※ 自然界のゆっくりのパニックものです。

 ※ しーしー表現及び、俺設定ありです。






 とあるお山のゆっくりの里。
 ずっと待ちわびた春を迎え、思い思いにゆっくりする饅頭達。

 「むーしゃ、むーしゃ、たんぽぽさんもれんげさんも、すごくゆっくりできるね」
 「ゆ!ゆ!ちょうちょさんゆっくりたべられてね」
 「もうすぐうまれるあかちゃんたち、たいようさんでぽかぽかしながら、
 おかあさんのおうたをゆっくりきいてね!ゆ~ゆゆ~~♪ゆっくり~~~♪」

 食料は豊富で、外敵も少ない。そんなゆっくりぷれいすの
 ゆっくりした日々がずっと続くと皆が思っていた。






 そんなある日。

 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛おぉぉぉぉーーーーー」

 このあたりでは見かけないゆっくりちぇんが、叫びながら里の外から
 全力ダッシュでやってくる。
 ぶつかりそうになり、飛びのいたゆっくりたちが見たのはちぇんの帽子と髪の一部にくすぶる『火』。
 目をつぶっているためか、あるいは自分でも制御が出来ないのか、
 そのまま岩に激突してグシャリと音を立てて停止する。

 突然の出来事に、慌てふためいてただオロオロするゆっくり。
 そんな中で

 「しーしーだ。このなかですぐしーしーをだせるゆっくりはてつだうのぜ」

 多くの有志によるしーしーで、比較的早くちぇんの火は消し止められた。
 火傷もさることながら、顔面はひどい有様だったので大急ぎで
 森の賢者と名高いゆっくりぱちゅりーのもとへと担ぎ込まれた。
 ちぇんは全身を薬草でぐるぐる巻きにされながら

 「あかいひがたくさん・・・くるよ~・・・わかるよ~・・・」

 等と延々繰り返していたが、必死の治療の甲斐もなく永遠にゆっくりした。
 ちぇんが息を引き取ってほぼ同時刻。
 それは風に乗り、お空から舞い降りた。

 「ゆ!あかあかしゃんがひらひらしてりゅよ」
 「ゆ~~ん、あかあかしゃんとってもきりぇいだねー!」
 「なんだかとってもゆっくりできるね!!」

 火の粉を見たことのないゆっくりは、空を見上げながら無邪気にはしゃいだ。
 遠方の山々の斜面では紅蓮が空を焦がし、黒煙がもうもうと立ち上っていたが
 ゆっくり達には知る由もない。

 「ペローリしゅるよ・・・あぢゅああああああああ」

 子ゆっくりが器用に、火の粉を舌でキャッチするが想像とはまるで違う
 現実は『甘く』は無かった。

 「れいむのきれいながみ゛の゛けがあぁぁぁ!」
 「まり゛ざのおぼうしからけむりがでてる゛よ゛ぉ゛ぉ゛~~」

 里は軽いパニックに陥いり、ちぇんの亡骸を弔おうと巣の外に出てきた
 ぱちゅりーの所にゆっくりたちが多く殺到した。

 「なにがおきてるのぱちゅりー、こわいよ!ぜんぜんゆっくりできないよ!!」

 森の賢者は餡子をフル回転させ、全記憶を辿ったが全然わからなかった。

 (ぱちゅりーはけんじゃなのよ、みんなからこんなにちゅうもくされてるのに
 わかりません、じゃかっこわるすぎるわ。むきゅぅぅぅぅ、こうなったら)

 知ったかぶりをすることにした。

 「むきゅ、とてもふるいいいつたえでは、
 あかいひがそらからふるとき
 つづいてじめんがとてもおおきくふるえ
 さいごにすごくたくさんのおみずがすべてをあらいながしてしまう。
 こういうふうにあるわ」

 つまり、と言いかけてコホンと偉そうに咳払いするぱちゅりー。

 「つまり、このよのおわりがくるのよ!」
 「「「ゆ、ゆあんだってえええぇぇぇぇぇ!?」」」

 その場のすべてのゆっくりが見事にハモった。
 そこからのパニックの伝播は早かった。





 風で運ばれた火の粉により、炎の海が所々に生まれつつあった。

 「とととと、とにかくとおくへにげるのよ!」

 あるありすの一家は荷造りもせず、方角も決めずとにかく里から離れようとした。
  進めば進むほど煙に囲まれて、目と喉を強く刺激される。

 「コホッコホッ、みゃみゃなみだがとみゃらないよ」
 「もうやだーおうちかえりゅーーーー!」
 「がんばっておちびちゃんたち。きっとこのむこうならあんぜんよ」

 母ありすは子供たちのずりずりと進む速度が落ちている事に気づかない。

 「にゃんだかあんよがおもいよ」

 煙による酸欠は、中枢餡の機能を徐々にだが確実に蝕み、そして。

 「きっともうすぐだからがんばってあるいて・・・ね、おちびちゃんた・・・ち」

 ついに母ありすも動けなくなり、子供たちをかばうように倒れこむ。
 遠のく意識の中、一家は見事にいぶされて燻製になった。






 頭から蔓を生やしたれいむは赤ゆに注意を集中しつつ、出来るだけ火の手から
 離れようと急いでいた。

 「ドン」

 ちょうど反対側から跳ねてきたゆっくりがすれ違いざまにぶつかってしまう。

 「ゆっ!いたいよ」

 横向きに倒れこんでしまい、血相を変えて蔓を見ると地面すれすれの所で
 止まっており、心配した割りには赤ゆたちは変わらず「ゆぅゆぅ~」とニコニコ笑っている。

 「ふ~~う、ぶじでよかっ」

 ドドドドドドドドドドドドドド

 倒れたままのれいむを必死の形相で追い抜いていくゆっくりの群れ。

 「あっちもだめだよ!いそがないとゆっくりできないーー!」

 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちっ
 残ったのはグチャグチャに踏み潰されてペチャンコになった蔓と
 つい先ほどまで赤ゆっくりだったモノ。
 かわいい赤ゆの餡子の飛沫で顔をまだらに染めて、れいむは
 泣き叫ぶしかなかった。

 「れいむ゛の゛あ゛がぢゃんがあああああああああああああ」





 狩りから帰ったばかりのまりさは、里の惨状を目の当たりにして既に
 現実から目をそむけていた。

 「これはゆめなんだぜ、わるいゆめなんだぜ。おうちにかえって
 ぱちゅりーとおちびたちと、ごはんをむーしゃむーしゃして、おちびたち
 とたのしくあそんで、みんなでゆっくりおやすみすれば、またいつもの
 ゆっくりしたせいかつにもどれるはずのぜ」

 番のぱちゅりーも子供たちも体が弱く、巣からは出ることは滅多にない。
 たくさんゆっくりできる出来るごはんを食べさせて、元気になってもらわないと。
 ぜひぜひと息を切らし、お帽子からポロポロと狩りの成果をこぼれ落としながらも
 自慢の倒木のウロに作った家に向かう。
 遠目からはっきりとわかるほどに、既におうちはメラメラと燃え上がっていた。

 「な゛ん゛でおうぢがもえでる゛の゛おお!?ばぢゅり゛ぃぃぃぃ!!」

 もうもうとした熱気に構わず入り口をくぐると、奥のほうに愛するぱちゅりーと
 3匹の子ゆっくりが寄り添っていた。

 「よかった!!ぶじだったのぜ!ゆっくりしないでにげるのぜ」

 しかし返事が無かったのは、4匹とも過度の恐怖からくるストレスで
 口からクリームと餡子を多く吐き出して、立ったまま死んでいたからだった。

 「ゆあああああああああああああ!ゆめなのぜ、これはやっぱりわるいゆめなのぜ
 ゆふふふふあははっはははははっははは」

 やがて家族4匹が炎に包まれても、自身が燃え始めても、まりさは笑うのを
 やめなかった。








 斜面にある巣穴を持っているれいむは、出来る限りのゆっくりを巣に入れて火から匿った。
 今は亡き番いのまりさが掘った自慢の巣は、かなりの奥行きと広さがあり、
 多くのゆっくりを収容することができた。

 このまま炎が沈静化するまで穴に篭っていれば助かる、食料も少しではあるが蓄えがあるのだ。

 「あつあつがそこまでせまっているわ!いりぐちをしめましょう!」

 飛び込んできたありすが言いつつ、入り口に常備してあるカモフラージュ用の
 枝や葉っぱを積み上げてバリケードを作り始める。

 「それではまだものたりないよ、てつだってね」

 テーブルやイスに使っていた石をゆんしょ、ゆんしょと皆で運び、完璧な
 バリケードが完成した。

 「これであつあつがきてもびくともしないよ。ひとあんしん」

 一同にやっと安堵の表情が生まれる。
 しかし、そこに外から地獄に焼かれるゆっくりたちの絶叫が響く。

 「あぢゅいいいいいいいいいいいいい」
 「みゃみゃー!どきょなのぉぉぉぉぉぉぉ」
 「もっどゆ゛っぐり゛じだがっだ・・・」

 あまりの恐ろしさに、中のゆっくりたちは声の届かない奥に殺到し、

 全員でブルブルブルブル震えるしかなかった。

 「あつあつははやくどっきゃにいっちぇね」
 「たすけてたすけてたすけてぇぇぇぇぇ」
 「みんなのぶんまでゆっくりするからね・・・」
 「・・・・・・・・・んほぉぉぉぉ」

 ここで数匹が、密着状態の自分たちの体が透明な粘液に包まれていることに
 気が付いた。

 ふと見ると、おしくら饅頭状態で激しく振動され、発情しレイパーに豹変したありすが既に哀れな犠牲者を一匹
 こさえていた後だった。

 「レレレ、レイパーだああああああああ」

 たまらず上がる叫び声。逃げないと。早く逃げないと。
 レイパーの脇を通り過ぎる事に成功したゆっくりは、入り口に向かって
 もみくちゃになりながら到着し、バリケードを取り崩しにかかる。

 「どうせだれもたすからないのよおぉぉぉぉ!さいごはみんなであいを
 わけあいましょおおおおおおお!・・・すっきりーーーーーーーー!」

 まさに火事場のすっきり力。

 「だずげでええぇぇぇぇぇぎもぢわ゛る゛い゛ぃぃぃぃ」
 「まだあおいかじつもすてきよおぉぉぉぉ・・・すっきりーーーーーー!」

 もはや赤ゆも子ゆっくりでもお構いなしである。
 増え続ける犠牲者を背に、なかなかはかどらない作業。
 最後のテーブル石一つというところで。

 ヌルン。

 振り向くといつの間にか、レイパー以外の残ったゆっくりはまりさ一匹になっていた。

 「つーーーかまーーえった。のこるはデザーーートねええぇとってもぉぉぉぉ
 とかいはよぉぉぉ!んほおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 のしかかれつつも、まりさは苦し紛れに石版にかじりついて引き倒した。

 「じねっ、レイパーはゆっぐり゛じないでじねぇぇぇぇぇぇぇ!」
 「さいこーよまりさあああああ!すっき」

 終わりまで言わせてもらえず、レイパーありすと最後の犠牲者は仲良く押しつぶされた。










 川岸ではまりさたちが向こう岸に渡ろうとしていた。
 きっと川のお水の向こうには炎は追ってこれないはずだ。

 「まりさはじぶんだけでもたすかるのぜ。れいむはそこで
 ゆっくりせかいのおわりにおいつかれてね!」

 お帽子を水に浮かべてそっと乗り、オールを器用に使って進み始める。

 「ばりざぁぁぁおいでがな゛いでえええええええええ」

 番であろうれいむが岸から全力ジャンプでまりさに抱きつく。

 「れれれいむ!はなれるのぜ!おぼうしにおみずがはいっちゃううううう」
 「やだやだやだやだ、れいむもじに゛だぐないいぃぃぃぃぃ」

 まりさを揺さぶり、ゆんゆんと涙を流しまくるれいむ。

 「「あっ」」

 ヂャポン
 お水が入るどころかバランスを崩してお帽子は転覆。

 ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ

 二匹は二度と浮かんでくることは無かった。






 森の賢者ぱちゅりーはそんな情景を横目に、こっそり手に入れた
 まりさ種の帽子を水に浮かべてそろーり乗り込んだ。
 元々小柄なぱちゅりーは、体がすっぽりと収まるので暴れない限りは
 帽子は水上で安定した。

 「むきゅきゅ、ぱちぇはにげきってみせるわ」

 向こう岸に渡る事は出来ないが、このまま川の流れに乗れば簡単に
 遠くへ逃げれる算段だ。

 しかしそこはそれ、お約束の滝が待っているのでした。
 断崖が目前に迫っても成すすべもなく。

 「いやあぁぁぁぁぁおちるぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 自由落下を楽しんだ後、滝壺の底に。











 「~ヘクタールを焼いた山火事は、未だに沈静化のメドがたっておらず、
 消防の必死の消火活動が続いている模様です。以上、お昼のニュースでした」








 ○最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございます。



 過去に書いたSS  ・週末の過ごし方



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最終更新:2022年05月03日 21:36