ゆんぽぽ
三寒四温とはよく言ったもので、最近は寒かったり暖かかったりしたがそれもようやく過ぎ去り今は春真っ盛り。
俺もうららかな春の日差しに誘われて近くの河川敷にやってきた。
ここは頻繁に散歩などで利用しているが今日は春の日差しと綺麗な青空のせいか特に気持ちがいい。
俺は草の生い茂る斜面にビニールシートを敷き魔法瓶に入れてきたコーヒーを啜った。
最近お気に入りのコーヒーの香りが俺に癒しを与えてくれる。
「チチチ・・・」
ふふ、春の日差しに小鳥も喜んでいるようだ。
「ゲ~ロ、ゲ~~ロ。」
蛙も冬眠から覚めたのか。やはり春とはいいものだ。生命の息吹がそこかしこから聞こえてくる。
「「「「ゆ~ん♪おしょらをちょんじぇるみちゃい~ゆっきゅち~♪」」」」
ほほう、さすが春だ赤ゆっくりも空を飛んで・・・
「ブッ!!な、なんだありゃあ!!」
思い切りコーヒーを吹いてしまった。優雅な気分が台無しだ。でも誰でも吹くだろぷかぷかと赤ゆが空飛んでたら。
- ところでまた新種か?とも思ったがどうも違う。とんでるのはまりさ種、れいむ種、ぱちゅりー種、ありす種。
種類こそ多いもののどれも一般的な種だ。いったいどうやって飛んでんだ?
俺はすぐにビニールシートを片付け赤ゆを追った。
「ゆぅ~♪おしょらはとっちぇもゆっくちできりゅにぇ!」
「ぷ~か、ぷ~か・・・しあわせ~♪」
幸い赤ゆ達の飛行速度はかなり遅く、追いつくことは簡単だった。
ついでに赤ゆ達に追いつく過程に高台へ移動したおかげで赤ゆ達が何故飛んでるのか謎が解けた。
彼等の頭頂部から茎が伸びており、その茎の先に赤ゆより大きな白いふわふわした綿のようなものが付いている。
正直あんなもんで飛べるようになるとも思えないんだがそれ以外普通の赤ゆとの違いが無いから仕方ない。
どうやら飛んでいるというより浮かんでいるというほうが正しいようだ。
これもゆっくりの新しい繁殖方法なのかもしれない。植物型の変種といったところか。親が見当たらないからよくわからないけど。
「たいようさんはとっちぇもゆっくちちてるにぇ!!」
「まりしゃ、かぜさんもとっちぇもときゃいはよ。」
「ゆぅ~♪ほんとだじぇ!!とっちぇもきもちがいいんだじぇ!!」
「むきゅ、ぱちぇはおひさまはにがてだけどきょうはとっちぇもゆっくちできりゅわ。」
なんとも平和な眺めだ。いつもの俺なら石ころの一つや二つ投げてやるところだったろうが今日はこの春の陽気に免じて・・・
「むきゅ!!にんげんしゃんがちゅいちぇきちぇりゅわ!!!!」
「ゆゆ、にんげんしゃんかっちぇにかわいいまりちゃをみるんじゃないんだじぇ!!
かわいいまりちゃをみちゃいならあまあまもってきゅるんだじぇ!!」
「かっちぇについちぇくるなんちぇいなきゃものにぇ!!」
「ゆぷぷ!!そらもとべにゃいばきゃなにんげんしゃんははやきゅあまあまもっちぇきちぇにぇ!!」
前言撤回だこの糞饅頭共!!一匹残らず打ち落としてやる!!
ブンッブンッブンッ!!
「ゆぴゃぁぁぁ!!やめちぇぇぇ!!」
「ときゃいはじゃにゃいわぁぁぁ!!」
「やめりゅんだじぇぇぇ!!」
「むぎゃぁぁぁ!!やめでぇぇ!!」
赤ゆたちの横を通り過ぎていく俺の投げた石。畜生、さっぱり当らん。
「ゆ?あちゃらにゃいよ!!ばーきゃばーきゃ!!」
「いなかもにょなにんげんしゃんはありちゅのち~ち~でもくりゃっちぇにぇ。ち~・・・」
「ゆっへっへ、まりちゃのうんうんもくりゃうんだじぇ!!」
「むきゃきゃ!しょせんにんげんさんのあしゃぢえにぇ!!」
げ、あいつらち~ち~とうんうん落としてきやがった。
なんとー!!
サッ
しかしあのゲスゆ共め。このままじゃおさまりがつかない。
虫取り網でもありゃ一発なんだけどなぁ。そんなもの都合よくあるわけも無い。
ま、時間はあるからのんびり追いかけていくことにしよう。
どうやら連中の頭上の綿のようなものたんぽぽの綿毛を模しているようだからオリジナルと同じで少しすれば落ちてくるはず・・・多分。
なんて考えてたら少し強めの風が吹いた。すると位置が悪かったのか赤ありすが一匹だけあさっての方向に向かい始めた。
「ゆぅ~、かぜしゃんきもちいいじぇ♪」
「とっちぇもゆっくち・・・ゆゆ!?ありちゅ?どきょいきゅの?」
「むきゅ!ありちゅ!そっちはゆっきゅちできにゃいわよ!!」
「ゆゆゆ!?かじぇしゃんまっちぇにぇ!!ゆっきゅちみんにゃのときょろにもどしちぇにぇ!!!」
しかし当然風が待ってくれる事など無く、今までいた河川敷の川側から民家のほうにコースが完全にずれてしまった。
そんでそのままある民家の高い木のほうに・・・あ~こりゃだめだな。
「ゆゆゆ!!きしゃんこにゃいでにぇ!!ときゃいはのありしゅにちかじゅかにゃいでにぇ!!
じぇ、じぇもどうちてもっちぇいうんにゃらかんがえちぇも・・・ゆぎっ!!」
あ~あ~、下らんことを言ってるからぽっかりあいた口に枯れ枝がグサリだ。
「ゆ"・・・!!・・どぎゃ"・・!!・・・ぶ・・・・!!!」
何か喋ろうとしている様だが枝のせいで言葉になっていない。
今は体をグネグネ、底部をもにょもにょと動かして何とか逃げようとしているから元気なようだがそのうち鳥がつつきにくるだろう。
とりあえず一匹脱落。
「ゆぴぃぃぃぃ!!ありちゅぅぅぅぅぅ!!!」
「ありちゅ!!ゆっきゅちちちぇ!!ゆっきゅちちちぇよぉぉ!!ゆぇぇぇん!!」
「むっぎゅぅぅぅぅ!!ゲホゲホッ・・・ありちゅぅぅぅゴホゴホ・・・エレエレエレ・・・。」
静かな河川敷に赤ゆっくりの声が響きわたる。
まったく、赤ゆっくりでこのやかましさだ。都市部のゆっくりが執拗に排除されるのにも頷ける。
ん?どうやら五月蝿いと思ったのは俺だけじゃなかったようだ。
「ありぢゅぅぅぅ!!・・・むぎゅっ!!ま、まりざ!!とりしゃんよ!!」
「そんにゃのどうでもいいんだじぇぇぇ!!ありぢゅがぁぁぁ!!」
「カァー!カァー!!」
「ばきゃなとりじゃんはだまっぢぇでね!!いまありぢゅがたいへん・・・(ヒュン)ゆんびゃぁぁぁぁぁ!!!」
どうやらあいつ等カラスに敵だと思われたらしい。今は威嚇でカーカー鳴きながら赤ゆっくりに触れるスレスレを飛んでいるが、
そのうち本格的な排除に入るだろう。
「きょないぢぇにぇ!!ゆっくちできにゃいよ!!れいみゅはおいしきゅなぃぃぃぃぃ!!」
「やべりゅんだじぇぇぇ!!まりちゃはとっちぇもちゅよい・・・『カァー、カァー!!』ゆびぃぃぃ!
まりちゃはおいちくにゃいんだじぇ!!あっちのぱちゅりーのほうがおいしいんだじぇ!!」
「にゃんじぇしょんにゃこちょいうにょぉぉぉぉ!!?やべでね!!ぱちぇはいっぱいおべんきょうちちぇもりのけんじゃしゃんに
にゃりゅのよ!!だきゃらやめ・・・むぎゃぁぁぁごっちごないじぇぇぇ!!」
どうやらカラスはターゲットをぱちゅりーに絞ったらしくぱちゅりーに執拗な攻めを加えていく。
当然そんなカラスの攻撃をよけられるはずも無い赤ぱちゅりーはどんどん弱っていった。
「(バシッ)みゅぎゃっ!!(バシッ)やべっ!!(バシッ)やめちぇぇ!!ぱちぇはもりのけんじゃ・・・(グサッ)ぎゅべっっ!!ゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っゆ"・・・」
ぱちゅりーはカラスに嘴に串刺しにされどこかに運ばれていった。巣でゆっくり食べるのかもしれないし、もしかしたら雛の餌にするのかもしれない。
他の二匹は恐怖で喋ることもできないようだ。
う~ん、こうもあっさり数を減らしていくとさっき必死に石を投げてた自分が凄い間抜けな気がしてくる。
「ゆえーん!!もうやじゃっ!!れいみゅおうちかえりゅ!!」
「おしょらはじぇんじぇんゆっくちできりゃいよ!!ゆっくちおりりゅよ!!」
二匹は大声でそう叫ぶと少しづつ高度を落としていった。どうやら下降することはできるようだ。
なんか某クソゲーのグライダーみたいだ。
「ゆっくちちにゃいではやきゅおちちぇにぇ!!」
「かえっちぇおかーしゃんにぺ~りょ、ぺ~りょしてもりゃうよ!!・・・ゆ!?どぼじでまりちゃのじだにおみじゅしゃんがおりゅにょぉぉぉ!!?」
あ、ホントだ。このままいくとれいむは一応川岸に降りられそうだがまりさは川に落ちる按配だな。どうすんだろ?
「ゆゆゆ、まりちゃ!!はやきゅこっちきちぇにぇ!!ゆっくちできにゃいよ!!」
「まっちぇちぇにぇれいみゅ、いまそっちにいきゅんだじぇ!!」
まりさは必死に体をくねくねさせたり口から息を吐いて軌道を変えようとするが軌道が変わる様子は無い。
ついでに風も無いのでまあこのまま落ちるだろうな。
「ゆあああ!!おみじゅしゃんくんにゃあああ!!くりゅな!くりゅな!!くりゅなっちぇいっちぇるにょにぃぃぃ!!」
「まりちゃああああああああああああ!!!」
ポチャン
「ゆあああああ!!まりちゃがおみじゅしゃんにぃぃぃ!!ゆぅぅぅぅぅ!!」
結局どうすることもなく落ちたまりさ。れいむはそれを嘆いておお泣きしているがお前にそんな他人を気にする暇があるのかと。
考えても見てもらいたい。少なくとも俺の届かない位置からそこそこ速度が落ちるとはいえ赤ゆが落ちて無傷でいられるだろうか?
例えばそれが草むらだったりすれば助かるかもしれないがこの辺はゴロゴロと石ころが落ちている。
そんな中に落ちれば当然やわらかい赤ゆが無事で済むわけが無い。
「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・みんみゃ・・・れいみゅはみんみゃのぶんまじぇつよきゅいきりゅよ・・・。
ゆ!じめんしゃんにつきゅよ!!じめんしゃんゆっくちしていっちぇ・・・ぶぎょ!!!?」
あ~やっぱり。どうやらかなりの衝撃だったらしく口から餡子を吐いて「ゆ"っゆ"っゆ"・・・」と痙攣してしまっている。
綿毛もぽっきり折れている。最後に残ったこいつもこの様か、でも治療すれば治るかも・・・
「♪ゆ~ゆ~ゆっきゅりだじぇ~♪」
するとどこからか歌が聞こえてきた。しかもさっき聞いたような声だ。
きょろきょろみわたすとそれは川の上にいた。どうやらさきほどのまりさのようだ。
見てなかったからわからんけどどうにかして帽子の上に乗りこんだようだ。
「ゆふふ、まりちゃはしゅごいんだじぇ!!おみじゅしゃんをわちゃれりゅのじぇ!!まりちゃはゆっくちのえりーとじぇ!!
まりちゃはとっちぇもゆっくちできりゅよ!!おみじゅしゃん、くさしゃん、おしゃかにゃしゃん、ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!!!」
野郎~、まったく暢気なもんだ。水やら草やら魚に挨拶などしやがって。
ん、魚?
瞬間、赤まりさは水中に引きずり込まれた。
「ゆっ!!ごぼっ・・・!!やべっ!!ゆっぐじでぎにゃ・・・ゆぶっ!!・・・ぶくぶく。」
どうやら食われたようだな。そういえばこの川には大きな鯉がいたな。多分そいつのせいだろう。なんだかな~
そういえばあのれいむはどうしたのだろうと思い視線を向けるとすでに白目を剥いて衰弱しきっていた。
俺は急いで家に連れ帰ると応急用の餡子を注入し、破けた皮の補修をした。
いまは「ゆぴ~・・・ゆぴ~・・・」と間抜けないびきをかいているのでもう大丈夫だろう。明日には回復するはずだ。
翌日、赤れいむはすっかりよくなっていた。
「ゆ!!あのときなばかにゃじじぃだにぇ!!はやきゅれいみゅにおいちいあまあまちょうだいにぇ!!」
このとおりだ。
「おいおい、俺は傷ついたお前を助けてやったんだぞ?なにかいうことがあるんじゃないのか?」
「ゆぷぷ♪ばかにゃじじぃだにぇ!!かわいいれいみゅをたしゅけりゅのはあたりまえでちょ!!わかっちゃらはやくあまあm・・・」
もうこれ以上相手するのはめんどくさいのでさっさと透明な箱に回収した綿毛とともにぶち込んで今日の目的地に出かけることにした。
「すいませ~ん」
「はい、今日はどういったご用命で?」
俺が今日向かったのは加工場。この珍しいゆっくりを買い取ってもらうためだ。
箱の中ではなにやら赤れいむがぎゃーぎゃー騒いでいるがもう知ったことではない。
俺の頭の中はこの赤ゆっくりがいくらで売れるのか、それだけだった。
後日、加工場から封筒が来た。
そこにはあのゆっくりをなかなかの値段で引き取る旨と簡単に調べた結果。それと一枚の写真が入っていた。
なんでもこんな繁殖の仕方はいまだ確認されていなかったらしい。
おそらく親ゆっくりがなんらかの重大な危機が迫った結果このような方法で自分の種を何とか残そうとした結果なのではないか?とのことだとか。
その辺はあまり興味の無いことだったので適当に読み流しておいた。
あとはあの赤ゆは特殊な処置をしてすでに成体と呼べる大きさになったこと。
ついでにすでにいくつもの赤ゆを実らせていることなどが書いてあった。
そして写真には頭の上に大きな黄色い花をつけたところどころつぎはぎのあるれいむが写っていた。
あとがき
まだ綿毛の季節には早いですが思いついたので書いてみました。
なんか難産だったわりに微妙な感じになってしまった気がします。
今まで書いたもの
- ゆっくりコールドスリープ
- ゆっくりを効率的に全滅させるには。
- ユマンジュゥ
- きれいなゆっくりの作り方
- ゆっくり達のバザール
- ゆっクエ
- あるゆっくり達の冬篭りと甘い罠
- ラジコンうーぱっく
- 笛吹き男とゆっくり
- 死後のゆっくり
- 加工場のいつもと変わらない一日
- ゆっくり潜入するよ!!
- 四月馬鹿
最終更新:2022年05月03日 23:53