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「一郎くん、ちょっと時間取れる?」

放課後、机の片付けをしている一郎くんに声をかける。

「大堂、またお前か」 

溜め息まじりの、あからさまに嫌な顔をされる。

「なにその態度、愛菜にひどい事を言ったただじゃおかないわよ」

冷たい態度の一郎くんに、香織ちゃんが横から怒った。

「長谷川、これから大堂と話がある。席を外してもらおう」
「嫌よ。委員長の指図なんて受けないわ」
「あのね、一郎くん。香織ちゃんは部外者じゃないんだよ。だから一緒に居てもいいよね」
「長谷川が?」

一郎くんは目の前の香織ちゃんを見据える。

「訳ありのようだな。いいだろう、ついて来い」

先に歩き出した一郎くんに、私達はついていく事にした。



(ここは空き教室か) 

「少し埃っぽいが我慢してくれ」

鍵を開けて、一郎くんが先に入る。
それに私達も続いた。

「まずは長谷川の事を説明してもらおうか。部外者じゃ無いとはどういう事だ」
「周りくどいのは好きじゃないの。単刀直入に言うわ。私、八尺瓊の勾玉なの」

香織ちゃんは開口一番に正体をバラしてしまった。

「か、香織ちゃん」

心配する私を制して、香織ちゃんは優しく微笑む。

「心配しないで、愛菜。委員長、薄々気づいていたから」
「え? 本当に?」

(でも一郎くんはわからないって……)

「やっと正体を明かす気になったようだな、長谷川」
「待って一郎くん。私にはわからないって言っていたよね」

混乱して私は一郎くんに訴える。

「決定的な証拠がなかったからな。憶測だけで言える訳ないだろう」
「高校生に入ってちょっと経った頃にね、私、聞かれたのよ。『お前が勾玉か』ってね。もちろんはぐらかしたけど」
「そうなの? 一郎くん」

私の問いに一郎くんは首を縦に振った。

「ああ。勾玉は結界や封印を最も得意とする。大方、大堂の力を封じた時、自らも力を封じたのだろう」
「さすが、鏡。はぐらかすのにも苦労する訳ね」
「問題は封印の解き方だが……大堂の能力に応じて紐付けし封印を解く方法、後は契約の際に唱える祝詞そのものを封印を解く鍵とする方法もある。そのどちらかといった所だろうな」
「前者が正解よ。愛菜は今、剣としか契約していないから、鏡待ちって状態なのよね」

そう言うと、香織ちゃんは一郎くんをわざとらしくチラチラと見た。

「愛菜は鏡と契約したいんですって。ね、愛菜」
「うん。だから一郎くんーー」
「断る。以前も言ったはずだ」

私のお願いを聞かず、一郎くんはきっぱりと断ってきた。

「何よ、委員長。もったいぶらないでいいじゃない」
「もったいぶっている訳じゃない。神託の巫女の能力は人には過ぎた力だ。あんなもの争いの種にしかならない」

(過ぎた力……)

確かに、私が能力を上手く使いこなす所を想像することができない。
だからと言って、今みたいに何もできないままなのはもっと嫌だ。

「大堂が命がけで巫女になって何になる。せいぜい利用されるのが関の山だ」
「ちょっと、あんまり愛菜をいじめないでくれる?」
「今の大堂は色々あって動揺しているだけだ。冷静になればやめた方が良い事くらい簡単に分かるはずだ」

(やっぱり一郎くんは私が巫女になるの、反対なんだ)

「この分からず屋に言っても無駄ね。いいわ、修二くんに頼むから」
「おい、長谷川」
「私達は巫女に使役される者。愛菜の望みは巫女の望み。鏡も忘れた訳じゃないでしょ」
「忘れるものか。だが、今の大堂では荷が重すぎる」
「荷が重いかなんて試してみなくちゃ分からないじゃない。私は愛菜を信じるわ」
「大堂の意思が鬼化したらどうする……本当に終始がつかなくなる」
「あれもダメ、これもダメ。それこそ愛菜が迷うだけよ」

二人は言い争っている。

(何とか止めないと)

「待って二人とも」

言い争ってっていた一郎くんと香織ちゃんが同時に私を見る。

「私は弟の春樹に帰ってきてもらいたい。そのためには少しでも私が戦力になった方が良いと思う。今のままじゃどのみち敵にさらわれて神宝の力で巫女にされしまうって聞いたよ。それなら私は友達と契約して巫女になりたい。その先の事はまだ考えてないけど、絶対に悪いことに使われないようにするから」

一生懸命、自分の気持ちを二人に話す。

「話は大体分かったよ。兄貴は嫌みたいだし、愛菜ちゃん、俺と契約すれば?」

空き教室の扉に修二くんが立っていた。

「修二くん」
「相手も神宝って切り札持ってるならカードは出来る限り出してかないと。出し惜しみして負けるってゲームなら一番の悪手じゃん」
「修二、この話はゲームの話じゃないぞ」
「例えばでしょ。テニスでも得意なサーブやレシーブでどんどん攻めてって試合の主導権握った方が勝つって定石だしさ」
「修二は黙っていろ。話がややこしくなる」
「ややこしくしてるの兄貴じゃん。ね、お人形さんもそう思うでしょ?」

修二くんの視線の先に冬馬先輩が姿を現す。
ここでようやく剣、鏡、勾玉の全ての神器が揃う事になった。


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最終更新:2020年07月06日 22:13