メディスン×ゆっくり系1 風下注意

照りつける日差しに目が眩む
メディスン・メランコリーはただの人形であった時とは違う感覚を毎日楽しんでいた
たった一人。あ、いやスーさんとお供の人形でたった三人
たった三人でメディスン・メランコリーの世界は完結していた
あの花咲き乱れる異変が起きるまでは

あの異変以来、メディスンはたまに外に出るようになった
遊んでいる妖精を物陰から見たり、働いている人間を物陰から見たり、だらけている妖怪を物陰から見たり

はじける笑顔が可愛い妖精
汗を拭く姿が凛々しい人間
酒を飲む様が小粋な妖怪

輪の中に入りたい輪の中に入れない

まだ誰かと接する事を恐れているメディスンは顔なじみの向日葵妖怪か兎を束ねる女医に会って
誰かと交わりたいと思う渇望に水を含ませる事にした

向日葵畑には誰もいなかった。何往復かして探したが誰もいなかった
永遠亭に行っても女医は出かけていると兎に伝えられるだけであった

メディスンはその日の散策を切り上げ、スーさんの待つ鈴蘭畑に戻ることにした
鈴蘭畑に戻るとメディスンは言葉を失った。一部だがスーさんが踏み荒らされている
ここに何か捨てに来る人間でさえ、スーさんの毒と可愛さゆえに踏み荒らす人間などいないのに


「ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!!」


罪人は罪人に似つかわしくないほどの笑顔でメディスンを迎えた
お供の人形がペコリと頭を下げるが、メディスンはしなかった。こいつはスーさんを踏み荒らした悪い奴なんだから
人形解放のための仲間を、とても大切な仲間を、アレは足蹴にしたのだ

「おねーさん、ここはまりさたちのおうちだよ」
「そうだよ。いまからすっきりするから、わるいけどかえってね」

挨拶とは裏腹に早く帰る事を催促される。メディスンは人間に一方的に捨てられた頃の事を思い出す

「おねーさん、きいてる?ここはまりさたちのおうちだよ」
「そうだよ。でていってね。おれからすっきりするんだから」
「あかちゃん、いっぱいつくるんだもんねー」
「ねー。ゆっくりそだてようねー」

幸せそうな顔、自分を置いて新しい人形を満足そうに抱きしめていた人間そっくり
緩んでニヤけて、自分以外の事を全く考えていない顔
メディスンはその右手を軽く振った。こんぱろ~こんぱろ~

「ゆっ、あれ、からだがうごかないよ。どうして?」

ゆっくりまりさのうごきが止まる。麻痺毒
だが、目に見えない毒を恐れるほどゆっくりたちは鋭い生き物ではない
彼女らを威嚇するだけなら、もっと別の。例えば角材同士をぶつけ合わせ音を出しながら近づけばよいのだ
明確な殺意は不可視の毒に成りゆっくりを蝕む

だが、メディスンは幼かった
殺人方法に何か知識があったわけでもなく
洗練された拷問の術があったわけでもなく
メディスンができたのは次第に毒の濃度を上げるという単純なやり方だった

ゆっくりれいむもゆっくりまりさの異変に気付く
「まりさ、どうしたの?すっきりしようよ」
ゆっくりれいむは不思議そうにゆっくりまりさに言う
風が鈴蘭の香りをゆっくりれいむたちの所まで届ける

「ゆっ、いいかおりー。ねぇ、まりさー」

しかし、ゆっくりまりさは微動だにしなかった
「れいむ、へんだよ。からだがうごかないんだよ」
「だいじょうぶ、まりさ、びょうき?」
心配そうに頬ずりするが、ゆっくりまりさはそれすらも感じない

濃度は一段階上へ

全身を虫が這いずり回る。狂乱毒
「ゆっ?ゆっ?なにこれ、きもちわるい、ゆっくりやめてね」
頬ずりをしていたゆっくりれいむはショックだった
ゆっくりまりさは今、全身を虫が這いずり回るような感覚に襲われているが
一切は虫などどこにもいない
だから「気持ち悪い」という言葉が自分を指しているものだと感じたからだ
「まりさ、えいむのこときらいになっちゃったの?」
愛を確認するように身を委ねるが、感覚が狂わされているゆっくりまりさには何も感じない
「きもちわるい!きもちわるい!!なにこれ、やめてやめて!!」

濃度は一段階上へ

偽りの幸せが歯車を狂わせる。幻想毒
虫の感覚が無くなり、動けるようになるゆっくりまりさ
目の前には愛したゆっくりれいむの姿、ゆっくりまりさはすぐに駆け寄り頬ずりをする
『ごめんね。れいむ、びょうきがゆっくりなおったよ』
『れいむー、すっきりしようね』
『おはなよりれいむのほうがきれいだよ』

「ごめんね。おねーさん、きもちわるいれいむからにげだせたよ」
「おねーさん、すっきりしようね」
「れいむよりおねーさんのほうがきれいだよ」

幻覚の中での言葉は全く別の意味にされ口から発言させられる
ゆっくりまりさが頬ずりしているのはメディスンの足
ゆっくりれいむは泣き出したが、それはゆっくりまりさには届かない

濃度は一段階上へ

生を曖昧にさせ死に至る。無痛毒

ゆっくりまりさは目を覚ます
ゆっくりれいむが目の前にいる
病気は治ったのだ。どこも痛くない。どこも痛くない
自分の身体からは餡子が漏れ、何か喋ろうとしても声の代わりに餡子が出てしまう
右目は見えないし、自分の頬を髪の毛が触る感覚も無い
ゆっくりれいむが怖い形相でこっちに叫んでいるが何も聞こえない
怒っているのかな?どこも痛くない。嫌われても心さえ痛くない
恋心など毒にもう殺されていた



メディスンは満足だった
スーさんを踏み荒らした悪い奴らは死んだ
毒で狂わせ、関係を奪い、憎しみを向けさせ、殺させた
ゆくりれいむは即死系の毒を使ってみた
苦しむ事すら許さない毒はゆっくりれいむを動かないオブジェに変えた
その傍には皮と餡子と帽子になってしまったゆっくりまりさ

失敗した
メディスンはそう感じた
せっかくの鈴蘭畑が餡子で台無しだ
鈴蘭畑では即死系の毒を使おうと心に決めた

メディスンは飛び立つ
鈴蘭畑では即死系の毒を使おう
それ以外では

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年09月14日 08:29
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。