ゆっくり畑


リリーホワイトが嬉しそうに弾幕をばら撒きながら喜びの声を上げている季節。
昨日耕した畑に種を植えようと向かったのだが。

「「「「「「んほぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

博麗の巫女やら普通の魔法使いやらの顔―ゆっくりがいた。
暖かくなってきたからだろうか、互いにすりすり仲良さそうにと頬を擦りあっている。

(そういえばゆっくりは頭から茎を生やすよな・・・)

それを思い出し、ちょっとした実験をやってみたくなった。

「れいむきもちいいよ!!!」
「まりさ!そろそろれいむもすっきりするよ!!!」

「「すっきりー!!!」」

人目もはばからずすっきりしていた一組の番がすっきりする。
頭からにょきにょきと茎が生えてきて―

ブチッ

「いやぁぁぁぁぁ!!!」
「まりさとれいむのあかちゃんがぁぁぁぁ!!!」

ある程度の所で根元―れいむの頭のてっぺんごと茎を取り払う。

「なんでごどずるのぉぉぉ」
「いだいぃぃぃぃぃ」

泣き喚く声を無視し、そのまま畑に茎を植える。
よし、そのまま放っておくと萎んでしまう筈の茎は元々の青々さを保ったままだ。
そのままだと五月蝿いのでこの2匹には肥料になってもらおう。

畑の内の一列に、計5本の茎を差し替えた。
普通ならゆっくりする事無く実が付く茎が、青々としたまま立っている。
何と言うか、それは非常にゆっくりしていると思った。

さて、次の列に取り掛かろう。


「おほぉぉぉぉぉ!!!あと少し!!!」
「すっきりぃー!すっきりーー!!もうひとつおまけにすっきりーーー!!!」

気分良くすっきりした番から蔓がにょきにょきと生えてきた。
それも2匹ともである。

「あかちゃんができてきたね!」
「とてもゆっくりしたこになるといいね!!」
「でもたべものをたべないとみんなゆっくりできなくなるからもどろうね!」

和やかに話をする2匹。
ひょいと2匹を持ち上げる。

「「ゆゆー、おそらをとんでるみたいー」」

暢気に喜んでいる2匹を、畑に空けた穴へ、隣り合わせにして入れる。

「ゆ、じめんさんがめのまえにみえるよ!」

赤ちゃんが出来ているためにジャンプして越えられそうも無い2匹。
この後は当然土をスキマに入れて固定する。

「!!??」
「!?!?」

口の上まで土を入れた為に何を言っているかさっぱり分からない。
何、気にする事はない。
これも5本―もとい5匹づつ行う。うち1匹は番を肥料にし、うち1組は頭まですっぽりと土を被せた。

さて、最後の1列だ。


「ゆぅ・・・ゆぅ・・・かわいいあかちゃんだよ・・・」
「ZZZZZ・・・・・・」

頭に茎を生やし満足した一部の番は疲れてかどうかは知らないが眠っていた。
ばれないように片方を肥料にし、母体を持ち上げる。
その後に底を取り払い、中身がこぼれないように畑に置く。

「ゆ゛!?」
「おっとごめんね、うとうとしてて倒れちゃいそうだったから倒れないようにしてあげたんだよ」
「なーんだ、おにいさんありがとう!!!」
「それじゃゆっくり眠っててね、起こしちゃってごめんね」
「うん、ゆっくり眠るよ・・・ゆぅ、ゆぅ・・・」

これまた畑の1列に5匹分置く。
それぞれ埋める高さを調節し、茎は大体どのゆっくりからも同じ高さにでているようにした。

これでゆっくり畑の完成である。

さて、どの茎が一番早く収穫できるだろうか?
さっと水をやってその日は終了とした。


1日目

茎だけのものは変わりが殆ど無い。
草花のような成長速度である。

そのまま埋めた所は通常と同じように育っている。
違うのは声を掛けてくれる親がいない、ということだろうか。
まだぽつんと丸いものがくっついているというような感じである。
母体の目はまだ周囲を見る事が出来るのだろうが、

足を切り落とした方は―

「ゆゆ、うごけないよ・・・だれかたすけてね・・・」
「どうしたんだい?」
「ここからうごけないよ!おうちかえりたい!」

悲しそうな声を上げる母体。
しかし実験のため、動かす訳には行かない。
第一足を切ったのだから下手に動かせば死んでしまうだろう。
実の方は・・・これもまた丸いものが付いてきた感じだろうか。

「あかちゃんが落っこちちゃうのは駄目だよね?おかーさんになるんだからゆっくり頑張ってね」
「ゆゆ・・・がんばるよ」

唯一会話ができるこのゆっくりを元気付けると、それぞれにまた水を撒く。
大体、通常1週間位で赤ゆっくりは地面に落ち生まれると言う。
畑で育てていくとどうなるのだろうか?


4日目

そのまま埋めたゆっくりと足を落としたゆっくりの茎にはそれぞれの親が分かるようなゆっくりの実が付いていた。
埋めた親ゆっくりの目は空ろで、何処を見ているのか分からない目をしていた。

「ゆー、ゆー」

何も知らない埋めゆっくりの赤ちゃんはただその場でゆらゆらと揺れていた。

「ゆ、なんだかまえよりらくになってきたよ!」

足を切り落としたゆっくりは前より元気だった。
ちょっと足元を掘り返してみると・・・根っこが生えている。

「地面さんが栄養をあげているんだよ」
「ゆゆ!じめんさんはすごいね!!」

もう動けなくても足切りゆっくりは完全に植物状態でいられるだろう。
一方茎だけの方は少しずつ成長してはいるものの、実をつけるまでには至らない。
・・・もしかして赤ゆっくりの部分ができないと駄目だったのか?
もう暫く観察してみよう。

7日目

茎だけのものは通常の植物並みの成長速度を保っている。
埋めゆっくりは黒ずんではいない為生きているのだろうが、反応も殆ど無い。
掘り返してみたが根が生える気配もなく、生ける屍状態であった。
一匹だけ落ちる前に食してみる。

「ゆ゛っ」

甘さ控えめの饅頭が出来ていた。

「ゆっきゅりおちるにぇ!」

埋めゆっくりから遂に赤ゆっくりが誕生した。

「ゆっきゅりちていってにぇ!!!」
「ゆゆ、おきゃーしゃんは?」
「きっとレーミュのためにごはんをとりにいってりゅんだにぇ!」
「ゆっきゅりまつよ!!!」

どうやらその場に留まり続ける事を選んだようだ。


「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」

足きりゆっくりはまた寝ていた。
折角なのでこちらも味を見る事にする。

「ゆぎゅっ」

こちらは栄養がたっぷり行き届いた所為だろうか、かなり甘くなっていた。
さて、赤ゆっくりがそろそろ生まれる頃だ。

「起きろー、そろそろ赤ちゃんが生まれるぞー」
「ゆ!あかちゃんどこ?」

目をぱちくりさせて赤ゆっくりを探す足切りゆっくり。

「ゆっくしちていってにぇ!!!」

埋めゆっくりよりも立派な茎から赤ゆっくりが落ちる。
2、3、4…次々と落ちる。

「おきゃーしゃん!おにゃかしゅいたよ!!!」
「おなかすいたの?じめんさんからえいようをもらってね!!!」
「どうやりゅの?」
「じめんさんがげんきにしてくれるんだよ!!!」
「じめんしゃん!ごはんちょうだいにぇ!!!」

こちらもその場にそのまま留まる事になった。
他の喋れない足切りゆっくりからも赤ゆっくりが落ちる。
いずれもその場に留まるようだ。

果たしてこの赤ゆっくり達はどうなるのだろうか。


30日目

埋めゆっくりから生まれた赤ゆっくり達はなす術なく8日目には全滅した。
足切りゆっくりから生まれた赤ゆっくりはその殆どが死んでしまったが、何匹かは地面に根を下ろす事が出来た。
今では親と同じように頭から小さい茎を生やしている。

「ゆっきゅりそだちぇるにぇ!」
「どぼじでずっぎりじでないあがぢゃんがらぐぎがでるのぉぉぉぉ」

一部茎の生えた赤ゆっくりを少し離れた所に植え替える。
きっとこの赤ゆっくりは長く育つだろう。

茎だけ植えたものはしっかりと根付いており、すくすくと成長していた。
しかし赤ゆっくりが生まれてくる気配は無い。
育ち方からして秋に何かが起こるだろうと考え、そのまま育て続けた。


200日目

秋に活発になる神様姉妹の喧嘩がよく起こるような秋。
足切りゆっくりとその子供達はゆっくりしていた。
子供も成体サイズとなり、足の下はびっしりと根を張っていた。
すっきりする事もなく頭には実を付け始めている。

「ゆっくりできるね!」
「じめんさんのおかげでゆっくりできてるね!」

さて、茎だけの方は・・・と。
子ゆっくりサイズの実を付けていた。
しかし喋ることもなく、表情を買えることも無い。

中を割ってみると、そこには大量の小さいゆっくりの粒が入っていた。
一粒口に入れるが、これが中々硬い。

もしかしたら種なのかもしれない。
ゆっくりの中身は餡子だった。
餡子の種といったら―

その日、いくつかのゆっくり種を持ち帰り、小豆を作る要領で煮ていく。

「うん、コレは小豆だ」

こうしてゆっくり小豆が完成する事となった。
このゆっくり小豆の茎や実、種を普通のゆっくりに食べさせた所。

「ゆっくりをころしたゆっくりできないゆっくりはゆっくりしね!!!」

と他のゆっくりに嫌われたようだ。
どうやらこれはゆっくりの特性を受け継いでいるようである。
色々使えそうだなと、頭の中でそろばんを弾いていた。


270日目

ゆっくり小豆の茎は枯れ落ちていた。

足切りゆっくりは地面に喋らない赤ゆっくりを落とし黒ずんでいた。
この赤ゆっくりは春に芽を出すのだろうか。
もし春に芽を出すのであればそれは喋るのだろうか、それともゆっくり小豆になるのだろうか。

来年の春が楽しみだ。
これからはゆっくり小豆を外側に埋め、中で野菜を育てて行こうと考えていた。


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あとがき

植物型に増えるゆっくりなのだから植物のように育ててみました。
中が餡子なので植物の方に傾けば小豆になりそうです。
外敵とかが出てきたり目の前で野菜を育てたらどうなるのでしょうか。


今まで書いたもの
博麗神社にて。
炎のゆっくり
ゆっくりを育てたら。
ありす育ての名まりさ
長生きドスの群
メガゆっくり



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最終更新:2022年06月03日 22:06