[甘い話には裏がある]
1.ドスまりさに出てもらいました
2.人間は直接手を下しません
3.制裁でも、虐待でもないと思います
4.行間を読まないとすっきりできないかもしれません
それでもよろしければ、読んでください。
おかしい。ドスまりさはいぶしがった。
このところ、群れのゆっくりたちのいざこざが増えている気がする。
警察活動を担当しているみょんに確かめても同じ答えだ。
餌が集まらないのか?いや、群れの誰もがつやつやもちもちとしてる。
ならば、縄張り問題か?いや、バラバラに5組のゆっくりに確かめて見てもそんな様子はなかった。引っ越す前の場所ならともかく、自分達が今いる場所は天然の洞窟も枯れ木も存分にある天然の要塞だ。住む場所が見つからないなど考えにくい。第一、群れに新しいゆっくりが入ってきた様子もない。
どういうことだろう……ドスまりさは悩んだ。
「ゆー、ゆー。ゆ゛っ゛く゛り゛つ゛か゛れ゛た゛ー!!もううごけなんだぜ!」
「まりさ、しっかりしてね!とかいはらしくないわ」
まりさとありすの二匹がとてとてと道を歩いてはや1里。もうまりさは限界だと根を上げているのに対し、ありすは疲れきっているもののまだ大丈夫そうだ。同じ体格なのにこの差は性格によるものだろう。まりさ種の方が元来は体力があるはずなのだから。
ぎゃーぎゃー騒ぎながらも二匹は一軒家の前に来た。
「おおきいね、ここをまりさとありすのゆっくりプレイスにするんだぜ!!」
「ゆゆ?なにいってるの?ばかなの?ありすたちはみんなからたのまれておつかいしているんだよ?しごとをこなせないゆっくりはとかいはじゃないわ。おつかいがおわってからゆっくりプレイスにしようね!!」
「ゆっくりりかいしたよ!!」結局、ゆっくりプレイスにはなるようだ。
「ゆっくりあけていってね!!」
きんきん響く金切り声を上げて中の人を呼び出す。
「はいはい、今行くよ。ん?君たちは……あの群れのゆっくりかな?」
「はいはいっかいだぜ!!そんなこともわからないの?ばかなの?」
「ああ、ごめんね。それで、用事は何かな?交換かな?」
「そうだぜ!!むれのみんなからあつめたきのことわらびをもってきたんだぜ!とっととあまあまをもってくるんだぜ!あとれいむもよぶんだぜ!」番のアリスと一緒なのにいい度胸である。
「あ~、ちょっとまってね。今もってくるから。れいむはちょっと用事があって外してるんだ。ごめんね?」
「つかえないおじんだぜ!ゆっくりしないでさっさとしぬんだぜ!」
「まりさ!いくらいなかものにたいしてもれいぎってものがあるわ。ほんとうのことでもこころのなかでおもっててね。ほんにんのめのまえていうのはとかいはじゃないわよ。」
「ゆっくりりかいしたよ!!」耳打ちは他人に聞こえないようにすべきだと思うがな。
「よっと、こんなもんかな?」
「ゆゆ?すくないんだぜ!もっとよこすんだぜ!つかえないじじいはし……しばかりにいくんだぜ!」
ありすに言われたことを気にしていたのか、取り繕ってさっきより多少ましな口調で男をののしるまりさ。
当の男はというと、全く気にするそぶりもなく、最初に渡したのと同じ量を二つの瓶に分けて渡した。
「そんなことないよ。人里で確認してくればいいんだけど、妥当な取引だと思うよ?こちらも原価が高いからね。それに、あんまり多くても君達二人じゃあ運べないだろ?」
「おじさん、ありがとー!そんなにきをつかわないでいいよ!いなかもののおじさんがはこんでくれるのでがまんするよ。」それは気を遣いすぎだろ。
「それじゃあ、群れのみんなによろしく。ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!そこはまりさたちのゆっくりプレイスだから、つぎくるときまできちんとかんりするんだぜ!
「ゆっくりしていってね!まりさがしつれいなこといったかもしれないけど、いなかものでたんきなおじさんにわるいってあとでおこっておくわ!」
「気にすることないさ。なくなりかけたらまた来てね」
季節は巡ろうとしている。果実が豊富な秋も終盤に近づき、秋の味覚を集めることも困難になっていく。
群れは困っていた。越冬よりも切実な理由で。
「あれ?今回の交換品は少ないねぇ。それだとこれぐらいしかあげられないよ?」
「ゆゆ!!それはこまるんだぜ!もっとよこすんだぜ!」
「あいかわらず、まりさはゆっくりしてないね!ぷんぷん」今日はいた美れいむ。
「ふ~ん、いいのかな?そんな態度で。別に君達に交換してもらわなくとも僕は別に困らないよ。ほかの人達に売っちゃうだけだから。」
「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ー!!おじざん゛ごべんだざび!!!あ゛り゛す゛た゛ち゛が゛わ゛る゛か゛っ゛た゛です゛ぅ゛……こ゛でがさ゛い゛ごな゛ん゛で゛す゛ぅ゛!!あ゛り゛す゛た゛ち゛は゛い゛な゛か゛も゛の゛で゛い゛い゛か゛ら゛、く゛う゛き゛の゛よ゛め゛な゛い゛お゛じさ゛ん゛の゛お゛ん゛じ゛ょ゛う゛をー!!」
「ゆっ!おにーさん、れいむからもおねがい!まりさたちをたすけてあげて!ゆっくりがゆっくりできなくなっちゃうよ!!」
「しょうがないなぁ~。」
「ゆゆっ?ただでくれるんだぜ?おじさんのくせにたすかるんだぜ」
「今回はだめ。次回来るときに多少おまけしてあげるよ。別に嫌なら買わなくてもいいよ。」男はいつになく鋭い目つきをしながら答えた。
「まりさ、よかったね!これでゆっくりできるよ!!」裏表のない純粋な笑顔で喜ぶれいむ。
「ゆぐぐ……かんだいなまりさはれいむにめんじてゆるしてやるんだぜ!」ほんとうにしかたないけど、れいむがみているのだからしょうがないんだぜ。いつかじぶんがひとりできたときにれいむとすっきり!!するためにはたしょうのじょうともひつようだよね。ここはうつわのおおきいところをみせないとね。
まりさ自身は自覚していなかったが、このまりさが人里から帰ってこれた最大の理由は鋭さであった。例え口先でなんと言おうと、まりさは自分が人間に勝てないことを本能で理解していた。目の前で自分を除く一家が皆殺しにされたのだから。
だからこそ、まりさは生き延びてきた。人間が饅頭相手に本気で怒る瞬間を見つけるのが上手かったから、ギリギリのところで媚を売ったり、早々に率いてきた仲間を見捨て命だけは残っていた。
「まって、まりさ!ありすたちはもうつぎにもってくものがないわよ!」
「ああ、成る程ね。本当に困っているんだねぇ~。みんなにあげてるアレは甘いものでしょ? だから、
“ 甘 い も の ” と な ら 交 換 し て も い い よ。カカカッ」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「あまいものをさがしてくるわ。いなかもののおじさんがちっちゃいのあたまをしぼってかんがえてくれただけあってたすかるわ。ありがとー!!」
「うん。じゃあね。」
ゆっくりたちは希望を持って群れに帰ったものの、抜本的な解決にはなっていない。
“甘いもの”なんて野生にはほとんどない。そんなものあったらとっくに食べている。
いつもおつかいをしていた二匹は自然とこの問題を群れから任された。
……思いつかない。このままではアレがもらえなくなってしまう。それは困る。あれだけゆっくりできる食べ物はそうはないのだから。
「ゆー、困ったんだぜ……。」
「まりさ、げんきだして!とかいはのありすもいっしょにかんがえるわ!」
そういって、ありすはまりさを元気付けようとほお擦りをし始めた。
「ゆ~……ゆっ!すーりすーり」
まりさも負けじとほお擦りを仕返す。まったりとした空気が流れる中、だんだんとスピードをあげていく二 匹。いつの間にか体もぶるぶる小刻みに震る。目つきがとろんとしてくる。
最近は冬の準備で忙しくてゆっくりできなかったが、若い二匹のことである。劣情に駆られてしまうのを止めるのも野暮なものだろう。特に今日はあの美れいむを見た後である。たまりにたまっている。
さいきんはいつもよりすっきりするかいすうがおおいきがするんだぜ。
当然、交尾の時間となる。
「ゆっゆっゆっ……」
ねちゃねちゃとした、粘っこいものが糸を引きそうな音を出してこすり合わせる。
「ゆゆゆゆ……ゆっゆっゆっ……」
「ゆぅ……ゆゆゆぅ……」
「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」
二匹のほお擦りは加速していき、こすれ合う頬は摩擦で真っ赤になっていた。
「ゆっゆっ……んほぉぉぉぉ!!!」
「すっきりー!!!」
二匹の交尾は終わった。 ありすの頭から茎が伸びていく。
ああ、まりさのおちびちゃんができるのか。いまはどうでもいいや。あのあまあまをもらうためにあまあまをみつけることかんがえなきゃ。
まりさは赤ん坊どころではなかった。前にもらったアレはもうなくなりかかっている。どんどんなくなるのが早くなってる気がするが、まりさには原因がよくわからなかった。群れのみんなから案を出せと言われてからもう三日にもなる。ゆっくりの三日といえば相当長い。
まりさは全くゆっくりできなかった。
ふと、まりさが見上げると赤ん坊が微笑んでいた。
はぁ、おちびちゃんにかまってるばあいじゃないよ。このままじゃみんなからまりさがゆっくりできないとおもわれちゃうよ。
群れから買出しを頼まれていることからも分かるように、ドスまりさ一派からは良く思われていなかったがまりさは群れのみんなから尊敬されていた。ときどき人里に行って野菜を少しちょろまかしてきたこともある。れみりぁと死闘を繰り広げ、なんとか群れの被害を最小限に抑えたこともある。
もうまりさは一匹だけでゆっくりすることはできなくなってしまった。
群れのみんなから凄いねと言ってもらうこと。ドスまりさから苦虫をつぶしたような顔で感謝の言葉を述べてもらうこと。最愛のありすにほめてもらうこと。お高くとまった側近のぱちゅりーとありすの目を盗んですっきり!!したあとに体を預けられながらぱちゅりーの賞賛をきくこと。
もし、自分が今回の問題を解決できなければ今まで築き上げた名声が崩れてしまう。もうみんなにゆっくりしてもらえなくなる。それはだめだ。何とかしなくては。
おちびちゃんたちはいいよね!!じぶんでえさとることもないし、まりさとありすにゆっくりしてもらえるし。あんこがたりないあたまがうらやましいよ!ぷんぷん
待て、今なんだって?餡子が足りない頭?
あ ん こ が た り な い あ た ま。
餡子って何だっけ?
ゆっへっへっへ。まりさはてんさいなんだぜ!!
そばで見たありすはこう回想したことだろう。今迄で一番ゆっくりした笑顔だったと。
「クカカカカ……悲劇だ、実に悲劇だ。自分達の現状を弁えずに交換に出るなど…奴等は持ってくるな、間違いなく。」
「うまくいったね!おじさん!だかられいむに“ごほうび”ちょうだいね!!」
「クカカカカ……アレがほしいのか?だが、今回あの饅頭どもは既に追い詰められていた。お前の功績など無きに等しい。だめだね」
「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ー!!」
家の中で、男はずっと失笑を浮かべていた。
男は強制するつもりなどない。交換することも、しないことも。そう、強制するつもりなど一切ないのだ。
おかしい。ドスまりさはいぶしがった。
このところ、群れのゆっくりたちから見せられる赤ちゃんゆっくりの数が減っている気がする。
管理しているありすに確かめても同じ答えだ。
餌が集まらないのか?いや、群れの誰もがつやつやもちもちとしてる。
ならば、すっきりー!!を控えている?いや、バラバラに5組のゆっくりに確かめて見てもそんな様子はなかった。顔を真っ赤にして報告してくれたけど。
冬篭りしている最中ならともかく、今は子供を生む最後のチャンスだ。冬になれば自分が凍死や餓死することは経験上わかっているゆっくりが多いため、種の本能に従うのだ。だが嘘をついているなど考えにくい。第一、夜な夜などこかからか嬌声が聞こえてきて自分は眠れないくらいだ。
どういうことだろう……ドスまりさは悩んだ。
そして、動いた。
今までにない事態が起こっているのか?問題が重なるように出ているのに、原因が分からない。どういうことだ。群れを率いる者としてもう黙って見ているわけには行かない。
最近は寒いのか、外に出ないゆっくりも多くいる。気が進まないが、ドスまりさはあのまりさのところに行ってみることにした。悔しいが、若いゆっくりの間での人気は抜群だし、それなりに実力もある。
巣を覗いてみて、ドスまりさは戦慄した。
巣の中から生気がしない。目の前に二匹のゆっくりがいるにもかかわらず、だ。
違和感に気づいた。二匹は目がうつろなのだ。何を考えるのでもなく、目の前にいるドスまりさにさえ反応しない。いつものまりさなら、常にドスまりさを侮蔑するような色を目の奥にたたえているのに、だ。
ある意味、最もゆっくりしているといってもいい。
「ゆっくりしていってね!!」
「……………………………」
「……………………………」
どういうことだ?この二匹はゆっくりの本能であるこの言葉に全く反応しない。
いつも気障で外見を取り繕うありすでさえ、だ。
ふと見ると、二匹は餌を食べに行くようだ。
群れの頭首である自分を目の前にしてこの無礼。一体どうしたのだろう?謀反でも起こすつもりか?
「ぺーろ、ぺーろ、しあわせ♪」
「ぺーろ、ぺーろ、しあわせ♪」
「ゆっ?ドスまりさ、なにしているんだぜ?ゆっくりしていってね!!」
「ありすたちのとかいはなぺんしょんでゆっくりしていってね!!」
あり得ない。この二匹は今私に気付いたというのか?こんなに体が大きいのに?
なら、なぜ二匹とも今なんだ?
何かを舐めた後だ。それはなんだ?
「ゆっくりみせてね!!」
「ゆゆ!!これはまりさたちのもんだぜ!ドスまりさといえどぶれいはゆるさないんだぜ」
「そうよ!ひとのものをとるゆっくりはいなかものだわ!!」
「黙っててね!!」
ドスまりさは二匹の抗議に目もくれずに目の前の食べ物を舐めてみた。
「ぺろっ!これはあまあま」
「ゆ!ドスまりさのくせにまりさたちのあまあまに手をつけたんだぜ!!ゆっくりしね!ゆっくりしんでってね!!」
「そうよ!ひとのものをとるいなかものはしねばいいんだわ!」
おかしい。いくらまりさが反抗的とはいえ、たかが1舐めくらいで私と全面戦争でもするつもりなのか?人間よりも強い私に?
それにこの甘いのはどこかで舐めた気がする……。
「どこから盗ってきたか、ゆっくり白状してね!!」
「ゆゆ!!まりさたちはぬすんでなんかいないんだぜ!!せーとーなたいかだぜ!!」
「そうよ、ひとのことをぬすっくりあつかいするなんて!ああ、いなかもの、いなかもの。」
「嘘言わないでね!!自然でこんな甘いもの取れるわけないでしょ!!」
「うそじゃないんだぜ!!けちんぼなじじいとつーしょーしたけっかがこれだよ!」
「そうよ、ありすとまりさにゆっくりあやまってね!!」
じじい……そうだ、これはあの優しい人間ときれいなれいむ(ポッ)が持ってきた食べ物だ。
でもあの人間は二回しかここに来ていないはずだ。しかもずっと前に。さらに言えば、ああまい物を持ってきたのは最初の一回だけだ。
この二匹が嘘をついていないとしたら、人間と交換をしたはずだ。二匹の様子を見ていると、嘘をついたとは到底思えない。
「ゆっくり全部話してね!!」
ドスまりさは理解した。群れの献上した餌が減った原因を。群れのいざこざが増えた原因を。群れの赤ゆっくりの顔見せが減った原因を。
ドスまりさは泣いた。自分が油断した結果がこれだよ!人間なんて信用するもんじゃない。
ドスまりさは怒った。「条約」を結んだ自分たちは守っているのに、人間が勝手に破った。
ならばどうする?よろしい、ならば制裁だ。
「ぱちゅりー、群れのみんなを呼んでね!!」
「むきゅ、ドスまりさ。どうするの?」
「ゆっくり戦争だよ!!!!」
群れを全部見渡して、ドスまりさは現状の深刻さを把握した。
皆が無気力でドスまりさの話など聞く耳持たない。
どうにか、ぱちゅりーの人望でみんなを集めたのはいいけど、これでは戦争も何もできない。
仕方がない、この手を使うしかないか。
「みんな、ゆっくり聞いてね!!あの人間があまあまを独占しているんだよ!!そんなずるい人間を倒してみんなでゆっくりしようね!!」
「ゆっくりりかいしたよ!!」
「あまあまだねーわかるよー。」
「ひとりじめにするんて、あのにんげんはいなかものだわ!」
今まで自分達で奪いに行くことは無理だったが、ドスまりさがくれば話は別だ。「対価」は残り少なくなったし、いつまでも交換できるものでもない。現状に不安を覚え始めたゆっくりたちはドスまりさの煽動に乗ることにした。
これは兵隊ではない。ただの暴徒だ。人間を制裁した後、アレの摂取を止めさせる手段は分からない。人間の里に襲撃をかけるゆっくりが出てくるかもしれない。最終的には、人間と真っ向対立しかねない。
かまうものか!!自分が育て上げたこの群れを壊した人間など生かしてはおけない。どうせ、この群れはもうだめなんだ。ならば、死なばもろともだ。
頭に餡子が上ったドスまりさは決断した。
あとがき
次で最終話にします。
「美味しい物→ゆっくりの舌が肥えて働かなくなる→人里に行くor群れ崩壊」
テンプレ乙というべきこの内容でどうやって予想外の結果に持っていけるかね。
勘のいい人は「アレ」とか、結末に気付いたかも。
捻りがないのは仕様です。。
最終更新:2022年05月18日 21:52