※注意事項は6話までと同じです ご参照ください





【ばぁいおぅはざぁど ゆっくりぃ ふぉうぅ…】

          (8)

Chapter 2-1 START ...



湖での戦いを終えた後、突然の眩暈と吐餡を起こし、
飛び込んだ小屋の中で倒れこんでから数時間後、漸くミョンは目を覚ました。
とても気分が悪い。 ふと、体の中からくる奇妙な違和感を感じた。
何事かと思って舌を出すと、舌の皮膚内部を黄色い筋が走っていた。
それだけではない。 足、腹、顔、そして頭に次々と筋が現れていく。
ミョンの目がいつかの村長の屋敷での出来事の時の様に黄色く染まった。
体の中を何かが蠢くイメージが浮かぶ。
その何かが自らの体を侵食していく様な感覚がする。
まるで、自分が自分でなくなってしまう様な…!

「ゆわぁあああああああああああっ!!!」





「みょっ!?」

恐怖に駆られた自らの叫び声で目が覚めた。
目が覚めた…? そう、さっきまでの出来事は夢だったのだ。
いっその事、この任務自体が夢であればどんなに良かっただろうか…。
恐る恐る舌を伸ばして確認するが、どこにも筋は無かった。
最悪の目覚めであったが、最悪の事態ではなかった。
ほっとして息を吐き、重い体を起こす。
小屋の窓から外を見ると、辺りはすっかり日が暮れ、僅かに雨が降っていた。
雷も起こっていて、時々空が明るくなり、続いて雷鳴が聞こえてくる。
小屋の中にも一瞬だが光が差し込み、机の上に手紙が載っているのが見えた。

「手紙…? 一体誰が…?」

ミョンは人間の文字は読めないが、幸い手紙はゆっくりの使用する文字で書かれていた。

【この先の滝には、ある重要な物が隠されているわ。
それがあれば、※※ュリーを教会から救出できる筈よ。

ただし、教会へ戻るルートには、
“エ※※※ガンテ”と呼ばれる何かが用意されているから注意しなさい。

ところで、あなたの身体に起きている異変だけど、
残念ながら、もう※※※の手には負えないわね】 ※=雨で滲んで読めない部分

「ん~、よく分からないけど誰かが気を失っている間に置いて行ったみょんね。
滝に進めば何か手掛かりが見つかりそうだけど、また何か出てくるみたいだみょん…。
それと、やっぱりミョンの身体に何か起きているみたいだみょん…。
前に村で捕まった時に何かされたんだみょん…」

手紙に書かれていた事は、絶望的な事でもあったが、自らの進むべき道も示していた。
今はこの手紙を信じて、先に進むしかない。
例えその先にどんな罠が待ち受けていようとも…。



「ミョン、随分通信が途絶えていたけど大丈夫?」
「ハニガン、復帰したんだったみょんね。
ちょっと眩暈がして、吐餡して、倒れただけだみょん」
「それは大変ね…。 あなた自身が倒れては意味が無いから、余り無理をせずに進んでね。昔からあなたは無理し過ぎるって、大佐も心配していたわよ」
「了解。 大佐によろしくだみょん」

不安を押し隠して、通信を切った。



「空さんはあんまりゆっくりしてないけど、
この位の雨さんなら何とか耐えられるから問題ないみょんね」

念の為、大きなヤツデの葉っぱを荷物から取り出して身体に固定する。
(ヤツデとは、その名の通り手の様に葉の先が分かれた植物である。
物語で傘代わりに使われる事が多々ある大きな葉の植物である。
なお、この“傘”は前フリではないので以降特に話に絡まない。
もし落雷時に金属製の傘を差そうものならどうなるか…?
……………。
無駄なので省略するが、金属製の装備に落雷して黒焦げになるのも面白そうだ)

「そういえば、亀さんと戦っている時に、湖に洞窟があるのが見えたみょん。
あそこには何があるのか気になるみょんね…」

伊達に何度も戦っていた訳ではないのだ。
目聡く見つけた洞窟には一体何が待っているのだろうか?



「ひっひっひ、うぇるか~む!」

奴が待っていた。
そう、皆大好き武器商人である!

「誰もが大いに嫌っているみょんよ!?」
「何の話か分かりませんが、お久しぶりです。
ようこそ、私の隠れゆっくりぷれいすに!」
「ち、近づくんじゃないみょん! ちょっとでもミョンに近寄ったら撃つみょんよ!?」
「近づきたくても障壁があるので直ぐには難しいですね…。
その代わり、銃を撃たれても弾が阻まれて届きませんが」
「変な仕掛けを作ったみょんね…。 防犯用かみょん?」
「ええ、ここは私の大切な倉庫ですから。
ところで、ここに来る時に船を桟橋の鍵に繋ぎましたね?」
「それがどうかしたみょん?」
「実はあの鍵…、一度ロックすると私が持っている鍵でしか開かないんですよね…?」
「なっ!? ゆっくりしないで鍵を渡すみょん!!」
「言わなかったですか? “障壁があるから近寄れない”と…?」
「く…っ! 何が望み何だみょん…!?」
「あなたから入って来てくれませんかねぇ…?」
「ゆ………っ!!?」

何という事であろうか!
この洞窟は船を使わなければ出入りできない孤島の様な場所である。
その為の鍵を得るには小屋の中に入るしかない。
武器商人はここで綿密に張り巡らされた蜘蛛の巣の様な罠を仕掛けていたのだ!

「みょわあああああ!!」
「布団を敷きましょう! ねっ!!?」

Oh , my teacher ...



「あ…、ありのまま、今、起こった事を話すみょん!
『ミョンは奴の小屋内への梯子を降りていたと思ったら、
いつの間にか布団に寝かされていた』
な…、何を言ってるのか分からないと思うけど、
ミョンも何をされたのか分からなかったみょん… 。
あにゃるがどうにかなりそうだったみょん…。
“くそみそテクニック”だとか、“うほっ、いい男”だとか、
そんな話じゃ断じて無いみょん。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったみょん…」

どうやら想像もつかない恐怖を体験した様だ。
体験したと言うよりは全く理解を超えているようだが…。

「でも、ヤラレっぱなしじゃいないみょんよ!」

今度は桟橋の鍵に船を繋げずにおき、小屋の壁の隙間から矢を撃ち込んだ。

「ゆぎっ!?」
「その矢には黄色い草さんの汁が塗られているみょん。
直に耐えがたい激痛が全身を襲うだろう。
身体は麻痺し、息も出来ず、やがて心臓(?)が止まるみょん。
しかし、それでは面白くないみょん。 まだ、死ぬな。
武器商人、貴様にまだ味わった事の無い本当の恐怖を味わわせてやるみょん。
お前の“巣”の中で…」

そういうと、大きくて邪魔な筒(ロケットランチャー)を構えて、
桟橋に停泊されている武器商人用の船に狙いを付ける。

「オラオラオラオラオラァッ!」

やりすぎとも思えるほどに連発し、粉々に船を破壊する。

「これでお前は脱出できないみょん…」

この隠れ家には黄色い草を解毒できる緑色の草が無い。
つまり、洞窟から出られない限り解毒が出来ないという事だ。

「さぁ…、恐怖だ。 恐怖を感じろっ!」

自分の船を動かし、隠れ家から遠ざかって行くミョン。

「ふぃあー! じわじわと追い詰めてやるみょん!!」



ミョンは元いた岸まで戻り、その先にあるという滝へと向かって行った。
そして、その道中、一匹の村人と遭遇した。
今は雨が降っているので、出歩いているゆっくりは少ない筈だが、
目の前の村人はまりさ種である為、帽子に依る若干の防水効果を得ているのだ。
その為この雨の中、自らの危険も省みずにうろついていたのだろう。
だが、雨で弱り始めているらしく、ふらふらとして足元が覚束ない。

(でも何か妙な様子だみょん…)

不審に思って距離を取りながら警戒していると、突然村人の様子が変わった。
ガクガクと震えだしたかと思うと、頭部が隆起と陥没を繰り返していく。
次の瞬間、頭部が弾け、衝撃で外れた帽子の下から何かが現れた。

「みょっ!? 茎が生えてきたみょんかっ!!?」

村人の頭から生えた物、それはゆっくりが植物型の受胎時に生やす茎であった。
だが、今村人の頭から生えたそれは、通常とは大きくかけ離れていた。

「な、何で一匹も赤ちゃんがいないんだみょんっ!?」

そう、通常ならばその先に生っている筈の赤ゆっくりが一匹もいないのである。
様々な要因から、未熟児であったり、赤子の数が少ない事もある。
それでも、一匹もいないというのは異常な事である。
そして、それすらも凌駕する異常…。
頭に生えた茎が、村人の意思とは無関係の様に振り回されているのだ。
正常であれば絶対に行わない行為、自ら大事な茎を痛めつけているのだ。

「くっ、こっちに来るなみょん!」

余りに不気味な姿に、反射的に引き金を引くミョン。
放たれた弾は正確に村人の額を撃ち抜いたが、全く効果が無いかの様だ。
確かに、ここの村人は撃たれても余り反応を示さない。
だが、今の村人は怯みさえしない。 ゆっくりとまっすぐこちらに向かってくる。
この村の村人達は皆感情の無い目をしてはいたが、この村人に至っては更に無表情だ。
いや、最早意識が無い様な、既に死んでいるかの様な顔をしている。
まるで、茎に意識と身体を乗っ取られたかの様に…。

「ゆっ、ゆぐぐぐぐ…っ!」

もしかすると新しい生命が生まれるかもしれないので、
出来れば茎は撃ちたくなかったが、こうなった以上やるしかない。
グネグネと蠢く先端を避け、根元の比較的動きの少ない部分を狙い撃つ。
すると身体を撃っても無反応だった茎が大きく怯んだ。
どうやら、この状態の村人は茎こそが支配者であり本体である様だ。
続けざまに発砲していくと、耐え切れなくなったのか茎は根元から千切れた。
地面の落ちた茎は直ぐに枯れてしまい、主を失った村人の身体は倒れた。

「や、やっと倒せたみょん…」

恐ろしい事に、普通の村人以上の耐久力を茎は有しているらしい。
察するに、村人達の言動が奇妙なのも、この茎が原因なのでは?
この先、村人達との戦いの最中、この強敵に囲まれてしまったら?
何より、ミョンの身体に起きている異変もこれが原因では?
だとすれば、このままでは自分もあんな姿になってしまうのでは…!?

「……………。 怖い事を考えるのは止めるみょん…」



水門を飛び越え、滝へと続く崖に設置されたロープを使って下りると、
先程飛び越えた川の先に目指す崖が見えてきた。
残念ながら滝の勢いが強過ぎる為、このままでは通り抜ける事は出来そうに無い。
その為、水の流れを切り替えて通り道を作った。
滝が途切れた後ろには、洞窟がぽっかりと口を開けていた。
恐らくこの洞窟の中に、何者かからの手紙にあった重要な何かが隠されているのだろう。



洞窟の中に入ると、奥に目指すべき物があった。
ある重要な物とは、教会の扉の鍵を開けるのに必要な丸い紋章であったのだ。

「ハニガン、丸い紋章を手に入れたみょんよ」
「やったわね、これで教会の扉が開けられるわ!
ゆっくりしてないで急いで助けに行ってあげてね!」
「でも、途中にはまた何かいるみたいで…」
「関係ないわ、さっさと行きなさい」
「ゆぅ………」

人使いが荒いのは変わらないらしい。
幸い、洞窟の奥には地下水脈があり、ボートを使って楽に進む事が出来た。



着いた先は、以前武器商人がいた採石場の近くであった。
倒しても倒しても直ぐ復活して各地に現れる武器商人だが、
流石に一度倒された所には現れないらしい。
もしかすると、武器商人は全て同一人物に見えるが、実は複数いるのだろうか?
それならばこの謎に説明がつけられるのだが…。



梯子を昇り、採石場へと戻ってきた。
以前来た時はカラスの群れがいたが、今は消えていた。
教会まであと少しだが、このまま何事も無く辿り着ければ良いが…。
そう考えて進んでいると、目の前の道が突然丸太の扉で塞がれてしまった。
続いて、背後の扉も塞がれる。 村人達に因ってミョンは閉じ込められたのだ。

「な、何をする気なんだみょん!?」

更に村人達は採掘場の奥にある扉を開け、中から何かを引っ張り出そうとしている。
先程から、扉の向こうから奇妙な唸り声が聞こえていたが、
一体何が潜んでいるというのだろうか!?
暗闇の中から何かがその姿を現した時、ミョンは己が目を疑った。

「レ…、レ…、レティだぁああああっ!!」

そう、洞窟から姿を現したのは“ゆっくりれてぃ”とよばれる種類。
他種のゆっくりを食べる捕食種の一種であるが、
このれてぃに関しては通常の何倍もの大きさを有している。
村人達に数人掛りで引きすりだされたレティは、非常に不機嫌そうである。

「ま、まさか、手紙の滲んで読めなかった部分は、
“エレティガンテ”と書いてあったのかみょんっ!!?」

その時、不満が爆発したのか、身体を縛っている縄ごと、
引っ張っていた村人をレティは振り回した。
その衝撃で投げ飛ばされる村人達。
縄から開放されたレティは素早かった。
あっと言う間に周囲の村人達を吹き飛ばし、舌で捕らえては飲み込んでいった。
逃げようとした村人は踏み潰されてしまった。 一瞬の出来事である。
気が付けば、その場で生き残っているのはミョンだけであった。
レティはミョンに向き直ると、威嚇の声を上げた。

「あ…、あわわわわ…! これは、やばすぎるみょん!!
早くどこかに隠れないとミョンも食べられてしまうみょん!!!」

レティが舌を振り上げたので、慌てて逃げ出すミョン。
この圧倒的な差を見せ付けられてはそうするのが正解である。
とりあえず手近にあった小屋に入り込み、体勢を立て直そうとする。

「みょ? レティは大きすぎてこの小屋には入ってこられないみたいだみょん!
決めたよ、ここをミョンのゆっくりぷれいすにするよ!!」

小屋に逃げ込んだのは正解の様だ。
巨体のレティにとって小屋は狭過ぎる為、舌を伸ばして捕らえるしかないのだ。
だが、その伸ばした舌を銃撃されて、レティは悶えるしかなかった。

「ゆふふんっ! ここならゆっくり出来そうだね!」

だが、いつまでも小屋の中に居続けるのは間違いだった。
中々攻め込めないレティが業を煮やし、ミョンを食べるのを諦めた。
ただ食べるのを諦めたのならば良かったのだが、
舌を痛めつけられてレティは怒っていた。
大きく一跳ねしたかと思うと、ミョンを小屋ごと押し潰したのだ。

「ゆべしっ!」

完全に圧壊した小屋の中に、平たくつぶれた饅頭と餡子の染みが広がっていた…。

You Are Dead ...



……………。

またしてもミョンからの連絡が途絶えた。
ミョンはこの強敵を退ける事が出来るのか?
例えこのレティを退けたとして、ミョンの身体の異変は何とかなるのだろうか?
それとも謎の人物が言う様に、ミョンの異変は既に手遅れなのだろうか?
異変の中、少しずつ明かされる村人達の謎。
ミョンは全てを解決する事が出来るのだろうか…?

Wait for next report ...





【今回から漸くチャプター2に入る事が出来ました。
2章からはついに寄生体が出現します。
攻撃力も耐久力も高い厄介な敵で、ゲームの根幹に関わる敵でもあります。
徐々に現れてくるレオンや村人達の異変。
そして立ちはだかる強敵、“エルヒガンテ”の存在。
アシュリー救出の為には、こいつを倒さなければ進めません。
ここからが本番です!

エルヒガンテは小屋の中や間に入れば暫くは安全ですが、
その内潰されます。 小屋ごと。 ヴィジュアル的には即死です。
序盤なので強い武器や弾が少ないので苦労しますが、
攻撃や移動速度が遅めなのが救いですね。
世の中にはナイフで倒してしまう人もいるそうですが…。

謎の人物からの手紙ですが、原作とは若干文章を変えています。
ゲームではファイルが攻略のヒントになる事もあるので、結構重要なのです。
その為、伏せた方が良い情報も多くなるのです。

因みに、湖を沼地側に戻るとある敵と遭遇しますが、
今回はあえて登場させていません。
ゲームだと、態々特別演出付きで出てきてくれますけどね。
また、今回一部の村人との戦闘を省いています。
これで少しは話が進みやすくなったでしょうかね。

エルヒガンテには、でかいという理由からレティを配役。
幽々子でも良いけど、もう使っちゃってるしね…】

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最終更新:2022年05月21日 21:59