☆能力発動中の幻は二重引用符で囲んでいます
☆直接虐待はしていません

  幻餡術師―ユリュージョニスト―の僕


 僕が奇妙な能力を持っていることに気づいたのは小学4年生の時だ。以来、僕の意志とは
無関係により強く成長を続けた。

 『ゆっくりに幻を見せる』能力だ。

 最初の頃は何もないゆっくりの前にお菓子や野菜の幻影を出現させて、消してみせるとい
う二流の大道芸人がする手品と大差ない能力だった。しかし、高校2年生となった今では音や
匂い、味、感触といった視覚以外の感覚器官で感知する刺激まで操れるようになった。
 僕の知る女の子がこの能力を【幻餡術―ユリュージョン―】と名づけてくれた。
 ただ、『幻餡』と言っても、集中すればゆっくりだけでなく人に対しても幻を見せること
だって出来るのだが、僕の好きな反応ではないし(称賛とか善意ばかり)、精神的に疲れるので
やらないだけだ。
 指先から電磁波的な物を出して餡子脳を誤作動させて、ありもしないものを見せるのだ。
ちょうど心霊スポットが電磁波スポットで枯れた木が人間に見えるように。
 強烈な波長のせいか目の前の空間がゆがむ現象も起こるが、エフェクト的にかっこいいと思っている。
 この能力を携えて、公園に行ってはいくつものゆっくり家族を『互いがめーりんに見える』幻影をかけて
殺し合わせて、最後に残った1匹にかけた幻影を解除して、その饅生を破滅させたことが何度もある。
 砂場の砂を甘い砂糖に変えてゆっくりに食べさせたこともある。そのとき、満腹の感覚を鈍らせて
体の体積以上に砂を食べて、破裂した子ゆっくりたちも見てきた。

 そんな僕にもついに春が来た。
 僕はいつもより早く起きたので始業の30分前には登校したのだ。
 ふとげた箱を開けると質素な便せんが入れられていた。もしやと思い、中身を見た――

『親愛なる――へ、あなたが好きです。
 あなたへの思いを心に忍ばせていましたが、もう耐えることができません。勇気を出して
この手紙を書き上げました。
 私の思いを伝えたいので今日の放課後、逆台公園にある時計前のベンチに来てください。
 たとえ振られることになっても、踏ん切りがつくでしょう。

 PS来るときにはメロンパンを2つ持ってきてください。
 放課後のジョーカー』
 という手紙にトランプのジョーカーカードが貼り付けられていた。

「ピャアアアアアアアアアッ!」
 気分が良かったので、そんなことを叫びながら中庭に駆け込んだ。
 すると中庭では身を寄せ合っている新顔の野良ゆっくりの家族(親はありすとまりさ、
ありすはにんっしんっしており、頭に赤まりさ2匹と赤ありす2匹が実っている、大きさ
からして生まれる寸前だろう)に幻を見せた。
 この能力は使用時の精神状態に左右されるため、ハイテンションなときはより強烈な
映像や音、匂いなどの幻を与えることができるのだ。
 親ゆっくりを発狂させて赤ゆっくりを殺してもいいが、今回は赤ゆっくりがターゲットだ。
インターネット上のゆっくり虐待動画で見た映像を奴らの脳内にこれでもかと流し込む。

 ”赤ゆっくりを真っ黒になるまでレイプして殺すありす”
 ”自分が生き残るため、人間に子どもを差し出すまりさと直後に潰される赤ゆっくり”
 ”捕食種に襲われたとき、親に突き飛ばされてスケープゴートにされる赤ゆっくり”
 ”加工所で一度も休ませられずにベルトコンベアの上で走り続けさせられる赤ゆっくり”

 とたんに赤まりさや赤ありすの顔色が悪くなってきた。青白く餡子の気が引いている。
時々、小刻みにゆれて「ゆぅ……」などと呻いている。
 手始めに生まれることが、ゆっくりできないことだと餡子脳に叩き込む。これで赤ゆっ
くりの心はいとも簡単に折れて、幻の中で殺すと、現実でも死ぬようになるのだ。
 まさに『胎児よ、胎児よ、何故躍る、母親の心がわかって、おそろしいのか』である。
「ゆ! ありす、あかちゃんのようすがへんだよ!」
「あかちゃんゆっくりしてね……」 
 僕は最終段階とばかりに、視覚だけでなく痛覚も加える。
 目の前で心配そうに見つめる若い親まりさの姿を変えてやった。
『親まりさの姿が、焼けた火箸を突き刺そうとする虐待ゾンビに見える』幻を見せた。と
あるホラーゲームで初めて見たゾンビの姿が僕のトラウマだからだ。
『焼けた火箸を突き刺される熱さを感じる』の幻餡をかけた。
「こにゃいでえええ……」

 ”体が崩れて、肉が腐敗したゾンビに迫られる。手に持った火箸の先端が口元に近づけられる。
焼けた鉄から発する熱気が赤まりさの口をちくちくと刺激した。”

 現実では必死で避けようとするが、親の頭から生えている蔓の茎に留められているため、
動くことができない。そんな赤ゆっくりが選ぶ道はただ一つ、自らの意思で茎から離れることだ。
「だじゅげでおぎゃあじゃああん! あぢゅいのやぢゃああああああ!」
 そう叫んで体を大きく揺らすと、先頭の赤まりさが茎から落ちた。
 たいていは緩衝材となる葉っぱなどを敷くのだが、このつがいはまだ準備をしていなかった。
ゆっくりした結果がこれだ。
 中庭の石畳に転がっていた小石に顔面から落ちて、体の半分ほどまで陥没させた。だが、まだ
生きているようだった。体がビクビクとけいれんしている。
「あがぢゃああああああん!」
 親まりさが顔から小石に突っ込んだ赤まりさにかけより、体をぺろぺろと舐める。しかし、こ
の処置が、赤まりさには赤熱した火箸を押し付けられているのと同義だ。

 ”逃げようとして茎から体を離したのはいいが、着地に失敗した。体勢を整えないうちにゾンビが
赤まりさを掴み、なでるように火箸を押しつける。
 焦げて黒くなった皮が火箸を動かすたびにぼろぼろと崩れ落ちる。足もとからわずかだが、
餡子が流れ出た。足にすでに感覚はなく、体内の餡子も焦げ始めた。”

「もっぢょ…ゆぐぐぐぐう…」
 目はあらぬ方向を見て、『ゆっくりしていってね』も言えないほど、知能にダメージを与えた。
「あでぃずうううう! だいべんだよおおお! あがぢゃんがーーーー!」
 親まりさが、つがいのありすに赤まりさの異変を訴える。
「ゆ? おちつきなさい、まりさ。あかちゃんがたのしみなのはわかるけど、あまりおおきなこえをださないで」
 しかし、ありすが聞き分けのない子どもをなだめるように低いやさしい声で言った。

 ”赤ゆっくりはありすの頭の上で安らかな顔をして眠っている。1匹たりとも苦しみとは無縁のような
無垢な寝顔だ。”

 僕は親ありすにそんな幻影を見せていた。
 知能が欠損した赤まりさを知らないし、残りの赤ゆっくりが苦しんでいることも知らない。
 2番目と3番目の赤まりさと赤ありすには、逃がすことなく火箸を突き立てる幻を見せた。

 ”赤まりさの口を丹念に焼く。砂糖細工の歯を溶かし、歯茎もふさいだ。口の中で火箸をかき回し、
小さな口はのどの奥まで焼かれて、声すら出せない。”

 赤まりさの口から白い歯がこぼれおちた。
 蔦にぶら下がってじたじたと体を震わせるが、僕の【幻餡】から逃れる方法はない。
「ゆぶっびゅびゅびゅ……」

 ”後ろにぶら下がる赤ありすの目を焼く。飴玉でできた目は1000度に熱せられた火箸でいとも簡単に溶けて、真っ黒い目の穴だけを残した。”
 赤ありすの両目がドロリとこぼれおちた。口からはカスタードを漏らしている。「あべべがみえにゃいのおおおお! まっきゅらきょわいいい!」

 ”赤まりさと赤ありすを一気に火箸で貫く。中枢餡をはずしたため、即死はできず体内の餡子が
致死の温度に達するまでの十数秒間、体の中から熱せられる熱さに身を揺らして逃げようとした”

 ぼとぼと、っと2匹分の塊が茎から落ちた。悪夢による過度のストレスで、生きるのを拒否したのだ。
 2匹の異変を察知して親まりさが、さらに血相を変えて親ありすに詰め寄って叫んだ。二度目も
まりさが騒いだためか、心底うっとうしそうな顔でありすがまりさをにらみ返す。
「あがぢゃんがいだがっでるよおおおお! あでぃずっでばあああああああ!」
「うるさいわね! あかちゃんが起きちゃうでしょ! あかちゃ~ん、うるさいおとうさんで
ごめ……あがぢゃあああああん!」
 ここでありすにかけていた幻を解除した。
 目の前に生まれたのは元気にあいさつをする赤ゆっくりたちではなかった。
 言葉をしゃべることができない赤まりさ。『ゆぐぐぐぐ』とうめき声をあげ続けている。
 生えそろいつつあった歯が全て抜けた赤まりさ。目じりが避けるほど、目を見開かれている。
 目玉がこぼれ落ちて地面にうずくまる赤ありす。目の穴からはカスタードが噴き出している。
「どぼじでごんな、くずのあがぢゃんしかうばれないのおおおお!」
「おちついてよありす! さいごのあかちゃんがいるよ! ゆっくりしたこにうまれてね!」

 ”最後に残った赤ありすは虐待お兄さんに、髪の毛をむしり取られる。綿あめよりもきめ細かい
赤ありすの金髪がごつごつした手によって、引きちぎられた。ありすの象徴でもあるカチューシャは真っ二つにへし折る。
 赤ありすが変わり果てたカチューシャに近寄って、無気力な表情で見つめていた”

 髪がゴソっと抜けおちた。同時に赤いカチューシャも地面に落ちた衝撃で真っ二つに割れる。
「ゆっきゅりちていっちぇね!」
 皮の白いはげ饅頭ありすが舌足らずな喋りで、親にあいさつする。
「はげはゆっくりできないいいいいいいいいいいい!」
 ありすは強烈に拒絶するが、まりさは涙を流して喜んでいた。なぜだろうか?
「で、でもさありす。このこだけが、まともにあいさつできたんだよ! ゆっくりできるこだよ!
かみのけなんてすぐにはえてくるんだぜ! あかちゃんゆっくりしていってね!」
「でぼ、いやなのはいやなのおおおお!」
「どおちてしょんなこちょいうのおおおお!」
「どぼじでそんなごどいうのおおおおお!」
 中庭で親ありすと親まりさ、ハゲ赤ありすの不快な合唱が繰り広げられる。
 言葉をしゃべれない、歯が全部抜けた、目がこぼれおちた、髪と飾りを失った――
 そんな赤ゆっくりたちを抱えて、この2匹はどうやって生きていくのだろうか、その苦労を想像するだけで
勃起モノなのである。
 僕は下半身のドロドロとした感覚に浸っていた。


「やれやれ、お前は何をしているんだ?」
「何奴だ!?」
 僕が人の少ない学校の中庭で一人楽しんでいると、ぽんと肩を叩かれて、思わず怒声を上げてしまった。
 驚きとは対照的に、大きな瞳で僕を見つめてくる。女子高生としては小さい部類に入る胸の前で腕を組んでいた。
「こいつを見てくれ、どう思う」
 僕は手紙を手渡した。彼女は眉を寄せて手紙を眺めつつ、音読を始めた。
「読むなよ」
 慌てて手紙をひったくる。
「何だこれは、ラブレターか?」
「多分な……」
 彼女の問いに、曖昧に頷く。
 すると彼女は興味無さそうに呟いて、教室まで歩いて行ってしまった。
「待あてぇい」
 ハイテンションで中庭に駆け込んだため、まだ靴のままだった僕は、急いで上履きに履き替え後を追う。
「はあ……」
 自分でも知らない内にため息が漏れた。
 僕がラブレターもらったことに、あんまり興味無いのかよ。わざわざ、帰り路とは逆の方向にある逆台公園に
行くのに。
「ちょっとくらい嫉妬しろよ」
「なにか言ったか?」
 そう彼女が返す。
「何も」
「……なにを怒ってる?」
「怒ってない」
「ナニを握る?」
「握ってない」
「メロンパンが好きなら、鬼井屋のメロンパンが喜ばれるぞ」
「分かってるよ」
 彼女のアドバイスにも僕は少し荒立った口調で返した。
 鬼井屋のメロンパンは1個360円と高いが、とてつもなく美味いのだ。
 メロンリキュールを使ったメロンの味や、焼きたての香るバターも良いが
このメロンパンの白眉はサクサクとしたクッキー状の外側だろう。
 ともあれ僕が急に不機嫌になった理由は、彼女の反応の薄さにあった。
 少しでも嫉妬してほしいと願ったのは手紙をくれた人には悪いが、僕は昔から彼女のことが大好きだからだ。
 高圧的な物言いで、周りの人間と衝突するような彼女だが、僕の虐待趣味にも理解を示してくれたり、
僕の能力に興味を持ってくれた数少ない人間だ。


「最近、きもんげと間違えられて、虐待お兄さんに殴られる生徒が増えていますから、みなさん登下校
の最中には気を付けてください。何か質問は?」
 最近は怖いなと心の中で一人思う。
「ないようでしたら、これで終わりです。また明日会いましょう。さようなら」
「さようなら」
 こんな感じで放課後になった。
「やっぱり行くのか?」
 声音とは裏腹に剣呑な目付きで、彼女が訊いてきた。
「いやか? いやなのか? 行って欲しくないのか? このツンデレさんめっ」
 少々カマをかける意味で試すような質問をした。
 彼女はきめぇ丸のように首を斜め上に傾けて、僕を見下ろすような表情をした。
「勝手にしろ」
 そう言って3階の教室から自転車置き場の屋根に飛び降りて、自転車に乗ってどこかへ行ってしまった。
よほど怒っていたのだろうか、いつもとは違う道を選んだようだ。僕と一緒に帰らないと言うかのように。
 怒らせたかもな、でもあれで怒らない方が不思議だよな。
 しかし、今は公園で待ってる人の方が優先だ。たとえ断ることになっても、
 真剣な気持ちには真剣な気持ちで応えなければならない。リスペクトを持って断らなければならない。
 そう、たとえるならば、ウサギを狩るのにも全力を尽くす獅子のように。
 自転車を漕ぎ漕ぎ、鬼井屋でメロンパン2個720円を購入して、僕は公園へ向かった。
 そこにはすでに一人の女の子の姿があった。
「いつまで待たせるつもりだ?」
「……ん、なんていうか、そんな予感はしていた」
 『メロンパンを持ってきて欲しい』とあっただけで、『メロンパンが好き』だとなぜ分かる?
 なぜ帰り道と逆の方向へ行った?
「なんだ、分かってたのか」
 僕の大好きな彼女だった。

「いつ気付いたんだ?」
 悔しいな、と彼女が唇を尖らせる。僕はメロンパンを渡した。
「君が僕に『メロンパンが好きなら、鬼井屋のメロンパンが喜ばれる』と言ったときに確信したね。
 手紙には『持ってきてほしい』と書いてあったけど、『好きだ』とは書いてないじゃないか。
 なんで、相手がメロンパンが好きだと分かるのかな……って。数学の授業中でそんなことを考えて
いたら、先生にあてられて大変だったよ。
 それと、あとは筆跡かな? 君はやたらと筆圧が高いから」
「そこまで分かっていたのか、さすがだな……」
「うん?」
「お前は、私のことが好きなんだろ?」
「……うん」
 なんという洞察力。
 僕がラブレターに気づいたように、彼女も僕の恋心に気づいていたとは……
「最近お前の私を見る目が変わっていたよな? 着替えとかこっそり覗いているのだろう?」
「何……だと……」
 図星を指されて硬直した。
「私と付き合うのは面倒だがいいのか? この通り、高圧的な物言いだ」
「それは慣れっこさ。それに僕が進めたんじゃなかった? バカにされないように、少しクールな
男言葉気味に喋ったほうがいいって」
「はは、そうだったな」
 いつも冷静なその顔が久しぶりにほころんだ気がする。
「胸が小さいのは気にするか?」
「しないよ」
 僕がそう答えた。そんな胸が小さいからと言って、嫌がる僕ではない。
「じゃあ、食べようか。鬼井屋のメロンパン」
「ああ、そうしよう」
 僕と彼女がメロンパンを入れた包みを開けたところで、目の前に1匹の親れいむ、子まりさ、子れいむが
やってきて例の如く、食べ物を要求してきた。
「そのあまあまはれいむのだよ!」
「よこしゅんだじぇ!」
 子まりさはまだ赤ちゃん言葉は抜けきっていない。こぎれいな身なりを見ると、捨てられた
野良ゆっくりだろう。
 もともと、ゆっくりは大嫌いだったが、ここまでしつこいと逆に感心する。しかし、僕は
簡単に見逃すような甘ちゃんではない。
 僕は親れいむに”子まりさがメロンパンに見える”幻影を見せた。

 ”れいむの前にメロンパンが2つ置かれる。
「ものわかりがいいんだね、にんげんはそうでなくちゃ!」
 そんな物言いで空腹を満たすように、口を大きくあけて、クッキー状の皮に
かぶりついた。
 赤ちゃん言葉が抜けずうるさい子まりさの姿は、物言わぬメロンパンに。
 生ゴミと汚水の臭いが混ざった野良臭は、食欲をそそるバターのフレーバーに。
 雑草の風味がしそうな饅頭の味は、メロンリキュールを使ってほのかなメロン味に。
 雨風によってパサパサした皮は、グラニュー糖をまぶしてサクっとしたクッキー状に。
 砂混じりでザリザリとした餡子は、きめ細かいマスクメロンのクリームに。
「うっめ、これめっちゃうめっ! やめられねぇ!」
 人間に飼われていたころの、おいしいご飯の味を思い出して、夢中になってむさぼった。”

「おがあざんやべでええええ! どぼじでれいぶのいもうとたべぢゃうのおおおお!」
 子れいむの制止にも母れいむは一切耳を貸すことなく、子まりさにむさぼりついている。
 帽子ごと頭からかじりつかれたまりさが、びくびくとけいれんして、傷口から餡子を流した。
 そんな母の姿に、子れいむは180度後ろに体を回して、逃げ出した。
「あまあまのくせににげないでね!」
 逃げる子れいむ(親れいむにはメロンパンにしか見えない)の上に、親れいむが飛び乗っ
た。
 つぶれて動かなくなった子供の前で、勝ち誇ったようにゆっへんと胸を張っている。
 体の大部分を食われて死んだ子まりさ、全体重をかけて半分潰した子れいむを寄せ集めて、
食料を与えるべき子供たちを探すかのように、左右をきょろきょろと眺めていた。
「おちびちゃんたち~、ゆっくりでてきてね~。にんげんからごはんをとってきたよ」
 この幻は僕の意思で解除しない限り、解けることはない。僕からメロンパンを奪おうとした
親れいむは子どもたちを食べながら、腹の中に収まった子どもたちを探し続けることだろう。

 一息ついて、僕は彼女の方を向きなおした。
「僕の方こそ、こんなのだけどいいかな?」
「私は気にしない」
「そうか、良かったよ」
 僕は安心して、ほっと胸をなでおろした。
「あとさ」
 僕はさらに言葉を付け加える。

「さっき胸が小さいと言ってたけど、僕がDカップあるから大丈夫だよ」
 春のさわやかな風が僕と彼女スカートをめくりあげた。

 終わり

『耳が聞こえない僕とゆっくり』から着想を得ました。

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最終更新:2022年05月22日 10:44