まりさは気づくと壁に打ち付けられていた。
何かが高速で自分の顔面にぶつかり、体が吹き飛んだのだ。
まさに不意打ち。その正体を掴むことはできなかった。

突然襲い来る、経験した事のないレベルの痛みに思考が鈍る。
周りで何やら兄弟が騒いでいる声がする。

「………………りさのおねーさ……………」
「いたがって………………………やめて……」
「おとーさ…………うして!?」

ああ…お父さん。
その言葉が聞こえた時、まりさの鈍った頭は父親に助けを求めることを選んだ。

「おとーさん…ゆっくりたすけてね…」

ぼやける視界の中で父親を発見するまりさ。
呼びかけが伝わったのか、こちらに手を差し出し、床に転がっている自分を持ち上げてくれる。
しかし、彼女に差しのべられたのは救いの手ではなかった。

「ゆ゛!?」

短く鋭い呻きが腹から口へと漏れ出た。腹部を強打されたのだ。
壁とその拳の間で挟みつけられ、全身がビクンと痙攣する。その後にやってくる、全身を駆け抜ける痛み。
そんな痛みよりも、まりさにとっては重要なことが目の前で起こっていた。

「おとーさん…?」

三発目がやってくる。
その拳は明らかに父親の体から伸びているものであった。

「ゆぎぃ…」

重い一発がお腹に入った。力を加えられたのは一点。しかし、体の中からの強烈な圧力が全身を襲う。
体が悲鳴をあげているのが分かる。
これ以上やられたら…死ぬ。

実際にまりさの体は限界に達していた。局所的な傷には強いゆっくりでも、中の餡子が漏れ出てしまえば死ぬ。
このままでは破裂して一気に餡子を失うことになる。まりさの本能がそれを告げていた。

まりさは全力を振り絞って叫んだ。考えるよりも先に言葉が口をついて出る。

「やめてよおとーさあああああん!!まりさしんじゃうよぉぉぉぉおおおお!!!!」

ぴたりと父親の手が止まった。
手を離され、壁際をずりずりと落下するまりさ。

まりさはその時、安堵してしまった。
ああ、お父さんが自分の声を聞いて止めてくれた。
きっと何かの勘違いだったのだろう。お父さんはまりさと誰かを間違えて殴っていたんだね…
苦し紛れの発想だった。まりさにはこれくらいしか考え付く理由がなかったのだ。
しかし、その考えは男の言葉でいとも簡単に突き崩されることになった。

「最高だぁ…」
「おとー…さん?」
「やっぱり最高だなぁ…こうも僕を信頼してくれているゆっくりを虐めるのは」
「ゅ…」

言葉を失うまりさ。
今、目の前にいる男が自分に向けているのは純然たる殺意。
まりさにその男の心中を推し量ることはできなかった。
ただ分かるのは、父親が自分を偽りの愛情で育ててきたということだった。

このまりさの推測は間違いであった。
男は確かに赤ちゃんまりさを可愛がって育てていた。
ただその間ずっと、虐待したいという気持ちを抑えながら生活していただけのことである。

対してまりさはただ下を向いて自分の生まれを呪うことしかできなかった。
この時ばかりは自分このような状況に至らしめる運命を恨んだことであろう。
なぜ悪魔のような男の元に生まれてしまったのかと。

「おとーさんゆっくりしてよぉ…」

男はこのまりさが自分に対して不信感を持ち始めていることを悟った。
さっきから自分の足もとに体当たりを敢行している残り3匹のまりさについても同じだ。

このままではいけない。
こんなにすぐ崩れる関係を築く為にずっと育ててきたわけではない。
男は自分の気持ちに素直に行動することにした。

「まりさ…勘違いしてもらっては困るよ」
「ゅゅ…」

壁にもつれたまま力ない返事を返すまりさ。
その弱弱しさは体力の消耗からのみ来るものではない。
明らかに父親に酷いことをされたという失意から生来の元気を無くしてしまっている。

「俺はまりさが好きなんだよ」
「ゆ…?」
「だからずっと一緒にいたいんだ………まずはこっちに来てね」

男は4匹のまりさを転がしながら台所へと運んだ。
そして先ほど殴ったものとは別のまりさをフライパンに乗せる。

「まりさはこの家から出る必要なんてないんだよ…」
「ゆゆっ!!なにするの?」


「あんよを焼いてあげるんだよ。きっとこんがりほくほくだよ…そうすればもうまりさはこのお家から出られないよねぇ…」


コンロのスイッチが入る。
まりさは自分の足もとが熱くなってくるのを感じた。
キッと上を見上げて抗議しようとするまりさ。そしてその目に飛び込んで来たものに戦慄する。

男は笑っていた。
嘲笑でもない。大笑でもない。
それはいつものお父さんの顔だった。わずかに口角をあげて作りだされる微笑。
それがまりさに例えようのない恐怖をもたらした。

どうして?お父さんはまりさがこんなことになっているのにどうしてそんなに…優しい顔なの?

まりさが上を見上げて呆然としている間にも、下の方ではフライパンが火傷をするほどに熱くなってくる。

「あづいいいいいいいいい!!!やめて!!やめてよおとーさん!!ゆっくりできなくなっちゃうよおおおおお!!!」
「そんなことないさぁ…ずっとこの家でゆっくりすればいいじゃないか」

上からまりさの体を押しつける男。あんよがジュージューと音を立てる。

「い゛やああああああああああああ!!ぎゅってしないでええええええ!!!ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!!!!」
「そろそろ焼けたかな」

フフッと微かに笑うと男はまりさをフライパンからおろした。
既に意識はなく、全身から体液を流し出しているまりさ。そのあんよはもう真っ黒である。
深くまで焦げ付いたあんよは二度と機能しないだろう。

「ごめんね、痛かっただろう?」

次の一匹をフライパンに押しつけながら足元で痙攣するまりさを労わる言葉をかける男を見て、残りのまりさ達はさらに震えあがった。

何とかしてこの狂った男から逃げなければ…

「そろーり!!そろーり!!」
「ゆっくりにげるよ…」

「逃げないでよ…お父さんが嫌いなのかい?」

男はすたすた近づいてきてまりさ達を抱きあげた。
なんとも柔らかい手つきにお父さんに抱きあげられているような錯覚を覚える。
しかしあんよに感じた強烈な熱さによって、その幻想は吹き飛んだ。
こいつはお父さんなんかじゃない。別人なんだ。

「ほらほら、次は君の番だよ…」


まりさ達は全員があんよが使い物にならなくなるまで焼きあげられた後、地下の無味乾燥な部屋に運び込まれた。

「これじゃあおとーさんといっしょにおそとに行けないよ…」

一匹のまりさが呟いた。
他のまりさもそれを聞いて涙を流した。
そうだ。
自分たちが好きだったお父さんはどこかに行ってしまったんだ。まりさ達の脳はそう結論付けた。
目の前にいるのはお父さんに似た別の男。
まりさ達はその男を睨みつけた。父親にもう会えなくなったのもこの男のせいなのだと信じていた。
そんなまりさ達の気持ちを知ってか知らずしてか、男は一旦部屋から姿を消した。

すぐに戻って来た男が手にしていたのは、まりさ達が大好きだったシュークリーム。

「ほら、あーんしてね…お父さんが食べさせてあげるよ」

まりさ達の口の中にシュークリームが押し込まれていく。
お父さんの名を騙る奴なんかになんかに食べさせてもらうものか、と頑なに拒否していたまりさ達。
しかし口をこじ開けられて中にシュークリームを放りこまれると、つい「しあわせー!!」と口にしてしまう。

「そうか!!喜んでくれて良かった!!」

満面の笑みで返す男にまりさ達は戸惑いを隠せなかった。



それからというもの、毎日男は動けない自分達の世話をしてくれた。
毎日あまあまを食べさせてくれた。
時々蒸しタオルで体を拭いてくれた。
退屈しないように「テレビ」を見せてくれた。

「おとーさんありがとう!」
「どういたしまして!」

まりさ達の認識はいつの間にか「男」から「お父さん」に戻っていた。
いつぞやの悪夢はもう終わった。
自分たちの本当のお父さんは帰って来たのだ。

もう心配することは何もないんだ。


男の方もまりさ達が落ち着くことは分かっていた。
親子の深い関係はこれしきのことで崩れない、という確信が男にはあった。
ただ、やはり時期尚早だったのだろう。
まだ成体になったばかりで、半分子供だったまりさ達には刺激が強すぎたのだ。

男は自分自身の心の微妙な変化に気づき始めていた。
あの日、まりさ達が巣立つ、と宣言した時に自分がタイミングを見誤ってまりさ達を虐待してしまったもう一つの理由。
それはゆっくりのお相手を求めて、まりさ達の心が自分から離れてしまうのではないかという漠然とした不安。
どれだけ男に懐いていようと、まりさ達にはどうしても避けられない欲求がやって来る。
それは、子孫を残したいという生物の根源的な欲求。
けれども絶対に逃がさない。


今度こそまりさを自分だけのものにする。



そしてその日はやって来た。

「やべでええええええええ!!!まりさのきれいなかみがあああああ!!!!」
「お父さんはショートヘアーの方が好きだぞぉ…」

男はまりさ達の金色の髪をハサミで切っていた。
ゆっくりまりさにとって自分の髪は帽子の次くらいに大切な部分だ。
その美しい長髪が切られていく…それは耐えがたい恥辱だった。

「ほら、可愛いだろう」
「あ゛…あ゛…まりさのかみが…ゆっくりしたかみが…」

姉妹たちは皆短めに切り揃えられた自分の姿を鏡で見て絶句した。

もう誰にもこんな格好を見せたくない。
穴があったら入りたいとはこのことだろう。
すぐに鏡から目を逸らし、体を丸めて縮こまってしまった。
泣いているのだろう。雫がぽたぽたと床に垂れている。

「まりさ…お父さんは可愛いと思うよ」
「ゆ゛ぅー!!ゆ゛ぅー!!」
「もうおよめさんにいけないよ!!」

男の顔が一瞬ぴくりと反応した。
穏やかだった表情が一気に怒りがこもったものへと変化する。

「まりさ…およめさんになんか行けなくてもいいじゃないか…」
「いやだよぉぉぉぉぉ!!!まりさはあかちゃんほしいよ!!!」

男はまりさの髪を鷲掴みにして持ち上げると、そのままあんよに指を突き刺した。

「無理だね!!だってまりさのあんよはこんなにズタボロだよ!?」
「ひっ!!」

「誰がこんな気持ち悪いまりさを好きになるの?」
「ひどい゛よぉぉぉぉおおおお!!」
「おとーさん!!まりさにゆっくりあやまってね!!」

男はにやりと笑った。
その笑みは間違いなくまりさ達の発した「おとーさん」と言う言葉を聞いての笑みであった。
もうまりさ達はいくら酷い事をされても自分を父親だと信じて疑わない。そしてその絆は永遠に断ち切れることがない。
それを男が確かに感じ取った瞬間。
そして、それはまりさ達にとって終わらない悪夢の始まりであった。

「僕は謝らないよ!!!事実、誰もまりさなんかを好きになってくれやしない!!!」
「おとーさん…」
「クズのまりさ!!そう!ゴミクズまりさだ!!」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛…」

「あやまれ!!まりさにあやまれ!!!!」
「君にはお仕置きが必要みたいだなぁ…」
「いや…やべで…ゆげっ!!ごっ!!いだいよ…い゛だいよぉ…」

非難を浴びせたまりさに、男が馬乗りになってひたすらに殴りつけた。
破裂してしまわないように場所を選びながら顔を変形させていく男。
拳を打ち込まれたところの薄皮の下にはじわりと黒い餡が浮かぶ。そしてこぶ状に腫れあがる。
それを何度も、何度も、繰り返す。
いびつな形になっていくまりさ。

男は再び鏡を持ってくる。
そこに映し出されているのはもちもちつやつやのお顔などではない。
凸凹に隆起した不定形の物体に目と口が付いているだけのものであった。

「いやああああああああああああああああ!!!みだぐない!!みだぐない!!」
「ふふっ…醜い、醜いよぉ、まりさ。」

ぐさりと心に突き刺さる父親の言葉。
自分が途端にみすぼらしいくて取るに足らない存在に思えてくる。
まりさは周りを暗闇に包まれたかのような孤独感に苛まれた。

「おとーさんやめてあげてね!!」

妹の言葉もそのまりさには届かない。
届くのはまりさに乗っていた男にのみ。
男はその言葉の主を見つけるなり、同じことをそのまりさにも行う。

まりさ達は皆心身ともにボロボロにされていった。

そして誰もが反抗心の欠片も見せなくなったとき、男は初めて笑顔でまりさ達に語りかけた。


「でもね…僕はそんなまりさ達が大好きなんだよ…そうだ!」


「お父さんが代わりに愛してあげよう」



男は舐めまわすように1匹のまりさの全身を見つめ始める。

「やべで…」

まりさは男の視線から逃れようとするが、あんよが焼かれているので動くことはできない。
にやにや笑いながらまりさを見つめ続ける男。
髪の毛が短くされ、顔を滅茶苦茶にされ、プライドを傷つけられたまりさはその視姦に耐えられなかった。

自分の醜い姿が見られている…

段々と男に対する嫌悪感よりも、自分への嫌悪に気持ちが傾いてくる。

「可愛いよぉ…まりさぁ…」
「いやだああああ…やべでよおとーさん…まりさをみないでぇ…」

それを聞いた男はそのまま黙ってまりさを揺らし始めた。

「まりさ…愛してるよ」
「ゆっふ!ゆっふ!ゆっふ!ゆっふ!!ゆゆゆん……」

初めこそ全身でいやいやをしていたまりさだったが、次第に目がトロンとしてくる。
このまま揺らし続けると、発情して理性が吹き飛んでしまうだろう。
男はその状態になる一歩手前でまりさを揺らすのを止めた。
慣れた手つきであった。

「ゆふぅ…ゆふぅ……」

息を荒げて、頬を紅潮させているまりさ。
しかしまだ発情には至っていない。

「お父さんとすっきりしようねぇ」
「だめだよっ…それはいけないことだよっ…」

熱い息が混じった声で父親の呼びかけに拒否する。
まりさにも分かっていた。
実の親とすっきりするなんて絶対にやってはいけない。

男はこのまりさの状態を楽しんでいた。
まりさが自分の理性とゆっくりの本能の間でもがくのを。
そしてこのすっきりをまりさの心に刻み込むつもりであった。

まりさが落ち付いてきては揺らし、息が収まってきては揺らしを繰り返す。
否応なしに高まっていくまりさ。

「ゆぅぅぅぅぅ!!!すっきりさせでねええええ!!!」

まりさはついに発情してしまった。肌全体から砂糖水が放出され始める。

頭の中に靄がかかっていくかのように感じる。
目の前でこの行為をしている人物は自分のお父さん。
それでも今はただ、その手ですっきりさせてもらいたい…

最後の理性の防波堤が崩れ、一気に性欲がまりさの頭の中を支配していく。

「ゆゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆゆぅ♪」

先ほどまでとは打って変わって明るい声で鳴くまりさ。
それに対して男の表情は今までとは違い、徐々に沈んでいく。

「すっきりー!!」
「どうして俺はまりさと一緒にすっきりできないんだろうな…」

当たり前のことを呟くと、男は尚も更なるすっきりを求めるまりさから手を離し、部屋を後にした。
残されたのは快楽の続きを楽しもうとひとり体をくねらせ続ける1匹のまりさと、その痴態に言葉を失う3匹のまりさだけであった。


次の日、男が地下室に降りて来た時には、昨日のまりさは目を閉じて扁平にヘタってしまっていた。
発情状態から戻った時に、自分が誰と、何をやっていたのかを自覚したのだろう。
子供こそできていないものの、それは間違いなく父親と行うべき行為ではない。
他の3匹が舌で舐めて慰めてあげていたが、それも効果がない様子であった。

男はまだ健常な1匹のまりさを取り上げる。

「それはだめええええええええええええ!!!ゆっふ!ゆっふ!ゆっふ!ゆっふ!!!」


こうしてまりさ達は毎日とっかえひっかえすっきりを強要させられた。

それでも男は不満だった。
まりさ達と子供が作りたい。
それは種の垣根を超えた叶わぬ願い。
しかし、もう男を止められるものは何もなかった。

男は一時たりとも休まずに考え続けた。

そして思いついたのだ。
擬似的にまりさ達を自分の手で孕ませる体験ができる、とある方法を。



「ゆゆぅ…ゆゆゆん♪」
「ゆっゆっゆっゆ!!!」

男は地下室で二匹のまりさを擦り合わせていた。
こうすればまりさ同士がすっきりして子供を作る。
もちろん出来るのはまりさと人間の子供などではない。
それでも男は幻の子供を作ることで自分の欲求を満たそうとしていた。

「だめだよおおおおおおおおお!!あかちゃんができちゃうよ!!!おとーさんやめてあげてよおおおおお!!!」

周りのまりさ達がどうにか止めさせようと叫ぶ中、男は淡々と作業を進める。
その目にはかつてのような優しさは無い。

「ゆゆ!すっきりー!!」
「すっきりー!!」
「すっきりー!!!」

男までもがすっきりー!!と叫び、生殖行為は終了した。
片方のまりさからしゅるしゅると伸びてくる茎。
ある程度の長さまで伸び終わると、ポンッと等間隔に黄緑色の蕾が並んだ。
まりさ達はすっきりをし終えたことで我に返っていた。

「可愛いねぇ…おとーさんとまりさの赤ちゃんだよぉ…」

意味不明なことを呟くお父さん。

それでもお父さんが満足してくれるならばそれでいい。

もう自分達はここから逃げることはできないのだから。

「そうだね…おとーさんとまりさのあかちゃん、ゆっくりそだっていってね……」

まりさは力なく返事をした。


赤ゆっくりを育てている間は男の強制すっきりは無くなった。
毎日美味しいごはんと親身な世話をしてくれる父親に戻っていたのだ。
赤ちゃんもすくすく育っているようであった。
まりさにとってこの赤ちゃんだけが心の助けであった。

お父さんに赤ちゃんを見せてあげるんだ。
そう胸に誓った日の事をまりさ達は忘れていなかった。
赤ちゃんと一緒にいればお父さんもきっとゆっくりしてくれる。

だからこそ毎日、赤ちゃんが生まれた後の生活に思いをはせた。
皆でお外には行けないけど、一緒に一生ここでゆっくりできるならば幸せだ…
それはそれはささやかな幸せだろう。それでも多くは望むまい。
みながそう思っていた。

赤ゆっくりが生まれるその日までは。


「ゆゆー♪うまれるよ!!」
「おお、ついに俺たちの子供が産まれるのか!!」

父親と兄弟が見守る中、ぷるぷると震え始める赤ちゃんゆっくり。
まりさ同士の子供なので当然まりさ種だ。

その振動でポトリと地面に落ちる。

「ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!!」

一匹と一人の挨拶。




「ぱぴょぴぴゅっぺっぺ!!」




「ハハッ…」
「おとーさん?」
「アハハハハハハハハハハハ!!!!!傑作だ!!!やっぱり人間の俺じゃ駄目なのかなぁ………なあまりさ?」
「だいじょうぶだよ、おとーさん!!ほら、あかちゃん!!ゆっくりしていってね!!」

「ぱっぽぺぱぴゃ!!!」

「まりさ!!!ハハハハハハ!!!こんな子供要らないよな!!!潰しちゃおう!!ほら!!」
「やめて!!!おとーさんやめて!!!!ゆ゛う゛う゛ぅぅぅぅぅぅ!!!」
「いいだろう?またすっきりしようよ、まりさ!!!今度こそ『ちゃんとした』赤ちゃん作ろうねええええええええ!!!」



近親相姦。
実の兄弟同士からは、正常な子供は生まれない。
特に一緒の茎から生まれたゆっくりの間ではそれが顕著に表れる。
だからこそ、ゆっくり達の間でも近親相姦はタブーとされている。
それを生粋の飼いゆっくりであるまりさ達は知らなかったのだ。

それでも…
障害があろうと、赤ちゃんがいればゆっくりできる。
確かにゆっくりしてない子だったけど、ちゃんと育ててあげればみんなで幸せになれるんだ。
まりさは意味不明な言葉を叫ぶ子供を見て、自分たちが最後まで育ててあげようと心に決めた。
しかしそれは男には伝わらなかった。


男は障害をもったその赤ゆっくりを何の躊躇いもなく叩き潰した。
次から次へと生まれてくる子供も何かしらの障害を持っていた。
全て男によってその短い命を散らされることになった。


そして男は今日も自分の子供達を使ってすっきりし続ける。
決して生まれることのない正常な子供を求めて。


まりさ達は諦めた。
もう完全に成体となり、男を父親と認識してしまったまりさ達に心の逃げ場はなかった。
子供の頃ならば「こんなのお父さんじゃない」と事実を捻じ曲げることができたかもしれない。

でも、まりさ達はこのままで良かったのだ。

毎日こうやってお父さんと一緒にいられる。

それがまりさの幸せ。

これからもずっと


おとうさんといっしょ

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最終更新:2022年05月21日 21:46