とある挑戦者の話



ガタガタと重い音をたてながらベルトが流れる。

「ゆっくりしていってね!」

その上を流れるゆっくりを無造作に掴みあげる。

ブオオオギュボゾゾゾゾゾ!!

「ゆっくりんあああああ!!?」

ゆっくりの腹部にチューブを宛がいトリガーを引く。
真空となった管は空気を求め、強引にゆっくりを吸い込まんとする。
透明なプラスチックの中、ムリムリと皮が引きずり込まれる様が見える。
適当な頃合を見て、男は静かにトリガーを離した。

「ゆ、ゆっぐりじでよー!!」

ヂュポっと音を立て皮が抜ける。
突起状にピンと立った我が腹を、涙目になり訴える。
だが男は構うことなく、対面の柔肌にチューブを置く。

「ゆなあああああ!!!??」

またも同じよう、丹念に丹念に吸い上げる。
そうして出来上がった突起を指で摘み、潰し、捏ね上げて整形する。

「ゆん!! ゆく!? ゆあん!!」

びくびくと震えるれいむをガッチリ掴み、執拗なまでの指技は続く。
尖り過ぎず、丸過ぎず。男の目の奥で、静かに炎が揺れる。

ふぅ、と一息。男は掴んだ手をほどく。
れいむは れいむで、ゆぅと一呻き。
だが安堵も束の間、汗を拭った男の手が再度伸びる。
その手には先程とは違う、銀色に光る何かが握られている。

シュバアアアア

「ゆんいいいいい!!?」

カチリという音と共に、勢いよく吹きつけられる塗料。
ゆっくりの腹部を、薄く赤く染め上げていく。
傷んだ皮に沁みるのか、ついには瞳から涙がこぼれる。
薄く薄く、むらを無く。深く染み付けんと何度も吹き重ねる。

「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆあ!?」

次いで男は筆を取り、突起の先端を塗りたくる。
スプレーとは違う、冷やりとした感触が突き刺さる。
シクシクとした痛みはやがて体内にまで広がり、そこでれいむは気を失った。


ガコンガコン


れいむを乗せてベルトが回る。
新たなゆっくりがやってくる。




こうして今日も饅頭に乳首を付ける仕事が始まる。





「本日の議題だが、各人用意は出来ているだろうか」
「それでは私から」

男はボックスからまりさを取り出し、台座に載せる。

「いやあああ!!みないでえええ!!」
「このまりさは乳首を巨大化させました。通常の3倍といったところでしょうか」
「うーむ・・・」

ビンビンに立ち誇ったまりさの乳頭は、今にもはち切れんばかりだ。
ビクビクと脈打つ様が痛々しい。

「ズッシリとした含み心地が病みつきになる事請け合いです」
「なるほど・・・だがいささかコアすぎやしないかね?」
「乳頭はパワーです。押して押してなんぼのもんです」

ふんふんと鼻息荒く力説する。確固たる自信が彼にはあるようだ。
だが

「個人的には嫌いではないよ。だが、これは一般に広く受け入れられなくてはならない」

社長は重々しく続ける。

「ここまで漕ぎつけた技術と努力は評価しよう。しかし、売れなければ意味は無いのだ」
「・・・そう、ですね。ありがとうございました」


「次、よろしいでしょうか」

次いで舞台に上げられるは えいき。
真っ白に透き通るような身体。だがその乳首はコーヒー豆のように黒い。

「みちゃらめぇぇぇ・・・くろいの、みちゃらめぇぇぇ・・・」
「深くコクと切れのある、大人なブラックに仕上げてみました」
「う、うーむ・・・」

2つの突起からは、香ばしく深入りされたコーヒーの匂いが立ち上る。
甘くて苦く、ほのかに酸味がかった芳醇な香りだ。

「白黒はっきりつけた改心の作です。いかがでしょう?」

バンっと机に手を置き捲くし立てる。だが、またも社長の声は重い。

「アイデアは良い。だがね、やはり一般的ではないんだよ」
「・・・いけませんかでしたか?」
「白黒はっきりさせすぎだ。時には曖昧さを美徳とすることもあるんだ」



「では、よろしいですか」

次いで舞台に上げられるは みのりこ。
普段は空気の様に存在感の薄い彼女だが、今回は違う。
周囲の視線を釘付けにする程の武器を引っ下げている・・・乳毛だ。

「いやあああぁぁぁ!! おねえええちゃあああん!!!」
「ゆっくり界の薄さ一・ニを争う秋姉妹。
 彼女たちをボディに使いアクセントで強調することで、より存在感をアピールしてみました」
「・・・・・・・・・・」
「いかがでしょうか?」



「お前等どいつもこいつもマニアック過ぎんじゃあああ!!」

社長は切れた。

「何だよさっきから!! デカ乳首に黒乳首、挙句の果てにはパイ毛かよ!!」

ドガァと椅子を蹴り飛ばす。

「そもそもコアに攻めるなら攻め切れよ!! 甘いんだよ!!
 デカ乳首!! 乳輪もデカくしろよ!! 黒乳首!! 乳輪も茶色くしとけ!!
 パイ毛は・・・三つ編みでもあんどけ!! あとホクロつけろ、ホクロ!! 」
「お言葉ですが社長!! 乳輪との格差を楽しむんです!! 第一デカ乳輪なんてキモいじゃないですか!!」
「馬鹿野郎!! デカ乳輪の良さが解からんゆとりめ!! 渦を描くよう外側からINに迫るのがいいんじゃねーか!!」
「いやぁ、デカ乳輪はないでしょう・・・」
「ないですねぇ・・・」
「うるせえ!! 乳首毟ってフライビーンズにするぞ、オラァ!!」

バブチィ
「しゅうかくのあきぃ!!?」

遂にはパイ毛を毟っての大乱闘。
真っ直ぐな意見、本音と本音のぶつかり合いこそ、本当に良いものを産み出す糧となるのだ。




「・・・では改めて、次どうぞ」
「失礼します」

ボロボロの机に上げられるは てんこ。何の変哲も無いように見える。

「ゆっくりしゃぶっていってね!!」
「ふむ、確かにまともなようだが。普通すぎても詰らな・・・ん?」

突如魅入られ、かぶりつくよう、食い入るように見つめる。

「んん・・・んんむ!!」
「んああああああ!!」

遂にはしゃぶり付き、チュパチュパという水っぽい音が部屋に響く。

「・・・んぱはあ!! これだよ!! こうしゃぶり付きたくなる乳首だよ!! 我が社が求めていたものは!!」
「お褒め頂きありがとうございます」
「これは一体どのようにして作り上げたのかね!?
 色艶、形。どれも申し分ないが、何より咥えた時の弾力が抜群に素晴らしい!!」
「それはですね・・・これを使ったんです」

そうして取り出した新たなボックス、その中には

「ふぃーばー!!」


「いくとな?」
「そうです。このいくさんの乳首と てんこちゃんの乳首に電極を挟みましてね」

バチバチン

「へぶぅっ!?」
「ふひぃ!!」

「こうするんです、よ!!」

シャカシャカとリズミカルにいくを振る。
その目は段々と艶を帯び

「ふぃふぃふぃふぃーばーーーー!!!」
「へぶんじょうたいいいいいいい!!!」

電気をほとばしらせ、派手に果てた。

「こうして〆ることによって、よりリアルな感触の再現に成功したのです」
「何ともこれは・・・てんこといくの相性は抜群だな」
「また彩色には帽子の桃から採取した色素を用いております。
 これにより発色ももちろん、柔らかく甘い香りと味覚を備え付けました」
「見事だ・・・まさしく理想の『二次元仕様』だ!!」
「ありがとうございます」
「早速生産を開始してくれ。これで我が社も安泰だ!!」


ワーワーパチパチ




「じゃ次はデカ乳首で」
「いや黒乳首で」
「いやいやパイ毛で」
「いやいやいやデカ乳輪だって」


乳首職人の挑戦は続く




終わり  

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最終更新:2022年05月21日 21:58