※この作品は以下のものを含みます
- 脇役な虐待お兄さん
- 比較的普通の良いゆっくり
- 比較的普通の悪いゆっくり
- あんまり目立たないドスまりさ
- タイトルで既にバレバレな内容
それでも良い方のみ、以下にお進みください
汝は餡狼なりや?
やあ! 僕は虐待お兄さん!
最近、村の近くにドスのいるゆっくりの群れが住み着いたってんで、早速虐待しに行っているところさ!
武器は持たない! 空手だ! というか今日はあくまで様子見なので、特に何をするということもないのだけれど。
歌でも歌っちゃいそうな気分で歩いていると、すぐにドスまりさのデカ頭が見えてきた。
まずは定番の挨拶でもして、こっちに気を向けてやろう。僕は木陰から飛び出しながら、言った。
「やあ! ゆっくりしていって……ね?」
お決まりの言葉の途中で、僕は思わず声を止めてしまった。
というのも、ドスまりさやその周りのゆっくりの様子がおかしかったからである。
僕を目の当たりにしても、「ゆっくりしていってね!」と返さないどころか、警戒する様子さえない。
何やら複雑な事情がありそうである。
「ゆっ……なんだ、人間のお兄さんだね。ゆっくりしていってほしいけれど、まりさ達は今はゆっくりできないよ……」
しょぼくれた様子のドスまりさ。ますますワケが分からない。
「どうしたんだお前ら、何かあったのか?」
あまりに特異な状況に、思わずギャクタイズムソウルもなりを潜めてしまった。僕はドスまりさに近寄り、事情を聞くことにした。
「ゆっ、お兄さん、実はね……」
ドスまりさはぽつりぽつりと話し始めた。
その群れは、ごくごく普通のゆっくりの群れであった。
前いた場所に野生動物が増えてきたため大移動を行い、最近ここに住み着いたのだ。
中には人間に喧嘩を売るような愚かなゆっくりもいたが、案の定そういう連中は早死にしてしまった。
なので今では、残ったゆっくりだけで、できるだけ人間に関わらずゆっくり過ごそうということになったのだ。
しかしここで、ちょっとした異変が起きた。
或いはそれが全ての始まりであったのかもしれない。
「ゆゆっ! みなれないまりさだよ! ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていくんだぜ!」
流れ者の一匹のまりさが、群れの仲間に加わったのである。
まりさはすぐに一匹のれいむと仲良くなり、一緒に過ごし始めた。ここまでは群れも、新しい仲間を素直に歓迎していた。
だがしかしある朝、そのれいむが無残に食い殺された屍体となって発見されたのである。
近くには野犬やれみりゃもおらず、人間が近づいた痕跡もない。
疑いの目は、自然な流れとして、新参のまりさに向けられた。
昨晩れいむと最後までいたのもまりさだし、同じ巣に住んでいてれいむが外に出るのに気づかないはずがないと皆は思った。
「ちがうんだぜ! まりさはやってないんだぜ!
どす、みっかだけまってほしいんだぜ! そのあいだにまりさが、しんはんにんをみつけてみせるんだぜ!」
その申し出は受け入れられた。まりさの必死さと、れいむを殺した犯人に向ける怒りに、嘘はないとドスは感じたのだ。
しかし翌朝、まりさは群れの縄張りの西端で屍体となって見つかった。これにも、食い殺されたようなあとがあった。
誰がやったかは分からない。事実なのは、犯人と疑われたまりさがもう死んでしまったことである。
多くのものは、れみりゃの仕業に違いないと思った。そのくらいしか犯人のあてがなかった。
しかしさらに翌朝、縄張りの中心にれみりゃの帽子とちぎれた羽が落ちているのが発見された。
群れのゆっくり達は昨晩は一歩も巣の外に出なかったが、何かが揉み合っているような音がしたと証言した。
ここに来て、ドスと側近のぱちゅりーは事態がただならぬ方向に動き出していると悟った。
静かなゆっくりの群れの中で起きた、連続殺ゆっくり事件──
その犯人は、この群れの中の誰かである目算が高い──
ゆっくり達は互いに疑心暗鬼に陥り、さりとて仲間を犯人と決め付けることもできない。
このままではゆっくりできなくなってしまう。そのことだけは皆漠然と感じていた──
……と、そういう事情であるらしい。
「ふぅむ」
中々興味深い話ではある。が、僕の虐待欲求とは全く関係がない。
関係がないが、この事件を放置してゆっくりを虐待しても、収まりがつかない気がするのだ。
なんというか伏線が回収されてない小説でも読んでいる気がして。どうにかできないものか。
ゆっくり共々車座になって思い悩んでしまった。その状況に違和感を覚えなかった時点で、虐待お兄さんとしては既におかしい行動だと自分でも思ったけど。
しかしそこはそれ、ゆっくりとは違う。僕はすぐに面白いことを思いついた。
「ねぇドス、こんなのはどうだい?」
「ゆっ、何?」
群れのゆっくりの注目を浴びる中、僕はコホンと咳払いして喋りだす。
「君達の話を聞いていて、どうやらこの群れの中に犯人がいるらしいという事情は分かった。
だがそれが誰なのかまではわからない。それで困ってる。そうだね?」
「むきゅっ、そうよ!」
ドス側近のぱちゅりーが合いの手を入れる。
「対応策は色々あるだろう。夜に寝ずの番を立てるとか、戸締りをするとか。
だが寝ずの番を立てたところで、その番が襲われたら意味がない。一晩中外にいることになるからね。
最悪、寝ずの番として選ばれたゆっくりが犯人だったら、そのまま逃げられたり、また誰か殺されてしまうかもしれない。
戸締りをしていても、相手はれみりゃさえ殺してしまうようなやつだ。家の中まで入られてしまえば一貫の終わりだろうね」
「ゆ、ゆゆゆゆぅぅぅぅ~~~!!!」
「いやだぁあああああ、ごわいよぉぉぉぉぉ!!!」
僕の煽り口調に、ゆっくり達が恐怖に震えだす。そうでなくっちゃいけない。
「そこで提案がある。君達の中で、最も犯人として疑わしいゆっくり。それを僕に差し出して欲しい」
「「「「「ゆゆっ!!!???」」」」」
ゆっくり達がいっせいに声を上げた。
「どういうことなの!? ちゃんと説明してね!!」
ドスが詰め寄る。こうして見るとほんと迫力あるなぁ。
「いいから、落ち着いて話を最後まで聞いてね。
何も、そのゆっくりをすぐに殺すって言ってるわけじゃない。僕の家に連れ帰って、監視するだけさ。
そして翌日以降、しばらく誰も殺されなかったら、僕が捕まえてるやつが犯人ということになるだろう?」
「むきゅ、でもはんにんがころすのをがまんしたら、むじつのなかまにつみをきせることになるわ……」
ぱちゅりーが反論してきた。こいつは中々に頭がいいみたいだね。
「まぁ、そう思うだろうさ。
でもねぱちゅりー、一度仲間の味を覚えたゆっくりというのはね、その味に取り憑かれて……」
できるだけ怖い表情を作って詰め寄っていく。
「む、むきゅ、むきゅきゅ……!」
怯えるぱちゅりー。
「ゆっくりを食べずにいられないゆっくりになってしまうんだ……!」
「むきゅきゅううーーーーー!!!」
口からデロリと生クリームを垂れ流して気絶するぱちゅりー。気の弱いやつである。
別に嘘は言っていない。甘いものが大好きなゆっくりにとって、同じゆっくりは最も身近な甘味である。
餓えた状態になくとも共食いに走るゆっくりというのは、自然の中でもたまに出てくるのだ。
なんとも業の深い生き物である。
すっかり怯えてしまった群れに向けて、僕は説明を続けた。
「で、さっきの続きだけど。
もし容疑者ゆっくりを捕まえた状態でいても殺ゆっくり事件が発生した場合、まだ群れの中に犯人がいるということになる。
その場合は、また一番疑わしいゆっくりを僕に差し出してもらう。
これを殺されるゆっくりがいなくなるまで続ければ、いつかは犯人が見つかるだろう?」
「で、でもそれじゃあなかまがたくさん死んじゃうよ!」
慌てた様子でドスが反論してきた。
犯人が捕まればそれでいいが、逆に言えば捕まらない限り犠牲が出続けるわけだからね。
「勿論、それは分かってるさ。でも他の方法で犯人を捕まえられる算段はあるのかい?
群れ全部を監視することは、いくらなんでも僕にもできないし」
「ゆ、それは……」
僕は元気付けるようにドスに言う。
「なに、そんな心配することはないよ。疑わしいゆっくりは、夕方に投票でもして決めればいいじゃないか。
昼の間は皆で協力して犯人の痕跡を探すなりして、効率的に時間を使えばいいんだから。
それで犯人が分かれば、それが一番いいわけだしね」
「ゆ……なるほど。お兄さんのいうことにもいちりあるよ」
時間を有効に使う、というところで納得したのか、ドスはしきりに頷いた。
そしてドスは皆に向き直って、声を張った。
「みんな! はなしはきいていたね! お兄さんのいうとおり、みんなできょうりょくして犯人をさがすよ!」
「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」
解決の糸口が見え始めたからか、群れにも活気が戻ってきたようだ。
うんうん、良いことだね。なんだか僕まで嬉しくなってきたよ。
「さて、それじゃあ今日の容疑者ゆっくりを決めてほしいんだけど」
「「「「「ゆ゛っ!!!???」」」」」
いや、『ゆっ!?』て。
「だからさっき言ったじゃないか。皆で誰が犯人と思うか決めてくれって。
もうすぐ日も暮れちゃうし、早く決めてくれないとまた被害者が出ちゃうよ」
なんともおめでたい餡子脳っぷりである。本当に大丈夫かなぁ。
どのゆっくりも考え込みすぎて顔が赤くなってきたので、僕はいい加減助け舟を出してやることにした。
「まぁ、まずドスまりさは違うと思うよ。これだけ大きいのが夜中歩き回ってたら、さすがに皆気づくだろうしね。
あと、ぱちゅりー種も違うかな。いくらなんでもぱちゅりーにれみりゃは殺せないだろう。
同様の理由で、子供のゆっくりも違うだろうね。──だから残るのは、大人のゆっくりだ」
「「「「「ゆゆゆゆゆゆ~~~~~~……」」」」」
これで容疑者候補は半分程度にまで絞られたが、それでも皆悩んでいた。
だが効果はあったようで、やがて話し合っていた数匹のゆっくりが声を上げた。
「あのきのしたにすんでるありすがあやしいよ!!!」
と一匹のありすを名指しした。
当然、たまったもんじゃないのは当のありす本人だ。
「どぉじでぞんなごどいうのぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」
発言したゆっくりに対してくってかかるありすだったが、別のゆっくりがその理由を語る。
「だってありす、あのまりさといっしょにすんでたれいむがうらやましいっていってたでしょ!
だからきっとありすがれいむをころしたんだよ!!!」
「そうだとしても、ありずがまりざをごろずりゆうはもっどないでじょおおおおお!!!???」
「はんにんだってばれそうになったから、くちふうじをしたんだよ!!!」
何匹かのゆっくりがありすを攻め立てると、他のゆっくりもそれに迎合し始めた。おお、醜い醜い。
まぁそれだけ、連日連夜の殺ゆっくり事件にストレスがたまっていたということだろう。
なんでもいいから、罪を押し付けられる相手が欲しいのだ、要は。
「決まったようだね」
僕はありすを持ち上げ、しっかりと胸に抱いた。
「いや゛あああああああ!!! ありずはなにぼじでないいいいいいい!!!」
「はいはい落ち着いてね。何も殺すって言ってるわけじゃないんだから」
じたばた暴れるありすをなんとか押さえつけると、群れの中から数匹のゆっくりが現れた。
ありすが三匹にまりさが三匹。いずれも子ゆっくりである。
「おかーさんをはなせえええええええ!!!」
「おかーさんはなにもしてないよ!! きのうはゆっくりこもりうたをうたってくれたよ!!」
「おねがいじまずぅうぅううう!! おがーざんをだずげでえええええええ!!」
「みんな……!」
必死に無実を訴える子供達。自分を信じてくれた子供達に涙を流す母。
その姿に群れのゆっくり達の何匹かはほろほろと涙をこぼしている。実に感動的なシーンだ。ゆっくりじゃなければ。
「大丈夫さ。本当に君達のお母さんが何もしてないというなら、真犯人が捕まったときにちゃんと解放するよ。それまでの辛抱だよ」
僕もついつい情にほだされ(たということにして)、子供達を慰めた。
ありすも、こんな良い子供達を前にいつまでも無様に泣いているわけにはいかないと思ったのだろう。
「だいじょうぶよ、しんぱいしないで! おかあさんはきっとぶじにかえってくるからね! だからみんなはゆっくりまっててね!」
「「「「「「ゆっくりまってるよ!!!!!!」」」」」」
強い絆で結ばれた親子の姿がそこにあった。ドスも側近ぱちゅりー(いつの間にか復活していた)も滝のような涙を流している。
「じゃあ行こうか、ありす」
「ええ」
僕はありすを連れて、ゆっくりの群れを去った。
後ろからはいつまでも子ゆっくり達の声が聞こえてきていた。
そして、翌日。
結論から言えば、ありすは犯人ではなかった。群れで新たな犠牲者が出たからだ。
しかも殺されたのは、犯人として疑われたありすの長女まりさだった。
「どうしたものかな」
朝イチで群れに行ってそのことを聞いた僕は、ありすに事実をありのまま伝えるかどうか迷った。
残された子供達は意気消沈した様子であり、泣き叫ぶことすらしなかった。
だが結局、何も知らせないことにした。わざわざ心労をかける必要もなかろう。
ちなみにありすは牢獄代わりに透明な箱に入れてある。子供達を心の支えにしているのか、大人しいものだった。
え? 虐待しないのかって? いやいや、確かに僕は虐待お兄さんだが、無実のゆっくりを虐めるのは好きではないのだ。
……というのは嘘で、これも考えあってのことである。
僕は既にある推理を打ち立てていた。まだ『もしかして』というレベルで、だけど。
でももしそれが正しいなら、容疑者ゆっくり達には事件解決まで健康に過ごしてほしい。
それに一応、ドスと約束したことでもあるしね。今後のためにも、信頼は得ておくに越したことはない。
そう、既に僕の中では、今後のプランが構築されつつあった。僕が最大限の利益を得る方法が……
夕方になって再び群れを訪れると、今日の下手人はあるまりさに決定されたようだ。
「なにをいってるんだぜ! まりさははんにんなんかじゃないんだぜ!」
そう主張するが、決定は決定なので覆らない。
このまりさ、流れ者のまりさともありす一家とも普段から折り合いが悪かったらしく、犯人候補の槍玉に上がったらしい。
普段からのご近所づきあいって大切だよね。『イツカハヤルトオモッテタンデスヨー』ってやつだ。
「おかーさんひどいよ! わるいおかーさんはもうかえってこないでね!」
「おかーさんはもうまりさたちのおかーさんなんかじゃないよ! ぷんぷん!」
「ゆっきゅりちんでね!」
「どぉじでぞんなごどいうんだぜぇぇぇぇぇぇ!!!???」
しかも昨日のありす一家と違って家族からの人望すらないらしい。何気に末っ子が一番口が悪いな。
僕はまりさを連れ帰り、昨日のありすと同じく透明な箱に詰め込んだ。
ここからは似たような事態が続いていくので、できるだけ簡潔に追っていこう。
さらに翌日。
今度はまりさ一家の三姉妹の末っ子が殺されていた。
しかも昨日のありす家のまりさが殺されたのは巣の外だったのに、この末っ子は巣の中で殺されていたのだ。
巣の入り口は壊されており、誰かが侵入したものと思われた。
ドスは夜の番をしていたが、犯人の姿を見つけることはできなかった。
「なにかおおきなものがはいってきてあかちゃんをごろじぢゃっだぁあああ!!!」
「どぉじでえええ!!! まりざのいぼうどおおおお!!!」
ガタガタ震えるまりさ姉妹。これでまた、事件は振り出しに戻ったわけだ。
ドスも側近ぱちゅりーも色々考えているようだが、中々犯人を見つけ出す良い手立ては見つからないようである。
その日は一匹のちぇんが容疑者として僕に引き渡された。
昼の犯人捜索を、親代わりであった病気のらんしゃまの看病を理由に断ったためだ。ほとんど言いがかりである。
だが、やはりと言うべきか、ちぇんもまた犯人ではなかった。
縄張りの外れで、何かに絞め殺されたかのようならんしゃまの屍体が見つかったからである。
この日もドスが深夜遅くまで番をしており、らんしゃまが巣を出て行くのを見かけたらしい。
そして追いかけたものの途中で見失い、明け方近くになってようやく変わり果てたらんしゃまを発見したのだ。
子供を連れ去られ、伴侶を喪ったゆかりんはひどく消沈していた。
その日はある一家の母れいむが容疑者として引っ立てられた。
翌朝、れいむの巣の中で一人娘のまりさが殺されていた。
このとき父まりさは、子供を守るために、自分も群れを見張ろうと巣の前で歩哨に立っていたという。
しかしついうっかり眠ってしまい、朝になって巣の中に戻ると、ぺしゃんこになった子まりさの姿があったという。
巣の入り口は破壊されておらず、犯人の進入経路は謎なままだった。
容疑者として、一人ひっそりと暮らしていたみょんが上げられた。
その次の朝には、別の場所に住んでいたみょんの両親の、母みょんのほうが遺体となって見つかった。
遺体には暴行、もといすっきりー!した痕跡があり、幸いにも蔓に実った子供達は無事だった。
遺体は鋭利な刃物で下半分を切断されたような状態だった。凶器は恐らく、近くに落ちていた細長い石だろう。
なんとか無事に生まれた落ちた赤みょんは、そのまま父みょんが育てることになった。
容疑者として、群れ一番の性欲を誇るありすが引っ立てられた。
もうこの時点で、それまでの被害者の共通点を見出して犯人を決めるという余裕はゆっくり達から抜け落ちている。
翌朝見つかったのは、ありすのセフレ(笑)の一匹であった子ぱちゅりーの屍体だった。
同じくセフレ(笑)であったまりさ、れいむに事情聴取が行われたが、三匹は仲が悪かったらしく、お互いに何も知らないと主張した。
最近は子ぱちゅりーばかりがありすの寵愛を受けており、二匹は常々快く思っていなかったようである。
性欲全開ありす達とずっと仲の悪かった、別の理性的なありすが引っ立てられた。
また最近側近ぱちゅりーは、屍体発見の報を受けるたびに「むきゅー!」とクリームを吐き出して失神してしまうらしい。
全体的に、精神の限界が近いかもしれない。
さらに翌朝、理性ありすと同棲していたまりさが死んでいた。
巣の中にあった木の枝で目を刺し殺されていたのである。
しかもそれだけではなく、巣の入り口からは誰が入った痕跡もなかった。
またドスが一晩中見張りをしていたのだが、その間ありすとまりさの巣に誰かが入っていく様子もなかったという。
ドスが見張っていたすぐそばに二人の巣があり、この証言の信頼性は高かった。
この日の容疑者には、ある大家族を一人で支えていた母れいむが上げられた。
理由は巣が一番近いからだった。
そのまた翌朝、れいむ一家の末っ子の赤れいむが殺されていた。
この赤れいむは生まれつき跳ねることができない未熟児だった。
屍体は見るも無残な姿で、餡子の染みとしか分からないほどまでに念入りにすり潰されていた。
昨晩のまりさと同じく、密室状態での殺ゆっくりだった。
しかし赤れいむ以外の子供は一切被害を受けておらず、また殺されたことにさえ気づかなかったという
姉妹達は、元々ゆっくりできてない赤ゆっくりが嫌いだったようで、特段悲しむ素振りも見せなかった。
繰り返される悲劇に、群れのゆっくり達は、ゆっくりとその精神をすり減らしていく。
このままでは群れ自体が長く続かないことだろう。それは僕の望むところではない。
──さて。
もうそろそろ、解答に入ってもいいかもしれない。
群れ全体のストレスも既に限界であるし、側近ぱちゅりーに至ってはいい加減クリームを吐き出しすぎである。
まぁ毎日野菜クズなんかを差し入れしてやってるから死ぬということはあるまいが。
僕は家を出て、いつもより早めに群れに向かった。
最終更新:2008年09月14日 08:52