朝の陽射しが目に入り、重い眼を開けた。
目を覚ますと、何時も通りれいむおかーさんの傍に居たようだ。
そして反対側にはいもうとのれいむとまりさが。
向いにはまりさおかーさん。
寝息を立ててれいむおかーさんに擦り寄るれいむ。
まりさは帽子をずらしながら気持ちよさそうな顔で寝ていた。
起こさないように口で帽子を直してあげた。


近くにあった時計さんを見てみると、8と0が並んでいた。
いつもおにーさんに言われている通りに、大きな声でみんなを起こそう。



「ゆっくりしていってね!!!」

今日も元気に言えた。それだけで誇らしさで胸いっぱいになる。
そしてみんなも、ゆっくりと目を覚ますとれいむに向って大きな声で言ってくれた。
「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」
これで今日も何時ものようにとてもゆっくりできる。




「ゆっくりおそとであそぼうね!!!」
おかーさんがそう言うと、まどさんに向かって飛び跳ねて、何かを動かした。
こうすると、開かない窓さんがゆっくり開いてくれるのをおにーさんから教わった。
「ゆっきゅちー♪」
「ゆぅー♪」
妹達は我先にと外へ飛び出していった。太陽さんがゆっくりしてる時は
いつもみんなでお外でゆっくりしている。
ポカポカと太陽さんはとってもゆっくりできる。


「ごーそ!ごーそ!」


後ろを見ると、まりさおかーさんがふくろさんの中に頭を突っ込んでいた。
お尻がプルプルと横に揺れている。
なにやら探しているようなので、手伝おうとピョンとまりさおかーさんの傍に近づいた。
「なにしてるのまりさおかーさん?ゆっくりれいむもてつだうよ!」
そう言うとまりさおかーさんは、とってもゆっくりできる笑顔でれいむの方を向いてくれた。
お口でみかんさんを持ちながら。


「ゆっくりむーしゃむーしゃするよ!」

持ってたみかんさんをおぼうしさんの中に詰めて、おぼうしさんを被りなおしたまりさおかーさん。
そのままおそとへ向かって言ったのでれいむも着いて行った。


おそとではいもうとたちとれいむおかーさんがゆっくりしていた。
「れーみゅのぼーりゅしゃんはゆっきゅちまっちぇね!」
「まりしゃのほーきだよ!ゆっきゅりおちょらをとびゅよ!」


れいむは、おにーさんが買ってくれたぼーるさんをゆっくり追いかけてた。
ころころと転がるぼーるさん。れいむも負けじとピューンと大きく跳ねると
がしっとおくちでぼーるさんをキャッチした。
そのまま勢いでぼーるさんごとコロコロと転がって行った

「ゆゆ?、ゆっくちころがりゅよ?」
とてもゆっくりした笑顔だった。
まりさは、おにーさんに買ってもらったほーきさんをブンブンと振りまわしながら
ちょうちょさんを追いかけていた。
「ちょうちょさん!ゆっきゅちまっちぇね!!!」


「ゆーしょ!ゆーしょ!」
「かわさんはちゃんとむいてたべようね!」
「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー♪」
「「とってもゆっくりー♪」」
「むーちゃ!むーちゃ!」
「ちょっちぇもゆっきゅりできゅるよ!」



おやつを食べ終えて、家族みんなでおにわさんの一か所に集まった。
そこはおおきなきさんの下で、ゆっくりしたかぜさんが通るゆっくりプレイスだ。
「おにゃきゃがぴょんぴょんするよ!」
れいむとまりさは、お腹を膨らませながらまりさおかーさんのすーりすーりしていた。


「れーみゅはたきゃいたきゃいちたいよ!」
れいむがそう言うと、れいむおかーさんが、まりさおかーさんの頭へといもうとたちを運び始めた。
正直言って、ちょっと羨ましいのだが、れいむは"おねーさん"だ。
ここはいもうとたちの為に我慢しよう。そう決めて、れいむおかーさんの所へ向かった。
「おかーさん。れいむとゆっくりしようね!」
「そうだね!れいむはおかーさんといっしょにゆっくりしようね。」
おかーさんはれいむのほっぺをペロペロと舐めてくれた。
ちょっとヌルヌルするけどとっても気持ちよかった。


しばらくすると、みんなゆっくりとおひるねをしていた。
まりさおかーさんの上に乗ったいもうと達は、最初は
「ゆゆぅ~♪おしょらをちょんでるみちゃいー!」
「とょっちぇもしゅずしいよ!」
「ぽよーん!ぽよーん!」
と、はしゃいでいたが、疲れたのか今は「ゆぅ……」と眠っていた。
みんなの寝顔を見るのが大好きだった。
みんなの笑顔はすっごくゆっくりできるものだからだ。



ふと、玄関の方から変な音が聞こえた気がした。
ちょっと気になるが、家族みんなを起こすのはゆっくりしてない。
ちょっと見に行こうと、ピョコンと跳ねようとして……
ゆ? なんだかあしさんがすーすーするよ。



「ゆぅ!おそらをとんでるみたーい♪」


気がついたらみんなちっちゃくなってた。
れいむよりずっと大きいまりさおかーさんとれいむおかーさんも。
おにわさんにある大きなぼーるさんも、いしさんよりも高い所に居た。


とってもゆっくりできる景色だ。思わず口からおうたがもれる。
「ゆ!ゆ!ゆ~♪ゆっくりー!」
なんだかとっても気分がいいので、おかーさんに教えてもらったおうたを歌おう。
そう思った瞬間。
何かが聞こえた。




「うー!うー!」








いたい。あたまがすごくいたい。なんだかとってもゆっくりできない。
れいむおかーさんは?まりさおかーさんは?いもうとたちは?
おにーさんはどこ?だれかたすけて!
なんだかれいむのからだがかるくなっていくよ?どうして?
ゆっくりできないよ!!!ゆっくりできな・・・・












そこは大きな川が町の中心を流れている都市だった。
東北にあるその市は、市内は発展していたが
少し郊外の住宅地へ向かえば手つかずの自然が多く残っているところだった。
都市と言っても名ばかりの田舎、渋滞なんて物に悩まされることもなく、夏になれば多くの子供達が朝から虫取りの為に森へ向かうような場所である。
おそらくこれからもずっとこんな感じなのだろう・・・久々に故郷に帰ってきた俺はそんな事を考えていた。




「なんて物思いにふけている場合でもないのです。今回は仕事で来たのです。」
「説明口調で何を言ってるんですか先輩。」
ワゴン車に乗って駅前の道を走る俺。といっても助手席で「ぐたぁー」と言ってるだけである。
窓の外を見てみると、ノンビリと歩いてる人達が見えた。そしてその足元で楽しそうにしているゆっくり達。
各々が何もせず道の真ん中でのんびりとしていた。
しかし、そんな彼らを邪険にする者などいなかった。
むしろ可愛がっているように見える。
前に視線を向けると、横断歩道を渡っているゆっくりが居た。
親であろうまりさとその子供が、身なりの良いご高齢の婦人と会話しながら跳ねていた。
魚屋の前で呼び込みをするちぇん。下校途中の子供と一緒になって遊ぶみょん。
ゲートボール中のお年寄り達と楽しそうに会話をしているぱちゅりー。
人間とゆっくりの理想のあり方とはこういう物なのだろう。




「こっちでいいんですよね?」
「うんそうそう。そこ右に曲がって後はまっすぐね。右側にデカい建物が見えるから。」
隣の運転席に座っているポニーテールの女の子はよっちゃん。
俺とは天と地ほどの学歴を持つ天才少女な後輩である。
明らかに場違いな子だ。しかし社長にスカウトされて来たと聞いて納得した。
あの人なら何やっても不思議じゃない。
でももっとマシな仕事を与えてもいいだろうに。



「いやぁー懐かしきわ我が故郷。これで仕事じゃなければいーのになー。」
「実家にでも帰るんですか?」
「いんやぁー。この仕事始める時に親と縁切ったようなもんだしねぇー。馴染みの店で旧友と一杯かな。」
「あ・・・すみませんでした。今のは忘れてください。」
申し訳なさそうな顔でそう言いながら、俺にガムを差し出すよっちゃん。出来た後輩である。
「別にいいんだけどねホント。」
今すぐガムを食べようか考えたが止めてポケットにしまった。
車は順調に走っていた。
ラジオからはDJの軽快な語りが流れていた。お互い話すこともなくただ黙ってそれを聞いている。
どんよりとした空気が場を支配し始めた。
この手の空気は嫌いだ。仕方がないので適当な曲でも流すことにしよう。
バックになにか・・・これでいいだろ。CDをセットする。
ステレオからはノリのいい音楽が流れてきた……あ、これメタルマックスのボス戦だ。




久方ぶりの市役所である。
相変わらずデカくてボロい。改築する金もないのだろうか?
そんなどうでもいい事を考えながら、中に入る。
と、入口に一人の中年男性が立っていた。
「いやーどうもこんにちは。ようこそ●●市へ。」
どこにでもいそうな、ごく普通の男性だった。


案内された部屋に入り、先ほどの男性は数枚のプリントを渡された。。
「えーでは。さっそくなんですが、被害に関してですね、説明させて頂きたいと思います。」
持ってきてもらったお茶を口に含みながら、最初に渡されたプリントに目を通した。
そこにはここ最近、頻繁に起こっている飼いゆっくりの行方不明及び殺ゆ事件に関しての被害報告が書かれていた。
「報告があるだけで2ヵ月で137匹。そのうち、身元が分かる装飾品やバッジが見つかったのが11件。
ふれあい広場と称した地区での野生種の被害を考えればこの2倍は軽く行くのではないかという意見もありましてね
器物破損もそうですが、ゆっくりとの楽しい生活を市の政策として打ち出してる手前、ほっとけない自体でして。」
確かに数が多い。が、それ以上に飼いゆっくりという部分が問題なのだろう。


「飼い主が外で遊んでる時に、ちょっと目を離した隙に行方不明になったケースもありますね。」
次のプリントに目を向ける。行方不明になった場所が地図に記されていた。
だいたい森に近い住宅地が狙われているようだ。たまに都市部の住宅地の方へも犯人は行ってるようだが
おそらく警戒が強くなったからだろう。


「ほんと困りましてねー。犯人はわかってるんですが、どこら辺に居るのかが全くわからなくて。」
そう言うと、男はバックからノートパソコンを取り出した。
「とある被害者からお借りした映像なのですけどね、監視カメラも泥棒じゃなかったから意味がなかったと。」
パソコンに映った動画は、とても幸せそうな食事風景だった。




「うー!あまあまー!でりしゃーす!」
まだ胴体のない子供のれみりゃが、赤ちゃんぐらいのまりさの頭に自慢の牙を突き刺していた。
「やべでね゛! おねがいだがらゆっぐじじでー!!!」
「ゆっぐじじでよぉー!」
親と思われるれいむとまりさは、これまた親であろうふらんとれみりゃに押さえつけられていた。
「うー!ゆっくりたべてねー!」
「うー!うー!」
親であろう二人は、その両手で二匹を抑えつつ子供の様子を楽しそうに見ていた。
おそらく初めて子どもと狩りに来たのだろう、二匹からすれば子供の立派な姿に感動してるといった具合か。
画面をよく見ると、木の枝に何かが刺さっているのがわかる。
ちょと画面が荒れていて見えづらかったがよく見ると、それはれいむだった。
その周りを飛んでいるのはふらんだ。パタパタと飛んで、少しづつれいむを齧っている。
手前のれみりゃ達の声のせいで声は拾えないが、何を言ってるかはだいたい予想がつく。


「うー!おねーさま!あまあまたくさんおいしかったね!」
「うー!ふらんったらおくちのまわりよごれてるー! 」
子どものれみりゃとふらん。
お互いのほっぺを擦り合わせ、もちもちっとした感触を楽しんでいるのだろう。
れみりゃがふらんのほっぺについた餡子を舐めとっている。ふらんはそれを見て嬉しそうだ。
どこかのデパートで使われた広告と全く同じ構図の映像が最後に流れた。
違うとすれば、デパートの方は、口の周りについてるのがプリンであり。
こちらは餡子がべっとりと付いてることであった。





「わかりました。巣の調査も含めて、1週間以内には結果が出せると思います。」
よっちゃんがテキパキと答える。あからさまに駄目人間オーラを放っている俺よりも
説得力があるのだろう。相手方は安心したような顔をした。
市役所を出ると、空はどんよりとした曇り模様であった。



「よーっちゃーん……イカ。」
「死にたいんですね。わかりました。」
ヨシツネ辺りをペルソナにしてそうな殺気を放ってきた。もうちょっと冗談に優しくなろうよ。
「先にホテル戻ってていいよ。ちょっくら歩いてくるから。」
「もう調査するんですか?もう夕方ですし、おそらく出てこないと思いますよ?」
「なーんとなくだから大丈夫。適当な時間に帰るから。」
まだ何か言いたげな後輩をよそに、ショルダーバックを肩にかけて懐かしい道を歩きだした。



通常、れみりゃとふらんは夜行性である。
別に昼間動けない訳ではないのだが、狩りなどの行為は主に夜に行われる。
獲物であるゆっくりが巣で寝ている事も関係してくるのだろう。昼間よりは格段に、しかも一度に大量に
捕まえることができるからだ。
ただし、これはあくまで野生の場合。都市部に住んでいる者は逆に日中活動するよう者も珍しくない。
理由は簡単。都市部のゆっくりは基本飼いゆっくりである。捨てられた物は保護されるか山に帰る。
ゆっくりできない都市部に好き好んでいる者はごく希である。
飼いゆっくりが、真夜中に外に居るか。普通に考えればNOだ。
殆どが家の中に居るだろう。れみりゃやふらんでは絶対に手が出せない場所だ。
ならば、外に出る可能性のある昼間に活動するのは自然な話である。


そんな訳で、最近はれみりゃ達による飼いゆっくりの捕食事件が続発している。
自治体で簡単に対策が立てれそうなのだが、世間はなんでかゆっくりしている。
そうやってゆっくりしてる間に、野生化した元飼いゆっくりが農作物を荒らし始めたり
商店のゴミや商品を漁り始めるのだ。
まあ、俺としてはそれが飯のタネの一部なのでありがたい話であるのだが。


と、こんな無駄に長ったらしい設定を脳内で語りながら住宅地から外れた砂利道を歩いていた。
ここら辺一帯は一番事件が多い地区である。この辺りに犯人達が住んでいるのはどうみても明らかだ。
が、今日は犯人探しをするつもりはない。旧知の店のカスタードタイ焼きを頬張りに来たのだ。





ホテルへ戻り、次の日からの捜査を話し合った。
「なんでダブルじゃないの?馬鹿なの?」
よっちゃんの手にしてた空き缶が紙屑のようにクシャクシャになった。
あれれ?スチール缶だよねそれ?





次の日。犯行が集中してる地区の森の中。
今日いっぱいかかると思われていた巣の捜索だが、僅か一時間程度で終わってしまった。


「うっうー!うあうあー!」
「ぎゃおー!」
「うあうあー!うー!うー!」
「みゃんみゃすごいどぉー!とってもきゅーてぃくるなだんすーだどぉー!」
「うー!うー!」
「くりゃえ!れーばてぃーん!」
「じゃおーん!」
「さすがですわおぜうさま!」


森を歩いた先にあった崖。そこに少し大きめの穴が開いており
その入口で胴つきれみりゃが自慢のダンスを披露していた。
周りには子供の胴つきや、胴なしの子供。
そしてめーりんとさくやが子ども達の傍にいた。




「罠とかわんさか持ってきたんだけどなー。」
「無意味でしたね。」
まあここは早く見つかって喜ぶべきなのだろう。
とりあえず様子を見ることにした。



丸一日入口を見張ってていくつか分かったことがあった。
まず、この群れは一か所の洞窟に住んでいる。
そして、胴体付きは留守番。胴体無しは狩り。と、役割を分担している
野生なら手が使える胴体付きは有利だろうが、住宅地では逆にそれが仇になる。
それを考えると中々良い分担だ。

「うー!ままー!」
どうやら狩り担当が帰ってきたようだ。
口には駄菓子屋で売ってそうなチョコが大量に入っている。
しかしいくらなんでもザルすぎやしねーか?

それと、重大な事が一つ。
予想通り、この群れは夜には全員が眠る。
一応めーりんが門番的な事をしているが、考慮するほどのものでもない。




大体の事はわかったのでホテルに戻り、明日の支度を行う。
「これでまあ、明日の夜には終わりそうだね。」
「夜だと暗くて面倒なんですけどね。」
なんだか不満そうな顔でカタカタとノートパソコンで書類作成中のよっちゃん。
横にあるビールと桃については突っ込まないでおこう。


「あーんで?明日何人くらい来るの?忙しいのはわかるけど、ちょっと広いからそれなりじゃないと。
確か新人さんが来るんだよね?まあ楽な分類だから問題は……」
冷たい声が響いた。
「2人です。4人でやりますよ。」
……は?
思わず手に持ってた網を落としかける。



「いやいやいやいやいや待て待て待て。それおかしい。森の中に荷物運んだりすんだよ?
むしろそっちの方が駆除より作業多いんだよ?」
よっちゃんは疲れ切った声で答えた。


「どうやら研修中に、"また"新人が逃げたみたいですよ。ビデオ見た後に。」
「えーまたかよ。なに?それで?いい加減人数増えないと大変だよ?オレ死ぬよ?」
「文句は社長に直接行ってください。つき合い長いんでしょ先輩?」
ぷすーっと怒ったまま部屋を出て行ったよっちゃん。ビールでも買いに行ったのか。


しかしまあ、新人さんが増えないのはわかるけどねえ。
この人数でやれってのは流石に困るんだぜよ?





続け



【あとがき】
思いっきり中途半端です。申しわけない。続きは誠意作業中。
オリキャラ分多いので注意
ひょとした他の作品が先に上がるかも

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年04月17日 01:19