。

農家で野菜の栽培を生業とする人々が映され、
農業にかかる膨大な手間が詳細にわたって解説される。
その営みの苦労、それを乗り越えてもたらされる収穫の喜びに、
群れのゆっくり達が感動を覚え始めた頃、
「おやさいはかってにはえてくるんだよ!」を合言葉に畑に侵入するゆっくりが映される。
ゆっくりによって荒らされる畑、その害に苦しむ農家の声がたっぷりと流れる。

「とかいはなあい」と称して、飼いれいむを強姦する野良ありす。
犯し殺されたれいむの家族、そして飼い主の悲しむ姿が延々と映される。
レイパーありすの強姦から、人間の手当によって運よく生き延びた大勢のゆっくりが、
レイパーに対する恨みつらみと憎悪を激しい口調で並べ立てる。

ドスまりさが人間の村を訪れ、「きょうてい」を要求する映像。
ドススパークを盾に一方的な不平等条約を結ばされ、
村の糧を奪われて汲々とする村人たちの苦しみが、
特別貧乏な一家の子供たちを中心に描かれる。

自分たちがそれまで思ってもみなかった視点から描かれるゆっくり像に、
多くのゆっくり達が悔悟に苦しみ、自省の涙にくれた。
自分たちのことを憎々しげに語る大勢の人々の声は、自尊心を錐のように貫いた。

特に、ありす種の打ちひしがれようは激しかった。
レイパー被害のビデオを見せられたありす達は、
静かな、しかし激しい涙にくれ、その日は一睡もしなかった。
それ以後どこか卑屈になり、こそこそと群れの後ろのほうに隠れるようになった。


「ずいぶんと素直なんだな。ゆっくりに罪悪感があったのか」
「ゆー水で人間に依存させてるのが大きいんだけどね。
あのね、はっきり言うけどさ、ゆっくりって平和主義なんだよ。
人間から見れば唯我独尊の極致に見えるけど、
自分たちの可愛さで他の生き物をゆっくりさせてあげてるって本気で思ってるの。
レイパーにしたって、「とかいはなあい」で相手が幸せになるって本気で信じてる。
つまり、無償の愛で周囲に奉仕しているつもりでいるんだよ、ゆっくり達は。
実情はどうあれ、平和を愛するという点では人間以上みたいだよ」
「俺の子供を殺したのも平和を愛するからだっていうのか?」
「それ飛躍。あの十三匹はゲス素材を限界までつけ上がらせた個体で、
例としては極端すぎるね、根っこは同じだけど。
でもまあ、ゆっくりが一番偉いっていう自尊心の強さ、ふてぶてしさは、
自分たちが世界に奉仕しているという誇りに支えられてるわけね。
多いよね、人間にも。そういう人」
「まあ……そうだな」
「というわけで、そこを崩してやる。
理屈で言い聞かせたって、普通ゆっくりの頭じゃすんなりとは理解できないから、
物量作戦で、とにかく大勢の声を浴びせてやります。
ゆっくりを嫌っている、迷惑を被っている人たちを、映像として突きつけてやる。
その事実を突きつけられれば、ゆっくりのアイデンティティはガタガタってわけね。
自尊心を壊されたゆっくりは悲惨だよ~」


群れのゆっくり達は、いよいよ口数が少なくなり、
ゆっくり教の教えを復習する以外は、
うなだれ、うつろな暗い目でただただ地面を見つめて暮らすようになった。

自分たちが他の生き物たちをゆっくりさせている。
そう思えばこそ、ゆっくり達は堂々と生き、ゆっくりしてこれていた。
しかし、害獣として疎まれ憎まれている現状を知らされた今、
世界のどこに行っても憎まれ追い返され、迫害されるという不安感に苛まれた。
これまで、愛されているという確信のもとにゆっくりしてきたゆっくり達にとって、
世界中に憎悪されるというストレスはきりきりと精神を苛んだ。

そんなゆっくり達がしがみついたのは、ゆっくり教の教義だった。
最初の頃は、暴力を振るわれるのが怖さに、
そしてお姉さんにすーりすーりしてもらうために機械的に従っていたが、
いまでは心底からゆっくり教の教えを求め、理解しようとしていた。
打ち崩されたゆっくりの誇りと存在意義を、教義は新たに与えてくれた。


このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです
やさしいにんげんさんは
ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます
ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして
にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと
そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます
それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです

にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです


「しかし、ずいぶんと手間をかけるんだな」
「ん。た~っぷりとね。最低一年はかけたいね」
「俺が当初予定した計画より、だいぶ回りくどくなったようだ」
「これはね、圭一さん。もう圭一さん個人の復讐じゃないよ。
このゆっくり達への制裁でもない。
あたしたちが今やってるのは、
現在から未来にいたるまでの、全てのゆっくりの洗脳なんだからね。
じっくり丁寧にやらなくっちゃなのよ」


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最終更新:2011年07月28日 19:52
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