「むきゅー」

職場の書店で棚の整理をしてたらなんとも間抜けな声が聞こえてきた。
ゆっくりぱちゅりーだ。飼いゆっくりのお使いだろうか。

「あのこのいってたとおり、ごほんがたくさんあるわー」

私は作業を中断し、ゆっくりぱちゅりーに近づき声をかける。

「こんにちは、ぱちゅりーちゃん。本を買いに来たのかな?」

「むきゅ…ぱちぇはにんげんさんのおかねはもってないわ。
 おともだちがここでごほんを、ただでもらったときいてきたのよ…」

小汚いなとは思ったがやはり飼いゆっくりではなく野良ゆっくりか。
飼いゆっくりの目印もも付いてないし、間違いないな。

「そうなのか、君のお友達の事は知ってるよ。
 君がお得意さんのお友達なら、私がお店をご案内してあげるね」

ぱちゅりーを胸の高さまで持ち上げる。はじめは嫌がってもぞもぞ動いていたが
頭をなでてやると落ち着いて「むきゅーん」と鳴きだした。

私はレジの横を通るときバイトの鬼井くんに「例のアレを作るからあとは頼むね
何かあったら内線で呼んで」と伝えた。


ゆっくりを飼うのは流行っていたが、大声でしゃべって騒音問題になったり
跳ね回って家具を壊したりすることが前々から問題になっていた。
最近ではのどを潰し「ゆっ」や「ゆ」などのうめき声しか出せなくし、あんよと呼ばれる
部分をずりずりと這うことはできるが跳ねることはできない程度に破壊し、移動機能に
制限をかけられたゆっくりを飼うことが、テレビや雑誌で紹介され話題になっている。


裏の倉庫に戻ると私は作業代の上にぱちゅりーを置き
話題のゆっくりを作るための作業に取り掛かった。
ゆっくりぱちゅりーは自分の身に危険が迫っていることに気づいたようだ。

「にんげんさん、ぱちぇにごほんくれるんじゃないの?それにあそこで
 ないてるぱちゅりーたちがいるのはなんでなの…!?」

「むっ」「むぎゅ」「む…」「むっ…」

「…うるさいから黙ってね」

透明な箱に押し込まれた処理済のゆっくり達に気づいて騒ぎ出したので
手っ取り早くのどを潰すことにする。顔を上に向かせ口を大きく開かせて押さえつける。
口の中に適当な棒を突っ込んでのどの奥を皮が破れないように突く。

「むぎゃっ!やめ…ぐぇっ…ぎゅゅゅ!」

暴れるので抑えるのも大変だ。あんよを先に破壊いたいところだが
店内と倉庫を仕切る木製のドアは薄いので、処理中の喚き声が漏れてしまうのはまずい。

「むー…むー…」

うまく成功したようで喚き声を上げることはできなくなったようだ。
大量の涙を流しうめき声を上げながら、うごうごもがいているが
気にせずに次の作業に移る。シュリンカーで足を焼くのだ。

シュリンカーとはコミックにビニール包装をするための機械である。
ビニールが熱を加えられると縮む特性を利用して包装するものであり
特殊なビニール袋にコミックを入れ、熱を持ったこの機械を通すことで
ビニールがぴっちりとコミックを包むというわけだ。

シュリンカーは熱を帯びているため触り続けると火傷をする。
ゆっくりの底部を当て続けてあんよを破壊することも可能なのだ。

(やめてね。ぱちぇにひどいことしないでね!)

涙を浮かべ訴えかけてくるその目を無視し、ゆっくりの上部をつかみ
シュリンカーに底部をしっかりと押し付ける。

(むぎゅー!あんよがいだいー!)

ごぼごぼ口からクリームを吐いていたがやがてぐったりして
動かなくなった。気絶したのだろう。私は透明な箱の中に乱雑に
ぱちゅりーを投げ入れて倉庫を後にした。



店内に戻った私に鬼井くんが話しかけてきた。

「ゆっくりの数も増えてきたし、そろそろ店頭に並べるんですかね?」

「レジ横の一角にだろうね。詳しくは店長に聞かないとわからない。」

数日前に話題のゆっくりを作って売ろうという珍奇な提案をした店長。
一匹のゆっくりぱちゅりーに無料配布の小冊子を与え、それを餌に
釣られてくるゆっくりを捕獲するというのは実に回りくどい案だと思う。

「その辺のゆっくりをふん捕まえてくれば手っ取り早いのに
何でそうしないんでしょうね?ぱちゅりー種が好きなんですかね。」

「本=ゆっくりぱちゅりー、っていうイメージからかな。まぁなんにせよ
たいした理由じゃないと思うよ」



終業時頃に、まりさ種とれいむ種の番が来て何を曲解したのか「ただでおかしを
ちょうだいね!」とか喚いていたがぱちゅりー種しか売りに出さないので
こいつらはいらないので、鬼井くんといっしょに一匹ずつ適当に
コンビニ袋にぶち込んでそこら中に叩きつけたあとにそのままゴミ箱に捨てた。
その様子を見せ付けられてふるふる震えるゆっくりぱちぇりーを見て満足した
私は雑誌の「月刊ゆっくり」と「日本の百鬼意山」を買って家路に着いた。



書いた人:サンジェルマン伯爵

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最終更新:2022年04月16日 23:33