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学校では普段通り、慌ただしく授業が始まって、終わっていく。
気がつけば、昼食の時間になっていた。
教室の一角、香織ちゃんと向かい合わせの席でご飯を食べだした。

「今日は一緒に食べられてよかったよ。最近愛菜忙しそうだったし」
「ちょっと色々立て込んでだからね」
「またコンビニおにぎり?」
「うん……お弁当作ってくれてたの春樹だからね」
「風邪だっけ。早く良くなるといいわね」
「そうだね」

(本当は出て行ったって、伝えた方がいいのかな)

「香織ちゃん、実はね……」
「ん? どうしたの?」
「実は春樹ね、風邪じゃなくて家出してるんだ」
「えっ! あの優等生が!?」

香織ちゃんは驚きのあまり、プチトマトを箸から落としてしまっていた。

「香織ちゃん、声大きいよ」
「ゴメンゴメン。へぇ、またどうしてそんな事になったの?」
「それがちょっと複雑でね。春樹、前の父親の所に行っちゃったんだよ」
「あんたのとこ、再婚の連れ子同士だったわよね」
「うん」
「で、家出の理由は何?」

(理由……)

話をぼかしたり、誤魔化す事もできる。
だけど香織ちゃんもこちら側の人間のはず。
私は意を決して話し出す。

「春樹がね、力が欲しいって……もう無力な自分は嫌だって言ったんだ」
「力?」
「超能力みたいな不思議な力だよ」
「不思議な力……」
「春樹の旧姓って高村って言うんだ。この街で一番大きな高村総合病院あるでしょ。
あの病院の跡取りだったみたいなんだよね」

香織ちゃんの様子をうかがい見る。
すると、香織ちゃんが私をジッと見ていた。

「香織ちゃん?」
「愛菜。どうしてそんな話を私にするの?」
「だって……」
「なら、人気の無い所にうつりましょうか」
「香織ちゃん。じゃあ、屋上にしない?」
「どうして?」
「そこに冬馬先輩が待っているからだよ」
「用意周到ね」
「屋上だったら大丈夫だよね」
「……いいわ。それじゃ行きましょ」

食事を簡単に片付ける。
そして私と香織ちゃんは一緒に屋上へ向かった。




冬馬先輩は一足早く屋上に来ていた。

「愛菜と長谷川さん」
「長谷川さんなんて堅苦しいじゃない。香織って呼んでくれていいわ」
「では香織さんと呼ばせてもらいます」
「先輩なのに敬語だし。まぁ好きに呼んでいいわ」

香織ちゃんと冬馬先輩はほぼ面識がないはずだ。
年上だろうが物怖じしない所が流石だ。

「あのね香織ちゃん。昨日、退行睡眠っていう方法で私の過去、6歳の夏頃をみてきたんだ」
「そう……」
「それで私の能力を封印した女の子に会ったんだ」
「それがどうしたの?」
「その子、私の大好きな友達とよく似ていたんだ。その子は6歳とは思えないくらいしっかりしてた。今の……高校生の私達と変わらないほどにね」
「……そうなの」
「詳しい人が言うには、前世の記憶を保ったまま転生したのかもって言ってたよ」

私は香織ちゃんの前に立つ。

「三種の神器、八尺瓊の勾玉は香織ちゃんでしょ?」

私の言葉を聞いて、香織ちゃんは観念したように溜め息を吐く。

「……あたり、愛菜の正解よ」
「やっぱり……良かった」
「だけど残念。今の私には何の力も無いのよね」

そう言えば、私の力を封じて勾玉は能力の気配を完全に絶ったと聞かされていた。

「じゃあ、香織ちゃんは能力がなくなったの?」
「能力を無くした訳ではなく、自ら封じたのではないでしょうか」

黙っていた冬馬先輩が話に加わってきた。

「香織ちゃん、そうなの?」
「そうね。愛菜を守ってあげるには一番良い方法だったから」
「香織さん、愛菜は勾玉との契約を望んでいます」
「そうなの……でも愛菜、契約するって事は人間やめるって事なんだよ。本当に後悔しない?」
「うん。いっぱい考えて出した答えだから」

香織ちゃんはうなずいた私の手を取る。

「私の力の解除方法はただ一つ。愛菜が力と連動してるから、鏡と契約すれば封印も解けるわ」
「じゃあ……」
「逆にいうと最低でも鏡のどちらかと契約しなければ私の勾玉の力も解けないって事ね」
「そっか」

(冬馬先輩は一郎くんとは険悪なままだ。なら頼むなら修二くんかな)

かなり難しいかもしれない。
それでも修二くんに頼んでみるしかないだろう。

(それにしても勾玉が香織ちゃんだなんて心強いな)

どんな男子より頼りになる。
それくらい香織ちゃんはカッコイイ女子だ。

「小学三年に香織ちゃんが転校してきてから、友達でいてくれて毎日楽しいよ。本当にありがとうね」
「改めて言われると照れるんだけど」
「香織ちゃんが封じてくれなかったら、こうやって学校に通う事も出来なかったかもしれないから」
「先代の巫女が予言して、頼まれたの。私はその通りにしただけよ」
「転生しても約束を守って行動するなんてすごい事だよ」
「愛菜……あんたやっぱり良い子。可愛いわ〜〜〜」

私に抱きついて頭をわしゃわしゃ撫でてくる。

(私、犬じゃないよ〜)

同級生なのに時々親戚のおばさんや母親みたいに接してくる理由がやっと分かった。
精神年齢はきっと実年齢の倍はある。
友達で時々保護者な香織ちゃんがもっと大好きになったのだった。


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最終更新:2020年07月06日 01:36