ド ン ッ

「あぅっ!」

銃声が鳴り少女の悲鳴が挙がる。
眼鏡をかけた少女―――暁美ほむらは肩を抑えながら体勢を立て直す。

「クハハハッ、いい声で鳴きやがるじゃねえか」

マスクを着け西部風の帽子を被った男、デュラム=グラスターは笑いながら引き金に指をかける。

「ど...どうしてこんな...!」

ほむらは困惑する。このバトルロワイアルは最後の一人になるまで殺しあう類のものではない。
森嶋帆高一人を殺せばそれで殺し合いが終わる。その為、彼を狙うにしても狙わないにしても、参加者同士が殺しあう意味はない。
配られたお題にしても、自分が主催本部に先回りすればいいだけだ。
だというのにこの男は顔を合わせるなり銃撃してきた。
会話もなく、ただそれが当たり前であるかのように襲ってきたのだ。

「冥土の土産に教えてやるとするか...依頼を引き受けたのさ、お題とやらの特典で生き返らせる代わりに、自分を狙うであろう全参加者を始末してくれとな」

デュラムはマスクの下でにやりと口元を歪め、再び引き金を引く。
放たれるのは実弾ではなく光のエネルギー。これがこの男の能力、SHOT(ショット)。
銃に自らの気を送り込み放つ技である。

「オラ食らいやがれ!」
「っ!」

まるで散弾銃のように放たれる光弾を、ほむらは必死になって躱す。
一発一発の殺傷力は実弾よりも劣るが、厄介なのは弾切れが無いことだ。
通常、銃には装弾数というものがあり、撃ち続ければ弾丸が切れて撃てなくなる。
この男にはそれがない。撃ち続けている限りは近づくこともできやしない。

「ククッ、うまく避けるじゃねえか...ならこいつはどうだ。避けれるもんなら避けてみなあ!!」

銃口に眩いほどの光が集っていく。
ほむらはその光景から察する。
あの男が放とうとしているのは、巴マミのティロ・フィナーレと似た技だと。

(私はこんなところで消耗するわけにはいかない...!)

今は手元にロクな武器が無いため、時間を止めてもデュラムを仕留めきれる保証はない。
もしもこの会場にまどかがいれば彼女への危険を減らす為にも無茶をするかもしれないが、不明な以上は無理をするつもりはない。

「ぶっ飛びやがれ!!」

ほむらが建物へと隠れるのとほぼ同時、デュラムの銃口から巨大な光弾が発射された。

「―――!!」

光弾が着弾するのと同時、激しい爆発と共に建物は砕け崩落した。

「ククッ...死んだなこりゃあ」

デュラムは己の齎した破壊に満足気に笑みを零すと高笑いと共に踵を返していった。

それから数分後、ガラリと瓦礫を押しのけほむらが姿を現した。

「ケホッ、ケホッ」

吸い込んだ煙を追い出すかのようにほむらは咳き込む。

(どうにか逃れられた...怪我もほとんど無くて助かった)

万が一にもデュラム戻ってきた場合を考慮し、ほむらは急いで瓦礫の山から脱出しデュラムとは反対の方角へと駆け出した。

(さっきの人、依頼を引き受けたって言ってたけど...)

逃げながらほむらは考える。
デュラムの零した依頼人の正体を。

(こんな状況で誰かの殺人を依頼するなんてどうかしてるとしか思えない。それに、『自分を狙うであろう参加者』とも言ってた...)

特定の参加者を狙えと題された状況で、自分を護って欲しいかのような依頼を託す。
そんなことを頼むのは一人しかいない。

「森嶋帆高さん...あなたなんですか?」



【暁美ほむら(眼鏡)@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
基本方針:とにかく死ぬ訳にはいかない。
0:ひとまずマスクの男(デュラム)から離れる。
1:マスクの男(デュラム)への依頼主は帆高...?
2:まどかや知り合いたちがいれば合流する。
3:マスクの男(デュラム)には要警戒する。

※参戦時期はまどかと『騙される前の私を救ってほしい』と約束を交わす前。


「あれで良かったのか?」

先ほどまでのハイテンションとは打って変わり、デュラムは落ち着いた口調で問いかける。

「然り。あのまま泳がせればあの娘は帆高の悪評を撒くでおじゃるよ」

時代がかった口調で答えるのは、貴族風の衣装に身を包んむ男だ。
男の名はマロロ。ヤマト八柱将ミカヅチ直属の采配士である。

「多少は腕に覚えがあり、積極的に戦闘を行おうとはしない者...まさにうってつけの人材でおじゃるよ。無力な者相手ではまずデュラム殿がわざと逃がしたことがバレてしまうでおじゃるからの」
「そううまくいくもんかねえ」
「否。結果はすぐには出ぬでおじゃるよ」
「あ?てめえこの俺様を出張らせてそれで済ませるつもりかああ?」

軽んじて見られていると思ったデュラムはマロロの胸倉を掴み上げる。
しかし、マロロは飄々とした佇まいで笑みは微塵も揺らがない。

「ひょほほ、案ずるでない。これはあくまでも仕込みでおじゃる」
「仕込みだと?」
「そう、仕込み。種を撒いた作物がすぐには育たぬように、マロの策もすぐには芽吹かぬものでおじゃる」
「どういうこった」
「デュラム殿にはあえて第三者の存在を言及してもらったでおじゃるな?『依頼された』『自分はお題の報酬で生き返らせてもらう』。と」
「ああ」
「それが肝でおじゃる。あの娘はデュラム殿の背後に森嶋帆高の存在を感じずにはいられなくなった筈...さすれば、他の参加者にこの情報を共有するでおじゃるよ」

ぐにぃ、とマロロの唇が厭らしく曲がる。

「この情報を聞いた時、果たして参加者はどのような解に辿り着くか...デュラム殿を気の違った者と見るか、帆高からの刺客ととるか...はてさてどちらでおじゃろうなあ」
「...そういうことかよ」

合点のいったデュラムはマロロから手を放し不機嫌さもナリを潜める。

そう。ほむらはあくまでも着火剤。
彼女一人が燃えたところで大局にはさほど影響がない。
火とは多くに燃え移ってこその火である。

マロロはほむらを基点に帆高の包囲網を作るつもりなのだ。

「帆高がそう依頼したとなりゃあ、穏健気取る予定だった奴らも黙っちゃいられねえ訳か。エグイこと考えるぜ全くよ」
「ひょほほ、策配士たるもの、この程度はできねば務まらぬでおじゃるよ」
「ま、俺は好きにやれれば文句は言わねえさ。頼りにさせてもらうぜ策配士殿」

ニタリ、と互いに厭らしい笑みを交わし合う。

しかしその裏で、マロロの怒りは業火のように渦巻いていた。

(オシュトル...首を洗って待っておるがいい)

燻るは、この異常事態においても消えることなき偽りの憎悪。
植え付けられた記憶はマロロの脳内に焼き付き人格を歪ませる。

(ハク殿、今しばしの辛抱でおじゃる。マロは必ず願いを叶えるでおじゃる。その時は共にあの逆賊を討ち倒そうぞ)

願うは亡き友の蘇生。必ずや、二人で憎き彼奴に裏切りの代償を清算させる。

マロロは知らない。彼の願いが、かつての友が誰も望まぬ未来であることを。







【マロロ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
基本方針:願いを叶え帰還する。
0:デュラムを暴れさせ、参加者の帆高への疑心暗鬼を募らせる。
1:帆高を殺し、願いを叶える為にお題を達成する。
2:ハクを蘇らせ共にオシュトルを討つ。

※参戦時期は蟲を入れられた後。



【デュラム=グラスター@BLACK CAT】
[状態]:健康
[装備]:普通の一般的な拳銃@現実
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
基本方針:生還する為に手段を問わない。
0:マロロの策に従い好きに暴れ帆高への不安を参加者間に募らせる。
1:帆高を殺し、帰還次第トレインに再度挑む。

※参戦時期はトレインに敗北後。


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START デュラム=グラスター [[]]
最終更新:2021年02月20日 00:48