まりさの誕生 3の続きです






もう自分に存在価値はなくなってしまった
屑な人間を殺す、そのことだけを考えて今まで生きていたはずなのに…
自分が殺すべき屑はゆっくりだった
なんとかショックから立ち直ろうろうとしてよろよろと動き出す
なんとか森のみんなにぱちゅりーとちぇんが死んだことを伝える
ちぇんの家族にちぇんを守れなかったことを詫びる

「ちぇんもぱちゅりーを守っていったならきっとぱちゅりーとゆっくりできるよー!!ちぇんにはわかる、わかるよー!!!」
ちぇんの親は変異まりさを責めなかった
むしろまりさを手伝い、最期までぱちゅリーを守ろうとした自分の子供を誇りに思うっと言ってくれた
もしこのちぇんが他のことを言ったら変異まりさは森中のゆっくりを皆殺しにしたかもしれない。
だが、このちぇんの言葉がまりさの考えを変えた、新しい存在意義を生み出した
ゆっくりは所詮屑だ、でもこの森のゆっくりだけは自分を慕ってくれる
子供達も自分がゆっくりできない気がするのは巨体ゆえの「おぅら」か何かだと理解してくれた
彼らのために何かできることはないか

もし、まりさがぱちゅりーの最後の言葉を聞いていたら結果は違ったものになっただろう。

まりさは人間に会いに行くことにした
殺すためではない、人間のルールを学ぶためだ
自分が人間のもとで学び、その結果を森に持ち帰る
その結果この森のゆっくりは人間と共に暮らせるはずだ
少なくとも人間に迷惑をかけない、そうであれば人間に殺される理由はなくなる
まりさはなんとかこの森の屑を、屑だけど自分が愛する仲間を屑から脱出させようとした。

次の日、変異まりさは人間に会いに行くことにした
殺したいほどに憎んだ相手、その相手に頭を下げるのである
ほんの少し気に食わなかった、だがそれ以上にうまくいったときの利益は大きい
森のゆっくりは止めようとした
人間にあっても殺されるだけだと、変異まりさの次に頭のいいありすは反対した
れいむはいかないでと嘆いた
この変異まりさがいたため今年は例年より捕食されるゆっくりが減ったのだ
れみりゃの群れ相手に一歩も退かず、野犬すら一撃で気絶させるこのゆっくりがいなければ捕食種が現れる

「ゆっ、まりさはなんといわれてもにんげんにあいにいくよ!!」
「どうしてもやめないの?まりさ」
「いつまでもゆっくりここにいてよ!まりさがいないとみんなゆっくりできないよ!!!」
「れいむ、ありす、まりさがいないあいだはすこしゆっくりしにくくなるとおもうけど…でも、まりさがいかないとみんなゆっくりできなくなるんだ!!!」
このまま自分も森の仲間も屑になるのはいやだった
「みんなひとつだけやくそくしてね!!!にんげんにあったらだめだよ!もりからでたらだめだよ!」
変異まりさは今ここでもっと詳しいことを伝えたかった
だが、彼女らの餡子脳はきっとそれを理解できない
だから人間に近づく可能性が減るように釘をさしておくことしかできなかった。

ぱちゅりーは人間についてはあまりまりさに教えようとしなかった
ぱちゅりー自身人間を近くで見たことがなかったからだ
昼は里を一望できる丘から観察し、人間の子供が集まっていた場所に夜になってから向かった
夜になれば人間の多くは巣に帰ることは知っていた
人間の生活はわからないがぱちゅりーみたいな知恵袋がいるはずだ
そう考え、まりさはあたりを警戒しながら、人通りの少ない路地裏を通りながら子供のいた建物へ近づいて行った
途中でヤツメウナギの屋台を見つけ、食べようと思ったがやめておいた
あれは明らかに人間の作ったもの、迂闊に手を出してはいけない
人間のものにゆっくりのルールで手を出して
「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー!!」となってはいけない
それは自分も屑だったと認めることになる
この日は晴れだと思っていたまりさの予想は完全に外れた
夜は雲が見えないため、予想の精度が半減するのだ

上白沢慧音は人里の中心部に近い寺子屋に住んでいる
正確には家の一角を寺子屋として利用しているのだが、寺子屋部分がほとんどを占めているためさっきの表現の方が似合う
そんな彼女はついさっき風呂に入り、寝間着に着替え、今は明日の授業の計画を立てていた
(雨が強くなってきたな)
そんなことを考えていた時、家の戸をたたく音が聞こえた
音からして大人だ、おそらく里の有力者だろう
でもこんな時間に何の用だろう、まさか人間が妖怪に襲われたのだろうか?
そんな不安を感じながら急いで戸に向かう
戸をあけたとき慧音は面食らった、ずっと里の男が来ると思ったのに、自分の目の前には黒い三角しかなかった
それは雨に濡れた変異まりさの帽子だった

「ゆっ!夜にゆっくりきてごめんね!!!おねえさんは、ぱちゅりー?」
今こいつは何て言った?私のことをぱちゅりーだと?
来る場所が違うと突っ込みたくなった
が、人間でいう「夜分遅くにすいません」を言ってきたこの巨大ゆっくりに慧音は好意を覚えたのかもしれない
「ちがう、私は上白沢慧音、パチュリー・ノーレッジじゃないぞ」
「ゆゆっ、ちがうの、おねえさんはゆっくりぱちゅりーみたいなひと?」
ゆっくりぱちゅりーみたいとゆっくりの基準でいえば二つある
ひとつは病弱で、餌もろくに取れない役立たず、群れの中の嫌われ者
もう一つは知恵袋、群れの子供たちの教育係を務め、群れの頭脳として皆がゆっくりできるように尽力する
きっと後者だろう、そう慧音は結論付けた
「ああ、たぶん似たような物だ、私は先生だがな」
「ゆゆっ!!おねーさん、よければまりさにゆっくりにんげんのゆっくりをおしえてね!!!」
ゆっくりに敬語と遠慮という概念はない
たまに使うゆっくりが居るがそれらは人間のペットだったものがほとんどだ
だから慧音はこのおおきなまりさが「よければ~してほしい」という
すこしだけ遠慮しようとしたのだ
とりあえず慧音はまりさを玄関に入れた、まりさはまだ耐えているがずっと立ち話をしていれば溶けてしまう
それにわざわざ人里にきて、自分を訪ねたゆっくりなんて初めてだ、少しは言葉が通じるようだから話だけでも聞いてやろう
そんなことを思いながら洗面所にタオルを取りに行った

やはり人間と話して正解だったと変異まりさは思った
この人はやっぱりぱちゅりーに近いものだった
たしか…かみしらさわ・けーね・せんせー といったか?
人間には名前があるとぱちゅりーにきいたことがある
不便なことだ、ゆっくりは目の前に100匹のれいむがいても「れいむ」の一言で区別できるのに
そんなことを考えているとけーねが戻ってきた
雨に濡れた体をよくわからないふわふわしたもので拭いてくれた
よくわからない二つの柔らかいものを感じたが、なぜか昔自分を舐めてくれた母を思い出した
ゆっくりにはこんな膨らみは無いのに、母を思い出しながらまりさは涙を流した

慧音はゆっくりを居間に上げた
こんなに大きいなら相当重いだろう、床が沈み込まないだろうかと思ったが接地面積も大きい分そんなことはなかった
まりさは慧音にこれまでのことを話した
一時間たてば食べ物以外は忘れると聞いたのに、どうやらこいつは一年前のことも覚えているらしい
そしてまりさにお茶を出してどうしてここに来たのかを聞いてみた
とりあえずここまで頭にいゆっくりだ、お茶ぐらい出してもいいだろう…
10分後、慧音は唖然としていた、開いた口が塞がらないとはこのことか
まりさの話ではない、いや、確かにまりさの話も興味深かった
人間に復讐しようと思ったがそれでは解決しないと悟り、人間のルールを学び共存しようとする
ゆっくりの常識を超えたその考えは慧音を感動させるに足るものだったがそれ以上の衝撃
まさか飲めないだろうと思って出したお茶、まりさはそれをこぼさずに飲んだ
頬をうまく使い、湯呑を挟み、お茶を飲む、そのシュールな光景は慧音の動きを止めるに十分だった

とりあえず大体の話はまとまった、決まったことは大体この5つ

1 ゆっくりは慧音の家に居候する 物置の一つをまりさの部屋にする
2 ある程度人間のルールを覚えるまでの間は慧音の許可無しにまりさの部屋から出ない
  これは授業中に子供たちに目撃され無用なトラブルを起こさせないためである
3 変異まりさの出身地である森にゆっくり狩り目的で人を向かわせない
  畑を荒らしたゆっくりはどうすればいいと聞いたら
  「そんなくずはゆっくりおしおきしてね!!!」と答えた
4 まりさは慧音の命令を聞くこと
5 慧音は可能な限りまりさの要望を聞く事 慧音はまりさの要望を拒否することができる

まさかゆっくりがこのすべてを記憶し守ってくれるのかという不安はあった
ためしに寝る前に聞いたところ一字一句間違わずに答えたのでその日は安心して眠った

次の日、寺子屋の授業が終わった後慧音は里の集会に参加した
まりさとの約束の一つを果たすためである
森でゆっくり狩りをしないことを決めようとしたら里の男は反対したが
その森以外のゆっくり狩りは今までどうり可
悪いことをした制裁は今までどうり可
ということで納得してもらった

帰りになんとかビーンズとかいう団体の幹部に
「慧音様もゆっくりの素晴らしさがわかってくださいましたか!!」
「ゆっくりは素晴らしいものです!!彼らが跳ねれば飛び散る泥は天使の福音となる…」
とかいって団体加入を進めてきたので断った
慧音は虐待派でも保護派でもない、意味もなく虐めるのは嫌いだが制裁はやむなしと思っている
それに幹部会員の山の巫女が急いで脱会するほどのゆっくり新興宗教と化した団体に入る気はなかった

それからしばらくの間朝食事をした後は慧音は授業
まりさは部屋で慧音の買ってくれた絵本を読み漁った
まりさにとって森の仲間がゆっくりするのに最大の障害、それは己の習性だ
他人の家に上がりこみそこに主人がいたとしても
「ここはれーむたちのおうちだよ!!」
と、かたくなに人間の家であることを認めない
また、明らかに人の家であってもぱっと見で誰もいなかったらすぐ空家だと思ってしまう
事実自分も何回か慧音に
「ここはまりさのおうちだよ!!!けいねもいっしょにゆっくりしようね!!」
とか言いそうになった。
自分でさえこれなのだから森のゆっくりがこの習性を捨てきることはたぶんできない
だが、この本、(絵である程度内容は理解した)文字があればすべて変わる
森のゆっくり全員が文字を読めるようになれば
人間が家や畑に「このばしょはにんげんのばしょです」
と書いてくれれば人間とゆっくりの無用な衝突を回避できる
ある程度人間のルールを覚えたら真っ先に文字を覚えよう。
そうこのまりさは誓った

慧音にとってこのまりさは最初は「厄介なやつが来たな」程度の認識だった
だが今ではこのゆっくりは子どもたち以上に熱心に自分の授業を聞いてくれる
そして涎を出さないように舌を使いひらがなの読み書きをマスターした
もっともまりさの書く文字はどせいさんなみの汚さで慧音が解読するのに時間はかかったが

そしてまりさが希望した農耕については慧音が里人に頼み込んだ結果
作物の収穫だけだが手伝わせてもらうこと、農家の人に農耕の話を聞くことができた
最初男は後悔した、いくら尊敬する慧音先生の頼みでもこんなやつを畑に入れていいのだろうか?
その悩みはすぐに吹っ飛んだ、確かに細かい作業、道具を使う作業は苦手だった
だがそれ以上に重い荷物の運搬にかけて、人間以上の仕事をしたのだ

雪が降りしきるその日、変異まりさは農家にもらった種と慧音の絵本を持って森に帰った
ぱちゅリーの後を継いだありすに農耕と読み書きを広めてもらうためだ
冬ごもりの寸前に現れた訪問者にありすは驚いた
が、まりさの話を聞いて春が来たときにすぐ皆に広めると約束してくれた
これが成功すればこの森は安泰だ この森だけは屑ゆっくりの森からいいゆっくりの森になるのだ

変異まりさは今幸せを謳歌していた
慧音は怒らせると怖いが優しい
たまに来る妹紅も最初は自分を嫌っていたが今ではいい友達になった
あの姉が引き裂いた絵に描かれた人もたまに自分の餡子を取って行くがお礼としてお菓子をくれるので大好きだ
子どもたちにも受け入れられた、最初は自分のことを怖がっていたが今では慧音の次に自分を頼ってくれる
里にも受け入れられた、慧音先生のとこのゆっくりとして、みんな自分の事を好いてくれる
森のありすが農耕とひらがなを広めてくれるか心配だったが…今は冬ごもり中だ、心配してもしょうがない
もしだめなら春にでも帰って自分が教えればいい

今この変異まりさは、あのぱちゅりーよりも幸せだった



だが忘れないでほしい。
ここは虐めスレだ
いじめには二つ理由がある
意味もなく虐めるというのと、意味があって虐める
前者は「ただなんとなく」とか「うざい」という理由で起こるいじめ
後者は「異質な物への恐怖」や「自分より優れた者への嫉妬」がある
どちらも現実には許されることではないだろう
だが後者には少しだけ同情の余地はあるかもしれない
変異まりさはゆっくりから見ても人間から見ても異質
しかも天気予報や簡単な物理法則にかけては平均的な人間の大人をも上回る
まりさの幸せは半年しかもたなかった











あとがき
どうも、セインと名乗ることに決めた作者です
他のBBSとかネトゲにも同じ名前でいることが多いので見かけても無視してください
少し長くなったためラストは次回まで持ち越し、許せ


ごめん、たぶん次回で完結

(ドス)まりさの幸せ 4
7月28日 1706

宿題ほっといてこんなSS書いてる
セイン

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最終更新:2022年05月03日 17:59