登場する人物は愛で系です
本編ぬる虐めすら怪しいです。
嘔吐描写があります
暗い雰囲気です
冗長です
人間メインの話です。
古本屋のSSです
初期の面影がありません(笑)


【まりさとわたし キョセイ】


わたしはまりさを飼っていた、過去形なのは今はもういないから
ペットショップで購入したのではない野良の子まりさを拾ったのだ。

うるさくて、自分勝手で
生意気で、そのくせ些細な事で良く泣く
甘えん坊な子まりさだった。

連れてきて数週間ほどは眠っていても
死に別れた両親と家族の事を思い出して飛び起き
小児癲癇のようにひきつけを起こしていた。

一緒に眠るようになって、それが少し落ち着いた。

思えば動物を育てた事が無かった私にとって
その感覚は子育てをしているようなモノだった。

ペットの成長は、往々にして人よりも早い。

一人暮らしに慣れなかった上京直後に拾ったまりさも
二回生にあがる頃には成体ゆっくりとなり、わがままを口にすることも減って
簡単な荷物の受け取りや留守番の応対をこなせる位には成長していた。
(後にコレが驚異的なことだったと知る事になる。)

大学のセミナーで、3日ほど留守にする間
まりさを連れて行こうかどうしようかを考えて
同室に泊まることになる同級生が嫌がったため、まりさに留守を任せた。

同級生に罪は無い、それでも私はこの選択をずっと悔いている。

時折夜、飛び起きる程には。



  *   *   *



「おはようございます」

「おっはー、今日もはやいねぇー」

「……」

「あぁん」

気味の悪い声をあげながら高そうなヒューマンチェアに沈み込むきばんだ白衣
あいにく今日の私はあの変人に関わっているだけの精神的余裕が無い。
無視を決め込んでポットからインスタントコーヒーに湯を注ぐ。

コポコポコポ…

立ち昇る独特の香り、湯気を浴びるだけで意識の靄が少しだけ薄れていく。

「僕にも…」

ビシャ!

「あつっ、めっちゃあつ!?どぼじでごんなこどするのおおお?!」

うるさい、死ね。

必要なカルテをとって、泥の様なコーヒーを啜る。
カルテはいつもの通り完璧以上、気味の悪いほど大量の情報が
可読性を無視して落書きのように、そのクセ妙に読みやすく書かれている。

嫌な事は、重なる。
寝不足で適当にあけたまりさの食事が自分で食べて処分しようと思っていた
【カクテキ】と【ホットチキンのダブルパンチ】で
口直しに与えたオレンジジュースがチューハイ用のレモンジュースだったり
変人所長が何を思ったのか今日に限ってツインテールだったり。
目覚ましに呑んだコーヒーが私の嫌いなエスプレッソで、しかも湿気っていて

患ゆっくりについての情報が【常習的性的暴行嗜好固体】
所謂「レイパーありす」を指していたり…

「……。」

徹夜だったのか、事務室のソファーでひっくり返っている後輩が
彼が治療した子ゆっくりたちに埋もれて寝息を立てている。

嬉しそうに。


わたし、なんでここにいるんだっけ?



  *   *   *



「ありすのちりょうをしてくれるのが、とかいはなおねえさんでよかったわ」

早速始めて頂戴と生理的嫌悪を感じる視線で私をひとしきり観察して、下膨れの身体を反らせる。
カチューシャに輝く銀色のバッジは、躾や教養ではなく飼い主が裕福な事を示している。

わたしは、ありす種が嫌いではない。

人間の少女が背伸びするような、おしゃまな態度を『とかいは』と言い
素直で無い所も玉に瑕とは思わない、りっぱな個性だ。
だが、時折コレのようなおぞましいモノが発生してしまう事もある。

「さいしょにでてきたおじさんは、ぜんぜんとかいはじゃなかったからこーでぃねーとしてあげたのよ!」

何の事だろうと考えて、事務所で氷嚢の世話になっている変態を思い出した。
あれオマエの指図か…、つくづく救えないな。

普段なら、もうすこし穏便に行く所だが
これ以上前段階に手間をかけるのは、わたしの精神衛生上宜しくない。

「『いなかものが』」

「…?」

手早く済ませてしまうことにしよう。

「聞こえなかったの、耳まで遠いのかしらこの【いなかもの】のゲスレイパーは」

「…おねえさん、あなたなにいってるのかしら、ここにはいなかものなんていないわ」

「『そうね、居るのはわたしと【いなかもののゲスレイパー】だけ』」

身体の中で冷たいものが広がっていく、徐々に醜いものに変わっていくありすの表情が
冷たいモノを静かに、加速度的に大きくしていく。

「ふざけっ!」

「『喋るな、いなかもののゲスレイパー。』」

即座にありすからの音声を遮断して、私は告げる。

『観ろ』

ありすを覆っていた箱の壁360度全面に映像を映し出す。
本来なら事前の準備として、ゆっくりの意識を混濁させる薬品を散布して
親ゆっくりからの遺伝による情報伝達と似た状況を作り出す
『映像による刷り込み』で二時間ほどかけて穏便に公序良俗を教え込むのが
この学習装置の本来の使用方法なのだが

実際に【犠牲者】を出した固体に関しては
飼い主に許可を取って10倍の時間をかけて同等以上の効果を与えるこの方法を
可能な限り採ることにしていた。

こんな事を行うのは、恐らく何処を探しても私だけだろう。
この学習装置には、致命的な欠陥があるからだ。
もちろんソレを説明した上で、飼い主は納得してありすを【クリニック】に預けているわけだが…

まだ時間的に余裕はありそうだが
冷蔵庫の中に専用カスタードが十分に備蓄されている事を確認する。
他の患ゆっくりの様子を見に行くために電気を消して部屋を後にした。



  *   *   *



【クリニック】に暇な日など無い。
患ゆっくりは入院しているだけで21、通院は大体10~20件といったところだ。
ゆっくりは生物であると同時に製菓でもあるため
交換部品や補修材なんかも私たちの手で用意しなければならない。
ノウハウは依然不足しているし、気を配ればキリが無いほど個体差もある。
飼い主向けのセミナーなんかもやっているので、それ向けの資料や映像も常に新しいものを纏めている。

所長の指示もあって、私はその殆んどの作業に関わっているため
獣医も含めた医師には珍しい事ではないが、労働基準法ぶっちぎりの生活をしている。
といっても、私はまだ学生だが…

ボールになみなみと作られたカスタードを、糖度計で測定する
数値上は理想的な糖度だが、私はそれにリテイクを出した。

「理想はコレ、数値ではなく経験で覚えなさい」

「「はい!」」

二階実験室の研修生達が私が作った『おてほん』と
【クリニック】で使っている『移植用カスタード』を比較し、自分達が作ったものとの違いを
ディスカッションしながらレポートを纏め、もう一度最初からやり直す。

その様子を監督していると、呼び出しがかかる。

『A-3急変、対処をお願いします。』

「それじゃ行って来るから、レポートは纏めてデスクにお願いね」

「わかりました、お疲れ様です。」

わたしが講義の途中で急変に対応する事に最初の頃こそ面食らっていた研修生達も
今では自然に対応できるようになってきた、悪いとは思うが仕方ない事なのだ。

急変と言ってもあわてて駆けつけるようなことはしない。
エレベーターは使わず、階段でゆっくりと余裕を持ってA-3処置室に向かう。

白衣の前を閉じて、防菌マスクに手袋と『移植用カスタード』を用意する。
端末を操作して、いったん学習装置の映像を止めて
マジックミラーになっているカバーのロックを解除、開放してありすを取り出す。

「ゆ゛ゆ゛……」

血管の浮いた眼球を裏返して、生命維持に関わるほどの内容物を吐き出して
とても『とかいは』な姿になったありすに、必要量のカスタードを注入する。

「ゆ゛びぇ、ぴぃぃぃぃぶっ……」

間の抜けた放屁の様な音を漏らしながら、必要十分なカスタードを注入されて蘇生する
数十秒後には痙攣もおさまり、鼻息も荒く私に向かって何か『言葉にならない不満』をぶつけようとする。

私は無視して再度学習装置の中に放り込み、ロック
再生を再開する。

「……、……ッ……!!!」

軽度の肥満体だったありすだが、生命維持に必要な量のカスタードしか注入していないので
平均的な体積に戻っている。
身軽になったことを示したいのか、しきりにマジックミラーの液晶ケースに体当たりを繰り返している。

「『自分がやった事がどういうことか理解できたかしら、いなかもののゲスレイパーありす』」

返事は無い、といってもありすからの音声を私が切っているだけだが。

前後左右上下のディスプレイで再生されているのはレイパーを否定する内容の映像だ。
朽ち果てたゆっくりが、強姦したゆっくりを糾弾するという相当に悪趣味な描写も含まれている。

「『あなたが与えた愛というのは、独りよがりな押し付けよ』」

「『あなたに犯されたまりさはソコには写っていないけど…』」

「『ねぇ、彼女はツンデレなんかじゃ無かったわよ』」

「『苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで、あなたを憎みぬいて』」

「『あなたに犯し殺されたのよ、いなかもののゲスレイパー』」

「『それを、わかりなさい』」

処置室のデスクに置かれたディスプレイには、学習装置の中の様子を監視できる。
消音された映像の中で、自らの存在意義を揺るがすような糾弾に
狼狽し、否定できず、絶望して狂乱する。

そして二度目の嘔吐、搾り出すような蠕動は死を望むありすの精神が
自意識で自殺目的に吐いている証拠だ。

再びカスタードを注入、三度学習装置の映像を再生する。

監視カメラの中のありすは、逃げ場無く全方位から朽ち果てたまりさに責められて
穴と言う穴から出せるものは全て垂れ流して、歯を鳴らして怯えている。

心の中の冷たいものが促すままに、ありすが何度中身を吐いても繰り返し繰り返し繰り返し
ゆっくりをはるかに超える語彙でもって、はるかに発達した倫理で罪を突きつける。

私は、カルテに書かれた情報を読み上げる。

「『散歩中、食事を餌に野良まりさを呼び寄せてレイプしている所を帰宅中の飼い主に発見され
行為を咎められた所逆上して錯乱、窓ガラス三枚とテーブルの上の食器を破壊して
挙句の果てに飼い主が懇意にしていた、あなたとも仲良しのお向かいのれいむに強姦未遂…
しんじられない『とかいは』ね…そこに愛はあったのかしら?』」

「『ねぇ、あなたに犯し殺されたまりさたちの子供は…あなたをなんと呼ぶのかしら?』」

「『ああ、ごめんなさい…あの仔たちは産まれてくる事もできなかったそうよ
…よかったわね『すっきりー』はしても子育てなんて高等な事、あなたにはできっこないわよね』」

映像が一巡し、最初から上映される
幼いまりさとありすが、まりさとありすの番を『ぴゃぴゃ』と『みゃみゃ』と呼び
無垢な微笑を浮かべて健気に後を追う、あの仔たちは…
ありすの様子が変わる、身体はカスタードを吐き出そうと蠕動しているが
歯は必死に食いしばられてこれ以上の嘔吐を防ごうと、唸り声を上げている。

ありすはそのまま15分格闘し続け、競りあがる嘔吐を飲み込んで意識を喪った。

開始から6時間と51分21秒
『刷り込みの』終了である。



  *   *   *



『学習装置』の致命的欠点、それは吐餡と呼ばれる異常行動の誘発である。
ゆっくりの排泄行為は、古くなった内容物と一緒に不要な『記憶』を破棄してしまう。

以前から確認されている事例として野良で生きてきたゆっくりに
人間の常識を教育されたゴールドバッジのゆっくりを接触させると
発狂して死亡する事が確認されている。

『学習装置』は薬物によって生まれる前の刷り込みを再現する。
基幹になるゆっくりの常識を上書きする形での『すりこみ』になる画期的な手法だが
中枢餡子の用量が小さい子ゆっくりまでの固体なら問題なく上書きされた以前の記憶餡子を排出するが
成体以上のゆっくりになると、構造が複雑化しているため
中枢の記憶部分以外の部分に情報が蓄積され結果として精神負荷で
中枢以外の記憶餡子を吐き出してしまうのだ。

致命的な量の吐餡をした場合、吐き出した内容物は飲み込ませても拒絶反応が出て受け入れない。
かといって移植用の内容物を注入しても、上書きした記憶が吐き出されているので学習装置の意味が無い。
以上の理由で成体以上のゆっくりへの使用は不可能と言うのが『学習装置』の常識だった。

わたしが手を加えるまでの話だ。

学習装置で再生される『にんげんと共存するゆっくり』のための常識は非常に情報量が大きい。
私はまず、教育するべき内容を別々の映像としてまとめ
ゆっくりが夢うつつにでも見ることが出来るように極限まで配慮して作られた本来の映像とは真逆の
『まったくゆっくり出来ない』短い映像を作成する事から始めた。

罪の意識を植え付ける。

吐餡による『逃避』を『前提』に、むしろ積極的に精神負荷を与えて何度も何度も吐餡させる。
その度に新鮮な内容物を量を減らしながら注入し、疲労を蓄積させ
吐餡をすることが出来ない程疲弊し、意識を喪えば否応なしに情報の刷り込まれた内容物が体内を循環する
一度吐き出さずに循環した記憶は、極度のストレスと共に心的外傷として中枢餡子に刻み込まれる。

ほんの僅かに『特定の行動』→『ゆっくりできない』という記憶が残るだけで
ゆっくりは二度とその行動をとらなくなる。
この方法はゆっくりの悪癖全てに応用が利く、ある意味理想的な学習装置の使い方といえる。

『拷問だよー…これは、ね』

目を剥き噛み合せた歯の間から、汚らしいカスタードの泡を吐き続けるありすにマイクごしに声を叩きつける

「『おきろッ!いなかもののゲスレイパー!!』」

「……ッ!!?」

跳ね起きて、咽喉元までせりあがった自分の中身に咽ながら
必死に許しを請うありすに、最初の余裕や高慢さは欠片も見られない。

コンソールを操作して、映像を再生する。

意識を喪う前に体液として垂れ流したせいで、水分など残っていない身体から
搾り出すようにカスタード中の水分を両の目から溢れさせ

逃げ惑い、哀願しつづける

『これは、共存とはいえないよー、こんな事の為に学習装置を作ったんじゃないもの…』

ヒューマンチェアとは比べるべくも無い、安っぽい椅子の背もたれに体をあずけて

なら、どうすれば【常習的性的暴行嗜好固体】に
【レイパーありす】に殺されたゆっくりの苦痛を刻み付ける事ができるというのか。

コンソールを操作して、マイクをオフラインにする。
7時間経過の時点で所長が様子を見に来るのを確認して私は静かに目を閉じた。

冷たい感覚が、消えないままわたしの中を炙っていく。

処置開始から6時間と55分9秒
『去勢』開始。



  *   *   *



「身体を悪くしそうな椅子だなぁ…、こんな椅子じゃぁ夢見も悪いだろうに」

今日は朝から気が重かったけど、とびきり嫌なものを見ちゃったなぁ…
寝ながら泣かなくても良いじゃない
だから嫌なんだよ、キミにこういう仕事を回すのはさぁ…

「よっと、かるいねー…ちゃんと食ってるのかい?ほんとにさー」

お姫様を運ぶのは光栄な役目だけど、どうしてウチの研修生達は仮眠室で寝ないんだろうねー。

「……まりさ…」

「……………なんだかなぁ…もぅ」

すぐに戻ってくるから、電気は消さないでおくよー
装置もつけっぱでいいよねー、この娘をこんなに苦しめてさ。

「一匹残らず縊り殺してやりたいぜぇ!!」

おっと、今のはボクのキャラじゃなかったね…いけないいけない、自重せねば。


ぺったらぺったらずーりすーり


エレベーター、つけようかなぁ…



【つづく?】

ぬるいじめ?四作目…限界までゆっくり描写をはぶいてみました。今は反省している。
思わせぶりで冗長な文章にイラっとした人ごめんなさい。
メアリー・スーは受け入れられないと言う書き込みを見て気がつくとこんな感じに…
え、まりさは何処に出てるの?
と読み返して思った。
私信:某所で『ホームビデオ』を絵にして下さる方がいました、しかも2名…恐縮です本当に。

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最終更新:2022年05月06日 23:18